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All Chapters of 灯火の番: Chapter 31 - Chapter 40

54 Chapters

第六話 ④

 そこにあるのは、紐で括られた本だった。 それだけで、相当古い本なのがわかって、手に取るのに少しだけ怖気づく。 日向子もちょっとばかり怯んだ表情をしていたが、一冊一冊手にとって表紙を確認し、時折中身を確認していく。 俺も一番近くにあった本を手に取り、開く。 パリパリと乾いた墨の音がして、手書きの本なのだということが分かって、また驚いた。 「ん……? これ」「ど、どうなさいましたかっ」「ここに、五家って書いてある。先生が話してた、いつつめの刀主の家だ」 俺の開いた本は、火族五家の役目について書かれているものだった。 火族四家ではなく、五家。 先生が以前「すでに滅びた家がひとつある」と言っていた、そのいつつめ家だ。 そう言ってやると、日向子も持っていた本を俺に見せてくる。 そこにも火族五家の記載があって、同じ時期の本であることから当時は五家目も精力的に活動していたのだとわかった。  夜住との戦いで滅び、火種を途絶えさせた家──神守家。 俺の持っている本には、『神守家は五家を統括し、四家を守護するものである』と書かれている。 日向子の本の方には、神守家が継いでいた術式についての記録があった。 だが肝心の術式のページは乱暴に握りつぶされたように破られていて、思わず日向子と顔を見合わせてしまう。 他に何か資料はないかと背表紙を眺めて、確認していく。 と、いくつかの本のページの一部が同じようにぐしゃりと潰され、破られているものがあった。 どれもこれも、神守の記録の一部だ。「えぇと、大地を焼き、冷気を熱として食らうヤマタノオロチを神守、神風、深神の三家が封じ……?」「この続き破られちゃってますね。なんででしょう……」「この頃にはまだ三家しかなかったってことなのか?」「い、いえ! こっちには五家って書いてありますので、明神と御
last updateLast Updated : 2026-01-21
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第七話 幻惑、誘惑

「明神様? どうかなさいましたか?」 「い、いや……」 目に手を当てたままぼんやりとしていた俺を、不思議そうに日向子が覗き込んでくる。  彼女に、相談をするべきか。  口を開きかけて、噤む。    今日あったことや見たものは、まだ帳先生にも相談をしていない。  先生も俺が見た擬態した夜住のことには気付いているだろうし、和穗のこともちゃんと見ていてはくれたはずだ。  でもまだ、それらについて話は出来ていない。  そんな余裕もなかったし、最初に俺たちを陥れようとした御神苗の刀持ちと、老婆については、夜住なのか成りかけだったのかも、俺には分からない。 成りかけだった、とは、思うのだ。  今まで始末してきた成りかけの条件と、彼らはほとんど合致していた。  けれど、死の際にどろりと溶けるように身体が崩壊していく夜住は、初めて見た。  大体にして成りかけは人間のまま死ぬので肉体が残る。  反対に夜住は、身体そのものが煤になってしまうので肉体は残らない。 だがあの刀持ちも、老婆も。  最期には笑いながらどろりと溶けて──溶けながら煤を撒いた。  あんなもの、今まで見たことがない。  煤を撒くという、その部分だけを見れば夜住だし、人間の外見のままであった事を考えれば人間だ。  わからない。  俺はまた右目に手を当てて眉間にシワを寄せた。 アレは……あの変質は、俺以外にも、視えていたのか?  少なくとも先生は、視えていたはずだ。  でも、手を出したのは俺が御神苗の刀持ちを認識した後のこと。  それは、あの黒い壁の夜住の時と、似ては、いないか?「難しい顔してるわねぇ~」 「きゃっ」 「うわっ、霧子さんっ」 「こんな所に居たのねぇ~」 一冊の本を顔を突き合わせて見つめていた俺と日向子の間に、「みんな探してるわよぉ~」なんて言いながら割り込んできたのは、霧子さんだった。  足音も何も感じなかったので、日向子と揃ってその場から飛び退
last updateLast Updated : 2026-01-23
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第七話 ②

「和穗ちゃんって、丈夫なのねぇ。びっくりしちゃったわ」 「……本当ですね」 「ふふっ。さぁ、いきましょう?」    にっこりと笑顔を浮かべる霧子さんに、俺もぎこちなく笑みを浮かべる。  笑みになっているかどうかは、わからない。  けれど、こういう場面では笑うべきだと、そう教わったから、無理にでも口角を上げる。『笑顔は無敵パワーの源なんだよ』 そんな事を言っていたのは、帳先生だ。  先生はずっと灯楼にこもっているのに外来語にも詳しくて、パワーとはなんですかと聞けばケラケラと笑った。  おかげで俺も少し外来語を学び始めたが、本当に一体どこで言葉を覚えてくるのだか。 俺は、震えかけていた自分の膝を叩いておさめると、背筋を伸ばす。  しかし、戻ろうかと日向子にかけようとした言葉は、彼女が俺の羽織の背をきゅっと握っていたことで喉の奥に消えていってしまった。  霧子さんは、動かないでいる俺と日向子には気付かずに、書庫の入口に向かっている。  相変わらず自由な人だなと、苦笑してしまった。「明神様……」 「どうしたんだ、日向子。神風さんが呼んでるってさ」 「深神様は……ど、どうやってこの中に入ったのでしょうか……」 「……へ?」 羽織を握りしめる日向子の手が、震えている。  俺は日向子を見てから、先に封庫を出た霧子さんの方を見た。  ……閉まっている。  日向子が鍵をかけた時のまま、重厚な鉄の閂は微動だにしていない。なのに、あの人は、今──    俺は、わずかに息を吸い込んで言葉を飲み込んだ。   霧子さんを追って封庫を出れば、外はさっきよりも明るく、しかし雪は強くなっていた。  さっき、霧子さんは肩の雪を払っていたけれど、このせいなのか。  封庫から少し顔を出すだけで鼻の先が冷たくなるほどの寒さに、呼気が一瞬で白くなった。  本当に、封庫の中だけがまるで別の季節であるかのようにあたたかい。
last updateLast Updated : 2026-01-25
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第七話 ③

 日向子も続いて封庫を飛び出すと、扉がしっかりと閉じるのを確認してから後を追ってくる。  封庫の扉は、酷く重そうな、鈍い音を立てて閉ざされ、鍵もハッキリと重々しく、ガチャリと閉まった。  こんな音、聞き逃すわけがない。    雪の積もる渡り廊下を駆けると、渡り廊下の雪が新雪なのにも、背筋が冷たくなった。  俺たちを呼びに封庫に入ってきた霧子さんは、俺たちより先に外に出たはずだ。  そしてこの封庫までの道はほぼ一直線で、別邸内はともかく外に出たり本邸に戻るのなら、この渡り廊下を通るしかない。  なのに、髪をさらってめちゃくちゃに泳がせる強風が運ぶ雪は、まっさらな状態だった。  霧子さんが先に戻った時間差程度では、足跡を埋める程の雪なんか降るわけがない。  渡り廊下の外の庭を見ても、足跡はどこにもない。 ──霧子さんは、どこに行ったんだ?「先生……っ!」 無事で居てくれと、祈りながら走る。  ドタバタと足音をさせて走るのは、普段であれば神風さんにも先生にも、ハルにだって怒られそうな所業だ。  でも、足音を消して走るなんて今は出来ない。  行儀良くだとか、当主らしくとか、そんなのはどうでもいい。  走っている最中は、まるで心臓が脳みそに入ってきたかのように、こめかみがドクドクと音をたてていた。    目の奥が、熱い。  いや、痛いのか? 熱いのか痛いのかもわからなくて、俺は走りながら無意識に右目をおさえていた。  ひんやりとした手で、少しだけ目元の熱がおさまったような錯覚を覚える。  それくらいに、頭が、目の奥が、熱かった。「あら、良かったわ~。これから呼びに行こうと思ってたのよ~」 「……は?」 「深神……様?」 「? どうしたの? 今ね、治療室の扉が開いたのよぉ」 寒さで呼吸が上手くいかなくなり、肺が変な音をたてる。  頭痛を振り払い、急いで走って階段を駆け上がって、治療室のある階層まで戻ってきた、その時。
last updateLast Updated : 2026-01-27
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第八話 安堵、困惑

「ソウくん、日向子ちゃん。そこに居る?」 俺たちが何も言えずに黙り込んだことで会話が途切れたと察したのか、治療室の中から帳先生の声が聞こえた。 ほんの少しだけ開いている治療室の戸。 指1本分も開いていないけれど、それでもさっきまで完全に閉ざされていたことを思うと、安堵する。 その隙間から漂ってくるのが消毒薬だとか、血錆のような匂いであったとしても、嬉しいことだ。「居ます。戻りました、先生」「はいっといで~。もう大丈夫だからね」「……っ失礼、します」 おそるおそる、ほんの少しの隙間に顔を近付けて、中を伺う。 戸に加えて白い布で外界から遮断されている治療室は、それだけじゃあ何が起きているのかは分からない。 けれど、日向子が開いてくれた扉を潜れば、廊下ではどこか遠くに感じたものが、実感としてのしかかってきた。 白い布の向こうに、寝かされている女性の影と、その周囲に座る人影が見える。  和穗と、先生たちだ。 俺は、白い布を開くことに少しばかり躊躇してしまって、けれど日向子は、黙って待っていてくれた。 俺の隣に立ったまま、神風の灯守である彼女ならばサッと入ってしまえるだろうに。 そんな日向子の存在に励まされて、ゆっくりと白い布を開く。 蚊帳のように天井から吊るされていた白い布はスルスルと手の甲を滑って、折り重なった部分はまるで俺を招くように自ら開いていった。 二枚、三枚。 重なっていた布が開かれると、真っ先に寝かされている和穗が視界に入ってくる。 それから、彼女の両肩を支えるように左右に控えている先生と、神風さん。「おにい、ちゃ」「和穗……!」「起きたばっかだよ。それで喋れるんだから、ほんと頑丈だよねぇ」「喋るなと言っているのに、まったく」 苦笑交じりの先生たちの表情には、疲れが見える。 一晩中ずっと和穗に寄り添い、彼女を生かしてくれたのだ。 
last updateLast Updated : 2026-01-29
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第八話 ②

 それでも、和穗が俺の手を握り返そうとした動きを、手の中で感じた。 指先がピクリと動き、しかし握ることまでは出来ないようでただ俺の手の甲だけを少しだけ引っ掻く。 動くんだ。 実感すると、目の奥がズンと熱くなる。 さっきまでの目の痛みとは違う、鼻の奥までツンとくる熱さだ。「しばし時間はかかるだろうが、動くようにもなるだろう。大丈夫だ」「ありがとうございます、神風さん。和穗お前、ほんっと……頑丈だな」「えへへ。すぐだよ、すぐ」「あ、そうだ。廊下にハルと深神さんも居たんです。呼んでもいいですか」「あ、お、お呼びしますね!」 黙って俺たちの様子を見守っていた日向子が、パッと立ち上がる。 しかし、「あ、待って。ハルくんだけにしといて」 白い布に手をかけた日向子を、先生が手をひらひらさせながら制した。 日向子が振り返って、俺も思わず先生を見る。 先生は、俺たちの視線を受けてニッコリと、笑った。 先生、と、口先だけで先生を呼ぶ。 日向子は白い布を開くのを躊躇しているようだったが、神風さんが手を振って促すとその先に消えていった。 なんで、霧子さんはダメなんだろう。  問いたくて、じっと先生を見る。 先生は障子で閉じられた窓辺に寄りかかりながら俺を見ていて、にんまりと笑うと、自分の懐を指でトントンと示して見せた。 なんだ? と、俺も自分の胸元に手をやって、そこで指先に触れたものに少しだけ驚いてしまった。 胸元に何も入れていなかったはずなのに、という気持ちと、やらかした、という気持ちと。 それらが一緒くたになって、サーッと頭から血の気がひいていく。「す、すみません神風さんっ。俺、急いでて封庫から本を……!」「あぁ、やはりそれは封庫のものか。見覚えがあると思ったんだ」「すみません。これを見てて、考えてる時に、」 考えている時に、霧子さん
last updateLast Updated : 2026-01-31
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第八話 ③

 だって今──今、先生は、霧子さんをここに入れるなって、言った。 ハルだけで、って、先生が、言ったのだ。「和穗っ!」「はるくん」「あぁ、もう心臓に悪い……良かった、良かったなぁ」「ごめんね、失敗しちゃった」 ドクドクと心臓が跳ね回っている俺の視界は、ハルが転げるように入ってきても少しも落ち着いてくれない。 チカチカして、目の奥で火が燻っているみたいで、頭が熱い。 戻ってきた日向子も、白い布を整えながら何かを考えているようだった。 当たり前だ。 彼女も、あの霧子さんを、見ている。 先に違和感を持ったのも、彼女だ。「明神。持ってきた本は、何の本だい」「え、あっ……」「怒っているんじゃない。あの封庫は、必要な本を必要な者に差し出すんだ」 チカチカとしてくる視界を少しでも閉じようと、右目を手で覆う。 と、神風さんが俺に手を差し出してきた。 まるで──まるで、神風さんも霧子さんをこの部屋に入れなかったことに、違和感を持っていないような、顔で。「な、直紹様、あの」「いいんだよ、日向子。あそこは少々特殊でね。封庫がお前を弾かなかったのなら、お前も入るべき時だったんだ。そして明神には、その本が必要だったのだろう」「マジで、あの封庫意味わかんないよねぇ。好きだけど」「当家に来るたびにあそこにこもりますからね、貴方は」「あったかくってきもちーんだもん」 あははー、なんて笑う先生と神風さんのいつも通りの姿に反して、俺と日向子だけが緊張している。 神風さんが俺を安心させようとすればするだけ、ワケがわからなくて頭がぐるぐると混乱した。「ハル、霧子さんは、まだ、廊下に?」「あぁ、居ると、思うけど……」 目の奥が熱を持っているのがわかる。 俺は目をおさえていた右手をそのまま頭まですべらせて前髪をかきあげると、本を懐から出して神風
last updateLast Updated : 2026-02-02
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第九話 躊躇、揺らぎ

「ほい、集中してない」「ぐっ!」 ガァンッ 木刀がぶつかり合っただけなのに、鉛のように重いものが落ちてきたように錯覚する一撃。 ほんの一瞬意識をそらした瞬間に打ち込まれたソレを、真正面から受けてしまった。 両手で持っていた木刀は半ばから折れ、ビリビリとした痺れに残った半分も取り落としてしまう。 俺が和穗を傷つけた夜から、丸一日が経過した。 あの後俺は何も言うことが出来なくなってしまって、和穗の消耗も考えて場がお開きになったのだ。 本当は色々と話すべきだったし、話を聞くべきだったというのはわかっている。 わかっているけれど、あの時の衝撃はどうしたって言葉に出来なかったし、それは日向子も同じだった。「考え事か? 余裕だな」「……すまん、ハル」 神風さんはその日、屋敷に集まっていた刀主と灯守のために客間を空けてくれた。 きっと、俺と日向子に何かあったのを察したんだろう。 帳先生も俺たちに何か追求をしてくるでもなく、俺と日向子は混乱の中言葉を飲み込んでしまった。 何を話すべきか、どこから話すべきか。 それがあの時の俺たちには、判断できなかった。 たっぷりと寝て、休みなさい。 一番疲れているのは先生と神風さんだろうに、2人はそう言って年下たちを寝かせた。 帳先生と神風さんはそのまま治療室に待機して、日向子は自分の部屋に。 同じ部屋で寝たのは、俺とハルだった。「なぁ、昨日なにがあった?」「…………」 まんじりともせずに中々眠れずにいた俺は、結局行火の入ったあたたかい布団に負けて眠りに落ちた。 図太いな、と自分でも思ったが、目覚めてみればハルが術式で眠らせてくれたのだと知って、またなんとも言えない気持ちになる。 目覚めた時の罪悪感なのだか怒りなのだか分からないモヤモヤは、やはり言葉に出来なかった。 ハルは
last updateLast Updated : 2026-02-04
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第九話 ②

「……怒ってないのか」「なにを?」「俺は……和穗を斬った」「……あ? もしかして、それを気にして散漫になってたのか?」 そりゃ、そうだろう。 意外だ、と言いたげな表情をするハルに、俺は声を絞り出しつつ頷いた。 刀主と灯守は、番という契約で繋がる存在だ。 伴侶ではないけれど、それ以上に強い力で結ばれた相手。 そんな相手を斬られて──俺なら、普通ではいられないだろう。  先生が傷つけられたなら、例え相手が同じ刀主だったとしても刀を抜くだろうし、逃げられたなら地の果てまでも追いかける。 もしも先生が死にでもしたなら、相手には死よりも辛い苦痛を与えてやるだろう。 俺とハルの立場が逆だったとしたら、一発は殴って、ふざけるなと怒鳴っていたはずだ。 ならばきっと、ハルだって……「アレはしょうがないだろ。先に斬り掛かったのは和穗だし、操られたなら和穗が迂闊だったんだ」「……は?」「まー確かに最初はちょっとピキッたけどさ、実際そうだろ。お前は斬りかかられた方で、お前が反撃しなかったらお前が死んでたかもしれない」「それは……そうだけど」「そうなった場合、俺も和穗も死んでたよ」 喉に手を当てて軽く切り落とすような動作をするハルに、俺は黙り込んだ。 俺が死んだ時、和穗とハルを殺す人間。 それは、あの場においてはただ一人──先生しか居ない。 もしかしてあの紫のモヤの向こうでは、別の意味での命のやり取りでもあったんだろうか? ちょっとだけ、背筋に冷たいものが走った。「ちょっと傷がついた程度なら許されても、お前に何かあったら死ぬのは俺等だよ」「いや、そこまでは……する、のか?」「宗一郎だって、先生が傷つけられたらキレるだろ」「あぁ」「即答~」
last updateLast Updated : 2026-02-06
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第九話 ③

 そういえばあの時──和穗が目を覚ました時にも、和穗は「失敗しちゃった」と言っていた。 俺を責めるのではなく、自分が失敗したのだと。 ハルだって、目覚めた和穗に「良かった」と言うだけで、態度は普通で。 なんでなんだ。 なんで、怒らないんだ。 番は、絶対の存在なんじゃないのか。「怒るようなことじゃないだろ。だって俺たちは、刀主と灯守なんだから」 俺が投げ出した木刀を、ハルが拾う。 寒い稽古場の中、雪解け水の音なんかは気にしないでハルはニヤリと笑った。 俺たちとは違う色の目が三日月のように笑むと、まるで猫や虎のように見えた。「さっきも言ったけど、今回のことはあいつが失敗しただけだ。俺も、失敗した。俺と和穗は、あの爆発を止められたかもしれないんだから」「あの爆発を?」「そうだよ。俺たちは、お前と先生の救援に行くつもりだったんだ。そのための連絡係を選定して、直接お前に預ける予定だった」 でも、失敗した。 苦々しく、ハルは言う。 御神苗の刀持ちを数名、連絡係として選定していたこと。 挨拶がてら和穗とハルも刀持ちたちと一緒に俺に会いに来る予定だったこと。 だが、近付いてきた子どもが目の前で転んで──和穗がその子を助けようとしたら、爆発が起きたこと。  ハルの得意術式は防御系だ。 咄嗟に術式を使って和穗と自分を守ったが、部下たちは守れなかったと言うハルの声には、苦渋が滲んでいる。 その結果ハルはあの頭部の負傷をし、和穗は姿を消して誰かに操られたのだろう。 ゾッとした。 あの規模の爆発だ。 2人が術式を持つ人間じゃなかったら、その場で消し炭になっていてもおかしくない。 何より、本来その場で死んでいたかもしれない人間が俺と先生の前に現れて夜住になったのも、異常だ。 まるで誰かに──仕組まれているような。 ズキリと右目が痛んで、思わず、手を当てた。「明神様、ハルさん」 ぐるぐると思
last updateLast Updated : 2026-02-08
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