All Chapters of 乙女ゲームのヒロインに転生しました。でも、私男性恐怖症なんですけど…。: Chapter 131 - Chapter 140

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第二十八話② ※※※(優兎視点)

「華菜ちゃん。準備出来た?」 ドアをノックして部屋の中にいるであろう華菜ちゃんに伺いたてる。華菜ちゃんだって美鈴ちゃんの事が心配なはずだから、直ぐに出てくると思ってたんだけど…。あれ?音沙汰なし?なんで? 「華菜ちゃん?どうしたの?」 コンコン。 ノックしてもやっぱり反応なし。どうしよう。女の子の部屋だから勝手に入る訳にもいかないし。かと言ってこのまま無視するのも。美鈴ちゃんが狙われてて、ストーカーだって美鈴ちゃんの親友を狙わないとは言い切れないし。でも、ドアを開けたら流石に…。恭平の彼女の部屋に入るのは…どうしよう…。 も、もう一回。もう一回ノックしても反応なかったら中に入ろう。うん。そうしよう。 コンコン、ガンッ! 「いだっ!?」 ノックと同時にドアが開くってどう言う事っ!?って言うか、顔にドアが直撃して滅茶苦茶痛いんだけどっ! 「優兎くん。ドアの前にいたらぶつけるよ?」 「ぶつけてから言わないでくれる…?」 「そんな事より」 「そんな事なんだ…」 「私ちょっと行ってくる」 「…へ?」 荷物も何も持たずに一体何処に行くつもりっ?そもそも荷物を取りに来たんじゃないのっ? 「華菜ちゃん。さっぱり行動が理解出来ないんだけど」 「夢子ちゃんからメールが来たの。皆で帰宅したらしいんだけど、愛奈ちゃん、一人で近江くんを探しに行ったらしいって」 ほら、と携帯を渡されて素直に書かれている文章を見ると、夢子『緊急連絡っ!うちの愚弟達からの報告っ!愛奈ちゃんが真っ直ぐ帰宅していないっぽいっ!多分、近江くんを探しに外に出たんだと思うっ!私、愛奈ちゃんを探しに行くっ!』 円『アタシも行くっ!何か情報が入ったら教えるっ!』 桃『了解しましたわ。こちらも人を使って探させます。何かありましたら直ぐに連絡を。念の為に、四従士の皆様にもご連絡をしておきます』となっていた。待って。四従士って誰? 「因みに四従士ってのは皆の恋人の事だから」 「え?いつからそんな風に呼ばれるようになったの?」 「美鈴ちゃんを守る四聖に、彼女達を守る従士が四人って意味らしいよ」 「……どっかで聞いた設定だなぁ…」 「自分の事でしょ、自分の」 さっくりと華菜ちゃんに突っ込みを入れられる。 「って、だからちょっと待ってよ。華菜ちゃん何処行くのっ?」 「だから、私
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第二十八話③ ※※※(樹視点)

ガンガン…。 誰かが頭で鐘を鳴らしてる…訳ないか。 意識がはっきりさえすれば、これが頭痛だって事は理解出来る。 俺はゆっくりと目を開けた。…コンクリートの床が目に映る。それ意外は暗くて良く見えない。じっと一点を見つめていると、目が慣れてやっとここが事務所か何かの跡地のような場所だと分かった。 手も足も縛られてないって…。舐められたもんだ。そもそもここは何処なんだ。さっきからする潮の香りから想像するに海の近く、何だろうが。 窓から月明かりが入っている。もう夜と言う事か。だがその月明かりのおかげで室内を確認する事が出来た。事務机もあるし、書類棚とかもある。…が、どこもかしこも埃だらけだ。これだけ埃を被ってるって事は今は誰も使っていないって事だ。 さて。状況を確認しよう。 立てかかってた折り畳みのパイプ椅子を取りだして座り、目を閉じる。 …まずは何でこんな状況になっているのか、だが…。 今日の午前中、俺は普通に学校に通っていた。―――大学の教室。 今日のスケジュールが何時もに比べて珍しく空き時間が多かった。だから、葵と棗、それから猪塚で食事をしようという話になっていた。 授業が終わり、教科書を整えて鞄に入れて席を立つ。 「龍也。迎えに来てあげたよ。感謝して」 教室の入り口で声をかけられた。いつもの事と言えど…。 「…葵。お前な…。美鈴がいない時のその態度、どうにかならないのか?」 「どうにかする必要性を感じないんだから仕方ないよ。それより、ご飯食べに行くんでしょう?行ってらっしゃい」 「は?行ってらっしゃいってなんだよ」 「だって、僕と棗には鈴ちゃんの作ったお弁当があるから」 「何だそれ。分けろ」 「冗談じゃない。龍也の分も鈴ちゃんは作ってくれたけど、あげないよ」 「あるんじゃねぇかっ。寄越せよっ」 毎度の如く。迎えに来た葵と舌戦を繰り広げながら教室を出る。不思議な事にこんな風に言い合って歩いていると、女子に呼び止められる事が少なくなる。勿論気にせず話かけてくる猛者もいない事もないがそんな女子達は葵の冷めた視線で一喝で終わる。だが一つ言っておこう。この言い合いはそんな意味があってしてる訳ではなく、ただ単に素直に、 「鈴ちゃんは何だかんだで優しいんだよね…。龍也に怖い目に合わされてるのに、こうやって龍也の分も作ってくれてるんだ
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第二十八話④ ※※※(佳織視点)

「そっちはどう?」 「いませんでした。大地は?」 「こっちもそれらしき人影はなしー」 街中を走り回ったと言うのに、ストーカー小学生の姿が見つけられない。 一体何処に行ったと言うの? 隠れるのには最適そうな場所は全て当たった。念の為に美鈴に関する所も全て回ったのに、全然見つけられない。 「いっそ、鴇達の後を追いますか?」 透馬くんがそう窺ってくるけれど、正直そっちにアイツがいる気がしない。 もしも、アイツが生徒会長のアイツよりも後に転生したのだとしたら、この後の結末を知っている可能性がある。一緒に行動したら不利になる事が多い筈。 私達は道の真ん中で立ち止まり、思考を巡らせた。 ………思い付く所は全て行ったのよ。 後は、何処を探したら…。「佳織さんっ!」考え込んでいると、突然声がした。 振り返ると、こちらへ向かって走ってくる奏輔くんの姿がある。奏輔くんは美鈴を看てくれていた。もしかして、美鈴に何かあったとかっ? 慌ててこちらからも駆け寄ると、奏輔くんの手には一枚の紙が握られていた。 「金山さんから預かってきました」 「金山さんから?」 素直に受け取り四つ折りにされたその紙を開く。そこに書かれていたのは、一言。『○×港の波止場』波止場?…成程。ここにあの小学生ストーカーがいるのね? 「波止場?ここからだと結構距離があるな」 「俺の車があるよー」 「車っつーか、トラックな。ついでに俺のバイク載せてきて正解だったな」 「サイドカーも積んできたんか?」 「おう」 一体いつの間に…? 彼らは鴇とつるむだけの事はあり、抜かりなく全て必要なものは揃える癖がついているようだ。 「佳織さん、どっちに乗る?」 「……透馬くん。乗せてくれるかしら?」 「了解です」 「急ぎましょー」 「せやね」 四人で同時にトラックを停めている駐車場に走る。走りがてら、奏輔くんから美鈴が樹くんを助けに行ったことを聞いた。…真珠さんが付き添っているから大丈夫だと言っていたけれど。正直忍びの力は当てにならない。何故なら相手も同じ力を使っているからだ。けれど、…私は自分の子供達を信じる。 美鈴はちゃんとトラウマを克服するだけの力があるって信じているから。私は、美鈴の為に一つでも多く障害を消す方に心血を注ぐ。 「…どうします?佳織さん。姫を助けに
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幕間4 実は頑張ってました。

学校内で乱闘騒ぎが起きてる。 けれど、ボク達は透馬兄達に外にいるように言われていた。 「なぁっ!オレ達も中で戦おうぜっ!ここで手をこまねいてたって、美鈴センパイを助けれねーよっ!」 「………………いてこます………」 陸と空がばっちり戦闘態勢に入って今にも学校内に突入しようとしている。 でも、ダメだ。 きっと透馬兄達は何か考えがあってボク達に外にいるように頼んだんだろうから。 かと言って、ここでじっとしてたって何の解決にもなりはしない。だったら、ボク達は今何が出来る? 戦う力は透馬兄達程ある訳じゃない。かと言って、頭脳を巡らせれる程賢い訳でもない。じゃあ、ボク達に出来るのは…? 「正しい情報を伝える事?」 「?、海?」 「行こうっ!陸、空っ!」 まずは校舎に入らずに、周りを一望出来る場所に移動だっ。 木の上が良いかなっ?それとも建物の屋上?学校の屋上より高い場所って言ったらやっぱり屋上だよね。確か学校の横にそこそこ高いビルがあった。あそこは確か外に螺旋階段があった筈。そこへゴーッ!! ボク達は真っ直ぐ隣のビルへと向かい、三階建ての階段を駆け上る。 うん。予想通り学校の校庭全域を見降ろせるっ。 中はどうなってるか解らないけど、逃げ出してきたとか外に出て来た犯人を見張る事は出来るよねっ。 幸いボク達三人共目はいいから、多少遠くても解るし。 「…中はどうなってるんだろう」 「だな…」 「………………もどかしい……」 「全くでございます」 『うわぁっ!?』 今までいなかったのに、突然隣にいるってどう言う事っ!?金山さんっ!! 「今、我々が出来るのは、協力要請が来たら直ぐに動く事のみ…。このもどかしさたるや…っ」 まるでハンカチを咥えて泣きそうな感じですね…。 なんてことを思っていると、校舎から誰かが飛び出してきた。あれは、誰? 「…あいつっ!あの小学生っ!前に美鈴センパイを襲った奴だっ!」 「………………あっちは、星ノ茶の生徒会長……」 「虎太郎?何故、奴らを追っている…?」 三人が各々気になる事を呟いている。それと同時に僕達の携帯が一斉に鳴り響いた。 画面を見ると、透馬兄からのメールで。危なくない程度で今外に出た奴らを追う様にと指示があった。 直ぐ様頷き合って四人で後を追い掛ける。足では不可能だからと金山さん
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第二十九話 計画の結果、そして―――。

「にゅ、入学した時から好きですっ!つ、付き合ってくださいっ!」 「ありがとう。でも、ごめんなさい。…私、今誰ともお付き合いするつもりないの」 勇気を出して、告白してくれたのに、断るしか出来なくてごめんね。 私は手を伸ばして、目の前で涙を流す【クラスメイト】を抱きしめた。 「ひっくっ…白鳥さぁんっ…」 「こんな私に勇気を出してくれてありがとう。気持ちが落ち着いた時、もう一度友達として接してくれたら嬉しいな」 「はいっ、はいぃっ」 ……はい。美鈴です。え?こんな実況要らない?いやいや、そう言わずに。お願いです。少々お付き合い下さい。 もう私、告白ラッシュで正直ぐったりしているんです。 今日は卒業式。 桜がはらはらと花びらを舞わせている素晴らしき日。本日卒業でございます。 それで皆、今日がラストチャンスと思っているのか、こうして、校舎裏の大きな木の下に呼び出されています。男女共にあまりに呼び出しの数が多過ぎて、華菜ちゃんが整理券を作ってくれるくらい…。 お兄ちゃん達もこのラッシュを乗り越えたのかなぁ…。だとしたら凄いなぁ…。私疲れ過ぎて脳内だけでもこうやって逃避しちゃうよー…。 今日家を出る時、葵お兄ちゃんが苦笑して笑ってて、棗お兄ちゃんが何故かファイトと応援してくれた意味を今身をもって理解したよ。 …この整理券って一体何枚配られたんだろう?答えはいずれも変わらないんだから、何人か諦めてくれたって良いのに…。って言うかそもそも、この整理券クラスの子達皆持ってるの、どうして?お礼代わりのホワイトデーのクッキーを渡して最終的には帰って貰う事になるんだけど。告白は勿論、皆断ってるよ?なのに、来るのは…あれかな?高校最後の思い出作りって奴かな?これは私にとっても良い思い出になるのでしょうかー…? 思い出と言えば。 昨日、ようやく視覚が戻って、私完全復帰したんだよね。精神からくる異常だった所為か治るまでだいぶ時間がかかっちゃったけど。卒業式に眼帯も何も付けずに出れるのは嬉しい。色々怖い目にあったけど。でも、あのストーカーに立ち向かう力を持てたおかげか、男性恐怖症はかなり薄まった。突然抱き付いて来られたりしない限りは、体が震える事も叫ぶ事もなくなった。ママが言うには私のは男性恐怖症でもトラウマの要素が強いから自分が跳ね返すだけの力をつければ克服出来る
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最終章 未来への選択編 第三十話 真の本編

ママは一体何を言ってるんだろう?頭の中が混乱してる。今、ママは『輝け青春☆エイト学園高等部』がファンディスクだったって言った?私が真っ直ぐママを見つめると、ママは頷き話を進めた。「前世で貴女がプレイしたのはファンディスクの方だったのよ。このゲームの本編は『無限―エイト―』って言うPCでのみ販売された年齢制限付きのソフトなの」「PC…パソコン専用ソフト…?」「そう。本来ならヒロインの貴女に私が情報を与えるのはとても危険なのよ。でも、美鈴がこの先の話を知らないと言うのなら話は別だわ。良く聞きなさい、美鈴。この『無限―エイト―』と言うゲームは、PCで発売された18禁ゲームよ。18禁なのは、ベッドシーンがあるとかエロいシーンがあるから、ってだけではないの。18禁の年齢制限の意味はいくつもあるでしょう?その内の一つ。残酷なシーンがあるからって意味もこのゲームにはあるのよ。美鈴が前世私に買って来てくれたゲームはフルボイス、フルリメイクの機種移植版だったのよ。ファンディスクだけやった美鈴はきっとありきたりな乙女ゲームに感じたでしょう?でもね?このゲームは乙女ゲームを盛り立てた伝説的ゲームと言われていたの。私達の年齢の女子ゲーマーには神ゲーと言われてるくらいでね。『無限―エイト―』の発売元である会社はこれで荒稼ぎをして、ファンディスクを出すに至ったわ。そもそも、『無限―エイト―』は発売する時に大きな売り文句があったのよ。それが、―――『貴女が望む道はどれ?貴女だけの愛を見つけろ』だったの。このキャッチコピーで、異例の四種同時リリースって言われた乙女ゲームだったのよ。その四種と言うのはね?一つ目は――『兄妹の禁じられた恋。貴女は愛しい彼との切ない物語を読み続けられるのかっ!?【『無限―エイト―』~白鳥家編~】』と言う王道ノベル系乙女ゲーム。二つ目は――『戦いの中に芽生えた恋。貴女は彼との愛を信じ戦い続ける事が出来るのかっ!?【『無限―エイト―』~御三家編~】』と言うやり込みRPG系乙女ゲーム。三つ目は――『友情が進化した恋。貴女は彼と二人、全ての謎を解き明かす事が出来るかっ!?【『無限―エイト―』~御曹司編~】』と言う謎解きパズル系乙女ゲーム。四つ目は――『立場を越えた恋。貴女は彼を最後まで支え、見守る事が出来るかっ!?【『無限―エイト―』~年下組編~】』
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第三十一話 無限~白鳥家編~

「鈴ー。行くよー」「はーいっ」靴を履いて棗お兄ちゃんと葵お兄ちゃんの三人で玄関を出る。今日は同じ時間に大学の講義があるから一緒に出る事にした。お兄ちゃん達に一緒に行っても良い?って聞いたら快く頷いてくれたし。やっぱりお兄ちゃん達は優しい。……あの後。私は選択した。色々考えたんだよ?好きと言う恋愛感情はないけれど、誰となら頑張れるかな?とか、誰とだけは離れたくないって思ってるんだろう?とか。ママには『少し一人で考えなさい』と日にちを貰って。丸一日、お菓子を作りながらじっくりと考えて思ったの。私は『お兄ちゃん達と離れたくない』って。私は今のこの生活が幸せなの。この家族での生活がずっとずっと続いてくれたらいいな、ってそう思う。だから、私は『白鳥家編』を選んだ。ママにその事を伝えると、やっぱりねって呆れ顔で笑った。どうやら想像がついていたらしい。そんなままは呆れ顔のままこれからのストーリーの流れを教えてくれた。ママが曰く。この白鳥家編が一番ママの抵抗の効果があったストーリーなんだそうだ。ママがそう断言した理由はいくつかあり、まずホストになる筈の鴇お兄ちゃんが全くもって世捨て人のちゃらんぽらんになっていない。次に、葵お兄ちゃんも棗お兄ちゃんもトラウマもコンプレックスも抱えていない。そして、何より、本来母娘の関係がぎすぎすしている筈の私とママが超仲良し。要するにママが頑張った結果、家族仲が抜群にいいのである。何ならいる筈のない弟達が四人もいるしね。兄妹って言う壁が大きく立ちはだかる筈のストーリーだったらしいんだけど、もうそんなの全く関係ないねって事で。でも、だからこそ、怖いんだってママは言う。どんな方向からヒロイン補正が発生するか、想像がつかないからだ、って。今現在ヒロイン補正は何だかんだとしっかり仕事をしていると確信できる事がある。。それは、ストーリー選択した事により、御三家のお兄ちゃん達と年下組の申護持の三人と連絡『しか』とれなくなった。連絡がとれるなら良いじゃんって思う所だけど、これがおかしな事に本当に連絡だけしかとれないんだ。例えば鴇お兄ちゃんに透馬お兄ちゃんが会いに来た。でも私はちょうど出掛けていて会えなかった、とか。陸実くんと電話して会えるかな?と日付を合わせようとすると、決まってその日にテレビの仕事を入れられる。良くも悪くもタイ
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第三十二話 白鳥鴇

商談に戻らせてくれと言いながら、このはげ親父はちょいちょい美鈴との結婚話を挟んできやがる。正直俺の苛立ちは増していた。やっぱりさっきの流れで帰れば良かったな。いっそ提携を打ち切って今帰っても良いくらいだ。…そう言う言葉全て取っ払って言いたいのは、とにかく面倒くせぇって事だ。トイレから戻って来た美鈴が、さっきよりもちょっと俺に寄って座っている。……疲れたんだろうな。早く終わらせてやりたい。こうなったらさっさと…。―――ガタンッ!!唐突に隣から音が聞こえた。反射的に隣を見ると美鈴が口元を抑えて俯いている。「おい、美鈴っ。どうしたっ?」何か不味いものでも食べたかっ?美鈴にアレルギーはなかったはずだが…。…ん?美鈴、何を持ってる?コップ?念の為に美鈴が倒れないように腰を支えつつ、そっとコップを受け取って、匂いを嗅いでみるとオレンジジュースに隠されているが微かに酒の香りがした。成程。さっき美鈴がいない隙に都貴のハゲ親父が息子に何かを頼んでいた。それがこれか。しかも、だ。あたかも俺が頼んだように見せかけて美鈴が飲みやすい位置に置いた、と?「…美鈴?大丈夫か?」「ふみ…?」顔を上げた美鈴は、…ほんのりと頬を赤らめて、猟奇的な色気を醸し出していた。目の前のハゲ親父とそのジュニアが目を逸らせなくなる程に。「ふみみ~…。鴇お兄ちゃあん…」「どうした?美鈴」あんまり色気を振り撒くな。後が面倒になる。と今の美鈴に言った所で通じないだろう。確実に酔っぱらってる…。美鈴は酒の所為でテンションが高くなってるのか、俺の首に抱き付いて首筋にすりすりとおでこを擦りつけてきた。「美鈴。水飲むか?」「や~…えへへ♪鴇お兄ちゃん、大好きぃ~…」「……完全な酔っ払いだな」このままだと倒れる。座る態勢を胡坐に変えて美鈴をその上に座らせると、それはもう満足そうに擦り付いてくる。……これは、ヤバいな。真珠を呼んで連れ帰って貰うか。俺は廊下側に顔を向けて、「葵っ、棗っ。ちょっと来いっ」弟を二人呼ぶ。何秒も待たずに襖が開いて、中に入って二人が動きを止めた。そりゃそうだ。美鈴が酔っぱらっている上に、そんな美鈴を見て鼻の下伸ばしてるおっさんとそのおっさんの息子がいるんだから。「鴇兄さん。これは一体?」「美鈴が間違って酒を飲んだんだ。まぁ、不可抗力だけどな。明らかに美鈴が頼
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第三十三話① 世界(とき)を越えた愛を貴方と…。

「美鈴。…好きだぞ」鴇お兄ちゃん…?えーっと…?「私も好きだよ?大好きっ。えへへ」やだなー。照れるよー。ビバ、家族愛?照れながら答えると、鴇お兄ちゃんは苦しそうな、切なそうな顔で苦笑した。あ、あれ?更にぎゅっと抱きしめられた。ちょっと苦しい。「そうじゃない」「え…?」「美鈴。そうじゃない」「鴇、お兄ちゃん…?」鴇お兄ちゃんが私の額にキスをする。ちょっ、あの…滅茶苦茶恥ずかしいんですけどっ。顔が熱くなっていくのが分かるのに。鴇お兄ちゃんの真剣な眼差しから視線を逸らす事が出来ない。「もう、二度と同じ後悔をしたくない。これは、俺に与えられた最後のチャンスなんだ」…辛いの?鴇お兄ちゃん。でも、それ以上に何かを決意している瞳で。その瞳から逃れられない。「美鈴。俺は―――」顔が近い。え?え?、と、鴇お兄ちゃんっ?か、顔が近寄ってくるんですけどーっ!?う、うわっ…と、鴇お兄ちゃんの、綺麗な顔が、近寄って、っ!?心音がヤバい事になって、咄嗟にぎゅっと目を閉じると、ますます自分の心臓の鼓動が大きくなって。―――ドタドタドタッ。まるで旭達が家の中を走り回る音みたいになって…。キ、キス、しちゃうの、かな?ふみみみっ!?脳内大パニック。でも、鴇お兄ちゃんの腕の中にいるのは何故か嫌じゃなくて。むしろずっと抱きしめて欲しいって思ってしまう…。「美鈴…目、閉じろ…」うぅぅ…何、その色気…。抵抗なんて考えられなくて…そっと瞳を閉じ―――。バァンッ!「ふみーっ!?」閉じずに、一気に頭を離した。体はほら、鴇お兄ちゃんに抱きしめられてるから無理だけどね。頭だけこう、後ろにぐいーっと…首痛い。「お姉ちゃんっ、鴇兄ちゃんっ、朝だよっ!!」……心臓の音じゃなくて、リアルに旭達の走る音だったみたい。ベッドの側に駆け寄って来て、弟達四人がベッドを囲む。「お姉ちゃん、どうして鴇兄ちゃんの部屋にいるの?」「お姉ちゃん、二日酔いになってない?」「お姉ちゃん、真珠さんが探してたよ」「お姉ちゃん、おはよー」えっと…。四人同時に言われてもお姉ちゃん、何処から答えていいか解りません。どうして、鴇お兄ちゃんの部屋にいるか?そう言えばどうして?小さい時は良く鴇お兄ちゃんが私を湯たんぽ代わりに一緒に寝る事はあったけど…?じっと視線で鴇お兄ちゃんに
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第三十三話②  ※※※

「と、鴇お兄ちゃん。お、待たせ…?」昨日選んで貰ったピンクの太もも丈のタイトワンピとちょっと大きめの白ニットカーデ。更に天使の羽ネックレスにちょっと小さくて紐の長いファッションリュック。そしてブラウンのヒール高めの春ブーツにベレー帽。髪はゆったりとシュシュで結んで横に流した。一方。車の前で私が出てくるのを待ってくれていた鴇お兄ちゃんは、ジャケットにVネックの白Tシャツ。それから黒のパンツ。…鴇お兄ちゃん。サングラスとか似合うのでズルいです。色々ズルいです。私隣に並んでいいんでしょうか?…いや、ここは自信もってっ。だって華菜ちゃん達が選んでくれたんだもんねっ。ゆっくりと歩いて、鴇お兄ちゃんの前に立つ。「そ、の…似合う?」くるっとその場で回って見せると、鴇お兄ちゃんは一瞬驚いた顔をして。けれど、次の瞬間には優しく微笑み、「あぁ、似合ってるぞ。可愛い」そう言って私の代わりに助手席のドアを開けてくれた。素直に、従って車に乗ってシートベルトを締める。すると直ぐに鴇お兄ちゃんも運転席に乗り込んで車は緩やかに走りだした。「美鈴。その服。一度も見た事ない服だよな?もしかして、今日の為に買ってきたのか?」「う、うん…」「そうか。ありがとな。じゃあそのお礼に思い切り楽しいデートにしないと、だな」楽しいデート…。えへへ。嬉しい。それに鴇お兄ちゃんが喜んでくれたのも嬉しいな。後で華菜ちゃんと円にお礼しなきゃ。「そういや、美鈴。この前、棗が…」鴇お兄ちゃんが暇しないように会話を振ってくれる。こう言う所も鴇お兄ちゃんの凄い所だよね。きちんと気を使ってくれるんだから。楽しく会話しながら、ふと外の景色を見る。そう言えば、何処に向かってるんだろう?「鴇お兄ちゃん。今日は何処に行くの?」「ん?まずは、植物園だな。芝桜と、少し早いが薔薇が見頃らしい」「そうなのっ?わっ、わっ、楽しみっ♪」芝桜~♪芝桜って基本的に一面に広がる様に植えられる事が多いから、きっとピンクの絨毯みたいになってるんだっ。想像するだけで楽しみっ!暫く車を走らせ、植物園に到着する。駐車場に車がきちんと停車したのを確認してから、車を降りる。運転席の方に回り、鴇お兄ちゃんが降りて鍵をするのを待つ。「それじゃあ、行くか、美鈴。ほら、手」あまりに自然に差し出される手に、恥ずかしいとか思う暇なく。
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