理玖は、つい先ほどまで二人が奪い合っていたブロックを手に取り、穏やかな表情で子供たちを見つめた。「もちろん、そんな人間になりたくないなら、自分の本心に従ってもいい。もっと穏やかな方法で、相手と使用権について話し合うんだ。すべての争いに決着が必要なわけじゃない。それはあまりにも原始的なやり方で、人と人との距離を広げるだけだからな」二人の子供はプレイマットの上に座り込み、理玖の語る大層な理屈を、理解しているような、していないような顔で聞いていた。けれど彼の声には不思議な引力があった。気づけば、最後まで耳を傾けてしまう。紬のデザイン画を描く手も、いつの間にか止まっていた。真剣な眼差しで子供たちに向き合う理玖の姿を画面越しに見つめながら、彼女はしばらく現実感を失っていた。うまく言葉にできない。まだ結婚すらしていないはずなのに、理玖の纏う空気には、濃密な既婚者の気配――いや、むしろ「父親の気配」のようなものが滲んでいる。その感覚に、紬はどうしても戸惑わずにはいられなかった。やがて二人の子供は握手を交わし、「ごめんなさい」と言い合って仲直りをした。それどころか、自分から理玖にすり寄り、今度は別のブロックを組み立て始める。その時、インターホンが鳴った。紬はパソコンを置き、自らドアを開けに向かった。だが視界に入ったのは、自分の家のインターホンを押している成哉の姿だった。成哉も背後の気配に気づき、振り返る。そこには、神谷家のドアを開けた紬が立っていた。しかも彼女は部屋着姿で、頬にはまだ不自然な赤みが残っている。それだけで、嫌でも想像を掻き立てられた。成哉の表情が、みるみる強張る。「紬……なんでここにいるんだ?お前たち……」脳裏に、下卑た妄想が瞬く間に膨れ上がっていく。成哉は目を真っ赤に染め、拳を骨が鳴るほど強く握り締めた。「紬、俺たちがまだ離婚してないって分かってるのか!」紬は眉をひそめた。「もうすぐよ。あと二週間」「俺はそういう意味で言ってるんじゃない!」成哉は神谷家のドアを指差し、声を荒らげた。「なんでお前が……なんで本当にあいつと一緒にいられるんだ!寝たのか?何回寝た?いつからだ?それとも最初からデキてたから、俺と離婚したかったのか!?紬、少しは自尊心を持て!」成
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