Tous les chapitres de : Chapitre 481 - Chapitre 482

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第481話

「問題がなければ、こちらの何か所かにサインをお願いします」恭介はほかの委任状も取り出した。「名義変更の手続きは、こちらで全部進めておきますので」柚香はそれを受け取り、軽く目を通した。問題がないことを確認すると、迷いなくサインを入れる。もう彼とこういうことで言い争うつもりはなかった。渡したいなら渡せばいい。どうせ最後には、全部陽翔の名義に変えるつもりだから。「柚香さん」恭介は、彼女がサインを書き終えてから口を開いた。柚香は視線を向ける。「なに?」恭介は軽く咳払いし、唇を引き結ぶ。「社長から、ひとつ小さなお願いがあるんですが……お聞きいただけるかどうか」柚香は表情を変えないまま。「言って」「柚苑を、しばらく貸していただけないかと。賃貸でも構いません」そう言う恭介の顔には、少し複雑な色が浮かんでいた。「残っている家は会社から少し遠くて、通勤に不便なんです」「今ならいい」柚香の決断は冷たく、容赦がなかった。「離婚したら無理」恭介は一瞬、言葉を失う。その場で反応できなかった。目の前のこの近寄りがたい人が、本当にあの柚香なのかと、ふと疑ってしまう。「じゃあ、その家はそのまま彼に残せばいい。私に名義変更しなくていいし」柚香はリストにある不動産を指した。「それか、柚苑を彼の名義に戻してもいい」「本当に……社長のこと、もう何も感じていないんですか?」恭介がこんな踏み込んだことを聞くのは珍しかった。柚香は淡い色の唇をきゅっと結ぶ。そんなわけない。自分も機械じゃない。時間が来たら、過去の記憶を全部リセットできるわけでもない。けれど二人の間には問題が多すぎた。今回のことがなくても、時間が経てば、いずれ積もっていた矛盾や衝突は表に出ていたはずだ。「すみません」恭介はすぐに自分の発言が適切でなかったと気づく。「今の話は、そのまま社長に伝えておきます」柚香は軽く頷くだけで、それ以上は何も言わなかった。遥真には選択肢がいくらでもある。柚苑を残すことも、新しく買うこともできる。それなのに、わざわざ恭介を通してあんなお願いをしてきた。離婚後の自分の線引きを探っているのか、それともまだ何かしら関係を残したいのか。どちらにしても、今は、向き合う気になれない。「では、失礼します」恭介はサイン済みの委任状を
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第482話

契約にははっきり書かれている。柚香が神崎家と関わった場合、自分は手出ししてはいけない、さもなければ無効になると。「わかってる」柚香は察していた。「でも、私はやってみたい」母が無理やり株を手放させられたと知ったあの瞬間から、柚香は拓海が危険な相手だと理解していた。ましてや、彼が二人の息子と手を組んで母を陥れたのだ。ここまでのことがあれば、自分がこの世にいる限り、これから先の毎日、いつ「事故」が起きてもおかしくないとわかっている。だったら、いっそ勝負に出たほうがいい。全部を表に出して、どんな手でも受けて立つ。そもそも、それは本来母のものなのだから。「いいわ。もう決めたなら、これ以上は何も言わない」安江は彼女の真剣な顔を見て、それ以上は止めなかった。「これからは外出するとき、慎吾を連れて行きなさい。絶対に離れないように」「うん」柚香はうなずいた。この話をしてから、彼女はさらに必死に勉強するようになった。書斎の灯りが深夜一時を過ぎても消えないのを見て、安江の胸には久しぶりに複雑な思いがよぎる。あのとき、管理や金融を学ぶのを止めるべきじゃなかったのか……そう思った瞬間、すぐに否定した。どの選択も、その時点では最善だった。もしあのときこの道に進ませていたら、この数年で表も裏も、何度危険やトラブルに巻き込まれていたかわからない。拓海のやり方は、もともと表に出せるようなものじゃない。ただの財産譲渡の書類一枚でさえ、拓海は自分を殺そうとした。まして柚香がこっそり学ぶにせよ、正面から専門を学ぶにせよ、あらゆる手段を使ってきたに違いない。実際、安江の予想はほぼ当たっていた。柚香がパーティーに出て以来、家にこもるようになると、拓海のほうは頭を抱える日々だった。そして……彼は蓮司を書斎に呼び出した。目の前の、自分よりはるかに優秀な息子を見つめながら、拓海は厳しい顔で言う。「柚香の件、どうするつもりだ?」「神崎家のルールに従う。株を継がせる前に、まず能力を見る」蓮司は冷たい表情のまま、淡々と答えた。「倒産寸前の会社を一つ与えて、立て直せるか試す」拓海は眉をひそめた。「それだけか?」「神崎家で育った人間には簡単でも、何も学んだことのない柚香には難しいだろう」蓮司は言う。「彼女はずっと叔母と遥真の庇護の下で育っ
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