しかし、それ以上、根掘り葉掘り問い詰められることはなかった。紬は戸惑いを覚えつつも、胸の奥から安堵のため息を漏らした。午前中の宣伝活動が功を奏し、テープカットの儀式が始まる頃には、オンラインのライブ視聴者も現地の見物客も大きく膨れ上がっていた。美咲と紬は手を取り合い、舞台袖からゆっくりと登壇する。「烏羽」の株主代表たちも一堂に会し、店の看板はまだ鮮やかな赤布に覆われたままだった。紬はコンセプトの総責任者として、最後にマイクを手に取る。「本店を愛してくださり、誠にありがとうございます。皆様のご期待を裏切ることのないよう、品質に徹底的にこだわり、精進を重ねてまいります」会場は、割れんばかりの拍手に包まれた。その頃,ライブ配信の画面に映る紬の晴れやかな表情を、由佳は食い入るように見つめていた。奥歯を、血が滲むほど強く噛み締めながら。――私の家庭をめちゃくちゃにしておいて、よくもそんな舞台に立てるわね。みんなにちやほやされて……!画面の向こうで歓声を上げる視聴者のバカ共も、この女の本性を知らないんだ。紬のせいで、雪子のお腹の子は助からなかった。そう思うほどに、苛立ちは募っていく。雪子が目を覚ましたあと、明はかつてないほど激昂した。二人は初めて激しい口論を交わし、離婚寸前にまで至った。最終的には雪子が折れ、低姿勢に出ることでなんとか和解したものの、明の疑心暗鬼は収まらなかった。挙げ句の果てには、会社が差し押さえられたのも雪子と由佳が裏で何か仕組んだせいではないか、と疑い始めたのだ。だが、由佳は株式譲渡の書類に目を通し、代表者の名が「紬」であることを知って、ようやくすべてを悟った。――最初から最後まで、あの女の仕業だったんだ。自分の推測は間違っていなかった。あの日、病室で理玖と顔を合わせたとき、あれほどの目に遭わされたのもすべてあいつのせいだ。もしあの時、逃げ遅れていたら、本当に警察に連行されていたかもしれない。神谷商事の弁護士団は、伊達ではない。由佳の瞳に、陰湿な光が宿る。ライブ画面の中で、紬は中央に立っているわけではない。それでも、正午の光を一身に浴びているかのように輝き、その佇まいは神々しいほどの存在感を放っていた。金のハサミを手に、慎重に赤いリボンを断ち切る。由佳は、紬がテー
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