車内は静かだが、気まずい雰囲気はない。雅紀は上機嫌で運転し、敏貴は窓の外を眺めている。本人は隠しているつもりだろうが、ガラスの反射で泣いているのがまる分かりだ。 「修学旅行に必要なの、買いに行こうか」 「ん」 以前は不安になった短い返事も、今は心地良い。 ショッピングモールにつくと、キャリーケースや変圧器。酔い止めなどを買う。 「念の為にトイレットペーパーも持っていったほうがいいらしいな。家にあるのでいいか?」 買い漏れがないか、しおりを見ながらチェックする。 「いいよ」 「分かった。にしても、海外か……」 「行ったことねーの?」 「ねーな。だから、土産話楽しみにしてる」 「そうかよ……」 相変わらずぶっきらぼうな返事だが、以前のような刺々しさはない。 (これでいいのかもな) 敏貴を見て、そう思う。和解したての頃は寂しさもあったが、急にベタベタ来られても、喜びより困惑が勝つだろう。 夏休み終盤、パスポート引換可能の日になり、ふたりで取りに行く。 「良かったな、間に合って」 「うん、正直、ヒヤヒヤしてた」 パスポートを片手に、敏貴は苦笑する。引換書に、引換できる日時は書いてあるが、敏貴の同級生の大半はこれを機に取得する。遅れる可能性も考慮していたが、杞憂だったようだ。 「んじゃ、食材買いに行くか」 「行きたい店あるから、ショッピングモールがいいんだけど、いい?」 「珍しいな、いいぞ」 雅紀はショッピングモールへと車を走らせた。目的地につくと、雅紀は食材の買い出し、敏貴は個人的な買い物をしに行く。買い物が終わったら、1階のベンチで待ち合わせだ。 約3日分の食料品を買うと、待ち合わせ場所のベンチに行く。敏貴は片手にネイビーの紙袋を持って待っていた。 「おまたせ。好きな子へのプレゼントか?」 「ちげーから」 敏貴はそっけなく言い、ふんだくるように雅紀が持っていた荷物を持ち、外に向かって早歩きをする。 「思春期は難しいな」 苦笑し、敏貴の後を追う。 帰宅して冷蔵庫に食品を詰め込むと、ルイボスティーを飲んでひと息つく。 「こういう時間、大字だな……」 しみじみする自分に歳だなと小さく笑う。 「ん」 敏貴が先程持っていた紙袋を、雅紀に差し出す。
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