「このおさかな、いくらでかったの?」 唐突な質問に、担当者が目を丸くした。まさか3歳児から原価を聞かれるとは思わなかったのだろう。「えっと、これは市場の価格変動があるから一概には言えないけれど、今日はキロあたり……」 美夕は小さな指で納品書の数字をなぞる。 価格に納得したようで、うんうんと頷いた。「きせつのかんりは、だいじよね。いいものを、やすくしいれるのが、けいえいのきほんよ」 引率スタッフや周囲の大人たちが、苦笑いを漏らした。 理玖は発泡スチロールの箱から漂う潮の匂いを大きく吸い込んだ。鼻の奥が少しツンとする。(ただ食材を買うだけじゃなくて、全部調べてからホテルに入れるんだ。入り口の門番みたいだな。ここで変なものを入れたら、お客さんがお腹を壊しちゃうかもしれないし) ピーッ。「はい、みんな! 危ないから下がってね!」 フォークリフトがバックする電子音が鳴って、引率係が前に出た子供を押さえた。 理玖は慌てて安全な場所まで下がる。 購買・研修部門はそれからも一通りの見学をして、終わりとなった。 ◇ 次に一行が向かったのは、地下の施設管理部門だった。 非常階段を降りるにつれて、空気が徐々にひんやりとしてくる。 重い鉄製の防火扉を開けると、そこはまるで別世界だった。迷路のように入り組んだ薄暗い地下空間が広がっている。 天井には銀色や青色、黄色に塗られた太いパイプが網の目のように這い回っている。「うわあ、すごい。迷路みたい」 子供たちは驚きに目を丸くしている。 部屋の奥には巨大なボイラーや発電機が並び、低い重低音が常に腹の底に響いていた。 オイルの匂いと、微かな埃の匂いが混ざった、機械室特有の空気だ。 作業着姿のスタッフが数名、巨大な配電盤や計器類の前に立っていた。 チカチカと点滅するランプの光が、彼らの真剣な横
Última actualización : 2026-08-14 Leer más