All Chapters of 地味なコア一個しか宿らないと思ったらチートみたいでした: Chapter 51 - Chapter 60

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第50話・将来

 当然のことながら最高罰則の記憶操作&学園追放は風紀委員長が判断したとしても生徒会長の許可と生徒過半数の同意を得なければ下せない。 そこまで行かなくても、悪用すれば嫌いな奴にいっぱい罰則をつけたりできる。おまけに生徒同士のコアケンカなどに、風紀委員はコアを教師・研究院・コア医の許可を得ずに発動させることができる。 好きな時にコア発動できて、嫌いなヤツの学校生活を最悪なものにもできるなんて、風紀委員くらい。 だから、風紀委員は希望生徒の過去の行動をコア監視員に命じて徹底的にチェックして、感情的にならない、冷静にコア能力を使える、校則に詳しい、判断力がある、など色々な方面から判断して、生徒会、風紀委員会、教師連のゴーサインが出た生徒だけが風紀委員になれる。 ただし。「一年生が風紀委員になるなんてものすごく前例のないことなんですよー」「どうして?」「だって、一年生からは学園生活のデータから取れないでしょうー?」 それもそうか。コア監視員がついてからまだ一ヶ月。しかも学校に入学したその日だ。データなんてあるはずない。「優秀な一年生委員もいたことはいたんですけどー。それって現委員長なんですけどー。やっぱり二学期からの採用だったんですよー」「なら、何で風紀委員長は僕たちを誘ったんだろう」「丸岡さんならできるって思われたんじゃありませんかー?」「それこそデータないだろ」「期待されてるんですよー」「何処が」「色がー、じゃないですかー?」「そりゃレアカラー……カラーがないんだよな……無色なんて珍しいだろうけどさあ、それでそんな重役を任せるなんて」「重役とー、理解してるならー、いいんじゃないですかー?」「なんで」「自分のやることがー、重いものだって思うのはー、責任を背負うことだってー、分かってるってことじゃないですかー?」「そうなの、かな?」「私はそう、思いますよー? あとですねー。将来にも役立つんですよー」「将来?」
last updateLast Updated : 2025-11-22
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第51話・引き受ける

 一方弧亜学園は教育と同時にコア能力開発も進めているため、卒業段階でコアは自在に使えるようになっている。しかも特定の分野専門に教育をされた生徒は十分社会人、プロとなって活躍することができるのだ。 だから、弧亜学園大学に入って引き続き担当教員とコア能力を更に開発するか、就職を選ぶか。普通の大学なんてつまらないというのが本当の所らしい。「でもなあ……中学時代の僕の同級生が、僕が風紀委員になったって聞いたら、きっと笑うだろうなあ……」「人が笑うか笑わないかでー、進路を選ぶんですかー?」 ココの言葉に、僕ははっと顔を上げた。 ココは横を向いたまま。だけどその横顔は、合同教室で陰口を叩いていた同級生に反論した渡良瀬さんと同じ顔をしていた。「人のいうことなんてー、関係ないでしょー? 自分のことなんですからー。自分の将来にー、どうして他人の意見を入れちゃうんですかー?」「……そう、だね」 考え込む。「親とかならまだともかく、中学の同級生が僕の未来に関わってくるんじゃないんだから、あの人たちのことを考える必要はないよな……。将来の道が多いのはいいことだし……」「やってみろと言われたんならー、やってみてもいいんじゃないですかー?」「そう、だね」 男子寮の前まで来て、僕は頷いた。「やってみろって機会をもらったんだから、やってみた方がいいよね」 両手で自分の頬を叩く。「やってみるか!」「お知らせしますかー?」「誰に?」「渡良瀬さんと八雲風紀委員長ですよー。正確にはお二人のコア監視員を通じて、ですけどー」「え、報告必要?」「渡良瀬さんは一緒に頼まれたんだから報告の必要があるしー、八雲委員長には当然でしょうー?」「そう言うのって、僕が言わなくていいの?」「問題ないですー。コア監視員は通信役でもありますのでー」「うん、じゃあ、頼む」 ココはチカチカと光り出した。通信している時はこうなるんだ。「報
last updateLast Updated : 2025-11-22
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第52話・情報のATM

「あーさーでーすーよー。起きてくださーい」 甲高いが決して不愉快じゃない声に、起こされた。 時計は起床時間ぴったり。コア監視員がいれば時計やメモ帳がいらないってのはこういうことなんだと思う。「おはよう、ココ」「はいー。おはようございますー。昨日は帰寮するなり眠ってしまったから、心配しましたよー。体調は大丈夫でしたからー、それだけ気疲れしたのかなーって」「この状態で気疲れしない人間って、いる?」「いますよー。彼方さんとかー」 ……まあ、あいつなら、自分こそがそれに相応しいと胸を張るだろう。 肩で風を切って校則違反するヤツはいないかと探して回りそうだ。「そう言えば彼方さん、随分丸岡さんに御執心ですねー。何かありましたかー?」「いや、別に……」「初めて会ったのはこの学園の受験でですよねー。それなのにー、まるで親の仇みたいにケンカ売って来てますよねー。元々好戦的なんでしょうけどー」「僕が弱味握ってるからだろ」「弱味?」 おっと、これは言っちゃいけないんだ。「弱味ー? 弱味ってなんですかー、教えてくださいー」「いや、君に教えると、学園中のコア監視員が知ることになるから……」 コア監視員同士は常にテレパシーのような形で通信して、情報を共有しているという。だから、どこそこの誰々が何々が好きだとか、揉め事起こしたとか、特に人間関係については知られたくないところまで知っている。「信頼してくれないんですかー? 悲しいですー、泣いちゃいますー」 べそべそと泣き出したけど、……多分これ泣きマネだな。「君の所だけで情報を止めるってことはできないのかい?」「それはコア監視員の気持ち一つですー」 あっと言う間に泣きマネをやめてココは答えた。「それが知られることで、監視対象が危険な目に遭ったりする場合がありますねー。国家機密に関わるとかー、研究員同士の争いに巻き込まれるとかー。その時はー、コア監視員は機密保持しなければならない情報
last updateLast Updated : 2025-11-22
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第53話・みんな知ってた

「じゃあ、その金庫に入れといておける?    正直僕もこの秘密気疲れしてるんだ。学園に受かったのは彼のおかげかも知れないけど、三年間彼に付きまとわれる秘密を一人で抱えるの正直しんどいんだ」「感動ですー!」「ふへ?」 いきなり言われ、僕はパジャマから制服に着替える手を止めた。「ごめんなさい丸岡さんー、昨日は膨れたりなんかしてー! 丸岡さんは私のことを信用してくれているのにー! 私ー、丸岡さんは私のこと忘れちゃったのかって思ってー!」「ああ、泣かないで泣かないで……」 今度はどうやらマジ泣きらしい。コア監視員ってどういう精神回路をしてるんだ。でもそれを言うとまたココが拗ねるので言葉を飲み込んで、ココが泣き止むまで待っていた。「じゃあ、言うね。実はね。受験日の朝、彼が道交法違反をしているところを目撃しちゃったんだ」「と、言うとー」「無免許で規定速度以上で車道を飛んでいた」「あ、なんだー、そう言うことですかー」 けろっと泣き止んだココに唖然としてしまう。「彼方さんも人間が小さいですねー。学園に合格すればちゃんと移動免許取れるのにー。カッコいいトコ見せたいってところなんですかねー」「……驚かないの?」「既に学園中のコア監視員が知ってますー」 僕はもう一度唖然とした。「彼方が違反したのを、みんな知っている?」「はいー」「もしかして、彼が自分のコア監視員に話したの?」「いいえー。詳しくは言えませんがー、学園関係者がその違反現場に居合わせていましてー。合否判定は相当揉めたらしいんですけどー、十六歳未満でそのスピードで空を飛べるというコア能力を高く買ってー、でも要注意人物としてー、学校にいれたと聞きましたー」「金庫情報じゃなくてATМ情報なんだね……」「はいー」 学園中の人間が知ろうと思えば知れるんじゃないか。一人で溜め込んでて損した。「だから生徒指導担当の和多利先生が担当教員についたんですよー。
last updateLast Updated : 2025-11-22
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第54話・朝

 制服に着替えて食堂に行く。 まだ朝早い時間と言うのもあって、食堂は空いていた。 今日の朝食は……スクランブルエッグかあ。 野菜たっぷり、栄養バッチリ。 そんな健康的食事をしていると、隣に座って来た人がいた。 気にしないで食べていると、どん! とテーブルが叩かれる。 ……彼方だ。「ものまねオウム」 それは間違っていないので、何も言わない。「お前、自分の立場が分かってんのか?」 何を言い出したのかは分からない。「一年で最強はこの俺だ。学園で最強なのも俺だ。俺であるはずなんだ」 でも負けてたよな。風紀委員長に電撃食らって、落語研究会の先輩には攻撃かわされて。「そもそも三次試験で俺が貴様を完膚なきまでに叩きのめしてれば、貴様が合格する余地なんてなかったはずなんだ」 三次試験を受けた人間は全員合格したって言うことに納得のいかない一年生もいるという。彼方はその代表格だろうなあ。「ものまねしなきゃ戦えない貴様なんて、そのうち叩きのめしてやるからな」 そのまま、彼方は出て行った。「ケンカ売りに来たんですかねー」「さあね。でも僕の委員入りは知らないみたいだ」「それはー、監視対象機密情報でー、コア監視員は知っていても許可なく監視対象に知られてはいけない話なんですー。丸岡さんもー、正式に入るまでは喋っちゃいけないですからねー?」  彼方のせいで遅れた朝食を挽回するためにかっ込んで、僕はココに案内されるまま校舎に移動した。 今度案内されたのは生徒会棟の風紀委員会の部屋だ。 部屋の前で渡良瀬さんと鉢合わせした。「おはよ、丸岡くん」「おはよう、渡良瀬さん」 風紀委員って言う共通事項が出来ただけで、親しくなれる。 あ、ヤバい、心拍数が上がってきた。「どうしたの? 丸岡くん、顔真っ赤」「い、今から、風紀委員になるって思うと、
last updateLast Updated : 2025-11-22
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第55話・風紀委員会室

 風紀委員会室は、様々な書類や何やらが、しかしきちんと整理されて置かれている、何だか背筋の伸びる部屋だった。 この部屋の住人……風紀委員の先輩たちは、服装もしっかりしてるし、何処か目つきが鋭く威圧感のある人が多い。 やると決めたけど、こんな先輩たちと同じ仕事ができるんだろうか。「おはようございます。丸岡仁です」「渡良瀬瑞希です」「おはようございます」 僕みたいな後輩にも、きちんと挨拶を返してくれる。「委員長は奥の会長室にいます。どうぞお進みください」 頷いて、恐る恐る足を踏み入れる。 風紀委員は、どれだけ細くか弱く見えても、全員がコア戦闘の猛者だとココは言っていた。コアケンカとか、コアを使った校則違反とか、そう言うのを押さえるために、特別に戦闘訓練を行っているんだそうで。なるほど、高校の時にそう言う訓練を受けていれば警察とかの仕事もできるんだろうなあと思う。 部屋の奥に、「会長室」と言うプレートの部屋があった。 コア紋でロックされた鍵は、僕たちが右手を押し付ける前に開いた。「「おはようございます」」「はい、おはようございます」 相変わらず先輩は柔らかい笑みを浮かべて座っている。「朝早くに呼んでごめんなさい。でも、風紀委員になってくれると決まったからには色々説明しなければならないこともあって」 百先輩……今日から八雲委員長に変えなければならないだろう……は、デスクから立ち上がって応接用のソファに僕たちを座らせた。「風紀委員の仕事は、コア監視員から聞いたかしら?」「はい。主に校則違反の取り締まりだと」「そうよ」 穏やかな笑顔をしているのに、雷撃なんて物騒なコア能力を持っている委員長はにっこり笑った。「大体の生徒は、風紀委員に注意されたら態度を改めるわ。風紀委員は生徒への罰則を与えられる数少ない生徒だから。でも、聞かない人もいる」 ほう、と委員長は憂鬱そうに溜め息をつく。「そう言う生徒に対応するために、風
last updateLast Updated : 2025-11-22
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第56話・罰則

 風紀委員会室に感じた雰囲気と同じ、緊張させないけど背筋が伸びるような雰囲気に、僕は少し残っていた眠気が吹っ飛んだし、渡良瀬さんもびくっと身動きした。「さて、今回の新風紀委員の発表は今日の昼食時の学園ネットで行われるわ。風紀委員の採用は四月と九月にあって、その度にネットで公開されるの。風紀委員にはバッチをつけてもらうから、すぐに分かってはもらえるんだけど」「でも生徒の罰則ってどうやってつけるんですか? 僕たち、罰則どころか校則すらまだ覚えていません」「コア監視員を通じて、先輩に聞けばいいのよ」 にっこりと委員長は笑った。「どんな敏腕風紀委員でも、初めては必ずあるわ。風紀委員会の取説のようなものがコア監視員。フォローするのが先輩」 風紀委員の先輩が出してくれたお茶を飲みながら、僕たちは委員長のお話を傾聴した。「校則違反が行われると、まずコア監視員が止める。それでも収まらない場合、近くにいる風紀委員に連絡が入るわ。風紀委員はそこに駆け付けて、確認、校則違反を止めるよう命令する。それでも聞かない場合は罰則ということになるわね。駆けつけた新入委員の手に負えなければ、別の風紀委員が応援に駆け付けることになっているわ。だから、恐れないで取り締まって」「罰則って、一体何があるんですか?」「色々よ。反省文とかトイレ掃除とか花壇の整備とか」 一番物騒な罰則しか聞いてない(だって記憶消されて学校追い出されるってよっぽどだよ!)僕たちには、随分軽い罰則だなと感じた。「例えば、何か備品を壊した場合は当然それを直すあるいは弁償することが罰則になるし、ケンカなら反省文、及び学校生活の制限」「その罰則って風紀委員が出していいんですか」「もちろん。その為の風紀委員だもの」「でも人によって厳しい判断を出す場合とか緩い判断とか出す場合もありますよね」「それもコア監視員に聞けばいいの。風紀委員のコア監視員は校則と罰則に関するデータを出力できるようになるから」「……それって、コア監視員がやればいい仕事なんじゃ……」 渡良瀬さんの言葉
last updateLast Updated : 2025-11-22
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第57話・成長の機会

 ……確かに、外付け判断装置がなくなれば、好きなことをやってもすぐに怒られたりはしない。「だからの風紀委員。コア監視員はあくまで止めるだけ。校則違反を取り締まるのは人間。罰則を決めるのも人間。そう思われることが大切なの。本当は人間の善性を信用したいのだけれど、罰を与える人間がいるから、違反を止める。そう思う人は確かに多いわ」 もちろん、と委員長は更に笑みを深くする。「風紀委員も、成長の機会よ。校則違反を取り締まっていれば、いつ、どの辺りで、どんな生徒がどんな違反を犯すか、分かるようになってくる。嘘をつく人、暴力に訴える人、そんな人に対応するのはあくまで風紀委員だから、そのうちコア監視員の連絡がなくても不審者を見分けられるようにはなるわ。目を見て、違反を犯しそうだと思うこともできる。風紀委員はそうやって成長できる」 要するに、続けることで怪しい人をコア監視員の協力なしで見分けられるようになるってことか。勉強を続ければ、参考書がなくても答えが分かるようになる。それと同じことなんだ。「重要なことはコア監視員に聞けば教えてくれるってことですね」 渡良瀬さんの質問に、委員長は大きく頷く。「ええ。言ったでしょう? 取説って。委員活動をしている時の精神状態に迷いなどがあれば、コア監視員は迷いの元をただす情報を教えてくれるわ」 取説付きなら、僕でも何とかやっていけるかも知れない。「風紀委員についての説明はとりあえず以上ね。後はみんなとの顔合わせをして、ネット放送の録画を取ればおしまい。その前に、質問は?」 僕と渡良瀬さんは顔を見合わせて、お互い悩んでいる様子がない事を確認した。「そうね。やって見なければ質問もないわよね」 委員長は頷く。「じゃあ、他の委員との顔合わせと録画をやってしまいましょう」 他の新入委員は、二年生か三年生ばかりだった。ちょっと不安そうな顔をしている人もいれば、堂々としている人もいる。 そして先輩委員たちは、そんな新入りを励まして、録画室に入れる。 録画が終わって、教室に戻って合同授業を受けて。
last updateLast Updated : 2025-11-22
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第57話・初仕事

「この、オウム野郎ぅぅぅ!」 昼食中だというのに、食堂中の視線を集めながら彼方は僕の所にすっ飛んできた。「何だよ風紀委員って!」「風紀委員は風紀委員だけど」「知ってるぞ。風紀委員はコア使いたい放題の生徒に言いがかりつけたい放題だって!」 ……入学二日目にしては風紀委員のことに詳しいな。「どこで聞いたの」「そんなの貴様には関係ない!」 はあ、と息をついて俯く。目についたのは、金色にきらりと輝く星と輪をかたどった風紀委員のバッチ。「君が何にもしなきゃ、僕も何にもしないよ」「そんなわけがあるか! 手に入れた権力を使わない人間なんているはずがない! 俺だったら貴様を即退学にしている!」 一委員の決定で退学は無理だって。 何でも自分基準なんだなあ……。 その時、ココが言ってきた。 僕はその言葉を伝える。「風紀委員に言いがかりをつけるのは立派な校則違反だよ。今なら罰則なしにしてあげるから、椅子に戻ってお昼食べなよ」「貴様、何を上から……」「上から見ているのはあなたでしょう?」 助っ人は隣の席の渡良瀬さんだった。「みんながお昼ごはん中の食堂。そこでケンカなんかしたら反省文一〇枚じゃすまないわよ」「クッソ、どいつもこいつも!」 どすどすと足音を立てて、彼方は去っていく。「ごめん、助かった」「いいよ。でも、できるだけ二人一緒にいた方がいいかもね」 どきん。 また僕の心臓が跳ね上がる。 そういう意味じゃないと分かってはいても、渡良瀬さんの言動は僕には衝撃が大きいんだ。「彼方くん、丸岡くんが風紀委員ってだけでケンカ売りに来たんだもん。どっちか一人だったら他の風紀委員が来る前にやられてるかも知れない。私たち二人とも半人前以下なんだから、一緒にいた方がいい」「おう、そうしろ」 聞き覚えのある第三者の声に見上げると、食事のた
last updateLast Updated : 2025-11-22
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第58話・雷を落とす

「風紀委員の仕事についてはコア監視員や百に聞いたと思うが……」 今度は漬物をかじってから、一先輩は続ける。「本来は、生徒に校則違反をさせないためにある委員会だ。休み時間の巡回ってのもあるが、それも風紀委員が歩いているから校則違反ができない雰囲気を作るんだな。だから風紀委員やってると威圧感が増してくる」「……僕、増しますかね」「今すぐには無理だなあ」 カツをご飯と一緒に口に放り込み、噛んで、飲み込んでから、先輩は笑った。「だから、嬢ちゃんの言ったことは大事だよ、コピーくん。特に二人ともちっこいしひょろいかんな、人数で圧を増すってのは重要だ」「委員長も苦労したんでしょうね」「百か? あいつも相当苦戦してたぞ」 一先輩は丼の中身を片付けて、話を続けた。「あいつは温厚で、理性的で、冷静で、だけど大人しくて自分のコアに自信がなかったから正直一年で風紀委員に選ばれた時無理なんじゃねーかって俺だって思った」「自分のコアに、自信がない?」「順番に話すから、待ってな。百はな、相手を立ち直らせるためには平常心で平手も張れる女だけど、外見だけ見るとそうはとても見えない」 委員長の穏やかな笑みを思い出すと、とてもいきなりケンカを売ってきた彼方に五万ボルトの電圧をお見舞いした人間と同一には思えなかったので、僕は頷いた。渡良瀬さんも何度も頷いている。「だから、あいつは諦めてたコア能力を伸ばすことにした」「諦めた? あんなに強力なコア能力なのに」「電気系のコアってなー、大体、代用が効くんだよ。百の能力で言えば発電機やスタンガン、除細動器。あと充電か。まあ俺のコアだって肉体強化だから薬とかである程度代用できるけど、百の能力はそこそこのお値段で大体手に入れられる」「そっか、スタンガンも売ってるし……」「そうだ。だけど、基本的に学校に武器を持ち込むことはNGで、コア能力じゃないと相手を静められないってのは痛いところだから、あいつは風紀委員をこなすためだけに、能力を伸ばした。そして自分のなめてかかるヤツらの目の前で
last updateLast Updated : 2025-11-22
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