しまった。さっきの言葉は、絶対に口にするべきではなかった。仁が低い声で警告する。「坂本、早く綾瀬さんに謝るんだ」美紀の額から冷や汗が噴き出した。彼女はくるりと向きを変え、もう二度と紬の目をまともに見られないまま、震える声を絞り出す。「も……申し訳ございません……!」「坂本さん。それなら私は、ここに座って、このままブリーズにいても構わないのかしら?」紬は淡く微笑みながら、美紀の狼狽を余すことなく瞳に映していた。美紀は胸の奥で激しい不満を煮えたぎらせながらも、そう答えるしかなかった。「ええ……もちろんでございます」会議室は、針一本落ちる音さえ響きそうなほど静まり返っていた。大半の人間は、美紀のような太鼓持ちを内心で軽蔑していた。だが、渚がここまで激昂した姿を見たのは、以前、望美が授賞式に出席した時以来だった。――まさか、この紬という女、本当に社長と特別な関係があるのか?誰もがそんな憶測を胸に巡らせながら、必死に気配を消していた。美紀はまるで針のむしろに座らされているような気分だった。仁に何度も助けを求めるような視線を送るものの、彼は微動だにしない。それどころか、露骨な嫌悪を滲ませながら冷たく急かした。「まだそこに立って何をしている。早く出て行きなさい。これ以上、どれだけ進行を遅らせるつもりだ」「……はい」美紀は奥歯を噛み締めたまま返事をし、紬の横を通り過ぎる際、その瞳に剥き出しの嫉妬を宿した。美紀が退室すると、仁はそれまでの態度を一変させ、紬へ丁重に頭を下げた。「申し訳ありません、綾瀬さん。坂本はまだ新人で、社内規律にも疎いものでして。今回の件につきましては、後ほどこちらで適切に処分いたします」紬は意味ありげに微笑み、仁を見つめ返す。「わざわざ私に説明なさらなくても結構ですわ。私は専門家ではありませんから、貴社の管理体制について口を挟む立場ではありませんもの」「綾瀬さん、ご冗談を。これほど素晴らしい作品をお描きになる方です。Nirvanaが業界にその名を轟かせる日も、そう遠くはないでしょう」紬に皮肉を返されても、仁は終始、涼しい顔を崩さなかった。まさに「笑顔に拳は振るえない」というやつだ。紬も、それ以上追及することはしなかった。渚は、紬の機嫌が明らかに和らいだのを感じ取り、よ
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