包装の状態を観察する。紙の材質は上質——フェンリス高地で採れる山桜の樹皮を加工したもの。折り方は全て同一人物の手によるもので、几帳面な性格が窺える。 包みを一つ開く。すり潰された薬草のペースト。色は茶緑色、質感は……指で軽く触れてみる。 粘性がある。通常の薬草ペーストより、明らかに粘り気が強い。何かを混ぜている証拠だ。「……これは」 まず香り。甘い匂いの下に隠れた、わずかな苦味。この独特の香りは——ホンシンソウ。強壮剤の主成分だ。 次に、ペーストの色調。茶緑色の中に、淡い黄色の斑点が混じっている。これはグレ根を細かく砕いた時の特徴。解熱・鎮静作用がある。 そして、指先に感じる微妙な痺れ。神経系に作用する薬草特有の反応。この感覚は……ヤメミ草だろう。「ホンシンソウが主成分で……それに、グレ根とヤメミ草を混ぜてありますね?」「……全部、当たってる」 青年の瞳が、明らかに驚きの色を示した。耳がぴくりと動き、尻尾の動きも止まった。完全に予想外だったようだ。 雑貨屋の店員が、一目で薬草の成分を分析するとは思わなかったのだろう。まあ、普通はそうだよね。 だが、この組み合わせは妙だった。 ホンシンソウ——体力増強、免疫力向上。 グレ根——解熱、鎮静作用。 ヤメミ草——神経安定、睡眠導入。 通常、強壮剤と鎮静剤を同時に使うことはない。相反する効果だからだ。では、なぜこの組み合わせなのか? 答えは一つ——「熱を下げつつ、体力を維持したい」状況。 しかも、包装の丁寧さを見る限り、これは商売用ではない。紙の折り方、封の仕方——全て同じ人間の手によるもの。そして、その手は…… 青年が薬包みの一つを、親指でそっと撫でた。その指先が、薄く汗ばんでいる。 発汗。しかも手のひらではなく、指先だけ。これは精神的緊張による局所発汗——72時間以内に強いストレスを経験した証拠だ。 さらに、その撫で方。まるで大切な何かを確かめるような、慈愛に満ちた動作。「……誰かが、病気なんですね」 青年の動きが、ぴたりと止まった。 しばらく黙ったまま、視線を落とす。肩が小刻みに震えているのが見えた。「妹だ」 声が掠れていた。「薬が……もう、効かない。この国の王都なら、何か……」 青年の表情に、諦めと僅かな希望が混在していた。 状況が見えてきた。 この青年は、妹
Last Updated : 2025-11-16 Read more