セリュオスたちが予期せぬ戦闘を切り抜けた後、湖はまるで何事もなかったかのように静まり返っていた。 風は穏やかで、霧も薄れ、戦いの痕跡だけがそこに残っている。 水面は鈍い緑色を映し、漣ひとつ立たない。 だが、その静けさは安らぎではない。 むしろ、重く、張りつめた沈黙だった。 セリュオスは湖畔に立ち、視線を落とす。 濁った水の奥は相変わらず何も語らない。 底が見えるわけもなく、深さもわからない。 どれほど覗き込んでも、そこにあるのは濁った闇だけだ。 その中で、セリュオスの首元の首飾りは光を放ち続けていた。 蛍晶鉱石が淡く、確かに輝きながら、変わらず湖の中心を指し示している。 その光は、戦闘の間も、森の異変の中でも、一度たりとも揺らぐことはなかった。「……やっぱり、潜るしかないんだよな」 セリュオスは誰に言うでもなく呟いた。 幾度と確認しようとも、道標がブレることはない。 翠玉はこの湖の底に沈んでいる。 それだけは疑いようのない事実だった。「でもよ、旦那。湖の中は何も見えなかったんだろォ?」 ガドルが腕を組みながら、湖を睨みつけている。 その拳は無意識に握り締めているのか、不甲斐なさを感じているのか、強く力が込められていた。「こんなに濁りきっちまってよ。どんだけ深い底なんだろうなァ」 「底がわからなくても、どんなに深くても、俺はやるしかない」 セリュオスは迷いなく言った。 外套を外し、肩から滑らせて地面に置く。 次いで剣を岸に寝かせた。「セリュオス……」 エレージアの声が僅かに揺れていた。 彼女でさえも不安に感じているのが伝わってくる。「手探りでも何でもいいから……翠玉を取ってくる。俺が、取って来なければならないんだ」 セリュオスは仲間たちを振り返る。 それは、強がりではなかった。 使命感でも、義務感でもなく、確かな覚悟だった。 自分が行かなければ、これ以上前に進むことはできないのだから。「だからってさ、あまり無理はするんじゃないよ。アンタが戻ってこないと……アタイらが、不安になるからね」 それは霧の民の戦士長としてではなく、セリュオスの一人の仲間として
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