むかしむかし。 とある世界のとある星では、ニンゲンとマモノがいつもケンカをしていました。 ずっとずっと仲が悪く、ケンカばかりしていましたが、ある日マモノ達の中に一人の王様が現れました。 カレはとてもつよく、とてもかしこく、うつくしかったので、マモノ達はみな『マオウサマ』と呼んだそうです。 マオウサマはつよかったので、マモノ達はたくさん勝ちました。 ニンゲン達は負け、星のすみっこでしか生きていけなくなりました。『このままではニンゲンはゼツメツする』 みんながそう考えていましたが、マオウサマが急に死に、王様がいなくなったマモノはゆっくりとジメツしていったのです。 ナゼかはわかりませんでしたが、そのジジツをニンゲン達はスナオによろこびました。 でも、このままではニンゲンもみんな居なくなってしまうでしょう。 多くのモノ達がそう考えてしまうくらい、ニンゲンも減っていましたから。 だけどニンゲン達はふえていきました。 そして、ニンゲン達は住むばしょを広げました。 いつかはマモノに勝とうと、こっそりがんばっていたおかげで。 ——知りたいかな? どんなふうにがんばったのか。 どうしてまた、ふえたのか。 知りたいなら、この本の上にキミの手をのせてみるといいよ。 “いま”をかえたいキミも、手をのせてみるといいよ。 キミを、わたし達がたすけてあげる。 ◇ ——生まれて初めて、母さんから渡された絵本に書いてあったこのお話は、とても不思議な終わり方をしていた。 真っ黒なクレヨンで描かれたマモノ。赤や青といった綺麗な色を使って描かれているニンゲン達。豊かな自然の風景もクレヨンで描いているのにとても綺麗で、心を惹き込む力強さがあった。 正直な所、お話の意味はよくわからなかった。 だから面白いとも思わなかった。だけどワタシは何の気なしに手を置いてみた。 今日、初めて会った弟の小さな小さな手も、一緒に。 最後に書いてあった、『キミを、わたし達がたすけてあげる』という文字が胸にじわりと響いたからだ。 たすけて、たすけて、たすけて…… もう、ここから消えてしまいたい。 そんなお願いが叶うかもしれないと、少しだけ、本当に少しだけだったけど、期待したからだった。
Last Updated : 2025-11-16 Read more