All Chapters of 地味なコア一個しか宿らないと思ったらチートみたいでした: Chapter 41 - Chapter 50

104 Chapters

第40話・人間なんだから

 渡良瀬さんはスパッと切り返した。「教員だって人間なんだから、欲しかった生徒をゲットできなかったのは残念に決まってるでしょ。それでも自分を選んでくれたんだから、先生の誇れる生徒になるように努力するのが当然でしょ? 他人を選びたかったからってどうなのよ。確かに本命じゃなかったかもしれなくても、今その先生に選ばれたのは私でありあなたたちなのよ。どうしてそれを誇りに思えなくて、丸岡くん以上のコア主になろうと思わないのよ」 ひそひそ声がぴたりと止まった。「というわけで、私も丸岡くん以上のコア主になるつもりだから、よろしくね!」「うん、よろしく」 にっこりと全開の笑顔に、引き込まれそうになるのを必死で押さえながら、僕も笑顔を作って握手した。 言っている間にも教室には人が入ってくる。「ふん。くそチートがいやがった」 そんなことを、わざわざ大声で聞こえるように言う相手は、やっぱり。「彼方くん」 渡良瀬さんが咎めるように言ったが、どうやら一番最後に入って来たらしい彼方は止まらない。「いいか、貴様ばかりがコア主じゃないんだぞ。俺のコアをコピーできたからって、俺に勝てたわけじゃない。むしろお前は吹っ飛ばされていた」「彼方壮さん」「うるさい、このものまねオウムが偉そうな顔をするのが弧亜なんて、入らなきゃよかったぜ。誰も彼も丸岡丸岡って……!」「彼方、壮さん」「しつこい! 俺の邪魔するヤツは……!」「今からでも記憶を消されて、学校追放されたいんですか?」 自分を呼ぶ声が背後からと分かって、彼方は振り向いた。学園の制服を着て眼鏡をかけた綺麗な女の人が、そこに立って、彼方を見上げている。袖には二本のライン。二年生だ。「何様だてめえ」「貴方の先輩です」 細身の女性は、牙をむき出しにしたような彼方を相手に動揺する様子もなく、冷静に穏やかに声をかけた。「この学校では、コア開発のため以外の暴力行為は一切認められ
last updateLast Updated : 2025-11-22
Read more

第41話・先輩の強さ

「貴様、俺がどんなに強いか知ってんのか」「この学園に合格するというだけで、貴方の実力は分かります。でも、戦闘能力が高くても喧嘩を売っていいという理由にはなりません」「貴様……!」 彼方が拳を振り上げた。「俺の実力を……思い知れ!」 彼が空気を練る前に、先輩は動いた。 軽く、握手でも求めるかのように彼方に手を差し伸べる。  バチッ! 火花が散って、彼方は座り込んだ。「五万ボルトの電圧です」 温厚そうな先輩は、冷静にそう言った。「中学校ではどうだったか知りませんが、ここは弧亜学園。貴方より一年、二年先に入学してコア能力を磨いている人間がいることをお忘れなく」「…………!」 すごい……。電流を使えるんだ。 でもあの顔、どっかで見たことが。「では、改めまして。弧亜学園生徒会風紀委員長、八雲百です。一年生入学ガイダンスの司会進行をさせていただきます。よろしくお願いします」 ああそうか、八雲一先輩に似てるんだ。体格とかは全然違うけど、やっぱり顔の作りが何か似てる。双子なのかな。下の名前で呼んだら怒られるかな。いや、話す機会はないか。「寮や学校の案内は既にコア監視員によってなされていると思いますが、基本的に鍵のかかっている部屋は部屋の担当教員の許可がない限り入室禁止です。強引に入ろうとした場合罰則となりますのでご注意ください」 八雲(百)先輩は穏やかな声でおっかないことを言ってくるけど、それはこの学園が日本最高のコア研究施設でもある証拠であって。「ちなみに、この学園の最高罰則は、記憶操作の上学校追放となります。私と同学年でも、三人、校則違反の繰り返しによってこの罰則を受けました。皆さんが一人も欠けることなくこの学校を卒業できることを心から祈っています」 それから主に午前中に受ける一般授業の教師が順番に
last updateLast Updated : 2025-11-22
Read more

第42話・ガイダンス

 八雲(百)先輩が車道移動免許のことを言っている間、やっとショックから立ち直った彼方は僕の方をギンギンに睨んでいた。しょうがないか、コア車道移動法違反を中学の時点でやらかしてたんだから、バレたら免許もらえるはずないし。 コピーしなきゃ何にもできない僕には関係のない話だし。「では、何か質問は」 手を挙げたのは一人だけ。「……はい、彼方さん」「コア開発のため以外の暴力行為は一切認められていないって言うんなら、さっきの俺への攻撃は、明らかな暴力行為だよなあ?」 ……あれだけひどい目にあわされたのに、まだケンカ売るかな。「生徒会、及び風紀委員会などの一部の生徒は、素行不良あるいはコア使用による暴力を静める為のコア使用が認められています。それに、貴方に関しては」「あんだよ」「成績優秀なれど問題行動多しと内申書に明記されています。優れた成績とコア能力があって学校の入学が認められましたが、基本的に貴方は問題児なのです」「なっ……」 そこかしこで、吹き出す音が聞こえた。「貴様ら、笑ってんじゃ……!」「その為に、貴方の担当教員が和多利先生となったのです。和多利先生は生徒指導担当でもありますので、貴方のしたことは全て和多利先生の知る所となります。コア車道移動免許が欲しいのなら、大人しくしておいた方がよろしいのでは、と」 彼方は拳を作って振り上げて……そのまま拳を横に持って行って壁を殴った。「では、質問がないようでしたら、これにてガイダンスは終了いたします。何か問題が起きたと思ったら、コア監視員を通じていつでも生徒会や教員を呼んでください。生徒会は皆さんが平和な学園生活を送ることを願っていますし、その為なら如何なる協力も致します」 八雲(百)先輩が頭を下げて、ぱらぱらと拍手が起こって、ガイダンスは終わりとなった。 「先輩、すごかったね」
last updateLast Updated : 2025-11-22
Read more

第43話・勧誘ラプソディ

「なんか外騒がしいな」 気付いたのは、一人の生徒だった。 一年生ガイダンスが終わって、八雲(百)先輩がドアを開けて出て閉めたそのわずかな間に、ざわめきを聞き取ったのだ。「なんだろ」「んなもん関係ないだろ! さっさと出りゃいいんだよ!」 怒りの持って行き場を見つけた彼方が怒鳴りつけて、ドアをガッと引く。 その瞬間、三十人近い人が流れ込んできた。 人の雪崩に巻き込まれてあっと言う間に彼方の姿が見えなくなる。「新聞部、新聞部!」「陸上部に入りたい奴!」「コア実験同好会、楽しいよ!」「うわ、うわ」 僕と渡良瀬さんも人雪崩に巻き込まれそうになったところで、首根っこを掴まれて、ひょいっと持ち上げられ、人の流れから反らされた。「よっ、一時間ぶり」「八雲先輩!」「え?」「あ、えーと。さっきの八雲先輩と違って……」「俺は八雲一。さっきの百の双子の兄だよ」 ニッと笑って降ろしてくれた先輩は、背中で僕らを人雪崩から庇ってくれた。「これ、なんなんです?」「クラブ勧誘だよ。弧亜学園は人数は少ないけど、部活や同好会が結構あってな。一年生ガイダンスが終わった後は勧誘タイム、ってわけだ」「ちなみに先輩は」「陸上部。一応キャプテン」「陸上って、私、そう言うのできるわけじゃ」「確かに入ってくれりゃ嬉しいけど、嫌がるのを入れるほど陸上部は部員に困ってないんでね」 それに他の部員が勧誘をしてるはずだし、と先輩は笑った。「で、顔見知りがヤバかったから助けたってだけ。お前がいっしょうけんめい庇おうとしてた彼女もついでにな」「い、いや、彼女じゃ……!」「何の話?」 それまで人団子を見て呆然としていた渡良瀬さんが会話に戻って来て、僕は慌てて言葉を切った。 そして、別の話題を見つける
last updateLast Updated : 2025-11-22
Read more

第44話・人団子を突っ切って

「和多利って先生、忙しくないですか?」「この学校に長いと、時間をひねり出すのが上手くなってな。交通法規のDVD見せてる間に部員のコンディションから練習内容考えて、終わったら移動法の実習を見ながら担当生徒の教育をして……てな感じ。教員ができるほどの研究者は大体みんな時間の使い方が上手いな」「はあ」 コア監視員に聞くより、生の実体験は役に立つ。「八雲兄! そこにいる一年生を寄越せ!」「一って名前があるんだからそっち呼べよ」「その一年生を陸上部に入れる気なのか?! 男子の方、あの無色コアだろう!」「球技部でコアコピーして全球技制覇して見ないか?」「いやいや、書道部で心を落ち着けてって効果もあるぞ」「萌えを追いたいなら文芸部に!」「お前ら文芸名乗ってるけど漫研と根っこおんなじなんだろ、知ってるぞ!」 何か知らないが、僕を勧誘しているはずが先輩同士のケンカになった。「しゃーねえなあ……」 先輩のコアの周波数が変わったのが分かった。コアを発現させている。まさか、コアを使った勝負? でもあれ、八雲(百)先輩が言ってたように教員の許可なしでのコアケンカは……。「おし」 先輩は平然と、僕と渡良瀬さんを右肩と左肩に乗せた。「平間! 勧誘やっとけよ!」「あっ。ずるいキャプテン逃げるんすか!」「しっかり捕まってろよ。よーい……」 八雲(一)先輩は低く体勢を整えると。「スタートッ」 物凄い勢いで、人団子を突っ切った! 「はいゴール」 人団子が追いかけてこない位置まで走って、先輩は僕らを下ろした。 物凄い力だった。筋力と瞬発力、その二つが図抜けている。 これが。「俺のコアは自身肉体強化でな」 軽くはっはっと呼吸をしながら、先輩は説明してくれた。「筋力や運動能力、再生力が発動するついでに頑強にもなる。人間重戦車な
last updateLast Updated : 2025-11-22
Read more

第45話・一方的な乱闘

「全く」 はあ、と百先輩(僕のポリシーには反するけど、ややこしくなるので心の中でだけこう呼ばせてもらう)は溜め息をついた。「渡良瀬瑞希さん」「え? あ、はい!」「一緒に来てもらえる? 貴方の力が必要かも知れない」「おい、一年生巡っての乱闘に一年生を入れるのか?」「彼女の能力は他者強制鎮静化よ。私のように替えの効く能力じゃないわ」「まーだこだわってんのかよ」「いいから。心配だと言うのなら兄さんが護衛すればいいでしょう。丸岡さんもついてきてくれるでしょうし」 そりゃ行くけどさ。「せーっかく抜けてきた乱闘現場にまた行くのかよ。お前の放電一発でいんじゃね?」「一年生を巻き込むでしょう」「絞り込むことだってできるだろ?」「……可能な限り穏便に済ませたいの」「一年相手にいきなり電撃食らわせたヤツがねえ」 この一言で、上級生が百先輩が教室に入ってくる前から待機していたのが分かった。教室かそのすぐそばにいないと、百先輩が彼方に電撃食らわしたなんて知らないはずだから。 一先輩が駆け抜けてきたルートを戻ると、人団子が大きくなっていた。「おーやれやれ一年! 派手に行け!」「こンの……上級生だからって偉そうにしてんじゃねーよ!」「そっちの方がえらそーじゃないっすかあ!」 案の定、彼方が一人の上級生とケンカ状態になっていて、周りでは見物する人、賭けてる人(ギャンブルもいけないんじゃ?)、気にせず勧誘してる人とされてる一年生、ごっちゃごちゃになっていた。「落語研究会、彼方壮さん、ケンカはやめて下さい! 二重の校則違反です!」「えー。あっしはなーんもしてないっすよー。この一年生が風を吹かせてるだけでー」「くっそ、ひょいひょいよけやがって……!」 落語研究会の先輩が、……少なくとも一年じゃ最強クラスだろう彼方の攻撃をひらりひらりとよけ続ける。コアも使ってないのに。 これが、上級生の実力?
last updateLast Updated : 2025-11-22
Read more

第46話・会議室へご招待

「よかった、効いた」「すごい力だね……」「当てられなきゃ意味がないけど。彼方くんが油断して真正面から当たってくれてよかった」 謙遜する渡良瀬さんの横を通り過ぎ、百先輩は落語研究会の先輩と彼方の前に立った。「落語研究会。彼方壮さん。明日までに、反省文一〇枚、ですよ」「へーいへい。あっしはなーんにもしてねーのに、反省文かあ……」「何か異論でも?」「いーえいいええ、やりますとも。雷は落っことされたくないからねぇ。地震雷火事オヤジっと」「彼方さんも」「……はい、わかりました」 おお。初見以来、ここまで大人しい彼方を見たのは初めてだ。「ありがとう渡良瀬さん。お礼に、お茶でも一緒にいかがです?」「え?」 渡良瀬さんがどんぐり眼を丸くして百先輩と僕を交互に見る。……どうして僕を見るんだろう。「コピーくんも一緒がいいんだってよ」「せせ先輩っ?!」 今度が僕がわたわたする番だった。「構いません。丸岡さんとも一度お話をしておきたいと思っていましたから。兄さんは……」 一つの部屋に、女性二人と僕一人。 ……まずい。そんなシチュエーション、今まで出会ったことがない。 僕は助けを求めるように一先輩を見た。「くっく、そうだろうなあそうだろうなあ」 一先輩は楽しそうに笑う。「彼女いないクチだったろうからなお前。美人二人と一つ部屋って、そりゃあ気まずいだろうなあ」「あら、私を美人と認めてくれるのかしら」「俺の妹だからな」 百先輩は軽く肩を竦めて、言った。「兄さんも一緒に。陸上部の会計報告、まだだったわよね」「チッ、そう来るか。まあ行くつもりではあったからいいけど」  案内されたのは、生徒会会議室と書かれた大きなドアの前。「ここは生徒会のメンバーと一緒じゃなきゃ入れねえ開かずの間だ」 一先輩が教え
last updateLast Updated : 2025-11-22
Read more

第47話・お誘い

 許可を頂いた一先輩はおしゃれな冷蔵庫のドアを開けて、常備されているらしいペットボトルを取り、一本を僕に投げてよこしてくれた。「兄さん……」「こいつも俺と同じクチかと思って」「す、すみません」 紅茶と言う飲み物がある、としか分からない僕に、百先輩の淹れる多分高級そうなお茶は豚に真珠になると思ったのを一先輩は察したらしかった。「構いませんよ」 百先輩は軽く肩を竦めると、渡良瀬さんオーダーのミルクティーを淹れる。 甘い香りが広がる。 百先輩の分の紅茶と、渡良瀬さんのミルクティー(両方紅茶らしいけど僕にはどう違うのか分からない)が準備出来て、一先輩はペットボトルのふたを開けた。「さあ、どうぞ」 一先輩はペットボトルのお茶を半分ほど一気に飲み干して、息を吐いた。「渡良瀬瑞希さん」 百先輩が切り出した。「生徒会の風紀委員をやってみない?」「え? 私が、ですか?」「ええ。丸岡仁さんもぜひ一緒に」「え? 僕も、ですか?」 渡良瀬さんは分かるよ。あの乱闘を穏便に終わらせたんだもの。だけど僕は、見てただけだよ? 百先輩は穏やかに微笑む。「風紀委員と言われたって、何をすればいいのか……」 僕の小声の訴えに、そうね、と百先輩は頷く。「朝の挨拶運動。イベント時の警備。服装チェック。校則違反行為生徒への指導……と言ったところかしら」「む、無理無理無理無理」 僕は慌てて首を横に振った。「ぼ、僕、生徒への指導とか、できません」「私も……今の力じゃ、とてもじゃないけど校則違反の指導だなんて……」「二人とも、担当教員に話を通して、許可は得ているわ」「相変わらず仕事の早いことで」 一先輩が呟く。「渡良瀬さんの課題は、遠距離からの強制鎮静化。それは数をこなすしかない」「そりゃあそうですけど……」「丸岡さんの課題
last updateLast Updated : 2025-11-22
Read more

第48話・裏に立つ人

 うぬぬぬぬ。 渡良瀬さんは、コア能力を使うには誰かが興奮してないといけない。四六時中彼方の傍にくっついてればいいかも、と思うけど、あの三白眼を渡良瀬さんの傍に置いておくとあいつが彼女に何をするか分からない。 僕のケースもだ。 確かに百先輩の言うとおり、誰彼構わずコピーして気付かれたらそれで相手が怒る可能性が高い。相手がこっちに攻撃してこようとしているという事情があるなら、いくらでもコピーできる。合法的に。 御影先生もそれを考えてゴーサインを出したと思うんだけど……。「危なく、ないですか? 風紀委員って」「そうね。でも、希望者は多いわ」「どうして?」「ガイダンスで言った通り、風紀委員は攻撃的なコア使用が認められているの。それが欲しいがために、希望者は常にいっぱい。でも、間違った方向に使う可能性のある人には任せられない」「じゃあ、何で私たちを……」「渡良瀬さんの他者強制鎮静化は滅多にある能力じゃないわ。相手を平和的に抑え込める。警備とかには欲しい人材」「僕は?」「貴方のコアはまだ未成熟。でも、今、攻撃されたら、反射的に相手のコアをコピーしてしまう。そうよね?」 頷いた僕に、百先輩は微笑んだ。「なら、合法的にコアをコピー・使用できる。間違っているかしら」     ◇     ◇     ◇     ◇ 生徒会会議室で、二人の一年生が出て行って、双子が残った。「随分あの二人に詳しいじゃねぇか」 一が空になったペットボトルを握り潰す。「一年生を風紀委員にするなんて例外中の例外と思うがな。確かにあの嬢ちゃんの能力はすげーよ。でも、コピーくんまで入れることは……」「兄さん、私が一年生を風紀委員にするわけないと思っていたでしょう」「思ってたさ。さっきまではな」「仕方がないわ。御指名があったんですもの。しかも、直々に」「誰だ?」 百は、静かにその名を告げた。「何ッ」 
last updateLast Updated : 2025-11-22
Read more

第49話・質問

 僕と渡良瀬さんは、半ば呆然としながら廊下を歩いていた。「風紀委員、だって」「だね」「なんでだろ」「なんでだろね」 彼方にものまねオウムと言われるけど、今の会話がそのまんまものまねオウムだけど、今は渡良瀬さんの言葉を繰り返すしかできない。 風紀委員が一体何をするか分からないし、何ができるかも分からない。何故百先輩が僕らを選んだのかも分からない。 分からないことだらけで思考停止してしまう。 なんでだろ、なんでだろ、と言いながら、僕は女子寮の前まで渡良瀬さんを送った。 渡良瀬さんが首を傾げながらも手を振って寮に入った後、僕はぶんむくれた顔をしたココに声をかけた。「ココ、聞きたいことがあるんだけど」「ふーんだ」 ココはツーンと顔を横に向ける。「所詮、丸岡さんにとって私は便利な案内コア生物でしかないんですよねー。聞きたいことがある時しか声をかけられませんしねー」 あ、拗ねてる。「いいんですよー。私なんてー」 まずいなあ。 百先輩がガイダンスで言ってた。コア生物は学園で生きていくための羅針盤だと。機嫌を取る必要もないし大事にする必要もないけれど、彼らの忠言は聞いておけと。 しかし、拗ねた場合はどうしたらいいんだろう。 相談できる相手もなく……。「ごめん、ココ。でも、僕が学園のことで相談できるのはココしかいないんだ」「?」「ココにしか相談できないんだよ、頼むよ」「んー。もう一声ー」「信頼してるんだから。君がいなくなったら僕は学園でどうやって生きていけばいいんだよ」「ん-……まあ、いいでしょうー」 コロッと機嫌を直したココは、にっこり笑って聞いてきた。「で? 聞きたいことって?」「風紀委員って、何をするの?」「基本的な質問ですねえ」「仕方ないよ、本当に知らないんだから」 
last updateLast Updated : 2025-11-22
Read more
PREV
1
...
34567
...
11
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status