All Chapters of 二人の彼女がいる理由: Chapter 51 - Chapter 60

60 Chapters

第51話 ジョン・ヘルマン

「ところであなたはなぜ、第二アルゴーとローレルの二社を統合しようと考えたのでしょうか」とヘルマン。「あなたが圭と明を養女にするのと引き換えに融資をすると聞いたからですよ」と範経。「そんな、誤解も甚だしい。それで会社を立て直したと」とヘルマン。「そういうことになりますね。かわいい妹のために」と範経。「最初にあなたに相談すべきだったのですね」とヘルマン。「まず認めたりはしませんよ」と範経。「ところであなたがこの会社の経営責任者ということですが、人工知能にはお詳しいのですか?」とヘルマン。「まったく、人工知能にはノータッチです。優秀な二人の副社長に任せきりです。ここにいるのはフォーシスターズの上の二人です」と範経。「そうでしたか」とヘルマン。「範経、その冗談はもうよさないか?」と幸一。「そうよ、少し失礼だわ」と寛子。「そうかな。ぼくにはどうしてこんなことになったのか、分からないけどね」と範経。「どういう意味でしょうか?」とヘルマン。「もともとこの会社の人工知能の開発者は、範経だったのです」と幸一。「そんな……、なぜだれも教えてくれなかったのです……」とヘルマン。「重要な企業秘密ですよ。フォーシスターズの宣伝効果がなくなったりしたら、それこそ一大事ですからね」と範経。「でも、そんな重要なことに、だれも気が付かないなんて……。それではなぜ三年前に会社が分裂して、その片方が傾くようなことになったのですか?」「それは家族の問題なので、お話しできません」と範経。「範経、隠さなくていいだろう」と幸一。「そんなに話したければ、仲良しのあんたたちがすればいいだろう。初対面の人にする話じゃないよ」と範経。「立ち入ったことを聞いて申し訳ない」とヘルマン。「私が話します。範経、いいでしょう?」と美登里。「わかったよ」と範経。「三年前、会社が軌道に乗ったころ、範経が家出したのです。それがきっかけで会社が分裂して、両親も離婚しました。その後、範経が戻ってきて、会社を立て直したのです。その際に範経を社長に立てることにしたのです」と美登里。「そのような事情があったのですか。あなたにはかなり失礼があったようです。お詫びいたします」とヘルマン。「あなたは何も知らなかっただけでしょう、ヘルマンさん」と範経。「どうかジョンとお呼びくださ
last updateLast Updated : 2025-12-25
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第52話 秘書

「ところでそこの美しい女性はあなたの秘書ですか?」とジョン。「まあそんなところです。アンドロイドの秘書です」と範経。「そうでしたか。美しい」とジョン。「そうでしょう。初めてあなたと意見が一致しましたよ。特注品なのです」と範経。「おい、範経!」と幸一。「わかりましたよ、もうこの話はしません。みな趣味が悪いと言って私を責めるのですよ」と範経。「そうですか。少しうらやましいですな」とジョン。「絶対に貸しませんよ」と範経。「そんな意味ではありませんよ」とジョン。 「圭常務と明常務が参りました」とレイ。「入ってもらってくれ」と範経。「何かご用でしょうか、社長」と圭。「お客様が是非君たちに会いたいそうだ」と範経。「ジョン・ヘルマンです。久しぶりです。お二人ともますます美しくなられた」とジョン。「こんにちは、ヘルマンさん」と明。「あなた方に再会できて感無量です」とジョン。「あなたのご厚意はうれしいのですが……」と圭。「それ以上はおっしゃらないでください。お二人を愛している兄上からあなた方を引き離そうとするなど、私が愚かでした」とジョン。「いいえ、それは違います。私たちが兄から離れたくないのです」と明。「勘違いをなさらないでください」と圭。「あなた方に慕われる範経さんが正直にうらやましい」とジョン。「兄を慕っているのではなくて、愛しているのです」と明。「そうなのでしょうね。あなた方の兄妹愛をひしひしと感じます」とジョン。「分かってくだされば結構です」と圭。 「範経さん、長居をいたしました。そろそろ失礼します」とヘルマン。「そうですか。これからどちらへ行かれますか?」と範経。「幸一に案内してもらって、街をぶらぶらするつもりです」とヘルマン。「お気をつけて。それから私が人工知能の開発者であることは内密にしてください」と範経。「心得ています。信用してください」とヘルマン。「範経、今日の夕方、食事に付き合えないか?」と幸一。「私の家族も来ているのです。食事にご一緒できれば光栄です」とヘルマン。「ぼくは外食は苦手なので……」と範経。「範経、だれかが付き添うから行きなさい」と美登里。「私たちが行きます」と圭。「何も心配ありませんよ、社長」と明。「分かったよ」と範経。「妻と娘たちが喜びます。彼女たちはあ
last updateLast Updated : 2025-12-26
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第53話 会食

 ジョンが去ったのち、圭が言った。「今日は私たちが兄さんのお世話をするから」「わかったわ。でも、くれぐれもお客さんに失礼のないようにね」と美登里。「養女に、なんて二度と言わないように釘を刺すだけよ」と明。「ほどほどになさい。ヘルマンさんに悪気はないのよ」と涼子。「わかっているから、お姉さんたちは口を出さないで」と圭。 夕方、範経は姉妹たちと指定されたレストランに出かけた。「街に出るなんて久しぶりだよ」と範経。「今日のお客さんへの対応は私たちに任せて、お兄ちゃん」と明。「ああ、二人がいれば安心だよ」と範経。「私たちが両側についてあげるからね。お兄ちゃん」と圭。「心配だわ。ついて来てよかった」と美登里。「ほんとうね」と涼子。 レストランには、すでにジョンの家族と範経の両親が来ていた。「お前たち、来たか」と幸一。「お待ちしていました」とジョン。「お待たせして申し訳ありません」と範経。「こちら、妻のアンです」とジョンが隣の女性を紹介した。「初めまして、範経です」と範経。「こんにちわ、範経さん。一度お会いしているはずです。三年前に私たちの家で」とアン。「皆さんそうおっしゃるのですが、私は全く覚えていないのです。狐につままれたような気分ですよ」と範経。「家族でお越しになられたはずですよね」とアン。「その通りですよ、アン。範経もいたはずです」と幸一。「私は影が薄いから、だれの記憶にも残らなかったのでしょう。事実、あなたの家族でぼくを覚えている方は一人もいない」と範経。「そうなのよ、不思議だわ。こちらが長女のケイト、次女のメアリーです」とアン。「どうもはじめまして」と範経。「どうもお久しぶりです。ケイトさん、メアリーさん」と圭と明。「お久しぶり」とケイトとメアリー。「でも不思議だわ、だれも覚えていないなんて」とアン。「それは範経が旅行中、具合が悪くて寝ていたからです。滞在中にご家族のだれにも会わなかったのでしょう」と幸一。「いくら具合が悪かったにせよ、挨拶もしないというのは変だ。それに病人がいればベットを用意したはずだし、医者を呼ぶこともできたはずなのだが、何も記憶にないなんて」とジョン。「範経が不機嫌でゴロゴロしているのはいつものことだから、放っておいただけのことだと思います」と幸一。「そうだとす
last updateLast Updated : 2025-12-27
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第54話 四姉妹

「新会社の社長と聞いて、もっと年上の方を想像していました。それがこんな若い方だったなんて」とジョンの長女ケイト。「父がけんもほろろにあしらわれたと聞いて、どんな怖い人だろうと想像していたんです」とジョンの次女メアリー「そんなつもりはありませんでした。妹の留学の件を、きちんとお断りしたかっただけです」と範経。「範経さんと圭さん明さんの兄妹愛は本当に強いのですね。感服しました」とジョン。「そんな事を言ってくれるのはあなただけですよ、ジョンさん。私はどこでも変態扱いです」と範経。「あなたたち四姉妹と範経さんは仲がよろしいのね」とジョンの妻アン。「実は四姉妹というのは嘘なんです。本当の姉妹ではないんです。実は私、従姉なんです」と涼子。「知ってますわ。従姉でも仲がいいのだから姉妹も同然ですよ」とアン。「それが違うのです。他の三人と違って、私だけは範経と結婚できるのです」と涼子。「あら!」とアン。「涼子姉さん、突然何を言い出すのよ」と美登里。「この機会に言っておいてあげる。あなたたちと私の間には越えられない壁があるのよ。血のつながりという壁が。私だけが、範経と将来を誓い合うことができるのよ」と涼子。「そんなの裏切りじゃない」と涼子。「私は寛子叔母様から交際の許可をもらったのよ。もう私には何の障害もないわ」と涼子。「範経の意思はどうなるのよ」と美登里。「範経は私にプロポーズしたわ」と涼子。「いつのことよ。子供の頃、範経は誰彼なくプロポーズしてたわ。あなたのような自称許婚なんて十人はいるわよ」と美登里。「だから何? 約束は約束よ」と涼子。「あなたと結婚なんてするわけないわ。だってあなたは一度、範経を捨てたんですもの」と美登里。「捨てたんじゃないわ。どうしていいかわからなくなっただけよ。変な言いがかり付けないで」と涼子。「範経さんってもてるのねえ」とアン。「はあ」と範経。「ところであなたのことを来日前に調べさせてもらったのですが、何も出てきませんでした。涼子さんや美登里さんや圭さん、明さんの輝かしい業績や記録はたくさん残っているのに」とジョン。「ぼくは義務教育の期間、ほとんど学校に行ってなかったのです。だから成績なんて残ってません」と範経。「それはなぜですか?」とジョン。「仕事をしてたからです。人工知能の開発の」
last updateLast Updated : 2025-12-27
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第55話 ホームステイ

「圭、明、あなたたちが妹になってくれるって聞いてとても楽しみにしていたの。少し残念だわ」とケイト。「私たちは兄から離れられないわ。お兄様は私たちのすべてだから」と圭。「そのようね」とケイト。「それに、一日でも私たちがいなければ、ハイエナのように姉たちが兄さんを奪っていくわ」と明。「あなたたちって本当に範経さんのことが好きなのね」とメアリー。「ところで、範経さんは圭と明の兄ということは、高校生ですか?」とケイト。「ええ、一応は。社長になってからは時間がないので退学するつもりなのですが、退学届けを出す時間すらないのです」と範経。「ひょっとして私と同い年かしら」とケイト。「どうでしょう。私は十六歳で高校二年生ですが」と範経。「同い年だわ。もっと年下に見えていたけど」とケイト。「実は私、日本への留学を考えていて、今回の旅行は留学の下見を兼ねているのです。美登里さんと範経さんの通っている高校を案内してもらえないでしょうか」「それはいい考えよ。私たちが案内してあげるわ」と美登里。「今言ったようにぼくは高校を辞めるつもりで……」と範経。「何いってるのよ」と美登里。「ぼくはもう退学届の書類を書いたし……」と範経。「保護者のハンコを押したの?」と美登里。「いや。まだだけど、お母さんに……」と範経。「あなたの保護者は私よ。知らなかったの?」と美登里。「え?」と範経。「お母さんが忙しいから、あなたのことは私に任されているの。勝手はさせないわ」と美登里。「そんな無茶な」と範経。「ちゃんと高校に通いなさい」と美登里。「忙しいよ」と範経。「だめよ、落ち着いたら、毎日私が連れて行くから」と美登里。「ケイト、私たちが案内するわ」「ぜひお願いします」とケイト。「私も連れてって欲しいわ」とメアリー。「もちろんよ。来週、高校の文化祭があるの。一緒にいきましょう」と美登里。「うれしいわ!」とケイトとメアリー。「よかったらうちに泊まっていってもいいわよ」と美登里。「本当に?」とケイトとメアリー。「美登里姉さん、名家のご令嬢に泊まっていただけるような家じゃないよ」と範経。「構わないわ。だって日本でホームステイしたいと思っていたから」とケイト「お父さん、お母さん、いいでしょ?」「もちろんだ。範経さん、いいのですか?」とジョン。
last updateLast Updated : 2025-12-28
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第56話 キス

 帰宅した範経はリビングルームのソファーでくつろいでいた。「範経、こっちに来なさい」と美登里。「何、姉さん」と範経。「キスして」と美登里。「え、ここで?」と範経。「そうよ、毎日するっていう約束でしょ」と美登里。「だけど、だれか来るかも……」と範経。「かまわないから、早く」と美登里。「ちょっと……」と範経。「力を抜いて」と美登里。「待って……」と範経。「そうよ、いい子……」と美登里。「……ぼく疲れてるんだ。お客さんと外食なんて好きじゃないよ」と範経。「分かってるわ」と美登里。「もう眠い……」と範経。「横になりなさい。膝枕してあげるから」と美登里。「うん」と範経。「ここで休みなさい」と美登里。 範経が眠った。美登里は範経を抱きかかえて立ち上がった。「圭、明、今日は範経を私の部屋で寝かせるわ。」「どうぞ」と圭。「好きになさって。お姉様」と明。「範経さんをお嬢様抱っこして連れて行ったわ。美登里って力持ちね」とケイト。「圭、明、いいの?範経さんをお姉さんの部屋で寝かせて?」とメアリー。「ええ、構わないわ。兄が幸せなら」と圭。「優しいのね」とケイト。「兄の心配がないなら、私たちも寝るわ」と明。「ケイト、メアリー、おやすみなさい」と圭。「おやすみなさい」とケイトとメアリー。
last updateLast Updated : 2025-12-28
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第57話 文化祭

 由紀は美登里に電話をかけた。「範経が社長になったと聞いたのですが」「ええ、そうなの。だからしばらくは忙しくて高校に出られないわ」と美登里。「先日、電話で範経が高校を辞めるって言ってたのですが……」と由紀。「やれやれ。そんな事はさせないわ」と美登里。「本当ですか?」と由紀。「約束するわ。落ち着いたら、また高校に連れていくから」と美登里。「範経は無理してないですか?」と由紀。「少し疲れてるわ。投資家の接待のような慣れない仕事が多いから」と美登里。「かわいそうな範経」と由紀。「また可愛がってあげてね」と美登里。「はい」と由紀。「ところで頼みがあるのだけど」と美登里。「何でしょうか?」と由紀。「うちにお客さんが来ているの。仕事でお付き合いのある方の娘さんで、日本の高校を見たいと言っているの。鶴峰高校の文化祭に連れていくから、一緒に案内してもらえないかしら」と美登里。「もちろん、喜んで。私たち、劇をやるのでぜひ見に来てください」と由紀。「演目は何?」と美登里。「ロミオとジュリエットです」と由紀。「随分べたね。分かったわ。範経も連れていくからよろしく頼むわ」と美登里。「ええ、お待ちしています」と由紀。
last updateLast Updated : 2025-12-29
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第58話 校長室

 美登里はケイトとメアリーを鶴峰高校の文化祭へ連れて行った。範経と涼子が同行した。「どこにに行くの?」と範経。「校長室よ。先生方に呼ばれているの」と美登里。「高校に来るのは久しぶりだわ。変わらないわね」と涼子。「行きたくないよ、ぼくは由紀ちゃんと祥子ちゃんに会いに行くよ」と範経。「だめよ、あなたも来なさい。先生方にケイトとメアリーを紹介するのよ」と美登里。「そんな必要ないだろ。文化祭に遊びに来ただけなのに」と範経。「校長が是非にっていうのよ。それに短期留学でお世話になるかもしれないでしょ」と美登里。「まじでこんな高校に留学するのか。ありえないだろ。ここの教員どもはろくでもないよ」と範経。「範経、黙りなさい。ケイト、メアリー、ここが校長室よ」と美登里は言ってドアをノックした。「塚原です」「どうぞ、入ってください」と中から声がした。 美登里たちは校長室に入った。部屋には三人の教員がおり、そのうち二人は応接セットの椅子に座っていた。美登里はケイトとメアリーを紹介した。「校長先生、こちらがケイト・ヘルマンさんとメアリー・ヘルマンさんです」「ようこそ、おいでくださいました。校長の山本と申します。こちらが教頭の内田です」と校長の山本が自己紹介した。「こちらこそ、よろしくお願いします」とケイトとメアリーが山本らと目を合わせた。「前川涼子さんも久しぶりです。みなさんこちらに座ってください」と山本。 美登里とケイトとメアリーが山本と内田に向き合う長椅子に座った。「範経もこちらに来なさい」と美登里。「ぼくはいいよ。椅子が足りないし」と範経。「すぐ椅子を持ってこさせます」と山本。 雑用係の若い教員が二脚のパイプ椅子を長椅子の横に広げた。「立ったままで結構です。用件だけ聞いたら帰りますから」と範経。「範経、こちらに座りなさい。そのパイプ椅子には私が座ります」と美登里が立ち上がって、長椅子の席を譲った。「わが校に来てくださって大変光栄です。今はどちらにご滞在なのですか?」と山本。「塚原家のお宅にホームステイをしています。父が範経さんの会社とお付き合いがある縁でお願いしたのです」とケイト。「塚原家の子弟の方々はわが校の誇りです。在学中の美登里さんは常に成績は首位ですし、従姉で卒業生の涼子さんも同様でした。範経君には少し問題がありますが、責任を持
last updateLast Updated : 2025-12-29
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第59話 劇

 由紀と祥子が主役を務める「ロミオとジュリエット」は大盛況だった。劇が終わって範経たちは体育館を出た。「範経! やっぱりいた。一番前の席にいたから、探しに来たのよ!」と由紀。「由紀ちゃん! 祥子ちゃん!」と範経。「もう逃がさないわ。今までどこに行っていたのよ!」と由紀が範経を抱きかかえた。「ちょっと、こんなところで……」と範経が体をねじって抵抗した。「私が先よ」と由紀。「しかたない。私は次でいいわ」と祥子。「観念するのよ、範経」と言って由紀は範経に顔を近づけた。「なんで、いきなりこんな……」と範経。「今度会ったら絶対キスするって決めてたの」と由紀。「もう離さないから」「みんな見てる……」と範経。「抵抗したら、もっといやらしいことしちゃうわよ」と由紀。「なんでそんな……」と範経。「高校をやめようとしたでしょ」と由紀。「それは……」と範経。「私たちのこと、どうするつもりなの?」と祥子が後ろから耳元でささやいた。「ごめん」と範経。「彼女じゃなくて、公認の愛人にしてもらうわ」と由紀。 由紀は範経の口をキスでふさいだ。 祥子が後ろから、他の人から見えないように範経の股間を手で探った。「範経のアレ、硬くなってるよ」と祥子がささやきながらアレをさすった。 由紀のキスの後、祥子が範経を自分の正面に向け、両腕で強く抱きかかえてキスをした。「ねえ範経、私たちのこと、ちゃんと考えてくれる?」と由紀が後ろからささやきながら、範経のズボンのポケットに手を入れてアレをにぎった。 一緒にいた美登里やケイトたちも含めて範経の周りに人垣ができた。美登里は範経たちのキスシーンが終わるのを待ってから言った。「この二人が由紀と祥子よ。由紀、祥子、こちらがケイトとメアリー。今、うちの家に泊まってもらっているの。さっきあなたたちの劇を見せてもらったわ」「初めまして。由紀さんがジュリエットで祥子さんがロミオだったのね。ロミオ役が女の子だったなんて、ちょっと驚いたわ」とケイト。「どちらが範経さんのガールフレンドなの?」とメアリー。「両方よ。見ての通り」と美登里。「さすが範経さんね。無理やり人前でキスされる男の子なんて初めて見たわ」とケイト。「しかも二人の美少女になんて」とメアリー。「ケイトさん、メアリーさん、私たちが文化祭を案内するわ」と言って由紀が歩
last updateLast Updated : 2025-12-29
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第60話 推論

 ある初夏の夕方、アルゴー社で定例の役員会議があった。「またお客さんが来るの?」と範経。「言っておいただろう。ネオジェネ社の創業者のロバート・アンダーソンさんと家族だ。お前、一度会ってるだろう」と幸一。「かろうじて覚えてるよ。シャーロットの父親でしょ?」と範経。「そうだ、あのおてんば娘も一緒に来るそうだ」と幸一。「範経はまた追い回されるのね」と美登里。「息子のトムも来るそうだ。お前にぞっこんらしいぞ」と幸一。「いやだわ」と美登里。「断れないの?」と範経。「ロバートはお前に会いたいらしいんだ」と幸一。「何で?」と範経。「会って聞け」と幸一。「シャーロットも範経に会いたがってるでしょうね」と涼子。「何でぼくなんだよ」と範経。「チェスで負かされたからでしょ」と美登里。「負けず嫌いだものね、あの娘」と涼子。「何で負けてやらなかったんだ。お前らしくない」と幸一。「疲れてたんだよ。接待将棋なんて気分じゃなかったから、最短の手で勝って終わらせたんだ」と範経。「怒らせたお前が悪い。今回も遊んであげるんだな」と幸一。  次の日の午後、アンダーソン氏がアルゴー社を訪問した。「ロバートを連れて来たよ」と言いながら幸一が会議室に入った。 範経が椅子から立ち上がった。「お久しぶりです、ロバートさん」「社長に就任、おめでとう、範経君」とロバートは範経と握手をしながら言った。「ありがとうございます」と範経。「今後ともよろしく。活躍を期待しているよ」とロバート。「ぼくはお飾りですよ」と範経。「そんなはずはないだろう。アルゴー社の製品は君が開発したものばかりなのに」とロバート。「お父さん!」と言って範経は幸一をにらんだ。「守秘義務を忘れたんですか、会長?」と美登里は幸一に冷ややかな目を向けた。「おいおい、オレは何も言ってないよ」と幸一。「まあまあ落ち着いて。私はだれからも聞いてない。ただの推論だ」とロバート。「その推論を聞かせてくれ」と幸一。「かまわんよ。簡単なことだ。君たちが拙宅に滞在したときに気が付いたんだ。娘がチェスで負かされたときにね」とロバート。「あれはイカサマですよ。わが社の電脳を使ったんです」と範経。「シャーロットもだよ。私が作って、あの子のために調整した人工知能だ。もちろん市販の人工知能よりずっと性能がよいものだ。
last updateLast Updated : 2026-01-01
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