All Chapters of 乙女ゲームのヒロインに転生しました。でも、私男性恐怖症なんですけど…。: Chapter 101 - Chapter 110

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第十六話② ※※※(鴇視点)

初めて美鈴の通う中学校の中を歩いてみたが、…当然と言えば当然だが女しかいない。 クラスの出し物を見に行けば、どうやら女子校でそれが適応されるのかは知らないが文化祭のド定番のメイドカフェだった。 美鈴が執事の恰好をしていたからてっきり執事とメイド両方いるカフェかと思ったら、優兎と美鈴しか執事の恰好をしていなかった。 大地がここは天国かと幸せそうにして、それに俺達が揃って苦笑していると。クラスの女生徒の一人が美鈴に近寄り、実はメイド服もあると問答無用で教室の外へと連れて行った。 暫くして戻ってきたが…。俺達は全員で顔を顰めた。 いや。可愛いは可愛いんだ。だが…。 「鈴。執事の方に着替えようか。そのメイド服、とっても似合ってる。似合っててとても可愛い。可愛いけどヤバいから着替えよう?」 「うん。僕もそう思う。制服でも今はヤバい気がするから、執事服が良いと思う」 双子が必死だ。だがその意見は俺達全員の総意だ。似合い過ぎててその恰好で校内を歩いたら確実に男の餌食になる。 男が怖い美鈴がそんな目にあったら…。それは絶対に回避だ。 双子が訴え続けると美鈴は頷いて教室を出た。 美鈴が元の執事服を着て戻ってくると同時に、 「美鈴ー?来たわよー?」 佳織母さんと親父がクラスに入って来た。その後ろには弟達もいる。 「わわっ、本当に皆で来たんだ…」 かぁーっと頬を赤らめる。気持ちは分からなくないな。 こういう学校行事って身内が来ると何でか気恥ずかしくなるんだよな。 「で、でも、嬉しい、よ?あり、が、とう…」 …うっ。…可愛いな。 俯き照れながらも、きちんと礼を言う美鈴に、堪らなくなった馬鹿三人が座っていた机を叩き、双子は美鈴に抱き着き、その隙間を縫うように旭と三つ子が抱き着く。 そんな息子達を弾き飛ばして、佳織母さんが美鈴を全力で愛でた。 「……イケメンパラダイス?」 「まぁ、間違いではない、かな?」 「ふふっ。王子、かーわいー」 「本当ですわね」 「なんだかんだで皆、美鈴ちゃんしか見えてないよね」 女子三人の呟きに慣れた突っ込みを入れた優兎。…優兎、女子校に馴染み過ぎてないか? 格好は執事服のおかげで男に見えるが、女に対するその切り返し。兄貴分として俺は少し不安になるぞ。 俺達は暫く美鈴と話していたが、気付けばクラスの中を覗き込も
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第十六話③ ※※※

―――文体祭四日目。 ……暑い…。 もう秋だと言うのに、何なら冬に近いってのに、だらだらだらだら汗が流れる。 何でかって?そんなのっ、 「この王子様衣装の所為に決まってるーっ!」 うがーっ!! いきなり叫び出した私に、優兎くんを始め生徒会メンバーが盛大に飛び跳ねた。 昨日の文化祭も無事に終わり、残すは今日の体育祭と明日の後夜祭だけ。 学校対抗だから、生徒会長がチームリーダーなのは分かるよ? うちの学校が白組で団長が私。カサブランカは要するに白百合のことだから白組なのは良く解る。 でもね、でもね?何で王子なの? 髪は結い上げてポニテにしてるけど、あとはきっちりのどまである襟首のボタンをしめてるし、足はスラックスだから暑いのなんのって。しかも立派なマントが保温効果をアップ。 暑いよー…暑いよー…。 「美鈴ちゃん、しっかり…」 「優ちゃん、その従者服、似合ってるねー…。皆の騎士服も似合ってるよー…」 「王子。しっかりしろ。目が死んでるぞ」 ゆっさゆっさっ。 円に肩をつかまれ、揺さぶられる。あんまり揺らされると暑さと相まって吐くー…。 中学に入って、基本的に体力を温存して動いてたけど、最近はそんなの気にしてられなくて。しかも食欲が全然わかなくて…。実は今日も朝を抜いてきた。優兎くんにばれないようにこっそり。胃の中は空っぽなのになぁ…。あ、ダメだ。意識したら吐き気が復活する。 「にしても何で、私達は男装なのに、円達は女騎士なの?」 「仕えてる感出す為じゃない?でも、円ちゃんの女騎士姿、似合い過ぎじゃない?」 へそ出しでも腹筋が鍛えられてるとカッコいいです。円はパンツスタイルの騎士かぁ…うん、似合う。 ユメはロングスカートスタイルの騎士。愛奈はタイトなミニスカスタイルの騎士。それから桃は忍者スタイルの騎士。どれも皆に似合っててカッコいい。しかもっ、どれも皆涼しそうっ! 羨ましい…。 「ねぇ、美鈴ちゃん。私、アスコットタイしなくてもいいかしら?」 「許さんっ!一人だけ暑いのから逃げようとするなんて許さないもんっ!」 「やっぱり…?」 「それに優ちゃん、つけなれてるでしょっ。仲良く苦しもうねっ」 「美鈴ちゃんってば、こういう時だけいい笑顔するんだから…」 良く考えたら体操着で良いじゃんっ、って今言った所でもう遅いよね。
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小話51 聖マリアの文化祭

「聖マリアの文化祭へようこそー。こちらがパンフレットでございます」 「ありがとう」 渡されたパンフレットを僕は受け取り、校門をくぐる。 その後ろを同じようについて来た桃ちゃんと夢子ちゃんが僕の横に並んだ。 「聖マリアって初めて入ったけど、凄いね」 「そうですわね。……ここに菊お姉様がいらっしゃるのですね」 二人の全く別方向の反応に僕は苦笑する。 でもそれも仕方ない事かなと納得も出来る。 夢子ちゃんにしたらこの学校に欠片も興味なかったっぽいし、桃ちゃんにしてみたら最大の敵がここにいる訳だし。 僕達は真ん中にいたら邪魔だろうし少し横にそれてパンフを開く。 えっと内容的には…一般的な文化祭と違いはない、かな? 「優兎さん。こちらを…」 そう言って桃ちゃんが体育館を指でさした。 えっと…演劇部の舞台があるんだね。…?、主役が吉村百世?本気? 「相変わらず脳味噌お花畑なお姉様ですわ」 「桃ちゃん…。一応ここ敵陣だから」 「あら?私としたことが。うふふ」 「…とりあえず、情報収集しようか。演劇部は開演まで時間があるから最後に見る事にして。他の情報を仕入れましょう。仕入れるのは聖マリアの投票状態と吉村百世の事ね」 本当ならバラバラに調べに行きたい所だけど…。 「もういっそお姉様の息の根を…」 「王子の事悪く言ってる人がいたら…」 ……うん。駄目だ。野放しに出来ない。 「じゃあ早速行こう。まずは一番繁盛してそうな所へ行きましょう?」 僕の言葉に二人は頷いた。 校舎内に入る。 もうすっかり慣れたと思っていたけれど、こうして改めてこの状況になると不思議な気分になる。 廊下を歩くときゃあきゃあと黄色い声と一緒に人垣が割れて行く。 鴇兄や双子の兄達とはレベルが違うけど、可愛い女の子が一緒だとやっぱりこうやって道が出来るんだなと改めて思う。 ……自分も女子の恰好をしていると言うのはこの際置いておく。 一番人気の教室へと入った。女子の渦だ。 「色んな種類のクレープがあるらしいよ?」 「へぇ」 「お持ち帰り出来るのでしょうか?」 「出来るなら美鈴ちゃんにお土産にしたいね」 僕達はその出店の列に素直に並ぶ。 そして会話に耳を傾けた。「今年の文化祭。超つまんない」 「だよねー。私達準備とか何もしてないし。開催宣言される前まで
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小話52 鉄槌

「さて。龍也。君がここにいる理由は解ってる?」 正直解ってると答えたくない。 いや、そもそも何であいつを助けたのに俺は白鳥家の葵の部屋で正座させられてるんだ。 何か納得いかないんだが…。 「……龍也?」 あ、ヤバい。葵の声が更に低くなった。 「い、いや。その…俺は美鈴を助けに行っただけで」 「うん。それは聞いたよ。まぁ、正直それを僕に教えてくれれば、『僕と棗』が助けに行ったけどね。僕達に知らせずに独断で行ったのはどうしてかな?」 「じ」 「時間が惜しくてとか、そんなありふれた言い訳はいらないから」 おい。先に俺のセリフをとるなっ! くそっ、なら。 「綾小路菊は俺に惚れてた。だったら俺が直々に引導を渡してやった方が良いだろ」 「別に、引導を渡すのはその後でも良いでしょ。僕達が鈴ちゃんを助け出してから、君が『個別』に渡せば良かっただけの話で」 うっ…。 これも駄目か…。 「葵様。一つ宜しいですか?」 「なに?真珠さん」 「恐れながら申し上げますが、龍也様は隙あらばお嬢様に抱き着こうとなさったり、キスしようとなさったりとしておりました」 「ちょっ!?」 「引導はあくまでもおまけ。あくまでもおまけだったと思われます」 …二回も言わなくていい。 「お嬢様はあくまでもおまけだったと思われますっ」 ダメ押しまでするか…? これは本格的に雲行きが怪しくなって来た…。 ばれない様にこっそりと葵の様子を窺う。 ………げっ。 葵の背中に鬼神が見える。 「……龍也。選択肢をあげよう」 その選択肢って必要な選択肢か? 二つある選択肢二つとも死に直結とかじゃないよな? 「一つ目は、今僕に殴られる。二つ目は今ドアの外で事情を聞いている棗に殴られる。三つめは鴇兄さんに判断を委ねる。四つ目は僕達の父さんに事情を話して叩き斬られる。さ、どれがいい?」 ニッコリ。 その笑顔が完全な曲者だ。 正直どれを選んでも痛い。 痛過ぎる。 とりあえず四つ目は除外だ。本当に日本刀や剣を持ちだして叩き斬られそうだ。 娘のいる父親はヤバいって相場が決まっている。 次に順当に行けば一つ目、二つ目の選択肢を除外する所だが…いかんせん、一番安パイっぽそうな三つめが一番冷汗が流れる。 「…因みに、選択肢五つ目で、このまま俺を家に帰すってのは…?」
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小話53 弟達の争い

「えっと…持つ物はこれで全部、かな?」 「お姉ちゃん、僕も持つよっ!」 『僕達もっ!』 「ありがとう。じゃあ、こっちの箱を頼んでも良~い?」 『はーいっ!』 凄い大荷物…。持ってるのは、洋服、おもちゃ、あと沢山の問題集?更には食材? 何となく美鈴ちゃんが今日何処に行こうとしてるかは解ったけど。 先週あんな事あったのに、行こうとするんだから美鈴ちゃんらしいと言うか何というか…。 「じゃあ早速行こっかっ」 『おーっ!』 旭達と玄関へ向かう…ってちょっと待って待って。 「美鈴ちゃん、ストップ」 「?、なぁに?優兎くん」 う…。可愛いけど、そのキョトン顔は駄目だよ。 どうして呼び止めたの?みたいな顔してるけど、良く考えて? 「……旭達とだけで行くの?本当に大丈夫?」 「……あ」 「あ、ってもう、美鈴ちゃんは。…僕も一緒に行くから待ってて」 「え?でも、…いいの?優兎くん」 「うん。特に予定もないしね。ごめん、お財布と携帯持ってくるから待っててくれる?」 「うんっ。ありがとう、優兎くんっ」 僕は一旦自分の部屋に帰るために美鈴ちゃん達と別れて白鳥邸から渡り廊下を使い自分の家へと戻り自室で財布と充電中の携帯を持って自宅から外へと出る。 お祖母様は数日留守にするって言ってたから…鍵をかけないとね。とは言え、この家は白鳥邸と繋がってるから鍵をかけずともセキュリティは万全だとは思うけど。 この家に盗みに入るのは結構至難の業だよ、うん。入った瞬間金山さん達にタコにされるんだろうな。 自宅を出て鍵をかけて、真っ直ぐ庭を経由して隣の家の敷地へ入って玄関へ行くとドアをノック。 すると待つ事なくドアが開いて、美鈴ちゃん達が出て来た。 旭達も皆袋だったり箱だったりを担いでるけど…美鈴ちゃん、その大荷物は何? リュックに鞄に紙袋にビニール袋。両手と背中に一杯担ぎ過ぎでしょう。 「美鈴ちゃん。その両手の荷物と背中の、貸して。僕が持つから」 「え?でも、重いよ?」 「だから持つって言ってるんだよ。ほら、貸して」 「あ…。うん。ごめんね、優兎くん。ありがとう」 「どういたしまして」 笑顔で答えて荷物を預かる。…結構重いな。兄達だったら何の問題もなく軽々持ちそうだけど、僕には結構ハードルが高い、かな? 持ち方を考えてしっかり抱えると、僕達
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第十七話 計画の結果3

……ふぅ。 溜息しか出ないよー…。 女子校に行けば攻略対象に合わなくて済むと思ってたのになー…。 ママの部屋のパソコンに向かって私はもう一度溜息をついた。 「美鈴。溜息は幸せが逃げて行くわよ。光の速さで」 「光の速さでっ!?」 それは困るっ! 光の速さってみんな知ってるっ!?滅茶苦茶速いんだよっ!? ……知ってるか。常識だもんね。 それよりも、毎回恒例の、今回も思い出した事を書き連ねて行こう。 えーっと、まずはー…ライバルキャラからかな?新田愛奈(にったあいな) 未正宗(ひつじまさむね)の好感度を上げると出現するライバルキャラ。中学の時化学にハマりこよなく実験を愛するようになる。小学校の時未を好きになり告白をしているがフラれて、高校で再会し、また恋に落ちる。向井円(むかいまどか) 巳華院綺麗(みかいんきれい)の好感度を上げると出現するライバルキャラ。中学の時強くなるために一心不乱に修行し、強さを極めた最強女子。小学校の時巳華院を好きになったが、自分より強い人が好きと豪語した巳華院を打ち負かす事が出来ずその想いを諦めようとした。だが最強になった状態で高校で再会し、また恋に落ちる。一之瀬夢子(いちのせゆめこ) 風間犬太(かざまけんた)の好感度を上げると出現するライバルキャラ。中学の時に自分が可愛いことを知りぶりっ子をするようになった。小学校の時、施設育ちだと知っても変わらぬ態度をとってくれた風間犬太に惚れるが、視界に入る事なくその恋を一度諦めたが高校で再開し恋心が再燃。猛アタックを開始する。綾小路桃(あやのこうじもも) 近江虎太郎(おうみこたろう)の好感度を上げると出現するライバルキャラ。中学の時様々な重圧に体が弱まっていく中、婚約と言う形をとって自分を助けてくれた虎太郎に絆されるものの、虎太郎は自分の家に対する義理だったと知りその恋心を覆い隠す。だが高校でやはり諦められないと虎太郎に思いを告げる。って事なんだけど。やっぱりちょこちょこ現実と誤差があるよね。 病弱設定の桃なんて今じゃ健康そのもので毎日を楽しそうに過ごしてるし。 あ、そうそう。それからライバルキャラ四人の友情エンドへ行く為の必要パラメータがこれ。新田愛奈 必要パラメータが理系。主人公の他パラメータより理系が高ければいい。本人の好みの恰好はBS(ボーイッシュスタイル)。
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第四章 高校生編 第十八話 ゲーム本編スタート

私、白鳥美鈴。高校一年生。性格は、そうだなぁ。ちょっと早とちりしやすいけど、自分では結構気さくな性格だと思ってるヨ☆。あ、あと、ちょっとドジな所もあるんだ。それでね?今日は必死で勉強をして受かった高校。憧れのエイト学園の入学式。友達出来るかなっ?恋人も出来るといいなっ!新しく始まる生活と恋の予感っ☆よーし、今日から頑張るぞーっ!………なーんてプロローグから始まる入学式。正直、そんな心境になれる訳ない。どっちかって言えばとうとう始まってしまったって言う方が正しい。だって本当はね。聖カサブランカ女学院の姉妹校に進学するつもりだったの。そこに進学したら、乙女ゲームから逃れられるチャンスじゃないかと、そう思ってね。けどヒロインに対する補正はそんな生易しいものじゃなかった。良く小説やアニメで見聞きする【ヒロイン補正】って奴は、悪役令嬢やライバルキャラにとっては抗うべき対象だって認識だったから、逆に言えばヒロインにとってはヒロインの行動を後押しするものだと思ってた。でも良く考えたら、そんな小説などで出てくるヒロインちゃん達は物語の流れにそって進むから背中を押して貰えるのであって、私みたいに流れから外れようとする人間には強制力となってしまうらしい。今まで色んなヒロイン補正を感じてきたけど。今回ばかりはその補正する強制力を強く感じた。エイト学園への入学。全く抗う事が出来なかった。それこそ去年の、文体祭が終わった後の事だった。※※※文体祭が終わった翌月。書類やら引継ぎやらで追われていた私達がようやく一段落した時突然学園長室に呼び出しをかけられた。生徒会メンバー全員で呼び出され、流石に何かやらかしたっけと皆、各々脳内で過去の記憶に検索をかけまくる位には動揺していたと思う。生徒会長だった私は代表でノックをして一番に学園長室へ入る。すると学園長がそれはそれはもう良い笑顔で出迎えてくれ…うっわー。これ絶対何かあるわー。そんな私の嫌な予感は見事的中した。「貴女達を呼び出したのは他でもありません。進学の事についてです」「進学?」「まずはこちらを渡しておきますね」そう言って手渡されたのは、エイト学園の入学案内と学校説明のパンフレット。更に嫌な予感がして、ついーっと背中に冷汗が流れた。「それから、こちらも重要な書類です」渡されたプリント。
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第十九話① 風間犬太

「たのもーっ!!」教室のドアが盛大に開かれた。 HRが終わり、いざこれから部活動に行こうと皆が動き始めた最中の道場破り。 実際に道場破りな訳じゃないよ?ただ雰囲気的にそんな感じがして言ってみただけ。 それは良いとして。 ドアの所に立っている男子生徒がきょろきょろと辺りを見渡し、そしてその瞳が私を捕らえた。 むむっ!?もしかして狙いは私っ!? ずかずかと教室の中に入って来て真っ直ぐ私の方に向かってくるっ!? う、嘘でしょっ!? ど、どこか逃げる場所っ!? もしくは一緒に対応してくれる誰か…うわぁんっ! 皆部活に行っちゃってるよーっ! 捕まる前に逃げなきゃっ! 私は咄嗟に鞄を掴み距離をとるように走って、その子が入って来た反対側のドアから教室を出た。 「あ、ちょっ!?」 何か言ってるけど、知らないっ! 階段を駆け登って、三階の生徒会室へと走る。 本当なら一階の部室へ行くべきなのだろうけど、鍵を開けるのに時間がかかるし、逃げ場をそうそうに発見されるのも嫌だ。 それに生徒会室ならお兄ちゃん達がいる。 生徒会室の前に辿り着き、失礼だと思ったけどノックもせずにドアを開けてすぐさまドアを閉めた。 「鈴?どうしたの?」 「鈴ちゃん?」 お兄ちゃん達が私の存在に気付き心配そうに駆け寄って来てくれた。 うぅ…お兄ちゃん達の安心感。半端ない。 棗お兄ちゃんが頭を撫でてくれたので、遠慮なく抱き着いた。 怖かったよぉ…。 流石に口に出す訳にはいかないからぎゅむっと棗お兄ちゃんをきつく抱きしめる。 そんな私の様子を不審に思った棗お兄ちゃんと葵お兄ちゃんが心配そうな顔して私を見てきた。 「どうしたの?何があったの?」 「鈴ちゃんに何かしたやつがいたのなら、僕達が制裁してあげるから詳しく教えて?」 「……お前ら。美鈴に甘過ぎだろ」 樹先輩の声がした。生徒会室で生徒会長がいるのは当たり前だよね。すっかり忘れてたけど。 「でもまぁ、気になるのも分かる。んで?何があったんだ?美鈴」 樹先輩にも促されて、私はさっき教室に突撃をかましてきた男子生徒の話をした。 「………そろそろ命知らずの奴が出てくるだろうなと思ってはいたが…命知らず通り越してただの愚か者が出て来たか…」 「安心して、鈴ちゃん。僕達がちゃんとしばき倒しておくから」 「うん
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第十九話② ※※※

「華…。起きないと帰る時間逃しちゃうわよ。華」 ゆさゆさと何かに揺さぶられている。 何かなんて言うまでもないお母さんだ。 でも本音を言えば、まだ寝ていたい。お母さんの側にいたい。 最近お母さんの顔色が増々悪くなって来ているのを知っているから尚更…。 こうやって寝たふりをしたら、こっそりと泊めてくれた事があったから今回もそうしたかったんだけど。 今日はお母さんが許してはくれなかった。 起こされて顔を上げると、いつも上半身を起こして私を見ている姿はなく、体を横たえて腕だけ伸ばして私の肩を揺する姿があった。 その姿を見てガバリと体を起こし、ペタペタとお母さんの顔や首に触れる。 少し熱い…。熱が、出て来たんだ…。 慌てて私が医者を呼ぼうとすると、お母さんは私の手を握って止めてゆるく首を振った。 「大丈夫よ。そこまで酷くない。でも、今日はあと眠って過ごすから…華は明るい内に帰りなさい。それと次に来る時、何かお勧めのゲーム持ってきて頂戴。時代物の乙女ゲームは飽きたわ。出来れば学園物でよろしく」 「しっかりと次の注文まで付けるんだから。分かったよ。何か持ってくるから」 お母さんはこうやって本当に具合が悪い時は私にお使いを頼んで帰る様に促してくる。 …担当の医者に声をかけて行くべきかな…?『……お母さんを助けたかったら、君がどうすべきか、解るだろ?』あの医者の声を思い出して鳥肌が立つ。 今更この体を男にどう扱われようとどうでもいい。 けど、それと気持ち悪さは別物で。 ……ダメだ。声なんてかけられないよ…。せめてもの救いはお母さんにそんな目を向けていない事。ただそれだけ。 私が我慢しているうちはお母さんに何かしてくる事はない。だから…お母さんは大丈夫。 医者は、無理だけど看護師さんに声だけかけて行こう。 お母さんの担当の看護師さんに声をかけて、私は病院を出た。 そう言えば今日通販で頼んでたゲームが届く日だったっけ? スーパーで買い物済ませて早く帰ろう。 今日の食事の材料を買って直ぐ帰宅する。 ポストに入ってた矢印がニヒルな笑みを浮かべているマークの入った小さな段ボールを取り出してマンションの玄関を抜けて中に入る。 家へ帰って電気を点けて、手早く着替えて、なるべく節約を考慮した晩ご飯をお腹に入れちゃって。 早速ゲーム機を取り出し
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第十九話③  ※※※(犬太視点)

「あんたの所為でオレは振られたんだーっ!!」 女子クラスの教室へ飛び込んで宣言する。 だってそうだろっ!オレは夢子の為を想ってずっとずっと行動して来たのにっ!! こいつの所為で一気に駄目になったんだっ!! だからオレは間違ってないっ!! 女子クラスの教室のドアをこじ開けて、王子とか呼ばれて威張りくさった女を指さして睨み付けた。 「全部アンタの所為だっ!!責任とれよっ!!」 「……凄い。王子の言った通りだった…。恋人関係じゃなくなった」 「感動してるとこ悪いけど、イチ。こいつ、誰?」 「誰?だとーっ!?ついこの間ゲーセンで会った事も忘れたのかっ!?」 ビシビシッ!! 何度も人差し指を突きつけて訴える。 ゲーセンで会ったばかりだと言うのに忘れてるとは何て馬鹿な奴なんだっ!! 「…いや、それアタシじゃねーし。って言うか、キャンキャンうるさい。女か、アンタ」 「何だとっ!?」 「まっ、いいや。取りあえず、黙っとけ」 「うぐっ!?」 女が男にアイアンクローかけるか、普通っ!? って言うか体もデカけりゃ手もデカいのかっ!? 「んで、イチ。ホントにコイツ誰?」 「私の幼馴染…の勘違い馬鹿」 「勘違い馬鹿?…あー、分かった。あんたがこの前イチと王子が話してたあれかー。納得。ってー事はー、王子が来る前にコイツは持ってった方がいいな。アタシ、次の授業ふけるわ。華菜、あとよろしく」 「はいはーい」 何だ?一体どうなったんだ? 「よっこいせっと」 「おわぁっ!?な、なにすんだっ!?」 「いいから犬は黙ってろ」 お、お、女の癖にオレを楽々肩に担ぎあげるとか、な、何だよ、この怪力っ!? 「お、おろせぇっ!!」 「はいはい」 暴れてもビクともしねぇぞっ!! さ、流石王子と言われてるだけの事はあるなっ!! けど、オレは負けないっ!!夢子の愛を取り戻すんだっ!! ………にしてもコイツ、オレを何処に連れて行こうとしてんだ? 廊下をこうやって堂々と歩かれるとオレ…すげぇ目立って幸せなんだけどっ!? ついつい笑ってる奴らに手を振りたくなるよなっ!? 「よし。ここならいいだろ」 足が止まった。ここ何処だ? キョロキョロと担がれたまま辺りを見てみるが全然見覚えがないっ! 「てめぇっ!オレを何処へ連れてきやがったっ!」 「何処って
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