―――8月10日。 葵の奴が全力で蹴り飛ばしてくれた腹が滅茶苦茶痛い。 昔もそうだったが、美鈴が絡むと一切手加減がない。例え俺が誰に操られていようと関係ないんだから酷いもんだ。 まぁ、その痛みのお陰で自分を取り戻せたのだから、結果オーライなのかもしれないが…。 (納得がいかない…) 溜息が零れた。 自宅の廊下を父上の書斎に向かいながら歩く。 一応、美鈴が気になっていた事は日付が変わる前に…と言っても夜の八時くらいだが、メールを出しておいた。ちょっとした悪戯もしておいたが…良く考えると、あれは葵の携帯だったな。 …さ、流石にもう一発殴られるのは遠慮したい…が、覚悟だけはしといた方が良さそうだな。 しかし、こんな夜中に父上からの呼び出し。なんだろう。悪い予感しかしないんだが…。 自然と足取りが重くなるが、父上の書斎の前についてしまった。仕方なくドアをノックすると、入れと声をかけられ失礼しますと中へ入る。 そこで見たもので俺は驚きに足を止めた。 立派な椅子に座る父上の前に立つ銀川。その腕の中にはぐったりとした美鈴が抱えられていた。 「………父上?これは一体どういうことですか?」 「どう言う事とは?見たまんまだよ」 「見たままで分からないから聞いているのです。何故、美鈴が銀川の腕の中で意識を失ったまま抱えられてるのですか?」 ぴくりともしない美鈴は意識を失っているに決まっている。男性恐怖症の美鈴が銀川の腕の中で正気を保てるはずがない。 ならば意識を失わせて誘拐して来たと言う事だ。だとするなら、…もう美鈴の中の俺への好感度は完全に地に落ちただろう。むしろ地中に埋められた可能性すらある。自分の所為ではないにしろ、この結果は酷い。 はぁ…と知らず溜息をついていた。そんな俺に父上は更に追撃をかけてきた。 「龍也。お前を呼び出したのは、彼女を引き取らせる為だ」 「美鈴を引き取る…?」 「そう。銀川にはこれからもう一仕事して貰わなきゃならないから」 「もう一仕事?父上、意味が分かりません」 「あぁ、大丈夫。龍也が分かる必要はないんだよ。龍也はね。その子を抱いて、子供を作ればそれでいいんだ」 「…………は?」 待て。待て待て待て。今父上は何を言ったんだ?理解出来ない。 目の前にいるのは本当に父上か?確かに父上はいつも突拍子もない事を言
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