All Chapters of 時空勇者 〜過去に遡ったら宿敵の魔王と旅立つことになりました〜: Chapter 71

71 Chapters

第70話「ガドルの幼馴染」

 休息を終えた一行は再出発し、ついに隧道を抜けた。 その先で、セリュオスは思わず足を止めた。 広い、というのが最初の感想だった。 隧道の先にあったのは、単なる空洞ではなかった。 天井は遥か高く、それを支えるように、何本もの巨大な石柱が乱立している。 柱の表面には、自然にできたとは思えない加工の痕跡があり、幾何学的な紋様が幾重にも刻まれていた。 それは明らかに古代の遺構のように見えるが、その下に視線を向けた瞬間、セリュオスは目を瞠った。 石を削って作られた住居と、柱と柱の間に渡されている簡素な足場。 天井から吊り下げられた灯具が、淡い光で街全体を照らしている。 遺構の足元で、人々が生活を営んでいたのだ。 おそらく、彼らが地を這う民だろう。 ゆっくりと行き交い、荷を運び、何やら言葉を交わしながら、ごく当たり前のように生活している。 ここは遺跡でもあり、それと同時に、彼らにとっては住む場所でもあった。「……これは、驚きです」 シエルハが石柱の一つに近づき、そっと手のひらを当てる。 その表面には長い年月、人の手が触れてきた痕が残っていた。「文明遺構を保存するというよりも、さらに手を加えながら……今も使い続けているんですね……」 小さな指が、刻まれた紋様をなぞる。「崩壊させずに増築を繰り返していく文化……遺跡そのものを、生活基盤として内包しているんです……」 その真剣な声は、完全に学者のそれだった。「あっしら地を這う民は、遺跡に住んでるんじゃねェ」 少し後ろに立っていたガドルが、ぽつりと口を開いた。「“遺跡と一緒に生き続けてる”んだ」 その言葉は説明というより、事実をそのまま置いただけのようだった。 シエルハは一瞬だけ動きを止め、それから深く頷く。「……はい。そうでなければ、こんな歴史を感じる街にはなりません」 だが、ガドル自身は、それ以上何も言わなかった。 視線は街の奥を見ているようで、実際には誰とも目を合わせていない。 通りを歩く人々の中に、知った顔があるのだろうか。 ガドルはほんの少しずつ、自然を装いながら、一行の端へ移動する。 できるだけ大通りを避けるように、柱の影に隠れたがった。 セリュオスはガドルの変化を見逃さなかった。「……何か気まずいことでもあるのか?
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