その話題に触れなければまだしも、触れられた途端、澪は思わず洵の方を見た。澪の目は真っ赤だった。だが、洵の顔色は少しも変わらなかった。ただ、カップの取っ手を握る手が白くなり、爪が掌に食い込んでいた。「あの子は、洵が自らの手で堕ろさせたのです……そして、彼が私の体を傷つけ、一生子供が産めない体にしました……」ガチャン!別荘の玄関で、硬い物がフローリングに落ちる音が響き、室内にいた全員の視線がそちらに向けられた。「爺さん!」洵はソファから跳ね起きた。まさか厳がここいるとは、澪は夢にも思わなかった。よりによって、自分がその言葉を口にしたまさにその瞬間に。「澪……今言ったことは……本当なのか?」厳は目を丸くして信じられないという顔をし、全身を震わせていた。「洵が……お前たちの子供を殺しただと?おまけにお前に……二度と子供が……」言い終わらないうちに、厳は自分の胸を強く押さえた。「お爺さん!」真っ先に駆け寄って倒れ込む厳を支えたのは澪だった。彼女は咄嗟に厳のポケットからニトログリセリンを取り出し、舌下で溶かして飲ませた。その間、洵はすでに救急車を呼んでいた。雪のせいで救急車の到着には少し時間がかかったが、最寄りの病院に運び込まれた。厳の容態は、緊急の冠動脈バイパス手術を要するもので、一定のリスクが伴うと言われた。しかし、この病院は分院だ。業は、その辺の医者に適当に手術させることに反対した。厳は篠原家の大黒柱であり、万が一のミスも許されないのだ。「我が国には、以前すごく有名な循環器内科の権威がいただろう?名前は何と言ったか……」「白石温(しらいし ぬくみ)、です」澪の声が、病院の廊下の静寂をさらに際立たせた。厳が救急車で運ばれてから、彼女が自ら口を開いたのはこれが初めてだった。業が澪を睨みつけた。その目には憎悪の念が色濃く浮かんでいた。この女が余計なことをベラベラと喋らなければ、父が心臓発作を起こして手術が必要になることなどなかったのだ。「もし父さんに万が一のことがあったら……」業は大股で澪に近づき、手を振り上げて平手打ちを見舞おうとした。だが、その手は振り下ろされなかった。いつの間にか業の背後に立っていた洵が、高く振り上げられた業の手首を片手で掴んでい
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