朔はスマホを見て言った。「迎えの車が来たから、私はこれで。また東都で会おう」誠は彼に向かって頷いた。ここで別れた後、真理はデザイン画の制作に取り掛かり、誠がそれに付き添った。紗月は一人で周辺の観光地を散策することにした。温泉街の古い路地を歩き終えた頃、真理のスマホに一件のフレンド追加リクエストが届いた。真っ黒なアイコンで、アカウント名は「X」。メッセージには「藤堂朔」と一言だけ添えられていた。名前に「朔」とあるから、アイコンも真っ暗なのだろうか。紗月は承認ボタンをタップした。……数日が過ぎた。真理は大きな荷物を抱えて東都へ戻ってきた。完成したばかりの分厚いデザイン画の束が、遥のデスクに「ドンッ」と音を立てて置かれる。遥は軽く笑った。「随分と実りの多い旅だったみたいね」「当然よ!今回の旅で五キロも痩せたんだから!藤堂さんはまだ向こうで契約交渉をしてて、誠さんは昔の同僚に会いに行ったから、私と紗月ちゃんで先に帰ってきたの」「どうして誠さんと一緒に行かなかったの?」真理は含みを持たせて言った。「それはもちろん、義姉さんことが心配で、早く顔を見たかったからに決まってるじゃないか?」遥は眉を上げ、「嘘ばっかり」という顔をした。真理は向かいのソファにドカッと座り込むと、オフィスで飼っている猫を抱き上げて思い切りモフモフと吸い込んだ。「私も誠たちの集まりに顔は出したわよ。一緒にご飯を食べたんだけど、標高が高すぎて、私の体がもたなかったの」一方の朔だが、彼にはグループの業務が山ほど残っていたため、目的地に到着した後は彼女たちと別行動をとっていた。最終目的地の銀雪町に二日間滞在した後、真理と紗月は帰路についたのだった。デザイン画には、「北の古き民」の要素がふんだんに盛り込まれていた。ターコイズ、琥珀、木彫りの装飾、魔除けの文様。遥がページをめくっていくと、一枚一枚のデザインがどれも息を呑むほど精巧で美しかった。真理にはデザインの天賦の才があるだけでなく、絶えず腕を磨き続けていることも見て取れた。束の最後には、真理が「神の山」で撮影した一枚の写真が添えられていた。「北の古き民」の服を着た数人の子供たちが、真理がデザインしたブレスレットを腕に何重にも巻いている写真だった
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