「お疲れ様です。皆様に、温かい差し入れをお持ちしました」 私はスタジオの隅に置いていた台車を押して、中央へ進み出た。 台車の上には、業務用の大きな保温鍋とお玉、大量の使い捨ての紙お椀が乗っている。「これは?」 とハルくんが台車を覗き込む。「特製の豚汁です。生姜をたっぷり入れています。皆様がお腹を空かせているかと思いまして、自宅で大量に仕込んできました」 私が保温鍋の重いふたを開けると、フワリと白い湯気が立ち上った。 ごま油で炒めた豚肉の香ばしい匂いと、カツオと昆布の合わせ出汁の香り。 さらに、すりおろした生姜の爽やかな香りが、冷房の効いた殺風景なスタジオの中に一気に広がっていく。「うわ、いい匂い……」 座り込んでいたスタッフたちが、匂いにつられるように次々と立ち上がった。台車の周りに集まってくる。 私は手際よく紙お椀に豚汁をよそい、順番に手渡していく。 大根、にんじん、ごぼう、こんにゃくなどの具材を柔らかく煮込み、豚バラ肉の旨味を合わせ味噌でまとめた具沢山の豚汁だ。 仕上げにたっぷりの生姜の搾り汁を加えているため、冷えた体を芯から温める効果がある。 チーフ助監督がお椀を受け取って一口すすると、ほうっと長い息を吐いた。「……美味しい。体に染み渡ります。生姜が効いていて、すごく温まる」「豚肉にはビタミンB群が豊富に含まれていますから、疲労回復に即効性がありますよ。根菜類もたくさん食べてくださいね」「ありがとうございます、紬さん。なんだか、張り詰めていた気持ちまでほぐれていくみたいだ。さっきは、子供たちを守れなくてすみませんでした」 助監督が申し訳なそうに頭を下げると、私は首を横に振った。「気になさらないでください。皆様がお仕事に真剣だからこそ、逆らえなかったのだと分かっています」 他のスタッフたちも、豚汁を口に運んで次々と笑顔を見せ始めた。「うまい。胃袋の底から温まるな」「お代わ
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