「でも彼方は勝つ気満々ですが」「少なくともコア能力授業を受けていない今の状態ではあいつは百に勝てないだろな。解放と制御、両方ができない力は力とは言えない」 おっと、話がずれたと一先輩は笑った。「とにかく、不良生徒に恐れられるのには時間がかかるから、それまでは複数で固まって歩いてた方がいいってことさ。俺もいてやりたいが学年が違うし部活もあるから難しい。だから、相手の足りないところを補って風紀委員やってみな。案外上手く行くかも知れないぜ。俺の妹の人を見る目は確かなんだから」「あ、ありがとうございます、先輩」「おう」 話ながら食べ終わったトレイを持って、一先輩は立ち上がり、ひらひらと手を振りながら歩いて行った。その背中が大きく見える。「うん、そうだね」 渡良瀬さんが頷いた。「危険かもしれないんだもん、お互いで協力し合わなきゃ無理だよね」「時間を稼げれば、別の委員が来てくれるだろうし」「そうだよね、決めた」 渡良瀬さんは顔を上げた。「私たちの任務は、時間稼ぎ。校則違反を見つけて、説得して、その間に先輩が来れるようにする」「うん、それが現実的だと僕も思う」「と、決まれば、時間があればできるだけ一緒にいよう。委員長の方法は丸岡くんは使えるけど、私には使えない」 確かに落雷一閃ドーンは渡良瀬さんの能力ではマネしようがない。「うん、頑張る」 ◇ ◇ ◇ ◇「ふう」 食堂から廊下に出た一は溜め息をついた。 本当なら、傍にいてやりたい。二人とも善意の生徒で、風紀委員などと言う役職には向いていない。確かにコア能力を伸ばすには適任だろうか、他人に罰則を与えるなんてことからは無縁のところにいたはずだ。 しかし。「学園長がなあ……」 ポケットに手を突っ込んで歩きながら一は呟く。(あの二人……コピーくん、もとい丸岡仁を管轄下に置きたいって……) 生徒
Last Updated : 2025-11-22 Read more