朔は手を伸ばし、紗月の腕をぐいと引き寄せた。不意を突かれた紗月は体勢を崩し、そのまま朔の膝の上に倒れ込んだ。朔は紗月の腰に腕を回して抱き留めると、床に広げた荷物へ視線を戻した。「学生の頃にもらった賞状も、まだ結構残ってる」「これも捨てるんですか?」「紗月ちゃんが決めて」学生時代の賞状も、朔にとっては昔の思い出の一つにすぎなかった。わざわざ残しておきたいほどのものでもなかった。清春もまた、朔の過去を形作ってきた大きな存在だった。それだけ長く気にかけてきた相手だからこそ、今回のことは簡単には割り切れず、気持ちを整理するにもまだ時間がかかりそうだった。紗月は手元の賞状に目を落とした。「取っておいたらどうですか?いつか子供ができた時、パパは昔こんなにすごかったんだぞって自慢できますよ」「ママだって負けてないだろ」紗月は振り返った。「……ママって誰ですか?」「今、俺の膝に座ってる人」朔はさらりと言った。「俺は、そのつもりだけど」そんなことを何でもないように言われて、紗月はますます落ち着かなくなった。まだ気持ちが沈んでいるせいか、朔の声はいつもより低かった。話すたびに吐息が耳元をかすめ、紗月はくすぐったさに思わず肩をすくめた。「それは……まだ先の話じゃないですか」朔は小さく笑った。今日こうして紗月が来てくれたことだけで、朔には彼女の気持ちが十分伝わっていた。朔は少し顔を寄せ、紗月の耳元にそっと口づけた。「来てくれてありがとう、紗月ちゃん」紗月は頬を赤らめ、こくりと頷いた。……それから季節は巡り、初雪の頃に結衣は六歳の誕生日を迎えた。やがて春になり、小学校へ入学する朝を迎えた。制服に着替えた結衣は椅子に座って朝食を待っていた。湊は靴下を手にすると、結衣に履かせてやった。「パパ、悠斗くんも同じ学校なの?」「ああ。でもクラスは別だ」入学前のテストでは、結衣のほうが悠斗よりずっといい点を取っていた。一方の悠斗は運動神経がよく、体を動かすことのほうが得意だった。ただ、なかなか体重が落ちず、恵も少し気にしていた。恵は悠斗にそこまで厳しい練習をさせるつもりはなく、本格的に選手を目指させようとも思っていなかった。体を動かす習慣として続けるくらいが、ちょうどいいと考
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