「だろ? でもこれ、歩くときに足にまとわりついて結構動きにくいんだよな。セナくんはいつも通りのスーツだから、全然普段と変わらないじゃないのにね。ずるいぞ」 セナさんはクールに肩をすくめてみせた。「私はエリートコンサルタントの役ですから、この服装で正解なのです。ハル、お盆を持つ手が下がっています。もっと脇を締めて持ちなさい。だらしない店員に見えますよ」「へいへい。ドラマの現場って、カメラの位置とか照明の当たり方とか、覚えることが多くて大変だよね。歌番組とは勝手が違うってやつ」 ハルくんが小道具のプラスチック製グラスが乗ったお盆を弄っている。 そこへ打ち合わせを終えたレンくんがこちらへ近づいてきた。「お前ら、自分の出番までは機材の邪魔にならないように楽屋で大人しくしていろよ。特にハル、床のケーブルに足を取られてセットを壊すなよ」「分かってるって。レンくんこそ、初主演なんだからNG出して現場の空気を凍らせないでよね」「誰に向かって口を利いている。一発で決めてやる」 レンくんはハルくんに向かって怖い顔をしてみせた後、双子へ向き直った。 表情は打って変わって穏やかなものになっている。「……伊織、茉莉。今日からここで一緒にお仕事だ。監督さんの言うことをよく聞いて、いつも通りに、パパと一緒に遊べばいいからな」「うん! パパ、ぼく、がんばる!」「まつりもがんばるー!」 双子が元気よく返事をすると、スタジオのスピーカーから助監督の張りのある声が響き渡った。「それでは、主演のレンさん、伊織くん、茉莉ちゃん、セットに入ってください。まずはテストからいきます!」 3人がリビングのセットに入り、床に貼られたテープの印に合わせて立ち位置につく。 カメラマンが巨大なレンズのピントを合わせた。 音声スタッフが長い棒の先についたマイクを3人の頭上、画面に映らないギリギリの高さに差し出している。「よーい、アクション!」 カチンコが鳴り、静まり返ったスタジオの中で演技
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