大量の蟲が蠢いている白無垢の女の顔を思い出して身震いすると、美月は白い画面を閉じた。 「着いた……ここ……かい?」 「た……ぶん」 見渡す限り生い茂った背の高い草木しか見えない場所だった。車のライトの先に朽ちた木造らしき建物があるために、かつては人の営みがあったとわかる程度の荒れ果てた廃村だった。 「とりあえず降りてみよう。でも、危険があったらすぐに戻るように。古塚さん、懐中電灯と、これ──」 二俣から渡されたのは懐中電灯と、もう一つは弓袋と紐で縛られた矢筒だった。 部室のロッカーに置いてあるはずの桜のデザインが施された美月の愛用品だ。 「……先生、これは……?」 「護身用だよ。念のため。あんな化け物に効くのかどうかわからないけど、何も無いよりはましかと思って。君なら、いざというときにあてることはできるだろう?」 「……でも」 逆に危険な可能性もある。冷静でいられないときに射ればあらぬ方向へ飛び、下手をしたら他の誰かに当たってしまうかもしれない。何より幽霊や妖怪のような存在に矢が命中するのかどうか全くわからない。 「弓矢は昔から神事に使われていたんだ。吉凶を占ったり、厄祓いとかね。験担ぎだよ。邪魔と思えば捨てればいい」 二俣が念を押して頷くと、美月は躊躇いながらも懐中電灯と弓袋を受け取った。袋を開け、矢筒を確認すると、弓と矢が六本しっかりと入っている。 美月は背中に弓袋と矢筒を括り付けると、乃愛と手を繋ぎ車から出た。
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