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32 チャプター

第六話 ④

 そこにあるのは、紐で括られた本だった。 それだけで、相当古い本なのがわかって、手に取るのに少しだけ怖気づく。 日向子もちょっとばかり怯んだ表情をしていたが、一冊一冊手にとって表紙を確認し、時折中身を確認していく。 俺も一番近くにあった本を手に取り、開く。 パリパリと乾いた墨の音がして、手書きの本なのだということが分かって、また驚いた。 「ん……? これ」「ど、どうなさいましたかっ」「ここに、五家って書いてある。先生が話してた、いつつめの刀主の家だ」 俺の開いた本は、火族五家の役目について書かれているものだった。 火族四家ではなく、五家。 先生が以前「すでに滅びた家がひとつある」と言っていた、そのいつつめ家だ。 そう言ってやると、日向子も持っていた本を俺に見せてくる。 そこにも火族五家の記載があって、同じ時期の本であることから当時は五家目も精力的に活動していたのだとわかった。  夜住との戦いで滅び、火種を途絶えさせた家──神守家。 俺の持っている本には、『神守家は五家を統括し、四家を守護するものである』と書かれている。 日向子の本の方には、神守家が継いでいた術式についての記録があった。 だが肝心の術式のページは乱暴に握りつぶされたように破られていて、思わず日向子と顔を見合わせてしまう。 他に何か資料はないかと背表紙を眺めて、確認していく。 と、いくつかの本のページの一部が同じようにぐしゃりと潰され、破られているものがあった。 どれもこれも、神守の記録の一部だ。「えぇと、大地を焼き、冷気を熱として食らうヤマタノオロチを神守、神風、深神の三家が封じ……?」「この続き破られちゃってますね。なんででしょう……」「この頃にはまだ三家しかなかったってことなのか?」「い、いえ! こっちには五家って書いてありますので、明神と御
last update最終更新日 : 2026-01-21
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第七話 幻惑、誘惑

「明神様? どうかなさいましたか?」 「い、いや……」 目に手を当てたままぼんやりとしていた俺を、不思議そうに日向子が覗き込んでくる。  彼女に、相談をするべきか。  口を開きかけて、噤む。    今日あったことや見たものは、まだ帳先生にも相談をしていない。  先生も俺が見た擬態した夜住のことには気付いているだろうし、和穗のこともちゃんと見ていてはくれたはずだ。  でもまだ、それらについて話は出来ていない。  そんな余裕もなかったし、最初に俺たちを陥れようとした御神苗の刀持ちと、老婆については、夜住なのか成りかけだったのかも、俺には分からない。 成りかけだった、とは、思うのだ。  今まで始末してきた成りかけの条件と、彼らはほとんど合致していた。  けれど、死の際にどろりと溶けるように身体が崩壊していく夜住は、初めて見た。  大体にして成りかけは人間のまま死ぬので肉体が残る。  反対に夜住は、身体そのものが煤になってしまうので肉体は残らない。 だがあの刀持ちも、老婆も。  最期には笑いながらどろりと溶けて──溶けながら煤を撒いた。  あんなもの、今まで見たことがない。  煤を撒くという、その部分だけを見れば夜住だし、人間の外見のままであった事を考えれば人間だ。  わからない。  俺はまた右目に手を当てて眉間にシワを寄せた。 アレは……あの変質は、俺以外にも、視えていたのか?  少なくとも先生は、視えていたはずだ。  でも、手を出したのは俺が御神苗の刀持ちを認識した後のこと。  それは、あの黒い壁の夜住の時と、似ては、いないか?「難しい顔してるわねぇ~」 「きゃっ」 「うわっ、霧子さんっ」 「こんな所に居たのねぇ~」 一冊の本を顔を突き合わせて見つめていた俺と日向子の間に、「みんな探してるわよぉ~」なんて言いながら割り込んできたのは、霧子さんだった。  足音も何も感じなかったので、日向子と揃ってその場から飛び退
last update最終更新日 : 2026-01-23
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