地を這う民の街を出て、2日ほど歩いて辿り着いた霧の民の拠点は、山の内部に溶け込むように存在していた。 岩肌を穿ち、洞を広げ、その空間すべてを霧で隠すことで外界と隔離している集落。 それが、霧の民が住まう土地だった。 人工物でありながら、どこか自然の一部のようでもある。 天井も壁も、明確な輪郭を把握することは、霧の民ではないセリュオスには難しい。 視界は常に白く揺れ、ただでさえ足元すらも曖昧で、初めて訪れる者には距離感すら掴めないのだ。 さらには、この拠点内に立ち込める霧は一様ではなかった。 淡い乳白色のもの、薄青く冷たく感じるもの、光を反射して煌めくもの。 それらが幾層にも重なり合い、ゆっくりと流れ、時折形を変えていく。 呼吸をするたび、肺の奥にまで冷たく柔らかな感触が染み込んでくるようだった。「ここが、アタイら霧の民の拠点さね」 先頭を歩いていたレバザが振り返り、そう告げた。 声は落ち着いており、どこか柔らかさを帯びている。 かつて、セリュオスを拒むように尖っていた表情は、今は鳴りを潜めていた。 むしろ、確かな信頼が滲んでいるように見える。 森の民との諍いを乗り越え、共に地を這う民の隧道を旅し、時間を分け合った結果だろうか。「色とりどりの霧か……。しかも、かなり視界が悪いな」 セリュオスが率直に言うと、レバザは肩を竦めた。「慣れれば、すぐに気にならなくなるよ。それに、この霧はアタイらを守ってくれる砦にもなってるからね。目を凝らせば、ちゃんと仲間たちの姿も見えるだろ?」 レバザは集落の内部を示すように腕を軽く振る。 彼女に言われたとおりに、その先をジッと見つめていると、霧越しに点々と浮かぶ住居の灯りのようなものが見えてきた。 その周りには、作業を終えてくつろぐ人々の気配を感じ、器具を片付ける金属音、低く交わされる談笑さえも聞こえてくる。 子どもたちの小さな笑い声が、霧に溶け、輪郭を失いながら耳に届く。 どれもが、確かに日常の音だった。 かつて、森の民と対立していた頃は、この拠点には張り詰めた空気が漂っていたことだろう。 いつ侵略されるかわからない恐怖に、疑念と警戒。 だが今は、穏
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