昼下がりの鍛冶場は、霧の森の中では珍しく熱気に満ちている。 叩き続けた鉄の匂いと焼けた木材の香りが混じり合い、自身の剣を鍛え直したセリュオスはどこか懐かしい気持ちで剣を見つめていた。 刃の線に沿って布を滑らせ、剣の整備を終わらせる。 ちょうど次の旅に出るための準備を整えたところだった。「おう、セリュオスの旦那」 セリュオスが愛剣を鞘に納めると、その背中を軽く叩かれて振り向いた。 そこには地面を抜け出したガドルが、肩に袋を担いで立っていた。「ガドルって、意外に小さいんだよな……」 「あっしのこと、チビって言うな! 地を這う民は生まれつき、小柄な種族なんだよ! そんなことより! そろそろ行くんだよな、魔王が待つ北へ」「そのつもりだ。……ガドルも道案内、してくれるんだな?」 「ったりめえよぉ! 地下道ならあっしに任しとけ! ここいらの穴なら、全部庭みてえなもんだからよ」 自信満々に胸を張るガドルを見て、セリュオスは少しだけ安堵した。 この男の底抜けの明るさは、行き先の不安を薄めてくれるような感覚があった。 北に向かう話を進めていく中で、ガドルが森を歩くよりも地下道を抜けたほうが遥かに安全だと教えてくれたのだ。 地下道を進むしばらくの間、案内人を務めるのはガドルということになった。「地下道があるってことはさ……霧の森の下って、そんなに広い世界が広がっているのか?」 「広いも何も、あっしら地を這う民が暮らしてるのは、その地下世界なんだぜェ!? ま、狭いけどな」 狭いのかよと心の中でツッコミつつ、セリュオスは苦笑した。 すると、鍛冶場の奥から、控えめな声が聞こえてきた。 それは資料の束を抱えてやって来たシエルハだった。「地を這う民は、昔から地中に“霧逃れの道”を作って住んでいたんですよ。その地下道を移動すれば、たとえ霧が濃くても、その影響は受けにくくなりますね」 「なるほどな。ガドルは説明が足りないから、シエルハがいてくれると助かるな。……まだ時間まで少しあるが、シエルハも準備ができたみたいだな」 セリュオスが視線を向けると、シエルハは小さく頷いた。「はい! 元々身軽にしていたので、持参する資料をまとめるだけで済みました」 とは言いつつ、小柄なシエルハはかなりの荷を
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