翔吾は背筋を伸ばし、膝の上で腕を組んで目を閉じている。 普段のスーツ姿ではない、カジュアルなニットのセーター。その肩のラインは、見た目以上に広く、頼もしい。(ヒョロガリだったはずなんだけどな。鍛えたのかな?) 実加はそんなことを考えながら、翔吾との出来事を頭の中でゆっくりと繰り返していた。 動物園で理玖を肩車してくれた。 重い荷物を無言で持ってくれたこと。(そりゃ、動物園は思ったよりか楽しかったさ。あいつも動物観察、好きそうだしな。……だが今日の遊園地はどうだ? 完全に理玖優先で、大人が楽しむアトラクションは1つも乗っていない。自分の友達と来た方が、よっぽど楽しいだろうに) 実加は思う。 人混みの中で、常に自分と理玖をかばうように立ち位置を調整してくれたこと。 理屈ばかり並べるくせに、その行動のすべてが自分たち母子を最優先に考えた結果だった。(なんで、ここまでしてくれるんだ?) 実加は首を振る。 翔吾とは、旅館再生のプロジェクトで共に修羅場を潜り抜けた相棒だ。 他にもホテル『サンクチュアリ』で、様々な困難に立ち向かってきた。 特に彼の母親の件では、辛い子供時代を過ごしたと知って心が痛んだ。 過去のトラウマと向き合っても、翔吾は逃げ出さなかった。 仕事のパートナーとしては、これ以上ないほど信頼している。 だが休日の貴重な時間と労力を、血の繋がりもない他人の母子に惜しみなく注ぎ込む理由としては、説明がつかない。(ただの仕事仲間……ってわけじゃ、ないよな) 翔吾の閉じたまぶた。その奥にある切れ長の瞳は、いつも自分たちに温かさと誠実さを向けてくれる。 彼が理玖を抱き上げた時の、少し不器用だが優しい手つきが、脳裏によぎった。 実加の元夫は彼女に暴力を振るった。 実加はやられっぱなしでいるような性格ではないが、小さな理玖を抱えた状態では反撃もままならなかった。 そうして元夫がとうとう理玖にも手を上げたので、実加は理玖を連れて家
Última actualización : 2026-08-02 Leer más