All Chapters of 二人の彼女がいる理由: Chapter 31 - Chapter 40

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第31話 弁護

「麗華は悪くない。悪いのは範経兄さんだわ」と圭。「どういう理屈なの? 悪いのは父親と継母じゃない。虐待よ。ひどすぎるわ」と由紀。「いいえ、そもそも範経兄さんが悪いわ。女の子に気を持たせて、いざとなったら逃げてしまうなんて最低だわ」と明。「あなたたち、話を聞いていたの? 範経は再婚家庭のトラブルに巻き込まれただけよ」と由紀。「それが間違いだわ。なぜ兄さんは自分から何もしなかったの? 何もトラブルを解決しようとしなかったじゃない」と圭。「ひとりぼっちの麗華ちゃんの面倒を見てあげていたのよ。十分解決してるわ」と由紀。「いいえ、そこが問題なんです。兄さんは麗華の世話を喜んでしていたはずよ」と明。「しかも、麗華が自分を好きになることを分かっていた」と圭。「範経はそんな悪人じゃないわ。範経が魅力的だから女性がひきつけられるだけのことよ。まるで罠にかけたような言い方しないで!」と由紀。「兄は馬鹿じゃないわ。むしろその逆」と明。「範経は結果がわかっていても親切をする人よ」と由紀。「兄は天使ではなくて悪魔よ。親切をして、一緒に落とし穴に落ちていくのよ。わかるでしょ」と圭。「範経はいつも自分を犠牲にして人を助けるわ。今回だってそうよ。範経は麗華ちゃんのためを思って世話をして、最後に身を隠している」と由紀。「兄は女の子とひどい目に合うのが大好きなマゾなのよ」と明。「そんなお兄様が大好きなの。だからいつも苛めてあげるの」と圭。「範経はそんな変態じゃないわ」と由紀。「そうかしら。とても逃げられない状況に落ちて、相手とスリルを楽しむの」と明。「範経兄さんは父に殴られ、麗華は範経兄さんを助けようとして母を傷つける。最高のシチュエーションよ」と圭。「そんなふうに思えるのは、あんたたちが変態だからだ」と祥子。「範経、何か申し開きすることはあるかしら?」と美登里。「ぼくは泣いてないよ」と範経。「そりゃ嘘だ」と祥子。「兄さんが泣き虫だってみんな知ってるわ」と明。「しかも貞操の危機に泣くのはいつものことよ」と圭。「なによ、みんな知ったようなことを」と由紀。「みんな知ってるわ。あなただって。それより、範経、この子どうするつもり? 結婚してあげるの?」と美登里。「麗華ちゃんはまだそんな年じゃないよ」と範経。「何言ってるの。麗華ちゃんは
last updateLast Updated : 2025-12-07
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第32話 就寝

 範経は圭と明の部屋のベッドに寝そべった。「大丈夫?お兄ちゃん」と圭。「うん」と範経。「だれもお兄ちゃんのこと、分かってくれなかったね」と明。「ああ、もう疲れたよ、圭、明」と範経。「お兄ちゃんはあの家から逃げ出すために麗華とトラブルを起こしたのにね」と圭。「だれも気がつかないなんて、頭が悪すぎるわ」と明。「知ってたの?」と範経。「当然よ」と圭。「兄さんが家出しただけでは、親権はお父さんのままだから、あの家族を崩壊させた」「そしてお兄さんを追い出さざるを得ないように仕向けた」と明。「だけど、あんなことになるなんて思ってなかったよ」と範経。「うそつき」と圭。「離婚に追い込むつもりだったくせに」「麗華だけ引き取るつもりだったでしょ」と明。「ぼくはそんな悪魔じゃないよ」と範経。「だけど、お兄ちゃんは天使じゃない」と明。「みんなから良い人にされちゃって、かわいそう」と圭。「仕方ないよ、そういう役回りだから」と範経。「でももう大丈夫、ここには私たちしかいないから」と圭。「いつもの、ずるくて泣き虫のお兄ちゃんでいていいのよ」と明。「ありがとう」と範経。「今日はもう、何もしなくていいから」と圭。「ここでは、何をしてもいいのよ」と明。「ちょっと、何を」と範経。「私たちは麗華みたいな子供じゃないから」と圭。「のしかかってこないで……」と範経。「大丈夫、キスするだけよ」と明。「だめだよ、兄妹なんだから」と範経。「美登里姉さんとは毎日キスしてるのに」と圭。「仕方ないじゃないか、姉さんは強引だから」と範経。「それなら私たちも強引に行くわ」と明。「待って……」と範経。「安心して、キスだけよ」と圭。「その後はお兄ちゃん次第」と明。「キスだけだよ……」と範経。「お兄ちゃん、今日は特別だから……」と圭。「えっ……」と範経。「お兄ちゃん、私たち、準備できてるよ」と圭。「だめだって」と範経。「遠慮しなくていいから」と明。「そうじゃないんだ」と範経。「私たちのこと、嫌いなの?」と圭。「そんな訳ないだろ!」と範経。「お兄ちゃん、泣いてる?」と明。「ぼくは今のままの圭と明でいてほしいんだ」と範経。「どういう意味?」と圭。「かわいい妹のままでいてほしい」と範経。「わかったわ」と明。「お兄ちゃんのわ
last updateLast Updated : 2025-12-08
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第33話 朝食

 翌朝、麗華が範経に会いに塚原家を訪ねた。「おはようございます。遊びに来ました」と麗華。「あら、おはよう。麗華ちゃん早いのね」と美登里。「はい。範経お兄さんに会いに来ました」と麗華。「範経ならまだ寝てるわよ。朝ごはん、一緒に食べる?」と美登里。「いいんですか?」と麗華。「もちろんよ。今用意するから、そこに座って待ってて」と美登里。「あら、麗華。おはよう」と圭。「早いのね」と明。「圭お姉さん、明お姉さん、おはようございます」と麗華。「兄さんなら寝てるわよ。今日は学校行かないって」と圭。「え! 具合が悪いんですか?」と麗華。「いつものサボりよ」と明。「お兄さんが学校をサボるなんて……」と麗華。「兄は用事があるときしか学校に行かないわ。今のところ出席日数は足りてるみたいだし」と圭。「うそ……」と麗華。「兄は授業なんて受けなくても高校の教科書の内容くらい理解できるのよ」と明。「あなた、兄が家で教科書広げてるとこ見たことある? 宿題すらやってなかったはずよ」と圭。「言われてみれば……」と麗華。「あちらの高校に毎日出席してたとは思えない。あなたの前で、通ってるふりしてただけよ。家には居づらかったようだし」と明。「がんばって、いい人を演じていたのよ。かわいそうなお兄ちゃん」と圭。「朝ごはんできたわよ。早く座って食べなさい。遅刻するわよ」と美登里。「範経お兄ちゃんは食べないんですか?」と麗華。「兄は低血圧なの。朝食なんて普段から食べないわ」と明。「知らなかったでしょ」と圭。「毎朝、お兄ちゃんに食べさせてもらってました」と麗華。「かわいがられていたのね」と明。「うらやましいわ」と圭。「お兄ちゃんを見てきてもいいですか?」と麗華。「どうぞ」と明。「いつでも好きに入っていいわよ」と明。「でも昨日、お兄さんを渡さないって」と麗華。「冗談よ。盛り上げるために言ったの」と圭。「兄は自分で私たちのベットに入って来て寝てるのよ」と明。「うそ!」と麗華。「本当よ。兄は弱虫でさびしがり屋なの」と圭。「以前は美登里姉さんのベッドで寝てたの。でも盗撮騒ぎの時に姉さんに追い出されて今は私たちのベッドにいるのよ」と明。「美登里お姉さん!」と麗華は美登里を見た。「本当のことよ」と美登里。「独りでクローゼットに寝かさ
last updateLast Updated : 2025-12-09
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第34話 登校

 範経は美登里に手首をつかまれ、高校に連れられてきた。「ここでいいよ。ちゃんと出席するから」と範経。「だめよ。教室まで送るわ」と美登里。「恥ずかしいよ、姉さん」と範経。「何いってるのよ。姉と弟が一緒に歩いて何が悪いのかしら」と美登里。「お姉さんは目立つんだよ」と範経。「なぜ?」と美登里。「美人だからだよ」と範経。「そうかしら?」と美登里。「せめて、手を離してよ。ぼくたち誤解されちゃうよ」と範経。「駄々をこねるなら、ここでキスするわよ」と美登里。「ああ、みんな見てる」と範経。「気のせいよ」と美登里。「シスコンと思われちゃうよ」と範経。「嫌なの?」と美登里。「そういうわけじゃないけど……」と範経。「私のこと嫌い?」と美登里。「大好き」と範経。「あなたはシスコンでしょ?」と美登里。「うん」と範経。「じゃあ何が悪いのかしら?」と美登里。「ぼくがシスコンってことが、みんなにばれるじゃないか」と範経。「もっと自分に自信を持って、堂々としなさい」と美登里。「無理だよ。そんな……」と範経。「私が見本を見せてあげるわ。ここで弟の範経のことが大好きだって宣言して、キスしてあげる」と美登里。「やめてよ! わかったから。ぼくはシスコン野郎ですって、みんなに知れ渡ってることを認めるから」と範経。「わかればいいのよ」と美登里。 教室に範経と美登里が入った。「美登里先輩、おはようございます。範経、おはよう」と由紀。「由紀ちゃん、おはよう。範経がサボろうとしてたから連れてきたわ。置いていくからよろしく」と美登里。「わかりました。範経、こっちにいらっしゃい。私たちが面倒を見てあげるから、心配ないわよ」と由紀。「うん」と範経。「範経だ。美人の姉から美少女のガールフレンドに引継ぎか。うらやましい」とクラスメイトの山本。「あの範経のどこがいいんだ?」とクラスメイトの高木。「今日もあいつらがいちゃつくのを見せつけられるのか」とクラスメイトの森川。「範経、おはよう。今日は学校きたんだ」と祥子。「うん。姉さんに連れられてきたんだ。教室まで」と範経。「それで男子がざわざわしてたんだ」と祥子。「恥ずかしいよ」と範経。「あいつらのことなんて気にするな。私たちがいるから」と祥子。「ありがとう」と範経。「シスコンじゃなくて、ノーマルな男子
last updateLast Updated : 2025-12-10
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第35話 親権

 夕食の後、美登里が範経と麗華、それから圭と明に言った。「ちょっと大事な話があるから、聞いてほしいの」「何、姉さん」と範経。「あなたの親権のことなのだけど」と美登里。「父さんと話したの?」と範経。「ええ、さっき電話でね。範経の親権はお母さんに移ることになったわ。そのかわり範経は麗華の面倒を見るのよ。麗華はこの家で朝食と夕食を食べて、夜は両親の家に帰る。お風呂はこの家で範経が入れてあげなさい」と美登里。「わかったよ」と範経。「うれしい!」と麗華。「それから、仕事を引き続き手伝ってほしいと言ってるわ」と美登里。「いやだと言ったら?」と範経。「それは困るわ。この話はセットでお父さんとお母さんが合意してるから」と美登里。「未成年のうちは仕方がないか」と範経。「お兄ちゃんはお父さんの会社で働いてるの?」と麗華。「そうよ。役員としてね。私もよ」と美登里。「圭お姉さんと明お姉さんは?」と麗華。「私たちは母の会社の役員よ」と圭。「だから、私たちは美登里姉さんと範経兄さんとは商売敵よ」と明。「名前だけで何もしてないよ。税金対策だから」と範経。「うそよ」と圭。「もう法律上は親子じゃないんだから、税金対策にはならないわ」と明。「ここで仕事の話をしないで! ややこしくなるでしょ」と美登里。「それだけ?」と範経。「明日、役員会があるから、一緒に来てちょうだい。麗華ちゃんも一緒にね。以上よ」と美登里。「残念だわ。会社も移ると思ってたのに」と圭。「相変わらず、お兄ちゃんのこと、こき使ってるんだ。ろくな待遇じゃないのに」と明。「うちにきたらお兄ちゃんはVIPだよ」と圭。「ありがとう、考えとくよ」と範経。「お兄ちゃん、疲れてるでしょう? 部屋に行きましょう」と明。「それがいいわ。私たちのベットでお兄ちゃんの待遇を考えましょう」と圭。
last updateLast Updated : 2025-12-11
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第36話 役員会

 美登里と範経と麗華の三人は、父が経営する会社「第二アルゴー」の本社を訪ねた。「社長、範経を連れてきました」と美登里。「久しぶりだな、美登里。今まで通りお父さんと呼んでくれよ。頼む。この通りだ」と父の幸一。「来ましたよ、社長」と範経。「範経、お前も頼むよ」と幸一。「お父さん!」と麗華。「麗華ちゃん、よく来てくれたね」と幸一。「お父さんとは呼べません。範経をずいぶん殴ったそうですね」と美登里。「悪かったと思ってるよ。でも仕方ないだろう。自分の息子が、義理の娘に手を出したなんて、ぶつしか仕様がないじゃないか」と幸一。「でも範経は何もしてなかった」と美登里。「麗華ちゃんとべったりだったんだ。何かあったと思うのが普通だろう」と幸一。「いいえ。範経が普通ではないことは、わかっていたはずです」と美登里。「だけど小学生にまでモテるとは思ってなかったよ」と幸一。「範経を物置に寝かせていたそうですね。しかも風邪をひかせて、その上、年末の大掃除をさせたそうですね。許せません」と美登里。「悪かったよ。でも少し誇張されて伝わってる気がするよ。物置に寝かせたのは、その方が寛子の家に帰りやすいかと思ったんだよ。でも謝るから。ごめん範経、許してくれ」と幸一。「範経が許しても、私が許しません」と美登里。「何でも言うことを一つ聞いてやる。だから許してくれ」と幸一。「範経、言ってみなさい」と美登里。「仕事を辞めたい」と範経。「たのむ。それだけは勘弁してくれ」と幸一。「ぼくはもういらないでしょ。仕事は軌道に乗ってる。この会社は、もうベンチャー企業じゃないよ」と範経。「何を言ってるんだ。お前だってわかってるだろ。いつ問題が発生するかわからない。それにお前に今すぐ頼みたい仕事があるんだよ」と幸一。「範経、他に望むことはないの?」と美登里。「それなら先月買収した中川オプティクスの株式と経営権をぼくにください」と範経。「そんな無茶な」と幸一。「何でもって言いましたよね」と美登里。「わかったよ、それならお父さんって呼んでくれないか」と幸一。「範経、これでいいのかしら」と美登里。「うん、一応」と範経。「わかったわ、お父さん」と美登里。「ふう、やっぱり悪魔だな、範経は」と幸一。「それで仕事って?」と範経。「お客さんの相手をしてほしいんだ」と幸一。「え
last updateLast Updated : 2025-12-12
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第37話 涼子

 ある週末の昼間、一人の女性が範経の枕元に立った。「範経、久しぶりね」「ああ、涼子姉さん」と範経。「寝てるの?」と涼子。「体調が悪いんだ。熱があって」と範経。「そう。また無理してるのね。体が弱いくせに」と涼子。「何しに来たの?」と範経。「あなたを連れ出しに来たの。約束したでしょ、ちゃんと居場所を作ってあげるって」と涼子。「いらないよ、そんなもの」と範経。「ここがいいの? あなた、こんな趣味だったかしら」と涼子。「ここは圭と明の部屋だよ」と範経。「妹のベットで寝てるの? シスコンなのね」と涼子。「余計なお世話だよ」と範経。「心配になるわ、大切な従弟が実の妹と寝床を共にしているなんて想像したら」と涼子。「看病してもらってるんだ。やましいことは何もないよ」と範経。「どんな看病をしてもらってるのかしら?」と涼子。「圭と明は妹だよ」と範経。「だけど美少女よ。実の兄でも間違いを犯してもおかしくないような」と涼子。「ぼくはもう寝るよ。疲れてるんだ」と範経。「だめよ。私はあなたに会いに来たのよ」と涼子。「また今度でもいいでしょ?」と範経。「だめよ。あなたがひどい目にあったって聞いたから、心配してきたのよ」と涼子。「それほどでもないよ。今は快適だし」と範経。「妹のベットが?」と涼子。「そうだよ。悪い?」と範経。「だめよ、そんなこと絶対に」と涼子。「何が悪いんだよ。ぼくは圭と明が好きなんだ」と範経。「やっぱりそんなことになっていたのね。ごめんなさい、お姉さんがあなたを放っておいたからね。許して。もうあなたの側を離れないって約束するから」と涼子。「頼んでないよ、そんなこと」と範経。「うそよ。さびしがり屋の泣き虫のくせに」と涼子。「ぼくはもう子供じゃない」と範経。「いいえ、子供よ。目を見ればわかる。何も変わってないわ。一人にされるとすぐに拗ねてしまう子供よ。範経、お願い、お姉さんと来て」と涼子。「何がしたいんだよ」と範経。「あなたの住む場所を用意したわ。私と一緒に来て。私があなたの世話をしてあげるから」と涼子。「そんなのいらないよ」と範経。「明、私たちの部屋に泥棒猫がいるわ」と圭。「本当だわ、圭。私たちのお兄様を誘惑している泥棒猫がいる」と明。「久しぶりなのに、随分な挨拶ね。圭、明」と涼子。「勝手
last updateLast Updated : 2025-12-13
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第38話 同居

 美登里は範経と圭、明に向かって言った。「三人とも聞いて。今日からまた、涼子姉さんがここに住むことになったから」「さっきの駆け落ちの話は何?」と圭。「あわよくばって思ったの。でも半分本気よ。またみんなで楽しく暮らしましょう」と涼子。「なぜ今更戻ってきたのか理由を聞かせてもらえないかしら」と明。「涼子姉さんは母さんの会社に戻ってくることになったの」と美登里。「寛子叔母さんから、ぜひって頼まれたのよ」と涼子。「何で今更?」と圭。「範経の親権よ」と涼子。「何の関係があるの?」と明。「叔母さんに範経との交際を認めてもらったの。それが会社で働く条件なのよ」と涼子。「母が許しても私たちは許さない」と圭。「範経を連れて行くことができないなら、私がここに住むから。よろしくね」と涼子。「いやよ」と明。「兄は渡さないわ」と圭。「範経はどうなの?」と涼子。「どうって何が?」と範経。「あなたは今夜から私の部屋で寝るのよ」と涼子。「へ?」と範経。「私たち、許婚になったから」と涼子。「そんな覚えはないよ」と範経。「親同士で話がついているわ。あとはあなた次第よ」と涼子。「だから、今のままでいいって」と範経。「だめよ、妹と同じベッドで寝るなんておかしいでしょ」と涼子。「何が悪いんだよ」と範経。「いいわけないでしょ。私があなたのシスコンを治してあげるわ」と涼子。「今更、のこのこ現れて、勝手なことを言わないでください」と明。「兄は私たちとの兄妹愛に生きることにしたんです。邪魔をしないでください」と圭。「ちょっと、美登里、どうなってるのよ、この子たち」と涼子。「あなたが悪いんでしょう。突然いなくなったりするから」と美登里。「あなたもなんか言ってあげてよ!」と涼子。「いやよ。範経は私の部屋にもときどき来てくれるのよ。あなたになんか渡さないわ」と美登里。「何よこの家!」と涼子。「あら、麗華が来たわ」と美登里。「だれよそれ?」と涼子。「麗華ちゃん、こちらに来て。この人、涼子お姉さんよ。私たちの従姉なの。今日からここに住むことになったの」と美登里。「はじめまして、麗華です」と麗華。「こんにちは、麗華ちゃん。よろしくね」と涼子。「こちらこそ、よろしくお願いします」と麗華。「ちゃんとあいさつできるのね、えらいわ。ここ
last updateLast Updated : 2025-12-13
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第39話 立ち聞き

 美登里が事情の説明を始めた。「話が長くなるけど、三年前に私たちの両親が経営していたアルゴーという会社が二つに分かれたの。父親の第二アルゴー社と母親のローレル社よ。そのとき涼子姉さんは会社を辞めたの。ちなみに、範経と私が第二アルゴー社、圭と明がローレル社に所属したわ」と美登里。「それで私は出戻ってきたの。こんな内輪の話、この子にしてもいいの?」と 涼子。「麗華は父の義理の娘で、この子の母親は第二アルゴーの社員よ」と美登里。「会社の話はすべて秘密だから、外ではしゃべっちゃだめよ」と美登里。「あの、さっきから由紀さんと祥子さんも聞いてます。私と一緒に家に入って来てたんです」と麗華。「あら、気が付かなかったわ」と美登里。「ごめんなさい。立ち聞きするつもりはなかったのです」と由紀。「このまま挨拶しないで帰るのは悪いと思っているうちに、声をかけるタイミングを逸してしまって……。ご無沙汰しています、涼子さん。ほんとうにごめんなさい。すぐに失礼します」「由紀と祥子、まだ範経に遊んでもらってるの?」と涼子。「今は範経の彼女よ」と美登里。「どちらが?」と涼子。「両方よ」と美登里。「おやおや。範経、あなた、手当たり次第なのね」と涼子。「涼子お姉様、もう、あなたの席は空いてないわ」と圭。「どうぞお引き取り下さい」と明。「本当に怒るわよ」と涼子。「涼子姉さんが悪いのよ。大事な時にいなくなるから」と美登里。「仕方ないでしょ。あのときは範経がいなくなって、どうしていいかわからなくなってたから」と涼子。「それはみんな一緒よ」と美登里。「あの、私たちはそろそろ失礼します。本当にごめんなさい」と由紀。「もう、いまさらよ。聞いていきなさい。あなたたち、範経の彼女なんでしょ」と涼子。「三年前、なぜ範経が家出したか知ってる?」と美登里。「範経は旅に出たくなったからって」と祥子。「そんなわけないでしょ。麗華も聞いておきなさい」と美登里。「はい、わかりました」と麗華。
last updateLast Updated : 2025-12-14
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第40話 手伝い

「以前、うちの両親がベンチャービジネスの会社を経営してたこと、あなたたちも知ってるでしょ」と美登里。「はい。人工知能を開発する会社だって」と由紀。「そうよ。社員は両親二人だけの会社で、子供の私たちや姪の涼子姉さんが雑用を手伝ってたの。そのうち両親が私たちを本気で教育して、仕事をさせようとしたの。初めは涼子姉さんと私だった。厳しく理数系の科目とプログラミングを叩きこまれて、それなりに役に立つようになったわ」と美登里。「小学生の時にですか?」と由紀。「そうよ。すごいでしょ」と美登里。「信じられません」と祥子。「それで味を占めた両親は、範経の教育を始めたの。ところが範経はあまり飲み込みがいい方じゃなくて、父親はひどくいらついていた。あのころから範経によく暴力をふるっていたわ」と美登里。「かわいそう」と由紀。「今思えばね」と美登里。「人手不足と経営不振が続いて両親は必死だったの。スパルタ的な教育を受けているうちに、範経も次第に仕事の内容を理解できるようになってきたわ」と美登里。「それで範経は学校に来ていなかったの?」と由紀。「そうよ」と美登里。「範経もお手伝いしてたなんてすごい」と祥子。「そういうレベルじゃなかったの」と美登里。「気がついたら私たちは範経に追い抜かれていた。範経は仕事をするというよりも、人工知能そのものに興味を持って研究を始めていたのよ」と美登里。「小学生なのに?」と麗華。「そうよ、あなたの年齢ぐらいのときよ」と涼子。「範経のおかげで開発が進んだわ。学者が解けない問題をいくつも解決した。範経はへとへとになったけど、ようやく製品の発表と販売ができるようになった。それが五年前のことよ」と美登里。「だから範経はいつも疲れていたのね」と由紀。「そうよ。あのとき、範経に優しくしてくれてありがとう。私たち家族には余裕がなかったの」と美登里。「そう、毎日が戦争だったわね」と涼子。「製品の販売は順調だった。設計思想と性能が画期的だったから。そのうち開発過程が世間から注目され始めたの。マスコミから取材を受けて、両親は家族で製品を開発したと宣伝した」と美登里。「ひょっとして、あのフォーシスターズですか?」と由紀。「そうよ、四姉妹が画期的製品を開発したって宣伝したの」と美登里。「だけど会社名が違います。確か直結型人工知能のフォーシ
last updateLast Updated : 2025-12-15
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