「颯斗、お前は本当に救いようがないな」 スマートフォンの向こうから聞こえてきたのは、親友・翼の深いため息だった。 「お前までそう思うのか?」 颯斗はスマートフォンを抱えたまま、ソファの上で絶望を全身で表すように寝返りを打った。 バレンタインデーのデートを終えて以来、颯斗は猛烈な自己反省モードに突入していた。 練との関係において、自分はどうしようもなく――いや、あまりにも受け身すぎる。その事実を痛感してしまったのだ。どうにかして一矢報い、いつも練に握られている主導権を奪い返さなければならない。 男として、そして攻めとしての尊厳を取り戻すために。 「あの霧生さん、一見すると物腰が柔らかくて上品なのに、まさかあそこまで手練れだったとはね」 翼は電話の向こうで感心したように笑った。 「悪いことは言わないから、もう諦めなよ。攻めの尊厳だか何だか知らないけど、お前みたいな子羊ちゃんじゃ、最初から勝ち目なんてないって」 「おい、俺は知恵を借りたくて電話したんだぞ。敵を褒めて味方の士気を下げてどうするんだよ」 「俺に知恵を借りる?本気で言ってるのかい」 「当たり前だろ。お前は俺の最高の相棒なんだから、お前以外の誰に頼るっていうんだよ」 「じゃあ、とっておきの本音を教えてあげる。 恋愛なんてさ、結局は面の皮が厚いほうの勝ちなんだよ。プライドだの勝負欲だの、そんなものは全部二の次。 俺がお前の立場なら、プライドなんてかなぐり捨てて、ヒモに徹するね。霧生さんっていう最高のパトロンに全力でしがみついて、引っ張ってもらう。そのほうがずっと幸せだと思わないかい?」
Last Updated : 2026-07-01 Read more