瑛太は気に入らないことがあると、すぐにむくれて、周りが折れるまで譲らなかった。正男ならつい甘やかしてしまうところだが、湊は違った。瑛太をくるりと後ろ向きにすると、そのままお尻を叩いた。途端に、瑛太は家じゅうに響く声で泣き出した。しばらく泣いていたものの、誰もあやしに来ないと分かると、瑛太はやがて黙り込んだ。そのあと、湊が電話に出るため席を外した隙に、ソファに置いてあったネクタイをこっそり踏んだ。食事の時間になると、また何事もなかったように美月のそばへ寄っていった。瑛太はようやく簡単なことなら話せるようになったばかりで、美月はまだ人を呼ぶ言葉を覚え始めたばかりだった。向かい合って何やら話していても、会話らしい会話にはなっていなかった。それでも本人たちは楽しそうで、凛は思わず笑った。「まだ二人ともおむつしてるのに、何をそんなに話してるんだろうね」遥は肩をすくめた。「私にもさっぱり。でも、二人でおとなしく遊んでてくれるなら、もう何でもいいわ」瑛太は朝から晩までじっとしていなかった。美月も負けず劣らず元気で、朝起きてから夜寝るまで、二人の声が途切れることはほとんどなかった。遥でさえ、一日付き合うだけでぐったりするほどだった。「子どもって、ほんと一人ひとり違うよね。結衣とうおちゃんなんて、顔は似てるのに性格は全然違うし。凛の子がどんな子になるかも、実際に生まれてみないと分からないかもね」その話になると、凛はすぐに首を横に振った。「私はまだいいかな。どうしても、そこまでは踏み切れなくて」真理が頷いた。「私も最初はそうだったよ。でも、美月が生まれてから少し変わったかな。ホルモンのせいかもしれないし、美月が可愛すぎたせいかもしれないけど……なんだか、少しずつ気持ちが楽になっていったの」美月にしてあげたいと思うことは、どれも真理が子どもの頃にしてほしかったことだった。美月に笑いかけ、何度も抱きしめるうちに、昔のつらかった記憶も少しずつ薄れていった。しばらくして、電話を終えた湊が戻ってきた。遥の頬にキスをし、結衣にも軽く口づけると、椅子に座っていた瑛太を慣れた手つきで抱き上げた。湊はそのまま、テーブルの端に座っていた健に声をかけた。「さっき蓮から電話があった。ここ数日、新しいチップの
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