異世界に逃げたら仮初の夫に取り憑かれた!

異世界に逃げたら仮初の夫に取り憑かれた!

last updateTerakhir Diperbarui : 2025-12-26
Oleh:  月咲やまなBaru saja diperbarui
Bahasa: Japanese
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綺麗な水と豊かな大地に多種族が暮らす大陸オアーゼ。しかし狭い環境ゆえ争いが起き、魔王ブリガンテの台頭で人間と獣人は追い詰められていく。——だが魔王の自殺で形勢は逆転した。 復興が始まるも人材不足は深刻で、人々は“異世界”からの人材勧誘を開始する。現実から逃れるように幼い弟を抱え移住した彼女もその一人だった。 まさか自分が逃亡先の異世界で、魔王をも操っていた影の存在と仮初の夫婦契約を結ぶことになるなんて思いもせずに。

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Bab 1

【プロローグ】手に入れた童話

 むかしむかし。

 とある世界のとある星では、ニンゲンとマモノがいつもケンカをしていました。

 ずっとずっと仲が悪く、ケンカばかりしていましたが、ある日マモノ達の中に一人の王様が現れました。

 カレはとてもつよく、とてもかしこく、うつくしかったので、マモノ達はみな『マオウサマ』と呼んだそうです。

 マオウサマはつよかったので、マモノ達はたくさん勝ちました。

 ニンゲン達は負け、星のすみっこでしか生きていけなくなりました。

『このままではニンゲンはゼツメツする』

 みんながそう考えていましたが、マオウサマが急に死に、王様がいなくなったマモノはゆっくりとジメツしていったのです。

 ナゼかはわかりませんでしたが、そのジジツをニンゲン達はスナオによろこびました。

 でも、このままではニンゲンもみんな居なくなってしまうでしょう。

 多くのモノ達がそう考えてしまうくらい、ニンゲンも減っていましたから。

 だけどニンゲン達はふえていきました。

 そして、ニンゲン達は住むばしょを広げました。

 いつかはマモノに勝とうと、こっそりがんばっていたおかげで。

 ——知りたいかな?

 どんなふうにがんばったのか。

 どうしてまた、ふえたのか。

 知りたいなら、この本の上にキミの手をのせてみるといいよ。

 “いま”をかえたいキミも、手をのせてみるといいよ。

 キミを、わたし達がたすけてあげる。

       ◇

 ——生まれて初めて、母さんから渡された絵本に書いてあったこのお話は、とても不思議な終わり方をしていた。

 真っ黒なクレヨンで描かれたマモノ。赤や青といった綺麗な色を使って描かれているニンゲン達。豊かな自然の風景もクレヨンで描いているのにとても綺麗で、心を惹き込む力強さがあった。

 正直な所、お話の意味はよくわからなかった。

 だから面白いとも思わなかった。だけどワタシは何の気なしに手を置いてみた。

 今日、初めて会った弟の小さな小さな手も、一緒に。

 最後に書いてあった、『キミを、わたし達がたすけてあげる』という文字が胸にじわりと響いたからだ。

 たすけて、たすけて、たすけて…… もう、ここから消えてしまいたい。

 そんなお願いが叶うかもしれないと、少しだけ、本当に少しだけだったけど、期待したからだった。

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【プロローグ】手に入れた童話
 むかしむかし。  とある世界のとある星では、ニンゲンとマモノがいつもケンカをしていました。  ずっとずっと仲が悪く、ケンカばかりしていましたが、ある日マモノ達の中に一人の王様が現れました。 カレはとてもつよく、とてもかしこく、うつくしかったので、マモノ達はみな『マオウサマ』と呼んだそうです。 マオウサマはつよかったので、マモノ達はたくさん勝ちました。  ニンゲン達は負け、星のすみっこでしか生きていけなくなりました。『このままではニンゲンはゼツメツする』 みんながそう考えていましたが、マオウサマが急に死に、王様がいなくなったマモノはゆっくりとジメツしていったのです。  ナゼかはわかりませんでしたが、そのジジツをニンゲン達はスナオによろこびました。 でも、このままではニンゲンもみんな居なくなってしまうでしょう。  多くのモノ達がそう考えてしまうくらい、ニンゲンも減っていましたから。 だけどニンゲン達はふえていきました。  そして、ニンゲン達は住むばしょを広げました。  いつかはマモノに勝とうと、こっそりがんばっていたおかげで。 ——知りたいかな?  どんなふうにがんばったのか。  どうしてまた、ふえたのか。 知りたいなら、この本の上にキミの手をのせてみるといいよ。  “いま”をかえたいキミも、手をのせてみるといいよ。 キミを、わたし達がたすけてあげる。        ◇  ——生まれて初めて、母さんから渡された絵本に書いてあったこのお話は、とても不思議な終わり方をしていた。  真っ黒なクレヨンで描かれたマモノ。赤や青といった綺麗な色を使って描かれているニンゲン達。豊かな自然の風景もクレヨンで描いているのにとても綺麗で、心を惹き込む力強さがあった。 正直な所、お話の意味はよくわからなかった。 だから面白いとも思わなかった。だけどワタシは何の気なしに手を置いてみた。  今日、初めて会った弟の小さな小さな手も、一緒に。  最後に書いてあった、『キミを、わたし達がたすけてあげる』という文字が胸にじわりと響いたからだ。 たすけて、たすけて、たすけて…… もう、ここから消えてしまいたい。 そんなお願いが叶うかもしれないと、少しだけ、本当に少しだけだったけど、期待したからだった。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-16
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【第1話】ゴブリン討伐・前編
 幾千幾万と混在する世界の、とある星の一つに、緑と水に溢れた【オアーゼ】と呼ばれる大陸がある。その大半を広大な海で満たされているこの星では、オアーゼ大陸は砂漠で見付けたオアシスが如く貴重な大地だ。自然豊かなその土地は様々な資源に恵まれ、綺麗な飲み水も多く、栄養価の高い土は数多の命を育んでいった。精霊や神霊、動植物も数多く生きる美しい大地となったが、悲しい事にそれら全てを養うにはオアーゼはあまりに狭く、生き物同士は次第に対立するようになってしまった。 多種との平和と共存を願う人間と獣人、そして一部の獣達。  攻撃的で弱肉強食を掲げる魔物と、ぬるい平和を嫌うならず者。 両者は相見える度に争いを繰り返してきたが、長い年月の間どうにか均衡を保ち続けていた。だけど魔物達の中に『魔王』と呼ばれる存在が出現した途端、絶妙なバランスを保っていた勢力図は壊れた天秤みたいに一気に片側に傾き、平和を願う種族は全て、絶滅危惧種と化す直前にまで追い込まれてしまった。このままいけば魔物側の勝利だ。『豊かなオアーゼは今以上に混沌の大地と化すだろう』と誰もが思った。 ——だが。  ある日突然、何故か魔王が《自殺》した事で事態は一転したのだ。 理由はわからない。だが彼は何の前触れもなく、城の玉座で、自身の胸に短剣を突き刺して死んでいたのだ。それにより統制を失った下級の魔物達は混乱し、力ある者達は『我こそが次の王だ』と互いに殺し合いを始め、魔物達は急速に自滅していった。  それから五年。  魔物達は未だに衰退の一途を辿り続ける中、人々は勢力を取り戻そうと躍起になっていた。だが圧倒的に人員が足りず、破壊され尽くされた街の復興もままならない。そんな中、《魔塔》と呼ばれる施設で暮らす魔法使い達が『実は、人材を簡単に増やす方法がある』と多くの権力者に打診してきた。そんな都合の良い話はあるはずが無いと半信半疑になりつつも、全てがひっ迫している状況では藁にでも縋りたくなるものだ。『ならば話を聞くだけなら』と、権力者達は魔法使いに『その方法は?』と訊いた。すると彼らはこう答えたそうだ。『他の世界から、人材を連れて来たらいいのだ』と。 これ以降、此処オアーゼには異世界からの移民が増えていく事になる。復興を担う新しい人材を集める為、数多くの魔法使い達が様々な世界へ勧誘しに行った成果だった。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-16
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【第2話】ゴブリン討伐・後編
 最終討伐地点から二十分程歩いて来たが、まだ彼らが拠点としている町までは遠い。討伐ギルドに登録している者としてはまだまだ駆け出しの彼らでは、パーティー全員分の馬や馬車を借りる余裕はなく、移動手段は徒歩一択である。幸いにして此処ガイストの大半は広大な森な為少々薄暗くて視界に多少の難はあるが、割と平坦な土地が続く地域なので足場は悪くないのが救いだ。 途中途中で湧水を水袋に汲んだり、木々に実る果実などを摘みながら歩いていると、暇つぶしで始めた雑談の中でそれぞれの名前の話題になっていった。自慢気に、いかに自分がその名に相応しいかを語っていく。三人共とても気に入っている名前みたいだったので、少女が「皆さん素敵な名前ですもんね」と素直な気持ちで褒めると、スカルとキングが少女の首回りに腕を回して豪快な笑い声をあげた。素面のはずなのにまるで酔っ払いのような絡み方である。「わかってんじゃねぇか!」 「新天地での名前ってぇのは、大事なもんだもんなぁ」 「あぁ、もちろんお前も良い名前だぞ」 あははは!と再び三人は笑ったが、少女は今までに一度も名前を訊かれておらず、『お前』や『アイツ』『コイツ』以外では呼ばれてもいない。だがその事にすら気が付いていない三人に対しても、少女はただただ優しく笑顔を返すだけだった。        ◇  更に五分程帰路を進んだ頃。  何かが唸っているような、変な音が遠くから聞こえ始めた。風の音にも似ており、始めは四人共『気のせいだろう』と考えていた。町まで随分と近づいて来たし、この辺はもう魔物の生息地域からは外れ始めているからだ。目を凝らせば拠点にしている町の外輪が見え、周囲に広がる農地や農民達だって確認出来るような場所だ、何も危険は無い。……無い、はずだと思いながらも、彼らの歩く速度は次第に上がっていく。  そんな三人に追いつこうと少女も必死に歩いてはいるが、小柄な彼女では走っているに近い状態だ。修道女にも似た白い服は裾に向かう程細くなっていくテーパードスカートに近いシルエットになっている為、これ以上早く移動するのは厳しいかもしれない。『グルルルル…… ッ』 斜め後ろ方向にある木々の隙間で、二つ並びに何かがギラリと光った。獣めいた唸り声は既にもうかなり近く、ロイヤルが慌てて大きな盾を構える。彼の背後に隠れたスカルは弓を、キングは剣を手に取っ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-16
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【第3話】決死の逃走(とある少女・談)
「はぁはぁはぁ——」  長い時間全速力で走り過ぎて喉が痛い。履き慣れてはいる靴だけど、編み上げブーツタイプの革靴は走るのには適していないせいで靴擦れをおこしている。踵もつま先も血が滲み、この痛みでは爪も破損していそうだ。怪我を治そうと思えば走りながらでも回復魔法で治せるが、今はスタミナの回復に努めないと危険な状況にある。少しでも走る速度が落ちればコボルト達はすぐワタシに追い付くだろう。最初は小石を投げた一体だけだったコボルトも、今では仲間が集まって来ていて何匹にも増えている。振り返れないから正確な数はわからない。だけど叫び声や足音からして追って来ているのは十や十五どころの話ではないだろう。(いつまで、持つかな…… ワタシの魔力) 酸欠気味なせいでぼんやりとしてきた頭の中でそんな事を考えた。追いつかれるか、魔力切れを起こせばワタシは難なく彼らに捕まるだろう。そうなればまず間違いなく、死ぬ。先行していた一体に石を投げて怪我を負わせたし、ワタシは手を下してはいないにしても、彼らの奴隷であったゴブリンを殺した事には変わりないから。 攻撃系の魔法をワタシは使えないし、まともな武器も無く、コボルトはワタシ程度が力で対抗出来る相手ではない。自分一人の犠牲であの三人が助かるのならそれも悪くないけれど、町にはワタシの帰りを待っている幼い弟がいるから簡単に諦める訳にもいかないのが辛いところだ。(だけど、このまま逃げ切れるんだろうか?) もうかなりの距離を走った気がする。ロイヤルさん達や町に被害があっては大問題だからと、正反対の方向に走り続けて来た。だけど、そのせいでもう、彼らの助けは見込めない。あの三人が無事に町へ辿り着いていたとしても、話しを聞いて、救助隊がワタシを探すにはヒントがなさ過ぎる。この世界の連絡手段である《伝書鳥》も町に置いて来ているし、生き残る為には何処か隠れられる場所を見付けなければ。『待テェェェェェ!イイ加減ニシロ、コノアマァ!』 コボルト達にも疲労が見えるが、残念ながら怒りがそれを上回っている。この様子では簡単には諦めてくれないだろう。  腰から下げていた水筒と非常食を入れたポーチ、テーピングや裁縫セットなどの入る小さな鞄、ずっと手に持っていた杖を横に投げ捨て少しでも身を軽くした。無駄な行為かもしれないが、何もしないよりはきっとマシだろう。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-19
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【第4話】次の憑依先は——(とあるイキモノ・談)
 “ 魔王・ブリガンテ”が、とうとう狂って死んだ。 “僕”は他者に取り憑く習性を持つ生き物である。——そんな僕に長年憑依先として使われ、宿主特権で力を得た彼が魔物共を統率してきたが、“僕”という存在に精神が耐え切れなくなった事が原因だった。牛の様なツノを持ち、人間にも似た顔立ちが飛び抜けて美しい奴だったが、他者よりも欲深いというだけで本人はたいした力を持っていなかった。だからかアイツは、『僕に見捨てられてしまったら、オレは終わりだ』といつも怯えていたのだ。  配下が増えれば増える程にその恐怖はアイツの精神を蝕み、次第に崩壊させ、自らの手で命を絶つ事を選択するに至ったのだろう。僕が少し目を離した隙に、奴の遺体は短剣を胸に突き刺した状態で発見された。 あーあぁ。  もうちょっとでコイツはこの世界を手に入れられたのに。  ホント、馬鹿な男だ。 戦闘は日々苛烈を極め、人間達の陣営は劣勢続きだった。どう考えたって魔物側が圧倒的優勢だったから、王が死ななければ、この世界は魔物の支配下に堕ちただろうに。アイツには、手に入れてしまった後の世界を治めていく度量も無かったようだ。 そのせいで、結果は人間達の逆転勝利。 魔物達は統率者を失い、一様に絶望し、主人を失って散り散りに。  憑依対象であったブリガンテを失い、去り際の置き土産として僕は、強者達全員に『次の王には君がなるべきでは?』と囁いておいた。そのおかげで彼らは内部で争いを始め、続々自滅していった。 人間達は勝利を収める形にはなったが、両者は長い戦いで痛み、傷付き、人間共がコツコツと築き上げた文明はもう、笑える程に壊れている。このままいけば形だけの勝者となった彼らも、緩やかに滅亡へと進んでいくだろう。 …… ふふっ。ははっ、あはははははは!  あー、何度思い出しても笑えてくる。 “ブリガンテ”は“魔物”だったおかげで体は丈夫だったから、長く楽しめた。だが、相性が良過ぎたせいでとても操り易く、その点では非常に退屈だったなとも思う。 ……よくよく考えてみると、その前も、その前も前も前も前も——  慌てて過去を振り返ってみたが、僕は毎回、身の内に深い闇を抱えた者にばかりに取り憑いてきたなと、永年生きてきたクセに今更気が付いた。属性が僕と同一の者達が操り易い
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-22
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【第5話】契約①(とあるイキモノ・談)
 気を失っているのか、瞼を閉じている少女から溢れ出した血が周囲の地面を真っ赤に濡らしている。木々の隙間から差し込む茜色の夕日が彼女の体を染め上げ、遺体にも似た姿を一層綺麗に飾っていた。呼吸は浅く、時々途切れてもいる。後頭部にはヒビが、背骨を含む全身の骨が折れているし、内臓も当然破損しているだろう。ほぼ平坦なこの地域で、滅多に無い崖から落ちるだなんて……。運がいいの悪いのか。  崖上ではコボルト達がやり場のない怒りに震えて叫んでいる。『煩いからアレも処分しておこう』と決め、僕は瞬時に、数多く居たコボルト達をあの三人の人間達と同じように影の中に沈めて喰らっておいた。 少女は今にも事切れる寸前である。だが体は『死んでたまるか』と主張するみたいに、勝手に回復し続けているみたいだ。だが、もう彼女の魔力はすっかり枯渇していて、足りない分は無理矢理魂を削りながら得ている状況にある。そんな事をしたって回復しきれない程に少女の体は破損しているから無駄な行為でしかないのだが、自覚アリでやっている感じではないから、本人も止めようがないといった所か。  このまま放置しておくと、この少女の形成している全てが消え去り、転生する機会すらも無くなるだろう。(あぁ、僕にとって、何て都合が良いんだろうか) 瀕死であれば心に付け込み易いはずだ。『生きたい』と、藁にも縋る思いだろうからな。  少女の影の中に潜み、少しだけ彼女の回復能力を高める魔法をかけてやる。せっかく見付けた逸材だ、死んでしまっては面白くないからな。  ——五分程経過しただろうか。  少女は激しく咳き込みながら血を吐き出しはしたが、一命は取り留めたみたいだ。だがまだ体はまともには動かず、夕日は刻々と沈み続けている。春先の風は次第に冷たさを持ち始めているし、大量に流した血の臭いを嗅ぎつけた夜行性の獣達が此処まで来るのも時間の問題だと、きっと少女の頭の中は不安でいっぱいなはずだ。内臓の破損は早急にどうにかしたみたいだが骨を再生するには魔力が足りず、痛みを麻痺させ、呼吸を辛うじて回復させたくらいでは安全な場所に隠れる事も出来ない。まさに、四面楚歌と言えるこの状態なら……。『僕が、アンタを助けてやろうか?』 突然聞こえた声にも関わらず、少女は何故か「……ふふっ……」と力無く笑った。その反応に面食らい、しばらく様子を伺
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-26
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【第6話】契約②(とあるイキモノ・談)
『……なま、え……』 「うん。……何て、呼べばいいのかな」(知るか!そんなの。——あぁもういい、勝手にしろ) と、心の奥底でだけ悪態をつく。 『ア、アンタの好きに呼べばいい。別に僕は“お前”でも“アンタ”でも、“おい”って呼ばれようが、反応はするんだし』  そもそも持っていないものを教える事なんか出来やしないんだ、これ以上は訊かないで欲しい。そんな気持ちでいたせいか、随分と投げやりな声色になってしまった。 「好き、に……?」 『あぁ、好きにしていい』  僕がそう言うと、“ルス”と名乗った少女の口角が少しあがった。「……じゃあ、“スキア”って呼ぼうかな」 楽しそうに笑顔を浮かべているみたいだが、何処もかしこも血塗れなせいで少し怖い。これではまるで猟奇殺人鬼みたいだ。 『スキア?』 「そう、“スキア”。意味はねぇ、確か……“影”だったはずだよ。姿は見えないけど、こうやって、“影”みたいに優しく傍に居てくれているから」 僕に心臓があれば、ドキッとしていたに違いない。  まさか僕が、実体を持てぬ時は『影』に溶け込んで生きるしかない存在であると、ルスはわかっていてこの名前を選んだのだろうか?生き物達が負の感情を抱き始め、それらが少しづつ影の中で蓄積されて、ついぞ意思を持ったイキモノが僕であると、彼女は知って……? ……いや、そんなはずは無いか。  誰にも知られず、契約により『真実』と知った契約者達も今まで全て、食い潰して生きてきたんだから。「別の、名前がいい?」  僕が黙っていたせいか、ルスの声は少し不安げだ。 『いや、大丈夫。……“スキア”か、良いんじゃないかな』  その名を口にしていると、じわりと自分に馴染んでいく感じがする。一度も経験の無い、何だかとても……不思議な感覚だ。『じゃ、じゃあ、早速契約を交わそうか』 「あぁ、うん……。そうだね」  返事をし、ルスがゆっくりと頷く。何とかそのくらいは出来るまで回復が進んできたみたいだ。(マズイな、予想よりも回復が早い) 早く契約を結ばないと、気が変わって『やっぱりやめる』と言い始めるかもしれないし、僕と契約する事のデメリットを訊かれたりもするかもしれない。だが、名前と同じく、『そんなものは無い』が答えなので焦る必要はないのだが…
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-11-30
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【第7話】契約③(スキア・談)
「——な、なっ!」 『喉の奥で声が詰まる』という感覚を久々に感じた。六年ぶりに肉体を得たのだと実感出来るのは嬉しいのだが、何もこんな実感の仕方じゃなくったっていいと思うんだが……。 「ど、どうでしょうか?」と僕に訊くルスの声はちょっと弾んでいる。自分の想像した姿を、僕が気に入ったか否かを早く知りたいみたいだ。 「どうって……。いや、あ、んー……」  率直な感想を口する事は咄嗟に堪えた。  僕はサポート系の魔法を扱う以外にも、“影”を経由して色々な物を入手する事が出来る。人様の私物をこっそり拝借しているので、突き抜けた善人であるルスにはその点を伏せておく事にした。——そんな手段で用意したとも知らずにランタンを片手に持って、こちらを照らしてくれているルスの表情はとても明るい。さっきまでは遺体と見紛うレベルで全身が破損していた者とは思えない程嬉しそうな顔だ。「……おっさん、だな」 ランタンと同じく、影を経由して他から拝借した手鏡を持ち、眉間に少しの皺を寄せながら呟いた。口汚く、否定的な意見を言葉にしなかった自分を褒めてやりたい。 「実は、ワタシの名付け親になってくれた人を想像してみたの。もう随分と会えていないから、また会いたいなぁとも思って」 「名付け、親……?あぁ、そっか」(それなら、納得だ) “僕”に名前をつけたルスはどう見てもまだ“少女”と形容する事しか出来ない容姿だが、一般的に名付け行為をするのは、それなりの年配者だもんな。  この酸いも甘いも知ったような落ち着いた顔立ち、少し垂れ目がちで小皺のある目元、緩く後ろに撫で付けた前髪からは妙な貫禄が漂い、顔の雰囲気からは妙な色香まで感じられる。ボディの方までは彼女の想像力があまり及ばなかったおかげで勝手に補正が入り、百九十センチはあるであろう高い身長に見合う逞しい体に出来たのは救いだった。これで……ビール腹で全身が脂肪ばかりの体にでもされていたら、最速でルスに殺意を抱いていた所だ。でも——「……なぁ。僕の“口調”や“声質”からして、もっと違う容姿は思い浮かばなかったのか?」 “影”そのものであり、そのせいで肉体の無い僕が、唯一“僕”という存在を主張出来るのが『声』だ。少年めいた声質なせいで、この五十代前半といった感じの容姿にはちっとも似合わない。 「……えっと、そう、だね。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-12-04
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【第8話】いざ、仮初の夫婦に(ルス・談)
「目を瞑ってろ」と言われ、一秒後には「もう開けていいぞ」とスキアが許可をくれる。指示通りに行動しはしたが、ワタシにとってはただ瞬きをしたにすぎなかった。 なのに、たったそれだけの間でもう、目の前の情景は一変していた。 森の中に響いていた獣の遠吠えも、梟の鳴き声も消えて、耳に届くのは町の騒がしい営みの音に変わっている。喧嘩でもしているかのような怒鳴り声、店への呼び込み、酒を飲んで歌う人達の声が聞こえ、『町に戻って来たんだ』と実感した。平和そのものの音を聴き、ちょっと嬉しくなる。コボルトの群れをこの町から随分遠く引き離したのだ。 かなり大袈裟かもしれないが、今夜のこの光景を守ったのは自分なんだと考えてしまう。「な?一瞬で戻れただろう?」「すごいね、ありがとう!」「あぁ、そうだ。ついでにコレを渡しておくよ。アンタのだろう?」 お互いの体を包んでいた両腕を同時に解くと、彼は半透明の魔法石を差出してきた。水晶にも似た石の周囲にはぐるっと細いリボンが巻き付いているみたいにしてライン状の魔法陣が描かれている。討伐と遺体の回収といった依頼を無事にこなして、要求された数を満たしている証だ。「…… もしかしたら、ロイヤルさんに渡したやつ、かも?」 見覚えはあるが確信はない。三十体のゴブリンを倒し、魔法石の中にその遺体を収納した後は、確かにパーティーのリーダーだったロイヤルさんに渡したのに。 首を傾げ、「どうしたの?コレ」とワタシが訊くと、スキアは少しの間の後に「——拾った」と言ってニコッと笑った。「逃げる時に落としたんじゃないのか?」「そっか、成る程」 確かにあり得る。あの時は皆かなり慌てていたし、一目散に走れば何を落としてしまっていてもおかしくはない。ワタシもなけなしのお金で買った杖をなくしたし。まぁ、もっとも、自分の場合は逃げる流れで身を軽くしようと捨ててしまったのだけれども。「じゃあ、保育所に弟を迎えに行く前に討伐ギルドに寄ってもいいかな。これを渡してワタシの分の報酬を受け取ってこないと」(じゃないと、リアンを預けている保育所の延長料金が払えない!) 休まずに働けども収入が少なく、その日暮らしのようなギリギリの生活をしているせいで、残念ながら貯金なんかほぼゼロなのだ。「わかった。じゃあ、そうしようか。——そうだ、歩きながら今後の僕達の関係性を決
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-12-10
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【第9話】討伐ギルド・前編(スキア・談)
 ルスの目的地である討伐ギルドは、ソワレの目抜き通りからは一本逸れた通りにある。煉瓦造りのその建物の周辺には薬を扱う店や防具・武器屋、質屋などが数軒あるが、それよりも酒屋や飲み屋の方が多く並らぶ。そのため昼間は比較的静かな通りなのだが、日の暮れた今では酷い有様だ。討伐依頼などをこなして得た稼ぎの全てを使い倒す勢いで酒を煽る者がいたり、喧嘩になって殴り合う奴らもいて、とても騒がしい。 初めて来た町なのに、この通りが昼間どんな様子なのかを僕が知っているのは、全てルスと契約したおかげだ。 “影”を経由して色々な物を入手出来る以外にも、契約対象となった者の“知識”などを読み解く能力を僕は持っている。現状僕が自在に読めるのは“知識”の方であり、“記憶”の方は契約印がもっと彼女の体に馴染んでいかないと多くは望めない。だが此処数日間程度の記憶は既に得ておいたから、この後の行き先くらいは全て把握済みだ。  魔物側での活動期間が長かったため、残念ながら今の僕には人間側の知識が乏しい。なので町に入ってすぐに彼女の“知識”の方も少しだけこっそり読ませてもらったのだが—— ルスの“知識”は、何かがおかしい。 色々な知識をそれなりに得てはいるみたいなのだが、どれもこれもが浅いのだ。例えば『トマト:赤くて丸い野菜。酸味が強い物や甘めの物など、品種によって味の系統が少し違う』などといった具合に、妙に説明文めいた覚え方をしている。それに加えて“知識”に関連付けて思い出せる経験などがほとんど無く、どれも“本”や“聞き齧って得た簡単な知識”でしかないといった印象だった。  貴重な人材であるはずのヒーラー職に従事している割には着ている装備も貧相だし、弟を預けている保育所の延長代金をやたらと心配する程お金が無い点も不思議でならない。(人の事をどうこう言える立場ではないが、ルスに関してはどうも疑問点が多いな……) そんな事を考えていると、ルスがギルドの入り口前に立ち、「スキアはどうする?外で待つ?」と訊きながらこちらを見上げてきた。 「もちろん一緒に行く。僕達は“夫婦”になったんだからな」  にっと笑い、ルスの手を取って指を絡めていく。そして少しでも夫婦らしく見える様に恋人繋ぎってやつをやってみた。僕らしくないサービス精神だ。  相当若くは見えるが所詮はルスも年頃の娘であ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-12-16
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