千紗子は勢いよく明乃を指さし、恨みに満ちた目で言った。「よりによってこの疫病神を嫁に迎えるなんて!おかげで、幸之助をこんな状態までにして!言っておくけど、幸之助に本当に何かあったら、後継者の座にいられると思わないことね!」その言葉は、まるで淀んだ水面に巨石が投げ込まれたかのように、幾重もの波紋を巻き起こした。廊下には、息をのむ音と押し殺したようなざわめきが広がった。「後継者の身分を取り上げるってこと?」「本当なのか?じいさんは前にそんなことを言っていたの?」「どうりで……急にあんなことに……」湊は無表情だった。ただ、その瞳の奥の墨のような暗さだけが、ぞっとするほど沈んでいた。千紗子は湊が何も言わないのを見て、図星を突かれたのだと思い込み、さらに勢いづいた。千紗子は涙を拭い、芳子に向き直ると、切羽詰まった声で言った。「今すぐ陸に電話して!すぐ戻ってこさせなさい!幸之助は前から言っていたでしょう、藤崎家は一人だけに頼ってはいけないって!陸だって藤崎家の血を引いている。彼にも家業を継ぐ資格があるのよ!」芳子の指が震えた。「お母さん、今そんな話を……」「今言わずに、いつ言うの?」千紗子は芳子をにらみつけた。「まさか、本当に幸之助が亡くなってから、湊に藤崎家を丸ごと奪われて、私たち全員が追い出されるのを待つつもりなの!?」千紗子は勢いよく芳子の手をつかみ、その爪は肉に食い込みそうだった。「お母さんにはもうあなたしかいないの……亮はもう終わりよ。藤崎家が他人の手に落ちるのを、黙って見ているわけにはいかないの!陸はあなたの息子でしょう。あなたが産んだ子じゃないの!あなたが助けなくて、誰が助けるのよ!?」芳子の顔は真っ青になり、唇が震えていた。「私……私は争うつもりなんて……」「あなたにその気がなくても、他の人にはあるのよ!」千紗子は声を張り上げ、含みのある目で湊を見やった。「権力のためなら、実の祖父さえ死なせるような人もいるのよ!ほかに何ができないというの!?」明乃は湊のそばに立ち、その言葉を聞きながら、息苦しくなった。彼女は、興奮で歪んだ千紗子の顔を見た。芳子の目に浮かぶ葛藤と恐怖を見た。そして、周囲の探るような、計算するような視線を見た。これが名家というものなのだ。これが藤崎家なのだ。幸之助がまだ
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