博人が再び目を覚ました時、彼はすでに寮のベッドの上に横たわっていた。 ぼんやりと身体を起こし、周囲を見回す。 窓の外はすでに真っ暗になっていた。下段のベッドでは同僚たちが集まり、暇つぶしにトランプをしている。 しかし、壮馬のベッドだけは空っぽで、本人の姿はどこにもなかった。 博人は自分の脚に触れてみる。 痛みはまだ残っているものの、先ほどまでよりはずっと楽になっていた。しかも、丁寧に包帯まで巻かれている。 「……」 博人は眉をひそめた。 自分は確か、さっきまで詰所にいたはずだ。 それなのに、なぜ気づけば寮へ戻っているのか。 それだけではない。 何か大切なものを忘れているような、妙な違和感が胸の奥に残っていた。 頭の中では、二つのぼんやりとした影がちらついている。 だが、手を伸ばして掴もうとしても、指の間をすり抜ける霧のように消えてしまい、何も残らなかった。 その時だった。 寮の扉がコンコンとノックされた。 革ジャンを着込み、小脇にバッグを抱えた中年の男が入口に立っていた。 そして、部屋の中にいる者たちへ向かって口を開く。 「鳴海博人は誰だ?」 その一言で、部屋にいた全員の視線が一斉にこちらへ向いた。 博人は痛む身体を引きずりながら立ち上がる。 「俺ですが」
Last Updated : 2026-08-11 Read more