All Chapters of 異世界に逃げたら仮初の夫に取り憑かれた!: Chapter 31 - Chapter 40

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【第27話】キッチンにて②(ルス・談)

 キッチンは料理をしたり洗い物をしたりする空間だ。それ以外の使い道なんてワタシは知らないのだが、どうやらスキアは違うらしい。彼の口から出てきた『キッチンプレイ』という単語を聞いて、最初はてっきりおままごとに使うキッチンセットとかの話をし始めたのかと思ったのだが、呆れた様な視線を向けられたので流石に間違っている事に何となく気が付いた。それと同時に着ていた服のエプロン以外の一切を瞬時に消されてしまったので、それは確信に変わった。 普段は垂れ目がちなのに妙に色っぽい雰囲気のある瞳が、今は据わっているような気がする。ぎゅっと容赦なく抱き締めてくる腕の力はやけに強くって骨から少し軋む様な音がしたが、彼に『ちょっと痛い』と伝える前に、スキアの大きな手がワタシのお尻をもにゅっと掴んできた。「んんんっ⁉︎」 スキアの手品で服が消えているせいで彼の手が直にワタシのお尻に触れてしまっている。恥ずかしさから体を少し捩ってみたのだが、全然彼の腕からは逃げられない。『夫婦らしい事』って、もしかして、い、いやらしい事でもする気なんだろうか?(だけど、こ、こんな、場所で?) で、でも確か、特殊性癖を持つヒト達はベッド以外の場所ででも、そういった行為をする場合があるという。まさか、スキアはそういう類のヒトなんだろうか?だから此処でワタシをこんな格好にしたのだとしたら、この先の行為は火を見るよりも明らかだ。「ね、ねぇ、スキア」 「——ん?」 心ここにあらずといった声が返ってくる。本当にこのままこんな場所で不埒な事をされてしまうのかもと思った時、脳裏に夜の行為が蘇った。毎夜の様に下着の中に手を入れられ、ゴツゴツとした男性らしい指が体のナカを容赦無く弄ってくるあの感覚を思い出してしまい、それが勝手に体中を駆け抜ける。彼はただ、契約印が体内にあるので仕方なくワタシのナカに触れてきているだけなのに、触れられる度に可笑しな反応をしてしまっている自分の姿を客観的に捉えてしまい、今更すごく恥ずかしくなってきた。 彼の背に腕を回して服をぎゅっと強く掴む。お尻を揉んだり、撫でたりされているせいで、このままではまた変な声が出てしまいそうだ。昨夜だけじゃなく、その前も、更に前も。執拗にナカを弄られ、我慢が出来ずにアホな声や熱い吐息が口からこぼれ出てしまった。ただ彼は魔力を馴染ませているだけなのに、スキ
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【第28話】キッチンにて③(スキア・談)

(——可愛い、可愛い、可愛い!) ルスはこちらにお尻を突き出した状態で、言われた通りキッチンの洗い場の端に必死に掴まっている。すっかりとろんと蕩けて焦点の合っていないカシス色の瞳と、その目頭に溜まる涙。僕の指が口内を撫で回しているせいで閉じられずに唾液が口の端から垂れ落ちている口元に、何度も吐き出される熱い吐息と真っ赤な頬。 僕は、僕に裏切られて落胆と絶望に歪むルスの顔を見たいはずなのに、快楽で歪むこの顔を前にすると心が満たされてしまううえ、下っ腹がやたらと重くなる。その事実に不快感を覚える余裕も今は無く、ただただ『もっとこの顔を快楽で崩してやりたい』と思う気持ちで胸の中が一杯だ。「ココが好きなのかい?」 小さなルスの体では僕の指だけでも彼女の子宮口を指先で触れる事は容易い。しかも今は子宮が降りてきてまでいるから一層簡単に指先で執拗に攻める事が出来る。軽く最奥を擦るたんびにビクビクと体を震わせて、ルスが言葉にならない淫楽に染まる音を叫ぶ。 熱くてふかふかなナカからは次々に愛液が溢れ出てくるせいで僕の指はすっかりびしょ濡れなんだが、その事実で心が弾む。僕のちょっとした些細な動きだけでこの子をこんなにも乱れさせる事が出来ているんだと思うと、自然に口角が上がった。あぁ、だけど、ここまでやっては、昨夜まではトロ火で炙るみたいにルスの体を溶かし、『魔力を馴染ませる』という体をどうにか保ってきたが、今回はそれさえも無理そうだ。(なら、もういっそ、その事に気が付けないくらいにさせてしまえばいいのか) 無自覚に何度も何度も絶頂まで達し、既にルスはもう息も絶え絶えの状態にある。この指は長さだけじゃなく太さもあるとはいえ、たかが指でコレでは、僕のモノを挿れてしまったらどうなるんだろうか?一瞬そんな事を考えたが、ごくっと生唾を呑み込んでしまった後で、イヤイヤと否定するみたいに軽く首を横に振った。(流石に、そこまでやったら何も言い訳が出来なくなる) 僕らは“夫婦”ではあっても愛情を持った間柄じゃないんだから、いき過ぎた行為は避け方がいいだろう。そうだ、そうに決まっている。憑依しているせいでルスからの影響が強い今の状態では、本来の僕では持ち合わせていなかったはずの情が湧いてしまいそうだしな。(……でも、もう少し、もう少しくらい、この体を味わってもバチは当たらな
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【第29話】臨時休業

 ソワレの目抜通りをスキアとルスの二人が歩いている。軽食を提供している店やアクセサリー店、家具などを売る店と共に、野菜や果物といった傷み易い食材を売る露店が数多く出店されている中を人混みを縫う様にして横切って進む。目指す先は様々なギルドや防具店などが並ぶ、此処よりは一本奥に入った通りだ。「今日もまずは、討伐ギルドに行くのか?」 スキアがそう訊くと、彼に寄り添うように真隣を歩いていたルスが「うん」と答えた。 目的地は討伐ギルドだが、今日のルスは、一着しか持っていなかった修道女風の仕事着はゴミ同然になってしまった為、普段着である黒いスキニーに安物のスニーカーを履き、上はオーバーサイズのパーカーといった動きやすそうな格好をしている。隣を歩いているスキアも同様に、動きやすい様にとゆったりめの七分丈のシャツと茶色いチノパンに革のロングブーツといったラフな服装だ。「今日も討伐ギルドに行って、帰りは食材の調達をしてからリアンを迎えに行こうかなと思ってるの」 本日の予定を聞き、「そうか、わかった」と答えてスキアが頷いた。彼は何やら少し思い悩んでいるのか、心ここにあらずといった雰囲気だったが、鈍感なルスは気が付いていない。そんな彼女の呑気な様子に少しだけスキアは呆れ顔をし、また思案するみたいに視線を遠くにやった。       ◇ 数分後。 目的地に到着したはいいが、扉には一枚の貼り紙があった。その紙には可愛らしい丸文字で『本日臨時休業』と大きく書かれている。情報を補足するみたいに小さな紙も追加で隅っこに貼られており、そちらの紙には几帳面そうな綺麗な字で『書類整理の為』とあった。「あちゃー……。今日はお休みかぁ」 「あぁ、そうか。それでここ数日は、急ぎの依頼しか掲示板に貼っていなかったんだな」 「え?そう、なの?」 ギルドへ休みなく通いはすれども積極的に依頼を受ける訳じゃなく、いつも受け身でしかなかった。だからルスはその事にすら気が付いていなかったみたいだ。「まぁ、アン……ルスは、依頼書の掲示板の方はほとんど見ていなかったもんなぁ」 途中で『アンタ』呼びから『ルス』と名前呼びに言い直しつつ、スキアは呆れ顔でそう言う。そして「あのな、ただ座って声を掛けられるのを待って、お茶ばかり飲んでたんじゃ、この先はもう仕事を貰えないと思うぞ」とルスに事実を突き付けた。
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【第30話】『僕らが欲しいのは服であって、新しい“虫”じゃない』①(スキア・談)

 ルスが話していた装備品を売る店は討伐ギルドから程近く、同じ並びにある。近隣には他にも彫金ギルドや武器・防具などを作成するギルドもある為、討伐任務や護衛などを仕事にしている者達でそれなりに賑わってはいるが、夕方から開店する飲み屋も多いので目抜通りよりは人が少なく、すぐに辿り着く事が出来た。「いらっしゃいませー」 扉を開けて二人が店内に入ると、後衛職向け装備を中心とした完成品がずらりと並んでいた。 僕が持っている六年前の知識では、服や装備品はデザイン帳の中から気に入った物を選んでからオーダーメイドで注文するか、金の無い者達は布だけ買って来て自分で縫うのが当たり前だったのだが、今では大雑把なサイズ展開をしている既存品の中から好きな物を買うというスタイルが主流になっているようだ。これは異世界からの移住者達がやり始めたシステムだそうだ。「何かありましたら、遠慮なくお声掛け下さいね」 「はい」 店員に対して、笑顔ながらも短く答えると、ルスは早速服を選び始めた。だが、どう見ても彼女が着るには大き過ぎる物ばかりだ。『まさか』と思い、「もしかして、僕の装備を見ているのか?」と訊くと、彼女は迷いなく「うん」と言う。この先討伐にも一緒に行くなら、ちゃんと装備を一式揃えた方がいいとの判断なのはわかる。だけどまずは真っ先に自分の物を選んだらどうだ?だが、当然の様に自分を後回しにしてしまうのは、ルスの性分なのだろうな。「僕は僕で探すから、自分の装備を選んだらどうだ?」 そう言うと、ルスはハッとした顔をして、「そ、そうだよね、好みとかあるもんね」と申し訳なさそうに俯いた。 別に服装なんか、よっぽど酷いデザインでないのなら正直どんな物でもいい。僕の服なんてわざわざ買わずとも、いつも通り無難な物を何処かから拝借すればいいだけの話だから。今此処で買う必要すらもないのだが、楽しそうに選んでいた姿を思い出すと強くは出られない。「……別に、好みとかは。——そうだ、一着ずつ、お互いの服を選ばないか?好きなデザインが、イコールで自分に似合うとは限らないからな」 僕からの提案が余程気に入ったのか、「いいね!」と言ってルスがぱんっと軽く手を叩く。反射的にその目を潰してやりたくなるくらいに笑顔が眩しい。だがそんな衝動的な行動はぐっと堪え、二人で並んで、まずは僕の服から選ぶ事になった。「そ
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【第31話】『僕らが欲しいのは服であって、新しい“虫”じゃない』②(スキア・談)

「こちらも素敵ですよー。ハイネックタイプですが、腕や胸元のギリギリにまでリーフレースを使っているんですー。後方から見た時のシルエットは長めのスカートっぽいデザインですが、前から見るとミニスカートタイプになっているので、魔物との戦闘時にはショーツがチラ見えして滾ること間違いなしですよー。こちらの商品も男性向けを展開しているので、夫婦でお揃いの物を着て、周囲にラブラブアピールすることが可能ですー」 こちらがドン引き状態になっていることに気が付いていないのか、そもそも気にしていないのか。アンズは構わず服を選んでは、次々僕らの元に持って来る。 オススメポイントはイカれているが、デザインはどれも文句なしの品ばかりだ。ルスのまな板胸をちゃんと考慮して選んでいるし、どれも子供っぽい細身のボディラインを綺麗に見せてくれそうでもある。 ……ただ、ルス向けの服を最初にチョイスしているせいで、男性向けに作られたお揃いのデザインの方が僕に似合っているかどうかは、正直ちょっと微妙なものも混じっている。「んー……。だけど、どれも『コレだ!』って感じじゃないですねぇー」 色々と選びながら本人もそのことに気が付いていたみたいで、アンズが棚に服を戻しながら唸りをあげた。「そうだー。いっそ、オーダーメイドにしましょうかー。お二人とも推せるくらいに素敵な雰囲気ですから絶対楽しそうですしー。支払いは材料費と人件費だけで結構なので、どうですかー?」「え?で、でも」 背後から一切出て来ないまま、僕の服をギュッと掴んでルスが困った声色で呟いた。 オーダーメイドの装備はどうしたってお高いので、割り引いてもらえるとなるとどうしたって気になるが、初対面の者にそこまで甘えてもいいんだろうか?という気持ちが邪魔をしているのだろう。もしくは単純に、『こんな変質者に頼んでも大丈夫なんだろうか?』という怖さがあるのかもしれない。「今この場で即ご依頼頂けたら、オマケで総レースのショーツとえっちなデザインのフロントホックタイプのブラも作っちゃいますよー。ここは敢えてのクマさんパンツもアリかもですけど、ソレは追々でー。奥様は脚のラインが綺麗なのでガーターベルトもつけちゃいましょうかー。そちらは靴下を履いたままのえっちとかをするのにオススメしますー。旦那さん向けの装備は雄っぱいを強調する物にしましょうねー。逞しい
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【第32話】『僕らが欲しいのは服であって、新しい“虫”じゃない』③(スキア・談)

「——先ほどは失礼しましたー」 謝罪を口にして頭を軽く下げてはいるが、アンズの顔には反省の色がまるで無い。 『お二人にちゃんと謝れ』と従業員に言われたから謝ったといった雰囲気が否応なしに伝わってくる。当人は悪い事をしたと一切思っていないのだろうから、この態度になってしまうのは致し方ないのだろうが、相手が鈍感を絵に描いたようなルスじゃなければ更なるトラブルに発展していそうだ。「あ、頭を上げてください」 困り顔でルスがそう口にすると、つらっとした顔でアンズが「はーい」と言って頭を上げ、「で!オーダーメイドの件ですがー」と流れをぶった斬って、無理矢理話を欲望のままに引き戻した。「そういえば、彫金にご興味があるみたいでしたけど、お二人の結婚指輪とかですかー?」 どちらも指に何もつけていない事に気が付いたのだろう。『結婚指輪』は異世界からきた文化だ。なのでまだ浸透し切ってはいないから僕らはしていないが、夫婦間の贈り物として若い層には人気があるらしい。所有の証にもなるし、独占欲を満たすには丁度良い品なのだろうな。(結婚指輪、か。心を掴むのには悪くない案なのに、完全に失念していたな)「あ、いえ。ワタシ達の品じゃなくて、伝書鳥への贈り物が欲しくって」 両手を軽く横に振ってルスが要望を伝える。期待していたわけでもないのに、何故だかがっかりした気持ちになった。こういった類の感情の出所が不明なままなせいか妙に居心地が悪くなる。「なるほどー。じゃあ、応接室で色々要望をお聞きしてもいいですかー?今はお時間が無いみたいでしたら、そちらのお宅まで今夜にでも、今夜にでも!伺っても、こちらは構いませんよー」 腰に巻いているワーカーズポーチからスケッチブックとペンを取り出し、何故かは知りたくもないが、ルスが生まれた世界で昔人気だったらしい使い捨てのカメラまでアンズが持っている。「「今、お願いします!」」 二度重ねられた言葉のせいで嫌な予感しかせず、ルスと僕は同じ言葉を同時に叫んだ。       ◇ 場所を移し、店の奥にある応接室まで案内された。ゆったりとしたサイズの二人掛け用ソファーが向かい合うようにして置かれていて、その中央には大きめのテーブルがある。デザインを描きながら打ち合わせる事が多いのか、応接室向けの物としては高さのあるテーブルなので、ちょっとちぐはぐな印象の
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【第33話】指輪(スキア・談)

「…… 」 「…… 」 無言のまま、ルスと僕は服飾店を出た。 閉まっていく扉の向こうからは、「ありがとうございましたぁ」と今にも申し訳なさから泣き出しそうな店員の見送りの声と、店長であるアンズの「大急ぎで完成させますねー」の声とが聞こえてきたが、どっちにも振り返ることが出来なかった。手には既製品の服が十着程入った袋も持ち、とにかく此処から離れようと考えて一歩、二歩と前に進む。「す、すごい人……だったね」 率直な感想をルスが言う。あの後、興奮気味に突きつけられた『既製品と同じ価格にしますから、この先の服を全て作らせてー!』と言うアンズの要求を、彼女の勢いに負けて聞き入れてしまったので、この先も確実に長い付き合いになる。だが、ルスはアンズに対して完全に苦手意識を持ってくれたっぽい。 色事の知識が極度に乏しいルスではアンズの発言を半分も理解出来ていないんじゃないかとは思うが、エロい話をされている事くらいは流石にわかっていたのだろう。顔や指先がほんのり赤く染まったままだし、何とも言い難い複雑な顔で再び黙ってしまった。 そんな状態のまま、さっきからずっと視線を僕と合わせてくれないから、腰を折って顔を下から覗き込むと、ルスは「ひゃっ」と可愛い声をあげて勢いよく仰け反った。その勢いのまま後ろに倒れそうになった体を抱きとめて、自分の方へと引き寄せたので、結果的には対面になって抱き締める格好に。「大丈夫か?」 「あ、あり、がとう……」 目抜き通りではないにしろ、それなりには人の行き来がある通りなので、否応なしに視線が僕らに集まる。背後にある服飾店からは絶対に振り返りたくない熱い視線を浴びせられている気が……。だが、恐怖の対象でしかないそっちよりも、照れくさそうに口元を震わせているルスの表情の方にすっかり心を奪われ、目が離せなくなった。「くそっ。可愛いな……」 ぽつりと呟いた一言のせいでルスの顔がさっきよりも一層赤くなってしまった。恥ずかしそうな顔で僕のシャツをぎゅっと掴み、涙目でこちらを見上げてくる。「——んんんっ⁉︎」 どういった反応をするべきなのかわからず、頭の中がパニック状態になっているっぽい。別に『ありがとう』でも『そんなことはない』とでも言って適当に流すか、僕を叩くかして逃げればいいだけなのに、根が真面目過ぎてどうしても何か返事をと考えてしまっ
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【幕間の物語②】家族の姿(ルス・談)

 少し前に、変質しゃ——もとい、面白い人と知り合いになった。服飾店を営んでいる、あんずさんという女性だ。代償不足で獣化までは出来ない不完全な獣人でしかないワタシの容姿に興味を持たれて話し掛けられ、同郷でもあった流れがあったからなのか、何故か妙に気に入られてしまった。 どうやらスキアとワンセットで。 あの後、商店街などで会った色々な人が教えてくれた話によると、あんずさんはとても凄い人らしい。不可思議な言葉を口にする所が——とかではなく、この世界に移住後すぐの段階でこの世界の服飾生産方法に革命をもたらしたからだそうだ。 最たる功績は“針子の指輪”を考案した事だろう。 空っぽの魔法石を埋め込んだ指輪に服の製作工程やデザイン完成図などといった作成に必要な情報の全てを付与させると、今までに全く縫い物の経験の無かった者がそれを身につけたとしても、きっちり上質な服を完成させる事が出来る様になる装具の考案者なのだ。体に欠損があろうが、盲目であろうが、勝手に手先や腕が動いて服を作る事が出来る為、六年前の魔物達との戦争で後遺症の残ってしまった者達に新たな雇用先を生み出した立役者でもあるそうだ。 機能性や作成の楽さなどに特化してばかりいたせいで見た目は二の次だった今までの装備に高いデザイン性を持たせたり、無難なサイズの既製品を大量生産して安価で販売するなどの方法を取り込んだ手腕も評価されているらしい。『いやいやー。私は先人の叡智を流用してるだけだよー。装備品のデザインなんかも、数多の輝きを生み出した神絵師様達のおかげだしねー』 との、意味不明且つ、謙虚?な発言で好感度を更に上げ、貴族階級の方々からも人気の服飾師に短期間で上り詰めた人なのだ。なのに本業は薬師なので、服飾の方はあくまでも片手間での作業だというのだから、本当に凄い人なのだとワタシも思う。 だが革命的な装具である“針子の指輪”にも、欠点があった。 必要なデータの付与を魔法石に込める事が出来る人が、今の所あんずさんしかいないのだ。技術の無い人でも服を作る為には作業工程の全てを細部まで精密にイメージする必要があるのだが、そこまで出来る人材が全然育っていないらしい。そのせいで、“針子の指輪”は今の所ソワレでしか手に入らない。もし運良く不正なルートで転売品を購入出来ても、作れるのはその指輪の中に入っている
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【幕間の物語③】理性が試される(スキア・談)

 ヤバイ奴と知り合いになってしまった。アンズという名の異世界からの移住者の一人である。ルス曰く、移住後の教育期間を終えてすぐに服飾業界に革命をもたらした人物らしく、なのに本職は薬師という色々と変わった人物なのだが、その他にも不可思議な点がある。 彼女という災害に遭った日の夜は、ルスの反応がオカシイのだ。 最初はてっきり変態発言を連発されるせいだと思っていた。深く理解は出来ずとも、いやらしい意味を含む言葉に晒されたせいで体だけが変に反応してしまっているのだろう、と。だが、アンズとの遭遇回数を重ねれば重ねる程に、二人きりになった時のルスの反応が過敏になっていき、とうとう昨夜は、とろんと蕩けた瞳になりながら自分から細い脚を開いて、『……契約印を馴染ませるの、する?』と訊いてきたのだ。 ぶつっと理性の糸が切れそうになったのを咄嗟に引き留め、どうにか事なきを得たが、僕が経験者だったら危なかった……。細い脚を羞恥に震わせ、ショーツで履き隠していながらも尚、真っ白なシーツに愛液が零れ落ちてしまうくらいに溶けきった蜜壺が与えてくれる快楽を、もしこの身で知っていたら、きっと僕は陽の光を浴びる頃合いまでずっと、獣が如くルスの小さな体を貪り尽くしてしまっていた事だろう。 僕が傍に居る限り、ルスはもう一生誰とも結ばれる事が出来ないが、だからって純潔まで奪ってしまうのは道理に反していると思う。僕らは夫婦ではあっても、仮初の関係である以上、一線を超える必要は無いのだ。(……指では散々ヤリ倒してしまったけど、ソレはノーカンだよな?) 契約対象を愛し、愛されているフリならいくらだって出来ても、深くまで体を重ねるのはまた別の話だ。どうせいつかは手酷く裏切って捨てる存在に、僕の純潔を捧げる気なんか無い。……無いんだが……体格差があるから、指程度でも、二本か三本でも入れてやれば、挿れているみたいな反応を返してくれるから、いつも下っ腹が重くなる。そのせいで気を散らすのに毎日苦労しているのだが、気絶するみたいに眠り込んでいくルスの間抜けな寝顔をじっと見て、なんとか理性を保ってきた。 だけど、昨夜みたいな事を毎度毎度されては流石に堪らない! このままでは、生まれてからずっと突き通してきた理念を、本物の嫁みたいに可愛く誘惑してくるルスに砕かれてしまうのは時間の問題だ。獣耳を伏せ、涙目になりなが
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【第34話】月夜(スキア・談)

 寝付けない夜。 窓越しに見上げた夜空に満月が光り輝いていると、思い出す奴がいる。何十年、いや……何百年以上も前に喧嘩別れをした友の姿を、あの月に重ねてしまうのだ。この世の全てを呑み込みそうな程の闇夜の中で、気高くも美しく輝く月は、奴の瞳によく似ている。 ドラゴン族の長・リュークェリアス。 ドラゴンは巨狼・フェンリルに並ぶ、いや——もしかすると、それ以上に希少な存在だ。その中でも黒い個体は彼しかおらず、希少種であるドラゴン族の中でも唯一の不老不死個体でもある為、それ故に生命の頂点に立つ生き物だ。不死身の巨体は影の中に引き込んで喰らう事も不可能で、内側から引き裂こうが、猛攻撃で粉砕しようが瞬時に復活する不滅の体を持つ。奴は、僕が殺す事の出来ない無二の生き物であり、奴もまた、肉体を持たない僕を害する事が出来ない為、対等な存在として僕らは永年“友”という関係を続けてきた。 当然、最初の頃の僕は奴を嫌っていた。制圧不能でこちらが絶対に優位に立てない相手だ、そんなの誰だってただただ恐ろしいに決まっている。警戒心を隠す事なく、毛を逆立てた猫みたいに今にも噛みつきそうな態度をずっと取っていたのに、次第に、会うたび会うたび気さくに接してくるアイツの態度に絆されていき、気が付けば利害抜きで気兼ねなく話せるくらいの存在になっていた。 喧嘩別れをしたあの日だってそうだった。 僕の領域で二人。最初はどうでもいい話をしていたんだ。『巣の近くで猫が出産をしたんだが、母猫が死んでしまったから仔猫を保護しようかと思っている』だの、『最近雨が続いているから山崩れが心配だ』だの。いつもの様に僕とは全然関係の無い話ばかりだったが、対等な関係にある者の側に居るというのは案外心地良く、そうかそうかと聞いているだけで楽しかった。『猫なんかどうでもいいだろ。どうせ勝手に育つさ』 肉体を持たない僕の声に耳を傾け、ははっと短く笑いながら『可愛いんだぞ、生まれたての猫は』と言って、今度はいかに仔猫が可愛いかを教えてくれる。『君だって、いつかはあの可愛さがわかる日がくるよ』 『やめろ。そんな感情、気色悪いだけなのに、アンタが言うと本当になりかねないんだから勘弁してくれ』 『あぁ、そうだね。でも、だからそうならないように、いつも此処で話しているんじゃないか』 そう言って、リュークェリアスが周囲を
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