それに加えて、杏奈に健吾と一緒になって、自分をコケにしていたような態度を取られては、ますます謝る気になんてなれなくなった。「まだ分からないのか?君のママに謝ったって、どうせ許してくれやしない。あいつの頭の中は、もうあの橋本ってクズ男でいっぱいなんだよ」杏奈が健吾に向けていたあの眼差しを思い出すと、竜也は腹が立った。離婚してまだ半年ちょっとだ。それなのに、杏奈はもう健吾とべったりくっついている。どうせ、離婚する前から健吾とデキてたに決まってる。そう思うと竜也は、自分が杏奈にいっぱい食わされたように感じた。きっと、離婚なんて、杏奈が健吾と一緒になるための口実にすぎなかったんだ。それなのに、自分は今まで彼女に対して申し訳ないなんて思っていた。なんて馬鹿馬鹿しいんだろう。あいつがそんな態度なら、もういい。アトリエへの出資の話は、これでおしまいだ。どっちにしろ、損をするのは自分じゃないんだからな。杏奈がアトリエをうまく経営できなくなった時、きっと後悔することになるさ、そう竜也は思った。でも浩は、竜也の言葉に納得できなかった。彼は顔を上げて、真剣な眼差しで彼を見つめた。「パパは間違ってるよ。謝るのは、ママに許してもらうためじゃないんだ。僕たちが悪いことをしたから謝るの。許すかどうかは、ママが決めることなんだよ」浩の言うことは、たしかにその通りだ。でも、今の怒りに燃える竜也の耳には、何も届かなかった。彼は身をかがめて、浩を抱き上げた。「この話はもう終わりだ。あいつが君のママでいたくないって言うなら、君もあいつをママだなんて思うな」「いやだ!」「なら、パパか、ママか。どっちか一人を選べ」竜也は冷たい声で、浩を脅すように言った。その言葉に、浩はぴたりと黙り込んだ。ママに会いたい気持ちはすごくあった。でも今は、パパの方がもっと大事な気がした。そう思って、彼は黙り込んだ。こうして竜也は息子を抱きかかえたまま、オフィスを出て行った。二人がエレベーターに乗り込むと、廊下の角から睦月が姿を現した。閉まっていくエレベーターのドアを見つめ、彼女は肩をすくめた。そして、第三者の目線から嘲笑うかのように一つため息をついた。「だから、あなたは健吾さんには敵わないんですよ」そう呟くと、睦月はオフィスの中へ
Read more