先ほど路上で翔に冷たく追い払われた後、絵理奈は真っ直ぐに夫のオフィスへと向かった。事前の連絡もなく突然妻が訪ねてきたことに、瑛司は少なからず驚いた。「どうしたんだい、急に?」絵理奈の姿を認めるなり、瑛司はデスクから立ち上がった。妻は立ち尽くしたまま何も言わず、時折、涙で濡れた頬を指先で拭っている。「絵理……」泣いていることに気づき、瑛司は慌てて歩み寄った。「一体何があったんだ?」彼女は濡れた瞳で夫を真っ直ぐに見つめ返した。「私、家に帰るわ。昔みたいに、私がつきっきりで子供たちの世話をする」唐突にそう宣言した。「翔のことは、私が直接面倒を見るわ」「ああ、もちろん構わない。俺もそろそろお前を家に帰そうと思っていたところだ」瑛司は妻の華奢な背中を優しく撫でた。「で、どうしてそんなに泣いているんだ?」絵理奈はソファに向かい、腕の中で寝入ってしまった琴音をそっと寝かせた。泣き腫らした目で、夫を見上げる。「さっき、翔くんと会ったの。すごく怒っていて……私、あの子に追い払われたわ」堪えきれず、声が震える。「田村は私たちの目の届かないところで、完全に翔くんを洗脳しているのよ、瑛司。私が家に帰らなきゃ、あの子の心を取り戻すのはどんどん難しくなるし、あの女はもっと図に乗るはずだわ」瑛司は険しい顔で頷いた。妻もようやく事態の異常さに気づいたようだ。「そうだな。協力して、翔をあの女から引き離さなければ。俺だって毎日毎日あいつを怒鳴りつけたくはないが、今のあの態度を見ていると、さすがに我慢の限界だ」瑛司は深い絶望と苛立ちを込めて言った。夫のひどく疲労した顔を見て、絵理奈は彼の腕にすがりつき、そっと抱きしめた。「あなたは一人じゃないわ、瑛司。私にはあの子と血の繋がりはないけれど、あの子の態度を絶対に改めさせてみせるって約束するわ」その言葉には、母親としての強い決意が込められていた。「ああ。俺も、あの女をこのまま野放しにしておくつもりはない。これまでのことで少しは反省したかと思っていたが、俺たちの親子関係をあそこまで引き裂こうとするなんて。あの女、今回は完全に一線を越えたな!」瑛司はギリッと歯を食い縛り、怒りに顔を歪ませた。夫の口から漏れる怒りのこもった舌打ちを聞きながら、絵理奈は彼が
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