All Chapters of 乙女ゲームのヒロインに転生しました。でも、私男性恐怖症なんですけど…。: Chapter 121 - Chapter 130

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第二十三話① 四聖(ライバル)の恋

何かが口の中に突っ込まれた。 寝てる人間の口の中に液体を入れるってのは、大変危険な行為だと思うんです。 なーんて言えたら苦労はしないんだけどね。 って言うか、何飲まされたんだろう? 無味無臭?って言うのかな。 そう言えば、この前も何か飲まされたよね。 愛奈達が作った薬だって言ってたけど。今回もそれかな? それで体が小さくなったのが治ったんだっけ? あれねー。苦労したでしょーとかお見舞いに来た円達に言われたんだけど、正直全然苦労してない。 だって感覚的にはここに引っ越して来た当初な訳でして。 その時には既に中身は…ってな訳でして。 やー、全然平気だったんだよねー。 あ、でもさ。小さくなってる間は、家の中に女の子以外は呼ばれなかったね。 樹先輩とかお見舞いに来たけど、葵お兄ちゃんに蹴り飛ばされて、誠パパに叩き斬られそうになってたってママが言ってたし。 近江くんに至っては、金山さんと誠パパのダブルアタックに加えて旭達の総攻撃にあって、庭に逆さ吊りでつられてたらしい。 何もそこまでしなくても…。 と思って、棗お兄ちゃんに言ってみたら、もしかしたら、命を落としていた可能性もあるのに、そんな状況に陥らせた相手を目の前に黙っていられる訳がないと逆に説教されてしまいました。 ……その通りと言えばその通りなんだけどさ? でも、逆さ吊りも十分命を落とす可能性があるのではなかろうか?と思ったり思わなかったり…。 体が小さくなった事で大分皆に迷惑かけたみたい…。 後でお詫び考えとかなきゃ。うんうん。 あ、何か体が軽くなって来た。 これは目も開けれるのでは…? よしっ…少しずつ…開けてみ、「………王子。効いてる、よね?」るのはちょっと止めた方がいいかもしれない。 え?でも今聞いてるって言った? 目、開けた方が良い?どっち?判断に困るんだけど。「薬、効いてなかったらどうしよう…」 あ、そっちの効いてるなのね。良かったわー。ホッとした。 でもこれじゃあ、目が開けられないよね?「王子。私がした事聞いたら呆れる?怒る?………嫌われちゃう、かな?」ユメ?この声はユメだよね? 泣きそうな声してる。どうしたの? 私がユメを嫌いになる事なんてないのに。 どうしてそんな泣きそうな声で呟いてるの?何があったの? ……でも私が今ここで起きた
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第二十三話② ※※※

文化祭が無事に終われば、あとに待っているのは勿論期末テストと冬休みである。 今回は特に大きな騒ぎもなく、問題もなく期末テストを迎え、順調に学年首位を獲得。 次席は華菜ちゃんと優兎くんの接戦だったみたい。逢坂くんがもう追い付けないとぐったりしてたけど、大丈夫っ。追い付けるよっ!逢坂くんならイケるっ!! って応援したんだけど、増々遠い目をされちゃいました。解せぬ。 樹先輩が追い打ちをかけてやるなって言うんだよね。どーしてー?凡人の気持ちは凡人にしか解らないんだってさ。樹先輩にだけは言われたくないセリフだよね、それ。 って訳でもう12月になるわけですが。 エイト学園に入学してどうなる事かと戦々恐々としてましたが、あれ?案外平気だった? 回避出来ないようなイベントにはぶつかってきたけど、それだって基礎知識があるなしでだいぶ違うし。違ったし。 今は結構平和だよね? ママが油断するなって言ってたけど、同じくそんなママの口から命に関するイベントはもうないって言われたし。 ……そもそもが命に関するイベントがあるってのが、おかしいんだよね。 普通の乙女ゲームって命に関する事ってある?ないよね? 私このゲームって至って普通の乙女ゲームだって思ってたけど…至って普通か?これ。 いや、でもな。乙女ゲームって一口に言っても結構種類あるよね?特に今流行ってる異世界転生風の小説やアニメ、ゲームとか、他にもファンタジー系の乙女ゲームって完全な中世ヨーロッパ風の世界に飛ばされたり転生したりするじゃない?あぁ言う世界の場合って普通に魔物とかいるじゃん?死とは隣合わせだよね?じゃあ普通なのかな? でもさ、これはただの学園乙女ゲームでパラメータゲーム…の筈なにのどうしてこんなに危険な事が多いんだろう…? こうなってくると、自分の脳内フィルターが恨めしい。 ちゃんと思い出したいのに、どれも中途半端。 終いには春頃にユメ達と遊園地に行った記憶の一部がなくなると言うフィルターが取れるどころかかけられると言う、逆の現象が起こる始末。どゆこと? そう言えば、その遊園地の後から、私の男性に対する恐怖心って言うのが少し薄まっている気がする。 徐々に回復傾向にあった事は確かだった。けど、文化祭でステージに立った時もそうだったけど、男の人の視線を一杯受けても、叫びもせずに立っている事
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第二十四話 計画の中間報告

どうしてこうなった…。 高校生になって本編に入り、色々あったけど概ね平和に過ごしている。 それはいい。 それはいいんだけど…。 予想外の事があった。 それは、『同級生組の四人が、四聖と恋人同士になったこと』である。いや、元々はライバル関係にある存在だったんだからおかしくはない。 おかしくはないんだけど、どう考えても組み合わせがおかしい。 確かに、ゲームプレイ中は何度も思ったことがある。『彼女達はこんな相手じゃ報われない』と。それはもう何度も思ったよねっ! 事実、四聖は彼らに惚れていたと言うよりは依存していたって方が正しくて。 一人になる恐怖と戦っていたようなものだったんだよね。 その証拠に、愛奈は団体行動を苦手だから、未くんみたいな何も言わずに側にいてくれる人を望んだ。 円はヤンキーのような容姿や態度から遠巻きにされていたから、巳華院くんのような自分にしか興味のない、円を恐れない人を望んだ。 桃は両親や姉に監禁されて、体や精神が蝕まれて行ったから、近江くんという最後に残された家族、友達である唯一の人を望んだ。 夢子は既に親兄弟はなく常の孤独がついて回っていたから、風間くんみたいに全てを吹き飛ばしてくれる明るさのある人を望んだ。でも、四聖の皆はその障害を乗り越えて、強さを手に入れていた。 そうなって成長した彼女達が望んだのは、自分とは別のタイプの男性だった。愛奈は皆といる楽しさを知った。団体行動の苦手を克服した。そして広がった視野で見えてきたのは自分では手にする事の出来ない能力を持った男の子―――近江くんだった。 円は自分の容姿と向き合う事を覚えて、それを乗り越えた。そして出会ったのは自分を女として見てくれる初めての男の子―――風間くんだった。 桃は綾小路と向き合う覚悟を決めた。一人で戦う覚悟を持った、それでいて自分の位に並び立つ心の強い利用出来る政略結婚相手を探していた。そして見つけたのは桃の好みドンピシャの男の子――巳華院くんだった。 夢子は親や兄弟がいなくても孤独じゃない事に気付いた。そして、そんな夢子の孤独に気付いてくれた孤独な男の子がいた。その男の子が―――未くんだった。本来はきっと惚れたりはしなかったであろう相手だ。 ゲームを見るとそれは顕著に分かる。こう言うゲームだと類友現象と言うか、似たキャラ同士で
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第五章 全面対決編 第二十五話① 透馬の油断

「嘘っ…なん、でっ!?、どうしてっ…!?」 思わず私の口から出た言葉に四人の男が不気味に微笑む。―――追い詰められた。――――私はここからどうやって逃げたらいいっ!?私の脳内は、逃走路の確保と男性への恐怖と男性だの関係ない純粋な恐怖で、大混乱を起こしていた…。 ―――数刻前。のんびりとした時間。 四聖の皆が各々恋人をゲットしてからと言う物、とても平和な日々を過ごしていた。 気のせいかもしれないけれど、私の男性恐怖症もなりを潜め、もしかして治りつつあるのではないかと希望が見え、双子のお兄ちゃん達や樹先輩、猪塚先輩が学校を卒業しても、日々の学校生活は平穏無事に過ごす事が出来ていた。 入学出来るか不安だった陸実くん、海里くん、空良くんの年下三人組も無事エイト学園へ入学してきて。 なんのかんので楽しく高校二年の月日は過ぎて、私達は無事高校三年生に進級。 生徒会長になる事も出来たけど、余計なイベントを発生させたくない私は生徒会長を逢坂くんに譲り、副会長の打診もあったけどそれも優兎くんに譲り逃げ切った。 そしてただの一般生徒のまま修学旅行も皆で楽しんでこちらもまた無事に終わり、等々卒業エンドも間近になっていた。 もうほぼ私の私室ですと言わんばりの部室で今日も今日とて四聖の皆とお茶会をしていた。 「今日のおやつどうする?」 「はいはーい!チョコ系がいいでーす!」 「じゃあ、飲み物もココアにしよ」 「いいじゃん。アタシ、マシュマロ乗せようかな」 「なら今日はチョコパねっ!チョコフォンデュにしようよっ!」 「では果物とビスケットなどもあれば良いかも知れませんね」 四聖の皆と華菜ちゃんで本日のおやつを決めていた、そんな時だった。海里くんが勢いよく部室へ飛び込んできたのは…。「ちょっと。海。あんた入る前にノックしなさいってあれほど」 「今はそれどころじゃないんだっ」 出迎えたユメを押し退けて海里くんは私に向かって必死の形相で叫んだ。「鈴先輩っ!透馬兄がっ!!」一体何の事か理解出来なかったけれど、海里くんの表情を見たらそんな事言ってられない事態なんだと言う事は理解出来た。 だから私は海里くんの言葉を聞いた瞬間、皆が制止する声も聞かず走りだしていた。 走り出した私を追い抜いた海里くんが案内するまま、透馬お兄ちゃんのいるであろう場所へと
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第二十五話② ※※※(透馬視点)

(舐めた真似をしてくれるな) 泣いて抱き付いてきた震える姫を抱き返した時、俺の脳内を占めたものは怒りのみだった。 職員会議が終わって、美術部顧問として部活へ顔出した後俺は奏輔に次の授業の内容について相談をしに行こうとしていた。 一旦職員室へ教材を取りに寄ろうと職員室への廊下の角を曲がった所で、姫は俺の胸へと飛び込んできた。 その時点で既に姫の様子がおかしいのは解っていた。 何故なら姫がこんな不用意に校内を走る訳がないからだ。男と接触する可能性のある行動を普段の姫ならばことごとく避ける筈なのだ。 だと言うのに、こんなに全力で走って俺にぶつかり、更に弾き飛ばされ尻餅をつくなんて。普段の姫にはありえない。 しかも、しかもだ。 俺の顔を見て一瞬怯えを見せたかと思うと、直ぐに何かに安堵し抱き付いて号泣したのだ。 怖かったと。 ただ、そう震えて。 俺を離すまいと必死に抱き着いて。 こんなに怯えて…。 どこのどいつだ? 俺達の姫をこんなに泣かせた奴は…? ゆらりと怒りが沸き上がる。 けれど、今は姫を安心させるのが先だと、急いで七海の下へと連れて行き、姫を落ち着かせる事に専念した。暫くして俺から離れようとしない姫から詳しい話を聞くと更に怒りは膨らんだ。 (俺に化けて、姫を怖がらせて泣かすだと?……なにしてくれてんだっ!) 鴇を携帯で呼び出し、姫と共に帰らせて。 姫の友達も各々の恋人達に護衛任せ帰らせた。 そして俺は奏輔に相談する場所として決めていた、本来の目的地でもある大地のいる保健室へと向かった。 ガラリとドアを開けると、二人が既に厳しい顔で待ち構えている。 「透馬。そこ鍵かけてー」 「了解」 素直に頷いて鍵をかけ、俺はソファへと腰かける。 第一保健室と第二保健室の内装は一緒だ。女性教諭がいるか男性教諭がいるか程度の違いしかない。 俺が座ると向かいに奏輔が腰かけた。 「大体の話は聞いたか?」 「聞いた。にわかには信じ難いけどな。姫さんの様子はどうなんや?」 「鴇が来た事でホッとしたんだろうな。だいぶ落ち着いた様子だった。今日、悪夢を見ないといいが」 「…せやな。折角治りかかってきたのにな。男性恐怖症」 奏輔と二人顔を伏せる。 「透馬。ちょっと確認させろ」 「大地?」 珍しく口調が厳しいものになっている?キレかか
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第二十六話① 大地の失敗

「透馬お兄ちゃん。ご飯だよー?」 透馬お兄ちゃんが泊まっている客室をノックすると、数分も待たずに透馬お兄ちゃんがドアを開けて姿を現した。 「おお。わざわざありがとな、姫…とちまっこいの四人」 「ちまくないですっ」 「です!」 「ボディーガードっ!」 「なのっ!」 旭筆頭に私と透馬お兄ちゃんの間に割って入る弟達。これが滅茶苦茶可愛いんだよね。思わず頬が緩む。 「ボディーガードか。姫、随分立派なボディーガードだな」 「ふふっ。でしょう?」 透馬お兄ちゃんと一緒にリビングへと向かう。旭達には鴇お兄ちゃん達を呼びに行って貰った。 あれから数日。 特に何があった訳でもなく、普通に過ごしている。 でもいつまた透馬お兄ちゃんの偽物が出るかと思うと怖くて仕方ない。 ゲーム内のイベントじゃないから、ママも予測がつかないって言ってた。一人で行動しないように、とも。 ……迷惑、かけてるなぁ…。 私が男性恐怖症なんかじゃなかったら、こんな事にはならなかったのかな…。考えても仕方ない事なんだけどさ。 気持ちを切り替えようっ! まずは皆でご飯を食べて学校に行くっ! そうと決まれば朝ご飯を食べようっ! リビングに入ると、そこには既に席についている誠パパがいた。 「どうだい?透馬君。腕の調子は」 「あぁ、はい。だいぶ良いですよ。こんな数日で痛みが引けるとか逆に怖いですよ」 「ははっ。金山印だからね。でも体に悪い物は入ってないから」 「それは疑ってませんって」 誠パパが透馬お兄ちゃんの相手をしていてくれるので、私はご飯の準備です。 今日の朝ご飯はー、秋さんまの混ぜ込みご飯にー、出し巻き卵にー、お漬物にー、牛乳にー、味噌汁ですっ! 朝食を並べ終えると、起きてきた皆がリビングに入って席についた。 そこから朝食がスタートです。「蓮?おかわりは?」 「いるっ!」 「お姉ちゃん、僕もっ」 「蘭もね。燐は?」 「僕はもういいかな。あ、旭兄さん。醤油とって」 「ほい。あ、棗兄さん。この前の宿題でさ?」 「あぁ、悩んでたって言うあれ?それがどうかした?葵。それ鴇兄さんの卵じゃない?」 「あれ?あぁ、ほんとだ。ごめん、鴇兄さん。間違って食べちゃった」 「別に良い。俺は親父の食うから」 「って言いながら、鴇っ、俺のとってんじゃねーよっ」 「
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第二十六話② ※※※(大地視点)

―――ガァンッ!! ドアをぶち壊した。鍵なんかにいちいち構っていられるかっ!!ドアを破壊するように開けて、目の前にいる小学生を殴り飛ばし、そのまま意識を失って倒れかかった姫ちゃんを抱きとめた。 恐怖が強過ぎたのか…姫ちゃんは涙すら流していなかった。 全て、コイツの所為で…。 ぎりっと握った拳に力が入る。 「あなたは…。ちっ、面倒な奴に起きられましたねぇ」 オレが殴った時に歯の一、二本逝ったんだろう。 血を拭いながら立ち上がる。立ち上がらせる訳ねぇだろっ! 姫ちゃんを抱き上げて、手加減もなく渾身の力で蹴り飛ばす。「がはっ!!」骨が折れようが、血反吐吐こうがどうでもいい。 ―――消す。 倒れたそいつの胸を思い切り踏みつける。「……消えろ。消えて詫びろ。今度こそ、確実に消す」 「ハハッ」何で笑う…? 「死、なんて、全く、怖くないんですよぉ。残念、でした、ねぇ」 あぁ、成程。そう言う事か。 「ははっ」 思わず出た笑いに今度は足の下にいるこいつが訝し気に眉をよせる。 「残念だったな。オレは死ねとは言ってない。『消えろ』って言ったんだよ。今度こそ、『華』の前から消えて貰う」 「私を?消す?ハハッ、なんの、冗談、ですか?」 「冗談かどうかは後で確認したらいい」 足に力を入れると、ボキッと鈍い音がする。 子供の体なんて壊そうと思えばいくらでも破壊できる。 こいつの存在の消し方なんて知らねぇし、さっきの言葉はただのはったりだ。 だが、そうでも言って脅しておかなければこいつはまたやってくる。それだけは避けなくてはいけない。 「ぐっ…く、そっ!」 怪し気な気配を感じて、急ぎ退いて距離を取る。 「ま、ったく、いまいま、しい、ですねぇ。この、私、が二度も、人を、呼ばなくては、いけない、など」 骨が折れていると言うのにゆらりと立ち上がり、そいつは指笛を鳴らした。 すると、一気に気配が膨れ上がる。 周囲を囲まれた? 一体何人いるんだ?いや、それより…。腕の中の姫ちゃんが苦しそうな表情を見せる。 ……良くなった筈の男性恐怖症が戻ってしまった。 多分、こいつとのやりとりで、オレですらダメになってしまったんだろう。 姫ちゃんをまず佳織さんの場所か、せめて女がいる場所に連れて行かないと。 戦闘態勢に入った、その時。 ピンポ
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第二十七話① 奏輔の激励

ピピピッ、ピピピッ。 うあー……うるさい。 何で目覚まし?目覚ましなんていつも使わずに起きれるのに。 そもそも今何時なの? 腕を伸ばして枕元にあるスマホを手に取って、布団の中に引き摺りこむ。 えっと…。うぅ、目が霞む。眠いから目が完全に開いてないよ。脳も覚醒しきってない。 ………8時…14分……あー、なんだ…会社の出勤時間に設定してたアラームが鳴っただけかぁ。 でも今日は土曜日で休みだし。別に気にしなくてもいいや。 ポイッとね。 こもこもと布団に戻って、二度寝をすべし。……………うん?ちょっとお待ちなさいな、美鈴さん。私はまだ高校生ですぜ? それにアラームって。 別に今は一人暮らしじゃないからアラームの設定をする必要もないし、した記憶もない。 ガバリと起き上がり、ちょっと頭がふらつくけど辺りを見回す。 「え?…この部屋…華の時の部屋…?」 何処をどう見ても私が前世で一人暮らししていた時の部屋だ。 乙女ゲームのポスターとか、まだ未プレイのゲームの山とか。仕事用のスーツがかけられている壁とか…白猫柄のカーテンとか。 間違いなく私の部屋だ。高校卒業してママと暮らしていた部屋を売り払って、新しく買い直した一人暮らし用のマンションの一室。 え?何で私ここにいるの? ちょっと落ち着こう。私。 立ち上がって自分の足を見る。腕、手…美鈴の視線より若干背が高い。髪…腰まである黒の長髪。顔に触れてみる。美鈴とは違ってシャープな顔つき。 …間違いない。私、華に戻ってる。 夢、なのかな? もし、夢なのだとしたらどっちが夢?美鈴になった方が夢?それとも今の方が夢? 解らないけど…まず色々と確認しよう。 (とにかく今知りたいのは今日の日付だよね?何日だろう) もう一度スマホを持って起動する。 今日は、十二月の一日土曜日。…明日は私の誕生日。うん。そこまではオッケー。 ……オッケーじゃないっ!! スマホの画面にデカデカと、休日出勤の文字があるっ!? アラームの意味、理解したっ! 急げーっ!! 全力で仕度を済ませ、ドアにしっかりと鍵をかけて飛び出す。車に飛び乗って、法定速度ギリギリで会社へと向かった。 遅刻は何とか免れたものの…次の難関が私を待ち受けていた。 私の前世での職場。 男が多いんですーっ!! おぎゃーっ!!どうし
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第二十七話② ※※※(奏輔視点)

―――ガンッ!おい、大地。壁にひび入っとるで…。 まぁ、今は仕方ないか。大地の気持ちは痛いほど理解出来るからな。…俺かて、殴りこみにいけるなら行きたいくらいや。 「……悪い、奏輔。俺も行ってくる」 「透馬?」 「……放置してた方がヤバい気がする」 「……せやね。……任せたで」 「あぁ、お前こそ、任せたからな」 透馬の視線が一瞬姫さんに向けられる。それにしっかりと頷いて。透馬も頷き保健室を飛び出した。 そのほぼ入れ違いで、 「美鈴ちゃんっ!」 優兎が保健室に転がりこんできた。姫さんの鞄一式を持って。 「奏輔さんっ。美鈴ちゃんはっ!?」 「あっちで華菜嬢と一緒にいる」 「さ、さっき、兄達とすれ違ってっ。目、目が見えなくなったってっ、耳も聞こえなくなったってっ」 この動揺っぷりを見ると、初めてあった時を思い出すな。今じゃ優兎もどんと構えている事が多いけど、やっぱり根底の所は変わってないってことなんやろな。 「優兎。あっちはどうなった?」 「あっち?」 「生徒への説明など諸々」 「あぁ。大丈夫です。四聖の皆が来てくれたので、かえって上手くまとまりました。何より、この学校の生徒は皆美鈴ちゃんの信奉者なんで」 「……そう言う所、血は繋がってへんのに、鴇とそっくりやわ」 「それはそうですよ。何よりあの佳織さんに育てられてるんですから」 「……あー…それは否定出来ひんな」 ……さて。華菜嬢と話して、そろそろ姫さんも落ち着いてきたかな? 今の姫さんは気配に敏感だろう。ゆっくりと近づいて、先に華菜嬢横に立つ。俺にならって優兎も来るが、あくまで俺の後ろで対応待ちだ。 「奏輔さん?」 「…姫さんと話したい。そう伝えて貰えるか?俺が直ぐに触れるより華菜嬢から伝えて貰た方が姫さんも安心やろうし」 「…分かりました」 華菜嬢がゆっくりと姫さんの手に文字を書く。普通の人間ならきっと意味を理解するまで時間を要するだろうに、流石姫さんや。直ぐに理解して、こくりと頷いた。そっと華菜嬢が場所を開けようとするのを手で止めて。俺は姫さんの目の前に椅子を持ってきて座りゆっくりとその手をとった。 ビクリッと一瞬怯むも、俺の手をゆっくりとなぞって認識する。すると俺の手の平に、奏輔お兄ちゃんと書いて小首を傾げた。 「あぁ。俺や、姫さん」 肯定の意味を込め
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第二十八話① 醜心者VS守護者

「失礼します。こちらが受付で宜しかったかしら?」 コンコンと星ノ茶高校の事務所受付の窓を叩いた。……誰もいないの?っているじゃない。奥でだらだらと。生徒が生徒なら職員も職員ね。 ほんっと、煩わしいっ! コンコン。もう一度叩くけれど、反応はない。 なら、叩き割られても文句はないわよね。 バリィンッ! 裏拳で受付の窓ガラスを叩き割る。どうして裏拳かって?決まってるじゃない。ノックは手の甲でが常識でしょう? 突然に窓ガラスを割られたんだもの。今度は出てくるわよね? 「誰だっ!ガラスを割ったのはっ!」 やっと職員が顔を出す。 「あら。ごめんなさい?いくらノックしても全然顔を出して頂けなかったので。割ってしまいましたの」 ニッコリと微笑むと、その厳つい職員のおっさんは赤い顔して固まる。 「す、すいやせん。てっきり生徒の悪戯かと思いまして」 「あらあら。気にしておりませんわ。職務怠慢、放棄されていたとしても私には関係ありませんもの。所で本題、宜しいですか?」 「は、はい。一体どのようなご用件で?」 「家の娘がそちらの生徒達に襲われまして。精神的なショックで寝込んでおりますの。…一体どう責任を取って貰えるのかしら?」 「はっ!?」 「同じ事を二度も言わせないで頂ける?」 モンスターペアレンツ?上等よ。 ただ、こっちは実際傷つけられた訳だから正当な言い分よね。 「えっと。申し訳ないんですが、状況を詳しく…」 「それを今言っている時間はないのよ。それは後から来る娘の担任教師に聞いてくれる?貴方は私に中へ入る許可さえ与えたらいいのよ。勿論、―――くれるわよね?」 ま、くれなくても入るけどね。 真っ直ぐ厳つい髭面職員を睨みつける。…この程度で青褪めて頷くなんて情けない。そんなだから生徒に舐められるのよ。 …靴を履き替える必要もないわね。カツカツとハイヒールを鳴らして中に入っていく。生徒会室は何処かしら?何とかは高い所が好きって言うし…取りあえず三階を目指してみましょうか。 さっさと終わらせて美鈴の所に戻らないといけないし。少し急ぎましょう。 ん…?生徒がこっちを見てる。そうだわ。生徒をとっ捕まえて場所を聞きだすのも手ね。 適当にそこらの生徒…あぁ、あの窓際でつるんでる男子生徒三人で良いわ。 「ごめんなさい?ちょっとそこの男の子達。
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