All Chapters of 乙女ゲームのヒロインに転生しました。でも、私男性恐怖症なんですけど…。: Chapter 91 - Chapter 100

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第十五話⑦ ※※※(樹視点)

―――8月10日。 葵の奴が全力で蹴り飛ばしてくれた腹が滅茶苦茶痛い。 昔もそうだったが、美鈴が絡むと一切手加減がない。例え俺が誰に操られていようと関係ないんだから酷いもんだ。 まぁ、その痛みのお陰で自分を取り戻せたのだから、結果オーライなのかもしれないが…。 (納得がいかない…) 溜息が零れた。 自宅の廊下を父上の書斎に向かいながら歩く。 一応、美鈴が気になっていた事は日付が変わる前に…と言っても夜の八時くらいだが、メールを出しておいた。ちょっとした悪戯もしておいたが…良く考えると、あれは葵の携帯だったな。 …さ、流石にもう一発殴られるのは遠慮したい…が、覚悟だけはしといた方が良さそうだな。 しかし、こんな夜中に父上からの呼び出し。なんだろう。悪い予感しかしないんだが…。 自然と足取りが重くなるが、父上の書斎の前についてしまった。仕方なくドアをノックすると、入れと声をかけられ失礼しますと中へ入る。 そこで見たもので俺は驚きに足を止めた。 立派な椅子に座る父上の前に立つ銀川。その腕の中にはぐったりとした美鈴が抱えられていた。 「………父上?これは一体どういうことですか?」 「どう言う事とは?見たまんまだよ」 「見たままで分からないから聞いているのです。何故、美鈴が銀川の腕の中で意識を失ったまま抱えられてるのですか?」 ぴくりともしない美鈴は意識を失っているに決まっている。男性恐怖症の美鈴が銀川の腕の中で正気を保てるはずがない。 ならば意識を失わせて誘拐して来たと言う事だ。だとするなら、…もう美鈴の中の俺への好感度は完全に地に落ちただろう。むしろ地中に埋められた可能性すらある。自分の所為ではないにしろ、この結果は酷い。 はぁ…と知らず溜息をついていた。そんな俺に父上は更に追撃をかけてきた。 「龍也。お前を呼び出したのは、彼女を引き取らせる為だ」 「美鈴を引き取る…?」 「そう。銀川にはこれからもう一仕事して貰わなきゃならないから」 「もう一仕事?父上、意味が分かりません」 「あぁ、大丈夫。龍也が分かる必要はないんだよ。龍也はね。その子を抱いて、子供を作ればそれでいいんだ」 「…………は?」 待て。待て待て待て。今父上は何を言ったんだ?理解出来ない。 目の前にいるのは本当に父上か?確かに父上はいつも突拍子もない事を言
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第十五話⑧ ※※※

夢を見た。 何時もの襲われそうになった時とか殺されそうになった時の夢じゃない。 前世で学生時代にお母さんのお見舞いに行った時の夢だった。こんな夢も珍しい。 『華、華っ、見て、これっ』 そう言ってお母さんは一冊の本を袋から取り出して、私の前に突き出した。そこにはエイト学園の年下組特集と書いたA4サイズの雑誌。 『お母さん?これ、どうしたの?』 『買ったのよっ、通販でっ』 どやっ! 胸を張って病院のベッドの上で仁王立ちして言う事だろうか? …まぁ、お母さんが楽しそうならいいけど。 私は持っていた花瓶をベッドの脇にある棚の上に置いて、ベッドへ座るとお母さんもストンとベッドに座ってその雑誌を開いた。 『結構マイナーなゲームなのに特集組まれるって凄いよね』 『そうよね~。パラメータ系のゲームってキャラクターの裏事情ってあんまり作りこまれてないじゃない?でも、このゲームって裏設定までしっかりと作りこまれてるのよ』 『そうなの?』 『そうなのっ!お母さん、どうしてもこの年下組の情報が知りたくて買っちゃったっ』 『なんで年下組?』 『それがねー。この申護持陸実、申護持海里、申護持空良って同じ施設で育ったって言う設定じゃない?』 『うん。そうだったね』 『でもゲームだとそこしか出て来ないのよね。一緒に部活頑張って、三人の内一人を落とすとなると二人の友好度もMAXにしなきゃならないけど、でもそれだけで。スチルだって一緒に部活してるシーンとか後はデートと学校イベントしかないじゃない?』 『うん』 『それだけだと何かこうっ、物足りなく感じちゃってっ。だから、どんな風に育ったのかなーって調べてみようと思ったのよ』 『あー、なるほどー』 お母さんと二人、雑誌のページを開き、その特集ページを読みこむ。 まずは定番の情報。誕生日…あれ?誕生日皆一緒なんだ。血液型も一緒? えーっと、『バラバラの施設で育てられていた三人ですが、一度同じ施設に引き取られ、そこが経営者の行方不明事件により潰れてしまい、また各々別の場所に引き取られます』か~。成程。それから?『それでも三人は同じ施設で育った仲間。名前を捨てられず引き取られてからも申護持を名乗っています』と。 『へぇ。そうなんだぁ。でもなんで?』 『ねぇ、華?ここ。ここ読んで。この三人、実は三つ子みたいよ
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幕間3 金山

私の愛しのお嬢様を家へとお送りし、その足で行きつけのバーへと向かった。 車を駐車場に止め、飲み屋街の片隅にある看板も何も置かれていない入口の小さなドアを開けて、地下への階段を降りる。突き当りにあるドアを開けて中へ。一般のお客なんて殆どいない、隠れ家風なバー。中はそこそこの広さ。カウンター席とテーブル席が三か所。 カウンター席には既に二人の男が並んで飲んでいた。もう一人の方は想像がついていたとして。もう一人はまさか既にいるとは思わなかった。 「叔父さん。もう戻って来たんですか?」 「えぇ。そんな遠い距離でもないですしね」 ほっほっほと笑う叔父に目を細める。そんな叔父の隣へ座りマスターにウーロン茶を注文した。 「おや?お酒を飲まないのですか?翔子」 「えぇ。車で来ているので。そんな事より叔父さん。何時までその姿でいるんですか?このバーでは変装は禁止されています」 「ほ…?…あぁ、そうだったな」 ベリッと音を立てて、叔父さんはマスクを取り外した。今まで付けていたマスクである老紳士の顔の中から40前後のやたらと爽やかしい顔が出て来る。 「ふぅ…やはり素顔は落ち着かないな」 「叔父さんは素顔を隠し過ぎなんですよ。プライベートの時くらい素顔で歩けばいいのに」 「そんな事をしたらお嬢様や旦那様の要望に直ぐ応えられないだろう」 「まぁ、それは、そうですけど…」 そんな事を言ってるからこの叔父は何時まで経っても結婚できないのだ。 「それより、翔子。お嬢様はどうだ?」 「美しくて、可愛くて、お優しくて、私、幸せ過ぎて死んでもいいです」 お嬢様は神様です。言い切ると、呆れた風に溜息をつかれ頭を小突かれた。 「誰が、お前の感想を聞いている。お嬢様の様子はどうだと聞いているんだ」 あぁ、なんだ。そっちですか。 「……疲れ切って、帰るなり棗様がお部屋へと連れて行かれまして、ご一緒にお眠りになりました。その後、奥様と鴇様に事情をご説明なさりながら夕食をお取りになられてましたよ」 「……そうか。無事で良かった」 無事…無事と言えるのだろうか? お嬢様の大事な大事な唇を奪われたというのに…。 ピシッと持っていたグラスにヒビが入る。 「どうした?翔子」 「いえ。なんでもありません。ただ腹立たしさのあまり、グラスを握りしめてしまっただけです」 「…
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小話45 美鈴の馬鹿矯正授業

「ねぇ、美鈴ちゃん?本当に呼ぶの?」 僕はあんまり賛成したくない気持ちが強く、恐る恐る聞くと美鈴ちゃんは顔を上げて『うん』とハッキリ頷いた。 「でもね?あんまり男をこの学校に入れるのは…」 「解ってるよ~。でもね?私が何度も出るよりは良いと思うの」 「それは勿論そうだけど。それだけじゃないよね。って言うかそう言う問題じゃないよね?」 問題を変えられてる気がして僕はちょっと強めに抗議する。 すると美鈴ちゃんは横を向いてしまった。うぅ…最近美鈴ちゃんが抵抗する事を覚えてしまった。 ほっぺ膨らましてそっぽ向くんだから…これが、可愛いから質が悪い…。 「………よしっ。でーきたっ」 「何作ってたの?」 「カード」 カード? 確かに美鈴ちゃんの手元にはA4サイズの底が深めの箱がありその中には一杯のカードが詰まっていた。 一体何のカードをせっせと作っていたのか気になって、もっと詳しく見ようとした時、ガチャリとドアが開いた。 「王子ー。連れて来たよー」 夢子ちゃんが連れてきた馬鹿三人に僕は小さく溜息をついた。 来ちゃったものは仕方ない。 こいつらに釣られて僕の正体をばれないようにしないと…。 まぁ、元々顔は整っている方で夢子ちゃんのメイク技術で完全に女の子にしか見えないようにはなっているけれど。 馬鹿だからね。 何が起こるか分からないから警戒だけはしっかりとしておかないと。 「いらっしゃい、陸実くん、海里くん、空良くん」 微笑む美鈴ちゃんに顔を赤くする二人と眉を寄せる奴一人。 態々忙しい美鈴ちゃんが時間を割いてるってのに何?その顔。照れるのは美鈴ちゃんが可愛いから仕方ない。 「じゃあ、早速勉強しようか」 あらかじめ美鈴ちゃんは勉強を教えやすい場所、生徒会室で準備をしていた。 だってのにせっせと作っていたのはカード。 どう言う事だろうとずっと疑問に思ってたけど、今それが分かる訳だ。 「ついでだから、ユメも勉強しようね」 「うんっ!王子とならするっ!嫌いな勉強もするよっ!」 ……夢子ちゃん、ぶれないね。 美鈴ちゃんは生徒会室にある会議用の長机を二つくっつけて向かい合うように椅子を二脚ずつ。そしてお誕生席に一つ椅子を置いていた。 お誕生席に美鈴ちゃんが座り、美鈴ちゃんの右手側に海里くんと空良くん、反対に夢子ちゃんと陸実くん
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小話46 双子の交渉の発端~棗編~:美鈴中学一年の夏

「好きですっ!付き合ってくださいっ!」 夏休みに入る前は決まってこうやって告白の呼び出しが増える。 それは小学生になった時からずっとそうだったけど。 父さんが再婚してから。鈴が小学校に入学してから。大分減って来ていたんだ。 何故かって。それは周りからみたら一目瞭然な程に僕は鈴しか目に入ってなかったから。 それが中学に入って、鈴と言うストッパーが無くなった途端これだ。 そもそも、だ。 「ありがとう。でも、僕の何処を好きになってくれたのかな?」 聞くと、皆必ず。 「そ、それは、棗先輩はすっごく優しくて…」 こう答える。 僕は優しく何てないんだけどな…。 「以前転んだ所に手を差し伸べてくれて、それで…」 ……手を差し伸べた? 何時の話だろう…? まじまじと目の前の子の顔を見る。 ………全く見覚えがない。 「それは、本当に僕?葵じゃなくて?」 「そんなっ!間違える訳ないですっ!絶対絶対棗先輩ですっ!」 断言されるって事は、そう、なんだよね? こうやって好かれる可能性が高いから僕は基本的に女の子に手を差し伸べたりしないようにしてるんだけどな…。 僕がしない代わりに葵が良く差し伸べてるけど、それは葵が女の子相手にも容赦がないからで。 嫌いと分かったら女の子であろうと優しくなんてしてやらないのが葵だ。 その点、僕は基本的に人に優しくしない。頼られたい相手にだけ頼られているならそれでいい。 だからこそ、特に女の子には手を差し伸べたりしたりしないし、したらどんな子か覚えてそうなものだけど…。 正直全ッ然思い出せない。 「先輩?」 顔を覗き込まれて我に返る。 「あぁ、ごめんね。君の事が思い出せなくて。こんな状況で返事をするのは失礼だと思って必死に思いだそうとしてみたんだけど。正直全く思い出せないんだ。それでも、ごめん。僕の答えは決まってるんだ。僕には好きな子がいるんだ」 「妹さん、ですよね…?」 なんだ、知ってたのか。 なら、断るのも楽かな? 「うん。シスコンで気持ち悪いって思われるかもしれないけど、僕は妹が好きなんだよ」 「………それでもいい、って言ったら…?」 「え?」 「それでもいいんです。二番目でも三番目でもいい。棗先輩が好きなんですっ」 こう言うタイプは断り辛いんだよな…。 葵みたいに冷たくも出来ない
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小話47 夢子とトーク

「王子にはこれが似合うっ!絶対似合うっ!」 学校の敷地内にある売店には色んなものがおかれている。理由は簡単で敷地から僕達が出る事が出来ないからだ。 その売店の一角。衣料品売り場で僕と美鈴ちゃん、それから夢子ちゃんの三人で買い物に来ていた。 男の僕としては…ここで買うものは殆どない。 だから二人のショッピングを見守るしか出来ない訳だけど。とりあえず美鈴ちゃんが僕の事を思って下着売り場に行かないようにしてくれてるのは凄く優しいと思う。 「似合う、かなぁ?私にはちょっと可愛過ぎない?」 寮の部屋以外では葵兄の口調を真似してる美鈴ちゃんが首を傾げた。 夢子ちゃんが持ってる服は普段夢子ちゃんが着そうなチェック柄フリルのついたデニムのミニスカートだった。 似合うとは思う。似合うとは思うんだけど…その丈が兄達に怒られそうな長さだ。 「大丈夫似合うよっ!」 「で、でも…その…」 押し切られそうだ。美鈴ちゃんって意外と親しい人に押されると弱い所あるよね。 「んー…あ、そうだっ。これに七分丈のレギンス合わせようよっ。そしたらどう?」 「そ、それなら、いい、かな?」 やっぱり押し切られた。ふふっ。美鈴ちゃん、夢子ちゃんに弱いよね。 思わず口元に浮かぶ笑みを片手で隠した。 レギンスを見に行った二人の後ろをゆっくりと追う。すると背後を何人かの生徒が横切っていく。 「良くあんな顔して白鳥さんの横にいられるよね」 「そうそう。媚売って気持ち悪ーい」 「私達が肩身狭い思いしてるの、全部あの子の所為なのに」 これみよがしに僕に聞こえる様に去っていこうとする。 けど、そのまま言い逃げなんて出来る訳ない。何故かって?こう言う時の美鈴ちゃんは大抵、 「…肩身狭い思い、ねぇ?貴方達がユメを苛めなければこんな状況にはならなかったと思うんだけど?」 地獄耳で聞いているのだ。 美鈴ちゃんが僕の横に立ち、とりあえず僕も振り返りその女の子達と対峙する。 「徒党を組んで一人に向かってる癖に自分達がさも正義かのように。ほんとふざけてる」 ……美鈴ちゃん、殴らないよね?大丈夫だよね? 逆に夢子ちゃんがいてくれた方が良かったり…? 「私にしてみたら、ユメにあんな事しておいて良くぬけぬけとこの学校にいられるねって思うね。円もまだまだ甘いよ。…私が直々にB組全員を潰しても
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小話48 双子の交渉~鴇編~:美鈴中学二年の秋

「~~~っ、だから、鈴ちゃんは今すぐに転校させて家に帰って来た方が良いと思うっ」 「鈴にとっての利点を上げるならっ」 ……頑張るなぁ…。 これで何度目だ? 双子がこうやって佳織母さんに美鈴に関して交渉を挑むのは…。 でも、いくら挑んでも佳織母さんは自分の意見を曲げる事はない。 だから、今回も。 「却下。その程度の利点は美鈴には何の意味もないわ」 叩き斬られた。 「うぅぅ…」 「これでもまだ駄目かぁ…」 ぐしゃりとテーブルに崩れ落ちる双子。 「お前ら、いい加減諦めたらどうだ?」 見兼ねて俺が口を出すと、がばりと起き上がった二人が同時に俺の方を見た。 「鴇兄さんっ!兄さんも手伝ってくださいっ!」 「鈴を取り戻すんですっ!」 「……あのなぁ」 こいつら忘れてるんじゃないか? 俺は佳織母さんに賛成していたって事を。 「今日こそ佳織母さんを説得するんですっ!」 「懐柔してみせるっ!」 懐柔になってるぞ?それは説得とは意味が違う気がするが…? 「鴇兄さんっ!」 「兄さんっ!」 「………………鴇?」 悪いな、葵、棗。正直お前達のマジ顔の威圧より、佳織母さんに微笑みの方が余程恐ろしい。 なので逆らわないと言う意味を込めて佳織母さんに頷き、俺は双子に対して静かに首を横に振った。 「うぅ…」 「やっぱりこうなったら最終兵器を出してくるしかないよっ」 「そうだね…。この手は使いたくなかったけど…」 「言っておくけど、誠さんや母さんを出して来ても無駄よ?」 佳織母さんが先制をうつ。けれど双子はにやりと笑った。 「そんなことは解ってるよ」 「うんうん」 双子が勝ち誇った風に言うと佳織母さんが顔を顰めた。多分想像がつかないんだろう。 でも俺は直ぐに想像がついた。何故なら…。 「ただいまーっ!」 旭達が帰ってくる足音が聞こえたからだ。 「旭、蓮、おかえり」 「蘭、燐、おかえり」 『ただいまー、兄ちゃん達っ』 一気にリビングが騒がしくなる。 「ねぇ?皆?皆は鈴ちゃんに帰って来て欲しいって思うよね?」 一瞬首を傾げた下の弟達だったが言葉を理解した途端に目を輝かせ大きく頷く。 「じゃあ、佳織母さんに一緒にお願いしよう?」 葵、棗。お前達とうとうそこまで…。弟達を使ってまで美鈴を帰らせたいのか…。 ちょっと涙が
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小話49 桃とダンス

1、2、3…1、2、3…。 美鈴ちゃんと僕は生徒会室でダンスを踊っていた。 正しくは…。 「美鈴ちゃん、そこのステップ少し違う」 「え?え?ど、どこが違う?」 「そこはね…こう、やって、こう」 「えっと…」 美鈴ちゃんにダンスを教えている、だ。 だから僕と美鈴ちゃんは横に並んで、同じステップを踏んでいるのだ。 どうして僕が女性パートを踊れるのかと言えば、お祖母様が教えてくれたから。 『女性をリードするには女性パートを理解していなくてはっ』 と断言されたらもう逆らうのは無理な話だ。 「こう…で、こう?」 「うん。そうそう。それじゃあ一度合わせてやってみる?」 「うん。足踏んだらごめんね、優ちゃん」 「美鈴ちゃんに踏まれた所で痛くないから大丈夫だよ」 軽いから…ってのは飲みこんで置こう。 美鈴ちゃんに手を差しのべると、美鈴ちゃんは僕の手に手を重ねてくれた。 美鈴ちゃんがもう一方の手を僕の肩へと乗せたのを確認して僕は美鈴ちゃんの腰へと手を回した。 それからステップを確認しつつ踊っていると、生徒会室のドアが開いた。 「あら?」 「あれ?桃?どうしたの?」 ステップを止めずに入って来た桃ちゃんに美鈴ちゃんが問いかける。 すると直ぐにドアを閉めた桃ちゃんがにっこりと微笑み。 「書類の確認をと思って来たのですが。お邪魔でしたかしら?」 「ううん。大丈夫。でもごめんね。このステップだけ確認してもいいかな?」 「勿論ですわ。お待ちしてます」 途中で止める気はなかったんだね。 美鈴ちゃんと最後までステップを確認して動きを止める。 すると、桃ちゃんがそれはもうキラキラと憧れの眼差しで美鈴ちゃんを見ていた。 「素敵でしたわっ」 「あはは、ありがとう」 僕から離れて美鈴ちゃんは桃ちゃんの所へ駆け寄り書類を受け取った。 「あー…文体祭の予算編成かぁ…。これちょっと面倒なんだよねぇ…」 渋々美鈴ちゃんが生徒会長のデスクに乗っかってる自分のペンケースからシャーペンを取り出して、隣に置いていたメモ帳にカリカリと何か書き始めた。 「それにしても、王子も流石ですが優兎さんも凄いですわ。確か以前パーティで踊っているお姿を拝見した事がございますがその時よりも腕に磨きがかかっておりますわね」 「そう?だとしたら、それは…」 兄達の所為
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小話50 お説教

やられた…。 いや、俺が悪いのは知ってる。それは理解している。 流石にそれを理解しない程馬鹿ではない。 馬鹿ではないのだが…。 「そもそも龍也っ!相手の同意もなしにキスをするのは犯罪ですよっ!」 3時間も正座で説教を受けるとは思わなかった。それも…。 「そういうどうでも良い所を勅久から血を分けられたのかしらねぇ」 女二人がかりで。 うぅ…。足が痺れて感覚がなくなって来た…。 「龍也。本当に反省していますかっ!?」 「は、はいっ。してますっ」 じとっと睨まれる。 本意を探るかの様に真っ直ぐ見られている。 「……嘘ね。貴方、全く反省していないわね」 「そ、そんな事はっ」 「なら、美鈴さんが目の前にいたら抱き締めないでただ微笑むって事が出来るかしら?」 ……出来ない。 「ニッコリ笑って龍也先輩って呼ばれたらキスしないで我慢できるかしら?」 出来ない。 「美鈴さんがパジャマ姿で目の前歩いてたら押し倒さないで理性を押し込める事出来るかしら?」 しない。 出来ないじゃなく『しない』。 だってそうだろう? 据え膳食わぬは何とやらって奴で…。―――ガンッ!「痛ッ!?」 頭に衝撃が走る。 …目の前に母上のスカートが見える…って事は…。 そっと上を向くと怒れる母上の顔とその横に付属する拳。 「龍也…。ちっともこれっぽっちも反省してないようね…」 うんうんと椅子に座ってる明子さんまでもが大きく頷いている。 それを明子さんの子供の三つ子が楽しそうに見ている。 ……こうなってくると俺だけ怒られてるのは不公平じゃないか? 「母上。俺がこうして怒られてるのは美鈴に手を出したから、ですよね?」 「当り前でしょうっ」 「なら、そこの三人だってそうですよね。同意もなしにキスをしたんですから」 ビクゥッ!! 三人が分かりやすく飛び跳ねた。 「な、何で知ってっ!?」 「ぼ、ボクは電話越しだったしっ!」 「……………指先に、だけだ………」 どこであろうとしたことには違いないだろ。 「……陸実、海里、空良…。龍也くんの後ろにお座りなさい」 え?俺の後ろっ!? お、おいおいっ、お前らもスゴスゴと大人しく俺の後ろに三人並ぶなっ。 正座するなよっ! 「(お、おい。お前ら、何で逆らわないんだっ)」 「(出来る訳ないだろっ)
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第十六話① 文体祭

申護持の火事から始まった一連の事件も概ね片付き、残りの夏休みを実家で穏やかに過ごして。 私と優兎くんは二人で寮へと戻って来た。そこで私達を待っていたのは勿論っ! …生徒会の仕事の山だった。 「文体祭が終われば、全て次の生徒会へ引き継げるとは言え、流石にこんだけあると嫌になるよー…。ってこれー!これは私じゃなくて教師にやらせてーっ!何で教師の仕事まで私がやらなきゃいけないのよーっ!」 ペンを片手に次々と届けられる書類を見つつ私が叫んでいると優兎くんが苦笑しながら言った。 「文体祭が終わってないから、かな。皆各々の仕事に忙しいから」 ドサッと優兎くんが追加の書類を机の上に置いてきた。うわーん、また増えたー。 「王子ー。先公からこれ預かって来たぞー。交流日程表」 円が生徒会室のドアを開けて、その紙をぺらぺらと揺らした。 その紙を受け取り目を通す。文体祭の開催日が11月の第二週。木曜日に開会式兼前夜祭。金曜日に聖マリア女子中学校の文化祭。土曜日に聖カサブランカ女学院の文化祭。日曜日に聖マリア女子中学校と聖カサブランカ女学院の合同体育祭。そして月曜日に閉会式兼後夜祭だ。 他にイベントを作らないからって、何もこんなにひっ詰めてやらなくてもいいんでない? と思わなくもないけど。でもお祭りだしね。皆に楽しんで貰わないと…。で、えーっと、何だっけ。そうそう。合同でやるお祭りだから聖マリア女子中学校の生徒会長と交友しなきゃならないんだよね。 「あれ?来週なんじゃん?行くの」 後ろから覗き込んできたユメが私の首に抱き着きながら聞いてきた。最近ユメがやたら甘えただ。可愛いから許すっ! 「生徒会メンバーでまずはあっちの視察に行って、再来週はあちら側が来てくれるって感じだね」 「そのようだね。ってー事は、王子。その書類の束。今週中に片づけとかなきゃヤバいんじゃないの?」 「あぁ、うん。そうだねー…」 そう言いながら愛奈が更に書類の山を追加する。 「あ、そうそう。美鈴ちゃん。これ、鴇兄と誠さんからの封筒ね。あの事件の後始末と、仕事の書類だと思うよ」 ふっふっふ。更に仕事が追加で来ましたのことよ。優兎くんから渡された封筒の中を覗く。いつも通り鴇お兄ちゃんからの書類と書類風の手紙。あと誠パパから報告書、かな?これは。 報告書を取り出して内容を読みこむ。 「
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