「もうすぐ、爺さんの孫嫁ではなくなるさ」千晃のその一言に、澪は思わず声を荒らげ、航も顔色を変えた。千晃は金縁眼鏡を押し上げ、澪と航を交互に見た。「どうした?俺は事実を言っただけだろ?」澪は口を開きかけたが、反論の言葉が見つからなかった。千晃の言う通り、それは事実だ。だが、いくら事実でも、厳の面前で言うべきことではない。澪に咎められても、千晃は悪びれる様子もなく肩をすくめた。「三木社長を責めるんじゃない。彼の言う通りだ。すべては洵の責任だ」厳の顔に怒りの色が差したのを見て、澪は彼が再び刺激を受けることを恐れた。空気を読んだ航が、さりげなく話題を変えた「そうだお爺さん、洵は?ここ数日姿を見ないけれど」「洵なら、我々三木グループと一緒に新規プロジェクトを進めているところだ」千晃の言葉に、航は目を丸くした。「そんな馬鹿な……洵がお前と?取っ組み合いの喧嘩になるぞ」「もうなったさ」千晃は目を細め、わざと澪の方をちらりと見た。澪には、千晃が先日の洵が薬を盛られた一件を指しているのだとすぐに分かった。「お前、お爺さんの前なんだから、少しはマシなことを言えないのか?」航はたまらず千晃に突っかかった。厳の前で、洵と澪の離婚を匂わせたり、洵が喧嘩したと吹聴したり。航は、千晃という男は本当に空気が読めないと思った。「俺は『マシなこと』を言ってるつもりだが?」千晃の顔に浮かぶふざけたような薄笑いからは、欠片ほどの誠意も感じられなかった。「あの喧嘩がなけりゃ、洵が北部郊外の土地を俺たちに譲ることもなかったからな」「なんだって!?」航は驚愕した。「あの土地をお前に譲ったのか?洵は、あれは千雪……」そこまで言って、航は慌てて自分の口を塞いだ。厳の前で千雪の名前を出すのは、まさに地雷を踏むようなものだ。自分は千晃のように空気が読めない人間ではない。「洵がどうしても俺に借りを返したいって言うからな。俺の出した条件を呑めない代わりに、その土地を差し出したってわけだ」「どんな条件を出したんだ?」航が興味津々に尋ねた。千晃は金縁眼鏡を押し上げ、視線を澪に向けた。航も千晃の視線を追って澪を見た。二人に一斉に見つめられ、澪は訳が分からなかった。病室にふっと静寂が降
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