琴音の頑固な性格は母親の絵理奈譲りであり、一度機嫌を損ねると長引く。怒っている時は一人で部屋に閉じこもり、誰が声をかけても無視を決め込むほどだ。昼から夕方まで、絵理奈は琴音にご飯を食べさせ、翔と遊ぶようにと必死に宥め続けていた。神谷に新しい絵本を買いに行かせもしたが、琴音は一向に機嫌を直そうとしない。「ほら、ママが新しい絵本を買ってきてあげたわよ。もう怒るのはおしまいにしてね……」絵理奈は優しい声で語りかけ、娘の頭を撫でた。琴音はベッドの上に座ったまま、渋々といった様子で小さく頷いた。「それじゃあ、ここで少し待っていてね。ママがご飯を持ってきて、食べさせてあげるから」「お肉焼いて、ママ!」琴音は顔を上げ、リクエストした。「分かったわ。少し待っていてね。どこにも行っちゃ駄目よ……」絵理奈は部屋を出た。すると、ドアの陰に隠れるようにして、部屋の中を窺っている翔の姿があった。絵理奈は、琴音があれほど激怒したことで翔もすっかり怯えてしまい、どうやって機嫌を取ればいいか分からなくなっているのだろうと察した。「翔くん、ここで何をしているの?さあ、中に入って琴音のそばにいてあげて。もう怒っていないから」絵理奈は翔を促す。「でも、もしまた泣き出したらどうしよう?琴音ちゃん、泣き声がすごく大きいんだもん」と翔が尻込みする。それを聞いて絵理奈は思わず吹き出した。「大丈夫よ、翔くん。ママがちゃんと宥めたし、新しい絵本ももらったから……」その言葉に背中を押され、翔はようやく絵理奈の言う通りに部屋へ入った。一人で遊んでいる琴音を恐る恐る見つめる。「えっと……琴音ちゃん、何して遊んでるの?」翔が歩み寄った。琴音は顔を上げた。薄い眉がキュッと釣り上がり、途端に険しい顔つきになった。「何しに来たの?別にお兄ちゃんと遊ぶって言った?」「ううん、誰も。でも、お兄ちゃんも琴音ちゃんと一緒に遊びたいなと思って……」翔がベッドに上がろうと近づいた瞬間、琴音は彼をドンッと強く突き飛ばした。幸い、怪我はなかったが。「お兄ちゃんはもうママにいっぱい甘えさせてもらったでしょ。何でもかんでも、お兄ちゃんが一番最初!今日幼稚園でずっと待ってたのは琴音なのに……今は琴音の番なの。琴音だけでママを独り占めするの!」琴音は新しい絵
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