All Chapters of ダメ男との結婚をやめたら、運命の恋が始まりました: Chapter 41 - Chapter 50

78 Chapters

7_1.斎藤家からの呼び出し

正広に結婚をやめたいと電話した後、それっきりで、結局きちんと話をしていない。結婚をやめるのだから、当然私たちの関係は終わりになる。少なくとも私はもう、正広に気持ちはまったくなくなっていた。だからこそ、改めて正広と話をしなくてはいけない。 そして、現実的な問題も山積みだ。 式場のキャンセル、指輪のキャンセル、親への説明。考えるだけでもやることは目白押しだ。 とにかく、まずは正広と話をしよう。 そう思っていた矢先――私は、正広の両親から直接呼び出されてしまった。 正直、戸惑っている。だって、私はまだ正広とちゃんと話をしていない。 あの日、電話で結婚をやめたいと伝えただけ。 具体的な話は何一つしていないし、正広の気持ちも何も聞いていないのだ。だからこそ、正広と直接会って、ちゃんと向き合って話し合いがしたいと思っていた。 そうやって、正広にも伝えようと思っていた。それなのに、正広じゃなく、両親が出てきてしまった。 一体、正広はどんなふうに伝えたのだろう?もしかして、私が一方的に逃げたみたいな言い方をしてるんじゃないだろうか。 私が悪者になってるんじゃないだろうか。不安と怒りが、じわじわと胸の奥で混ざり合っていく。 まだ何も整理できていないのに。 心の準備もできていないのに。現実だけが、容赦なく押し寄せてくるのだ。 ああ、胃が痛い。
last updateLast Updated : 2025-12-31
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7_2.斎藤家からの呼び出し

正広の両親に何を言われるか、想像がつくようで、つかない。 だって「斉藤家の~」などと言い出す家庭なのだ。今回もきっと、斜め上な発言が飛び出すことだけは容易に想像がつく。だけどその斜め上が、いつも私の想像をはるかに超えてくるのだ。それでも、大抵の心構えはできている。 ただ、緊張して、斉藤家へ向かう足取りはどうしても重かった。ため息が出そうになる気持ちを必死に抑える。 深呼吸をして無理やり気持ちを落ち着けると、震える手でインターホンを押した。斉藤家のリビングにお邪魔すると、そこにはソファーに沈むように座る正広と、それを心配そうに見つめる両親の姿があった。 私の姿を確認すると、正広の父親が鋭い視線を向けてくる。 その視線に怯みそうになり、思わずぎゅっと手を握りしめる。 まるで私が悪いと言わんばかりの、そんな空気に、体がずんと重くなる。「結婚をやめたいそうだが、新しい男でもいるのか?」正広のお父さんが、ひどく冷たく、疑いを隠さない声で尋ねてくる。 それに対し、声が震えないように、ゆっくりと答える。「……違います。いません」 「本当か? だったら、どうしてこんなことになっているんだ?」何もしていないのに、私だけが責められている。 ただ、自分の人生を自分で選ぼうとしただけなのに。 そのはずなのに、まるで罪人のような扱いだ。私が悪いのだろうか。 私が結婚をやめたいと言ったから、すべて私の責任なのだろうか。いや、違う。 この選択は、私の意思だ。 責任なんてものはなく、まずは私と正広の問題だ。 結婚をしないことに責められる謂れはない。とんでもなく冷ややかな空気の中、私はぐっと唇を噛みしめた。
last updateLast Updated : 2026-01-01
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7_3.斎藤家からの呼び出し

「ねえ、萌ちゃん。萌ちゃんが結婚をやめたいって言ってから、正広ったら全然ご飯を食べないのよ」正広のお母さんが、うっすら涙を浮かべながら、すがるように私を見てくる。 お母さんの声音は優しいけれど、結局のところ、私が悪い、私の責任だと責めている。どうして結婚をやめたいのか、その理由は正広にある。 私は正広から、斉藤家から嫌な思い出をたくさんもらった。 それを全部ここで吐き出してもいい気がしたけれど、もう一人の私が「落ち着け」と何度も頭の中で抑えてくる。当の正広を見やると、彼はソファーに深く沈み込んだまま一言も発せず、ただ俯いていた。それはまるで、悲劇のヒロインのようでいたく滑稽だ。――ああ、どうして私はこの人を好きになったんだろう? ――この人の、何がよかったんだろう?自問自答してみても、まったく答えが出ない。優しかった? 頼りがいがあった? 楽しかった?そのどれも、今の彼には見当たらない。 そして、今のこの状況。斉藤家全体が、私を追い込もうとしているように感じた。「ねえ、どうして結婚をやめるの?」 「それは――」その問いに、まっすぐと答える気力が湧いてこなくなった。 本当に、ほんっとーに、面倒くさく思えてしまったのだ。この空気、この圧、この家の空気感。 斎藤家のすべてが、嫌でたまらない。そしてそれは、もう絶対に戻れないところまで来ている証拠だとも思った。
last updateLast Updated : 2026-01-02
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7_4.斎藤家からの呼び出し

「あの、すみませんが、少し二人で話をさせてもらえませんか? まだ話し合ってもいないので」――話し合ってもいないので この言葉をわざと強調して言ってみたけれど、この家族には何も響いていないようだった。とにかく正広を結婚させたい両親。 両親の言いなりになっている正広。 そして、結婚という世間体を手に入れたい斉藤家。そこに、私の意見は少しも存在していなかった。「わかった。ちょっと二人で話してみなさい」 「はい、ありがとうございます」私が立ち上がると、正広も両親に背中を押されてようやくソファーから立ち上がる。まさに悲劇のヒロイン。実に甲斐甲斐しいことだ。正広は無言でリビングを出て、自分の部屋に向かった。私はその後を追うように、彼の部屋へ入る。扉を閉めた瞬間、強引に腕を引き寄せられて抱きしめられた。「っ!」以前だったら、抱きしめられたりキスをされたりすると、ドキドキしたり嬉しかった。それなのに――今は、何の感情も湧かなかった。むしろ嫌悪感さえ抱く。正広の腕の中にいるはずなのに、心はどこか別のところへ行ってしまったかのよう。ぬくもりが、ただの重さに感じて気持ち悪い。ああ、そうか。 私はこの人のことを、もうこんなにも好きじゃないんだ。改めて実感してしまった瞬間だった。
last updateLast Updated : 2026-01-03
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7_5.斎藤家からの呼び出し

「萌、俺悪いところがあるなら直すよ。家事だってできることは手伝うし。もう一度やり直そうよ」先ほどまで一言も喋らなかった正広が、二人きりになったからだろうか、水を得た魚のように口を開いた。ペラペラと、耳障りの良い言葉を並べられるけれど、私の心には、何も届かない。届くわけがない。今まで散々言ってきたこと、直してほしいと願ったことが走馬灯のように蘇ってくる。あれもこれも、何ひとつ変わらなかったじゃないか。それに、「手伝う」という言葉にも引っかかりを覚えた。そんな言葉が出る時点で、家事は私がやるものだと思っている証拠だ。そんなことでは、この先上手くやっていけない。最初から不満しかない結婚生活になる。正広に抱きしめられたまま、私は彼の言葉をぼんやりと聞いていた。なにひとつ心に響かない。正広の気持ちは、薄くて軽くて、空っぽに見える。もう、うんざりだ。「ごめん、もう無理。……戻ることは無理なの」言い聞かせるように、ゆっくりと口にする。できるだけ感情を抑えたつもり。それが私から正広への、精一杯の優しさ。だけどきっと、その気持ちも彼には届いていないのだろう。わからないのだろう。私の気持ちは、正広から確実に離れてしまった。もう戻ることはない。無理だ。抱きしめる腕の力が、より一層強くなる。でも、私は何も応えなかった。ただ、そこに立ち尽くしていた。心がどこか遠くに行ってしまったみたいだ。
last updateLast Updated : 2026-01-04
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8_1.予想外の告白

仕事中、突然の胃の痛みに、思わず顔を顰めた。シクシクキリキリとした痛みは、大きく深呼吸をして痛みを逃がす。きっと、ここ最近のプライベートなことが、じわじわと精神に響いているのだと思う。これはあきらかにストレスだ。 まさか私が、ストレスで胃を痛めるだなんて。 健康だけが取り柄だったのにな。胸のあたりをぎゅっと押さえながら、何度も大きく息を吐いていると、通りすがりの江藤くんがそっとデスクに触れていく。見れば、胃薬が置かれていた。一瞬痛みを忘れて、ふっと顔が綻ぶ。そういうとこ、いつも察しがいい。 江藤くんはまわりをよく見ている。 だけどその優しさが、今の私には身に沁みる。「江藤くん、今日夜ご飯付き合って」 「いいけど、胃が痛いんじゃないの?」 「うん、そうなんだけど大丈夫」 「なんだそりゃ」呆れたように笑いながらも、快く承諾してくれる。 やっぱり江藤くんは優しい。「お寿司食べたい」 「胃が痛いのに、寿司とか言う?」 「薬でもう治ったもん」 「まだ飲んでないじゃん」 「そうだけど……いいの」ごにょごにょと答えると、江藤くんは「単純だな」と笑った。 その笑顔に、私もつられて少しだけ笑った。重たい日々の中で、ふと笑える瞬間。 それだけで、少し心が軽くなるみたいだ。 なんてありがたいのだろう。
last updateLast Updated : 2026-01-05
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8_2.予想外の告白

会社帰り、江藤くんと近くの回転寿司へ足を運んだ。カウンター席に並んで座り、やっぱりちょっとは胃のことを考えて、控えめに食べ始めた。しばらくお互い黙々と食べる。ふと箸を止めて、ちらりと江藤くんを見ると、それに気づいた江藤くんも一旦箸を置いた。お互い黙ったまま、しばらく時が流れる。私は意を決して口を開いた。「私さ、結婚やめたし、彼とは別れることにしたんだ」 「そうか。せっかく俺が結婚式に乗り込もうとしてたのに?」 「ええっ?」その言葉に、思わず吹き出してしまった。 しんみりしそうな空気だったのに、そんなことを言うものだから笑いがこみ上げる。いい感じに空気をぶち壊すだなんて、江藤くんらしいというか何というか。それが、何だか気を楽にしてくれた。言い淀んでいたことが、するすると口から出てきてしまう。私は、これまでのこと、感じたこと、悩んだことなど、思いのたけをぶちまけてしまった。江藤くんは、ただ黙って聞いてくれた。うなずきも相槌も、ちょうどいい距離感を保ってくれる。それがすごく心地よくて、私の口は止まらなかった。「私、これでよかったのかな? いろいろありすぎてツラいんだよね」正広とのことが思い出されて、少し涙が滲んでしまう。ほんと、バカだな私。 「彼氏」とか「結婚」とか、そんな甘い言葉に惑わされて、ちゃんと考えずに突き進んでしまった。反省することが多すぎて、自分に嫌気がさす。 どうしてこんなに浅はかなんだろう。 悔やんでも晴れないこの気持ち。でも、隣で静かに聞いてくれる江藤くんの存在が、今はとてもありがたく感じた。なんて偉大で尊いのだろう。
last updateLast Updated : 2026-01-06
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8_3.予想外の告白

とにもかくにも自己反省中の私。 すると、江藤くんがクスクスと笑い出す。「だから、俺がさらいに行くって言ったじゃん。俺がいるだろ? 俺にしとけって」冗談めかしたその言葉が妙に優しくて、心の奥がじんわりとあたたかくなる。たぶん私は、甘えているんだ。江藤くんに彼女がいないのをいいことに、彼の優しさに寄りかかっているんだと思う。頼ってしまっているんだと思う。江藤くん、ごめんね、ありがとう。その言葉は口に出すことができず、私の心の中の呟きとなった。ちょっぴり泣きそうになってしまったからだ。ふと、ずっと自分の話ばかりしていたことに気づく。「ねえ、江藤くんはいい人いないの?」何気なく聞いたつもりだった。今まで、彼から女の人の話なんて聞いたことがなかったから。もしかして、知らないだけで彼女がいたりして? そんなことを考えていると、あっさりと答えが返ってきた。「いますよ。……でもその人、超鈍感だから、まったく気付いてくれないんだよね」 「そうなんだ」そう返したけれど、胸の奥が、きゅっとなる。江藤くんにも、好きな人がいたんだ。じゃあ、あんまりご飯とか誘うの、よくないかな?そんなことを考えている自分に、少し驚いた。さっきまで自己嫌悪でいっぱいだったのに。今は、なんだか別のことで、胸がざわついている。
last updateLast Updated : 2026-01-07
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8_4.予想外の告白

だって、江藤くんったら、そんなこと一言も言わないんだもの。それならそうって言ってくれたら、私だってもう少し遠慮したと思うのに。こんな風に気軽に誘って付き合ってもらって、申し訳なかったな。そんなことを考えていると、江藤くんにじっと見られていることに気づいた。頬杖をつきながら、大きく息を吐き出す。その目は呆れているようで、でも少し優しい。「え、何?」 「辻野さんって、ほんと鈍感だよね」 「え、私?」 「ずっとアピールしてるのに、何で気付かないの?」その言葉に、私はきょとんとしてしまう。ん? どういうこと? 鈍感? 気付かない?って、私のこと? ずっとアピールしてるって、まさか私に?頭の中を整理していくと、そうとしか解釈できない。理解が進んでいくと、体の奥の方がぶわっと熱くなった。「えっ、うそ?!」 「俺の言葉は冗談じゃなく、全部本気だからね」ま、まままままさかの、私ですか?!頭の中が真っ白になって、椅子から転げ落ちそうになる。心臓はバクバクと暴れ出し、顔は一気に熱を帯びていくようだ。衝撃が大きすぎて、さっきまでの自己嫌悪も涙も、全部どこかへ吹き飛んでしまった。目の前の江藤くんは、いつも通りの顔で、でもその目だけがまっすぐに私を見つめていた。その目はすごく優しくて甘くて、私をドキドキさせるには十分すぎるほどの破壊力があった。
last updateLast Updated : 2026-01-08
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8_5.予想外の告白

やばい、心臓がドキドキと音を立て始めた。 待って、待って。ちょっと落ち着いて私。江藤くんがそんなことを言うものだから、今までの思い出が走馬灯のように頭の中を駆け巡る。会社にいるときは、いつも気にかけてくれる。 わからないところを丁寧に教えてくれる。 突然のお誘いにも、快く付き合ってくれる。 いつだって愚痴を聞いてくれ、アドバイスをくれる。 結婚式に乗り込んでさらいに行くと言ってくれて――もしかして、全部が私に向けられたメッセージだったとでも言うのだろうか。 だとしたら、私ったら、超鈍感すぎて申し訳ない。江藤くんを意識した途端、ますます鼓動が速くなり、頬が熱くなってきた。 今にも顔から湯気が出そうで、思わず両手で頬を押さえる。ちらりと彼を見れば、とても真剣な瞳で私を見つめる。「俺は、ずっと前から辻野さんが好きだよ」 「っ!」その言葉に、私は息を飲んだ。衝撃が大きすぎて、言葉が出てこない。息をするのも忘れるくらい、時が止まったように感じた。目の前にいる江藤くんは、出会ってからずっと優しくて、ずっとそばにいてくれた人。そんな彼が、私のことを「好き」だと言う。全然気づかなかった。そんな素振り、なかったように思う。 だけど、妙に胸の奥があたたかくて、くすぐったい。 素直に、嬉しいと思ってしまった。
last updateLast Updated : 2026-01-09
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