All Chapters of 二人の彼女がいる理由: Chapter 21 - Chapter 30

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第21話 尋問

 範経は妹の圭と明と共にリビングルームに入り、寛子と美登里は昼食の用意をするためにキッチンに向かった。「お兄ちゃん、ここに座って」と圭がソファーを指さした。  範経はおとなしく二人の妹の言うことを聞いて座った。「圭と明が両側に座るんだ」と範経。「そうよ」と圭。「さびしくさせないから」と明。「ありがとう」と範経。 冷淡な性格だった双子の妹がやけに快活で、範経は少し意外だった。「お兄ちゃん、向こうでの生活は楽しい?」と圭。「まあまあだよ。電話でも話してただろ」と範経。「向こうにも妹がいるんでしょ」と明。「麗華。小学生だよ」と範経。「何年生?」と圭。「五年生だけど」と範経。「どんな子? かわいい?」と明。「うん。よく言うことを聞く、おとなしい、いい子だよ。たまに強情な時もあるけど」と範経。「一緒に生活してるんでしょ」と圭。「うん。家族だからね」と範経。「ふーん。家族なんだ。苛められてるのかと思ってた」と明。「そうでもないんだ。親は二人とも忙しくて、家にいないことが多いから」と範経。「ということは、その妹と二人きりなんだ?」と圭。「まあそうだね」と範経。「楽しいんだ」と明。「楽しいというか、不自由ないというか」と範経。「ご飯はどうしてるの」と圭。「朝ごはんと夕ごはんは麗華と食べてるよ」と範経。「呼び捨てなんだ」と明。「え、時と場合によって色々だよ」と範経。「お兄ちゃん、自分の部屋がないんだよね。普段はどこにいるの?」と圭。「リビングルームだよ」と範経。「麗華って子と一緒なの?」と明。「うん、麗華の面倒を見てあげないといけないから」と範経。「食事以外のとき、二人で何してるの?」と圭。「特に何ってことはないよ。テレビを見たり、宿題を見てあげたりだよ」と範経。「夜寝るのは何時ごろ?」と明。 範経は圭と明が次第に、普段通りの厳しい表情になるのを感じた。「まるで訊問だな」と範経。「今頃気が付いたの、お兄ちゃん」と圭。「え?」と範経。「寝るのは何時?」と明。「十時頃だよ。子供を夜更かしさせられないからね」と範経。「麗華は自分の部屋で寝るの?」と圭。「そうだよ」と範経。「そしてお兄ちゃんの寝室はクローゼットなのよね」と明。「そうそう」と範経。「よろしい」と圭と明の表情が和らいだ
last updateLast Updated : 2025-11-28
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第22話 約束

 夕食後、範経は美登里の部屋に連れられてきた。「範経、部屋に入りなさい」と美登里。「クタクタだよ。もう寝るよ、姉さん」と範経。「まだ寝ないで。少し話があるの」と美登里。「何?」と範経。「私、まだちゃんと謝ってないでしょ」と美登里。「謝ってもらってるよ。もう何度も何度も」と範経。「きちんと謝りたいの」と美登里。「わかったよ」と範経。「あなたのことを信じてあげなくて、ごめんなさい。おわびに私の一番大事なものをあげるわ」と美登里。「ちょっと、そんなに抱きつかないで。胸が当たって息ができない……」と範経。「範経、暴れないで。力を抜けばいいのよ」と美登里。「何するの?」と範経。「わかってるでしょ。大事なものをあげるのよ」と美登里。「そんなの受け取れないよ。ぼくは血のつながった弟だよ!」と範経。「そんなこと関係ないわ」と美登里。「どうして!」と範経。「私の気が済まないもの。それに、あなたはシスコンでしょ」と美登里。「シスコンだよ。でもぼくが望んでるのはこんなのじゃない」と範経。「どんなことを望んでるの? 言いなさい」と美登里。「いつもみたいに普通にしてくれてるのがいいんだ」と範経。「やっぱりだめ。無理にでも受け取ってもらうわ。あなたの女にしてもらう。範経、覚悟して」と美登里。「わかった。わかったよ。美登里姉さん。正直に言うとね、お姉さんの太ももが大好きなんだ。だから膝枕してほしいんだ」と範経。「だめよ、そんなのじゃ」と美登里。「それからお姉さんの胸に抱かれて寝たいんだ」と範経。「お子様ね。そんなこと、由紀や祥子にもしてもらってるんでしょ。もっと特別なことでなきゃだめよ」と美登里。「じゃあキスして。ぼく、初めてなんだ」と範経。「あら、かわいいわね。いいわ。でもそれだけじゃダメ。あなたの体で傷つけてくれなきゃ。一生忘れられないような傷を」と美登里。「何言ってるの。ぼく、お姉さんを傷つけたくないよ。なんでそんなことしなきゃいけないの」と範経。「泣かないで、範経。わかったわ。じゃあ、約束して。お姉さんのこと嫌いにならないって」と美登里。「大好きだよ、美登里お姉ちゃん」と範経。「かわいい弟。キスしてあげる。毎日キスしてあげる」と美登里。「うん」と範経。「約束よ。毎日キスするのよ」と美登里。「え?」と範経。「いやなの?
last updateLast Updated : 2025-11-29
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第23話 復学

 範経は半年ぶりに鶴ヶ峰高校に復学して、教室に姿を現した。「範経、また会えるなんて!」と由紀は範経に抱きついた。「由紀ちゃん、ぼく戻って来たよ」と範経。「範経!」と祥子。「範経君、久しぶり」と玲子。「由紀ちゃん、祥子ちゃん、玲子ちゃん、みんな同じクラスなんだね」と範経。「先生にお願いしたんだ。内緒だけどね」と祥子。「そうだったのか。よかった」と範経。「範経の方こそ、復学できてよかったわ」と祥子。「誓約書とかいろいろ書かされたよ。規則を守りますとか、学生の本分を守りますとか」と範経。「範経は冤罪の被害者なのに」と由紀。「ぼくは先生方から疎まれてるんだ」と範経。「ところで、範経はお母さんの家に帰ってきたの?」と祥子。「なんて言えばいいんだろ。レンタル移籍的な立場だよ」と範経。「どういう意味なの?」と由紀。「義理の妹に好かれすぎて、家を追い出されたんだ。それで一時的に母の家にいるんだ」と範経。「でも転校したってことは、こちらにずっと住むっていうことでしょ」と由紀。「そうなんだけど、義理の妹が離れたがらないんだ」と範経。「範経、何をしたのよ」と言って由紀は範経をにらんだ。「ずっと面倒を見させられてたんだよ。共働き家庭だから。そうしたら懐かれて」と範経。「いくつなの、義理の妹って」と由紀。「十一歳かな、小学六年生だから」と範経。「子供をたぶらかしたのね」と由紀。「それで、あなたの親権はどうなってるの?」「父親は母親に譲ろうとしたけど、それを義理の妹が反対して……」と範経。「子供でしょ」と由紀。「包丁で自殺しようとして、止めようとした母親を刺したんだ。幸い大した怪我じゃなかったけど」と範経。「ありえないわ」と由紀。「おとなしい子なんだけど、思い込んだら激しいんだ」と範経。「あなたはどうなるの、範経?」と由紀。「たぶん卒業まではここにいられると思う」と範経。「その妹さんはどうしてるの」と由紀。「今は施設でカウンセリングを受けてる。家族と折り合いがついたら、こちらに引っ越してくるらしい」と範経。「へ?」と由紀。「どういう意味よ?」「その妹、麗華っていうんだけど、彼女はぼくに毎日会える場所に住むなら家族との生活に戻るって言ってるんだ」と範経。「相変わらずぶっ飛んでるな、お前の家族って」と祥子。「麗華の両
last updateLast Updated : 2025-11-30
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第24話 お見舞い

 復学早々に範経が熱を出して高校を欠席した。由紀と祥子と玲子は範経の家にお見舞いに行くことにした。「私もお見舞い行って大丈夫かしら」と玲子。「平気よ」と由紀。「多い方が心強いから」と祥子。「そうよ、これで三対三だわ」と由紀。「何のこと?」と玲子。「ブラコン姉妹のことよ」と由紀。「美登里先輩のこと?」と玲子。「それと妹が二人」と由紀。「双子の女狐って呼ばれてる、陰険でこましゃくれた中学生だよ」と祥子。「怖いわね」と玲子。「大丈夫。私たちがついてるから」と由紀。「きっと玲子の大好きなものが見られるよ」と祥子。「不安だわ」と玲子。 …… 三人は門の前に立ち、呼び鈴を鳴らした。 中から「どなた?」と応答があって「由紀です。範経のお見舞いに来ました」と返事をした。 玄関が開いて、「いらっしゃい。範経から聞いてるわ」と美登里が顔を出して言った。「おじゃまします」と言って三人は玄関に入って靴を脱いだ。「どうぞ、リビングルームに入って」と美登里。「範経は?」と由紀。「圭と明の部屋で寝てるわ。ここで待ってて」と美登里。「範経を起こすんですか?」と由紀。「違うわ、少し片づけてるのよ。部屋に入ってもらうわ。家庭環境を偵察に来たんでしょ」と美登里。「お見通しですね」と由紀。「もちろんよ」と美登里。「だって心配なんです。範経がまたいなくなってしまうんじゃないかって」と由紀。「大丈夫よ。私たちが離さないから」と美登里。「でも親権がお父さんにあるって聞いてます」と由紀。「そうよ。でもそのせいで父は散々な目に合ってるわ。あなたたちも聞いてるでしょ」と美登里。「義理の妹が大変だって」と由紀。「そうよ。父は範経のことがわかってないわ。ただの怠け者の役立たずだと思ってるのよ」と美登里。「範経は危険物なのに」と祥子。「そのとおりよ」と美登里。「麗華っていう子は犠牲者ね」と由紀。「父が不用意に範経を連れだすからよ」と美登里。「範経はどうなるんですか?」と由紀。「それはわからない。でも今の状況は長く続かないわ。父が音を上げて、何もかも放り出すはずよ」と美登里。「でも麗華っていう子は?」と由紀。「子供よ。本気で心配してるの?」と美登里。「範経と離れたがらないって」と由紀。「ただのおままごとよ」と美登里。「
last updateLast Updated : 2025-12-01
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第25話 寝室

 美登里が由紀と祥子と玲子を連れて、圭と明の部屋のドアを開けた。ベットの側にいた圭と明が立ち上がった。「連れてきたわよ」と美登里が圭と明に言った。「こんにちわ、圭ちゃん、明ちゃん」と由紀。「お見舞いに来たよ」と祥子。「お久しぶりです。由紀先輩、祥子先輩」と明。「もう一人の方はだれですか? ひょっとして、お兄ちゃんの三人目の彼女さん?」と圭。「玲子ちゃんだよ。彼女じゃなくてクラスメート」と範経が体を起こしながら言った。「はじめまして。滝川玲子です」と玲子が挨拶をした。「圭です」と圭。「明です」と明。「玲子先輩はどんなお知り合い?」と圭。「盗撮事件のときに助けてくれたんだ」と範経。「わざわざお見舞いに来てくれるくらい仲が良くなったんだね」と圭。「ええそうよ。でも普通の友達だから安心して」と由紀。「普通の友達では男子の家に来ないわ」と明。「玲子はゴシップが好きなのよ」と由紀。「範経からはドロドロな愛欲の香りがするって」と祥子。「言ってないわ!」と玲子。「それで私たちのブラコンぶりを見物に来たのね」と圭。「違います!」と玲子。「だけど特別なことは何もないわ。ただ私たちで兄を看病してるだけです」と明。「あなたたちのベッドで?」と由紀。「そうよ。兄の家具がまだそろってないの」と圭。「だからって、妹と同じベットで寝起きするなんて」と由紀。「それが何か?」と明。「異常よ」と由紀。「あらそうかしら。兄が家出中にどこで寝泊まりしてたか知りませんが、二人の彼女さんとどんなふうに過ごしていたのか知りたいものですわ」と圭。「健康な男女が夜に寝室ですることなんてきまってるわ。とっても健全なことよ」と祥子。「兄一人に女が二人なんて、どこが健全なのかしら」と明。「兄と妹二人よりはましよ」と由紀。「私たちの関係は兄妹愛です。あなたたちの浅ましい肉欲と一緒にしないでください」と圭。「ちょっとあなたたち、いい加減にしなさい。お茶を入れてきたからみんな椅子に座って」と美登里。「お兄ちゃんは起きちゃだめ。私が食べさせてあげる」と言って、圭が膝枕をした。「玲子、あなたが大好きないちゃいちゃシーンよ!」と由紀。「圭ちゃんと明ちゃんがすごい美少女で驚きました。しかも双子なんて」と玲子。「その上、ブラコンなのよ。普通に人前で
last updateLast Updated : 2025-12-02
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第26話 相談

「そろそろ起きるよ。本題に入りたいんだ」と言って範経は体を起こした。「そうだったわね」と美登里。「本題があったの?」と祥子。「麗華のことでお願いがあるんだ」と範経。「何かしら?」と由紀。「麗華は母子家庭で育ったから、父親を知らない。だから、たまたま側にいた男性のぼくに依存してしまったらしい」と範経。「そのようね」と由紀。「だけどそれは普通じゃない」と範経。「それで?」と由紀。「麗華は普通の人間関係がよくわかってない。だから教えてあげたいんだ」と範経。「へ?」と祥子。「ぼくが同世代の女の子と普通にお付き合いしてるって見せてあげたいんだ。そうすれば、彼女はぼくを結婚相手じゃなくて兄として見てくれるんじゃないか」と範経。「範経、何言ってんの?」と祥子。「どう思う? 明ちゃん、圭ちゃん」と由紀。「ありえない。そんなことで麗華って子があきらめるわけないわ」と圭。「義妹なんでしょ。普通に結婚できるわ。何でお兄ちゃんをあきらめるの?」と明。「だそうよ」と由紀。「半年も相思相愛で一緒にいたのに、突然引き離されたら誰でもびっくりするわ」と圭。「しかもお兄ちゃん、本気でかわいいと思って義妹の世話をしてたんでしょ。そんなのお兄ちゃんが悪いわよ」と明。「それじゃ、ぼくはどうすればいいんだよ」と範経。「麗華って子をここに呼べばいいわ。兄さんが嫌われるように仕向けてあげる」と圭。「そして、勝ち目がないってわからせてあげる」と明。「かえって逆効果よ。実妹と義妹じゃ勝負は見えてるわ」と由紀。「どういう意味かしら?」と圭。「説明しなきゃだめなの、妹さん」と由紀。「待ってよ。普通の生活を麗華に見せればいいだけなんだ。余計なことはしなくていいんだよ」と範経。「あなたの言う普通の意味が分からないわ」と由紀。「範経、今の状態が普通って、少し違和感を感じるよ。こんなブラコンの姉妹にべったりの生活、普通じゃないから」と祥子。「それに、仲良しな二人の彼女だって変よ」と圭。「これなら、お兄ちゃんラブな義妹が増えても全然変じゃないわよ」と明。「何が問題なの?」と由紀。「麗華をまっとうな家庭生活に戻してあげたいんだ。ちゃんと両親と生活して小学校に通う生活にだよ」と範経。「現実を受け入れさせるしかないわ」と由紀。「範経にはお付き合いを
last updateLast Updated : 2025-12-03
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第27話 再会

 ドアがノックされて、視線が集まった。「ごめんなさい。勝手に上がらせてもらったわ」と言って、真由美がドアを開けて部屋に入った。「あら、真由美叔母様。お久しぶりです。呼び鈴を押して下さったら、玄関でお迎えしたのに」と美登里。「気にしないで、他人じゃないんだから。美登里ちゃん、美人になったわねえ。それに圭ちゃんと明ちゃんも、かわいいわ」と真由美。「お久しぶりです、おばさん」と圭と明。「範経、寝間着なの? それにお友達もいるのね」と真由美。「由紀ちゃんと祥子ちゃんと玲子ちゃんだよ」と範経。「由紀ちゃんと祥子ちゃんは範経の彼女で、玲子ちゃんは普通のお友達だそうよ」と美登里が紹介した。「初めまして」と由紀と祥子と玲子が軽く頭を下げた。「なんか、取り込み中だったのかしら」と真由美。「ええ、とっても。わかりますか?」と圭。「あら、ごめんなさい。こっそり入って麗華に本当の範経を見せてあげようと思ったの。麗華、いらっしゃい」と真由美がドアの外に声をかけた。 よそ行きのスカート姿の麗華が姿を見せた。「麗華ちゃん!」と範経。 麗華は範経に走り寄って抱きついた。「範経お兄ちゃん! お兄ちゃん、お兄ちゃん、会いたかった、会いたかったよ。みんなが私の気持ちを勘違いだっていうの。お兄ちゃんを好きなことなんて気のせいだっていうの。ほんとうに好きなのに、ほんとうなのに。お兄ちゃん、麗華のこと好きだよね、嫌いになってないよね。お兄ちゃん、お兄ちゃん!」「麗華ちゃん、もちろん大好きだよ。会いたかったよ、麗華ちゃん!」と範経。「お兄ちゃん、もうどこにも行かないで!」と麗華。「麗華ちゃん、もう泣かないで。お兄ちゃんはどこにも行かないよ。いつでも会えるように麗華ちゃんは引っ越してきたんでしょ。もう大丈夫だよ」と範経。「本当! 本当なの! もう離れないよ、ずっと一緒にいようね、ずっと一緒だよ! お兄ちゃん、お兄ちゃん!」と麗華。「本当だよ。ずっと一緒だから。安心するんだ、麗華ちゃん」と範経。「わかった。ずっと一緒だから。ずっと一緒よ」と麗華。「大変だったね、麗華ちゃん」と範経。「うん。わたし、頑張ったの」と麗華。「ごめんね、独りにして」と範経。「あーん!」と麗華が泣いた。「お兄ちゃん大好き! 大好きだから、もういなくならないで!」「これから
last updateLast Updated : 2025-12-04
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第28話 被告人範経

 麗華の前で膝をついていた範経が立ち上がった。「改めて紹介するよ。この子が麗華ちゃん。ぼくの義理の妹だ」「麗華です。範経お兄ちゃんが大好きで、近所に引っ越してきました。よろしくお願いします」と麗華がお辞儀をした。「あら、礼儀正しい子だわ。かわいいだけじゃないのね。私は美登里。範経の実の姉よ」と美登里。「美登里お姉さんのことは新しい父から聞いています。美登里が男で範経が女だったらよかったって。美登里を連れてきたかったと言ってました」と麗華。「あら、そうなの。私はお断りよ。範経と離れるなんて」と美登里。「それからこちらが、圭と明。ぼくの双子の妹なんだ」と範経。「よろしく、麗華ちゃん」と圭。「よろしく。父は私たちのこと、何か言ってたかしら?」と明。「はい。かわいいけど怖いから気をつけろと言ってました。俺は何度も殺されかけたって」と麗華。「殺す気なんてなかったわ」と圭。「兄をないがしろにするから、少し脅かしただけよ」と明。「あら、怖いわ」と由紀。「それから、こちらが由紀ちゃんと祥子ちゃんと玲子ちゃん。ぼくのクラスメイトなんだ」と範経。「よろしくお願いします」と麗華。「こちらこそ、よろしくね」と由紀。「本当に範経のことが好きなのね。もらい泣きしちゃった」と祥子。「由紀ちゃんと祥子ちゃんは範経の彼女よ。つまりあなたの直接のライバルだから」と美登里。「二人も彼女がいるの?」と麗華。「まあ、そうなんだけど」と範経。「そうよ。二人とも同じくらい範経のことが大好きなの」と由紀。「これで関係者が全員そろったということね」と圭。「裁判よ。被告人は範経。あなたはここに座って」と美登里が椅子を指さした。「裁判? 何でぼくが?」と範経。「兄さんには、いろいろ聞きたいことがあるわ」と明。「それに範経、麗華ちゃんにいろいろ隠してることがあるでしょ」と由紀。「兄さんは都合がいいことしか言わないから」と圭。「麗華ちゃん、悪いようにはしないから、一緒に見てるのよ」と祥子。「はい」と麗華。「どうしたの? みんな急に団結して」と範経。「あなたには、麗華ちゃんにすべてを説明してもらうわ」と由紀。「兄さんの考えを、兄さんの口からよ」と明。「範経、もうあきらめなさい」と美登里。「原告は麗華ちゃん、弁護人は由紀ちゃんと祥子ちゃんと玲子
last updateLast Updated : 2025-12-05
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第29話 麗華の証言(1)

 美登里は麗華と共に、椅子に座っている範経の正面に立った。「麗華ちゃん、あなたの言い分をすべて話すのよ。まず範経に出会った時のことから始めて」「はい。わかりました」と麗華。「真夜中にお父さんに連れられて範経お兄さんは家に来ました。戸惑っているようで、とてもオドオドしていました。お母さんは、範経お兄さんは盗撮の犯人だから嫌がらせをして家から追い出す。だから私には関わらないようにと言っていました。でもお兄さんが来る直前に犯人でないことがわかって、嫌がらせをしないことになりました。でもお母さんは、範経お兄さんが私にいたずらをするんじゃないかってとても警戒していました」「なるほど。それで麗華ちゃんは今何年生?」と美登里。「六年生です。十一歳です」と麗華。「だとすると、範経に初めて会ったのは五年生のときか。母親の気持ちは分かるわ。それで、それからの生活はどうだったの?」と美登里。「両親は共働きなので、昼間はお兄さんと私だけでした。お母さんは夜遅く帰って来ましたが、お父さんはあまり帰ってきませんでした。夕ごはんはお母さんとお兄さんと私で食べていたのですが、お兄さんはとても居心地が悪そうでした」と麗華。「なるほど。そんな状態がずっと続いたの?」と美登里。「いいえ。お母さんが働きすぎで具合が悪くなったことがあって、そのときお兄さんが家事をやってくれたんです。それ以来、お洗濯以外の家事はお兄さんの役目になりました」と麗華。「範経は料理ができるからな」と祥子。「お兄さんの料理はみんな大好きです。私はハンバーグが一番好きです」と麗華。「家族の胃袋を掴んだわけか。それで、麗華ちゃんはいつから範経のことが好きになったの?」「だんだん、お兄さんが私の面倒を見てくれるようになって、お兄さんがやさしい人だって思うようになったんです。毎日ご飯を作ってくれて、お勉強を見てくれて、お話をしてくれました」と麗華。「学校は楽しい?」と美登里。「お兄さんが勉強を教えてくれたおかげで、少し楽しくなりました。友達ができて、家に友達を連れていったらお兄さんがお菓子を焼いてくれました。とてもおいしいお菓子で友達も大喜びでした」と麗華。「いいことばかりね。それなら普通に子守をしているだけよ。なぜ麗華ちゃんの両親は範経を追い出すことにしたの?」と美登里。「私がお兄さんのことを
last updateLast Updated : 2025-12-06
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第30話 麗華の証言(2)

「それから、お兄さんが熱を出して倒れたんです。寒い冬の夜に体が冷えたらしくて」と麗華。「範経は体が弱いからな。ストレスがかかると風邪をひきやすくなる」と祥子。「お兄さんが学校を休むことになったので、私も学校を休んで看病することにしました。クローゼットは玄関のそばで寒いの。そんな場所で寝てたら風邪が治らない。だから昼間はこっそり私のベットに寝かせてあげたんです」と麗華。「もう、聞いていられない……」と由紀。「わたしが助けに行くべきだったわ」と祥子。「それで、私、チャンスだと思ったんです。お嫁さんになる……」と麗華。「え、まさか! お嫁さんになるってどういう意味なの?」と美登里。「その、二人で裸で……。言えません……」と麗華。「セックスのこと?」と美登里。「はい」と麗華。「それでうまくいったのかしら?」と美登里。「いいえ。お兄さんがそれはダメだって。お前のためにならないってお兄さんが泣いたから……」と麗華。「ふーん。それはありうる展開ね。それであきらめたの?」と美登里。「はい、そのときは。本当に好きだって言ってくれたので」と麗華。「両親は何も気が付かなかったのかしら?」と美登里。「だいたい分かっていたようです。それでお兄さんを追い出す相談をしていました。でも両親は帰りが遅いので、週末以外にはあまりゆっくり話をする時間がないようでした。週末は真由美叔母さんがお兄さんを外に連れ出してました」と麗華。「範経が殴られてかわいそうだったんだ。風邪で寝込んでたこともあったし」と真由美。「その話は後にしましょう。それで風邪は治ったの?」と美登里。「年末になっても治りませんでした。お父さんとお母さんが年末の休みで家にいて、体調の良くないお兄さんに大掃除を手伝わせて、お兄さんが倒れたんです。それから、それから……」と麗華。「泣かなくてもいいのよ。みんな麗華ちゃんの味方だから。麗華ちゃん、安心して」と美登里。「それから、お兄さんがいつの間にかいなくなって、わたしは家の外を探し回って、どこにもいないから交番のおまわりさんにお願いしたんです。お兄ちゃんを探してくださいって……」と麗華。「範経は見つかったの?」と美登里。「正月にお巡りさんに連れられて帰ってきました」と麗華。「高校の校舎で寝てたんだ。捜査願いが出てたらしくて、元旦に部屋着で街をうろつ
last updateLast Updated : 2025-12-06
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