All Chapters of OVERKILL(オーバーキル)~世界が変わろうと巻き込まれ体質は変わらない~: Chapter 51 - Chapter 60

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第三章 50  大奥義書グラン・グリモワール

 後方、王国南門、数㎞前の最前線。カーズがヨルムと共に大半の魔物を大地と共に穿った為、残りは眼前の約1万弱。士気も高く、このままいけば時間は掛かったとしても殲滅可能だろう。アヤが主だが、アリアも攻撃と共に援護にも回っている為、軽い負傷者はいても重傷者はほぼいない。だが騎士団の団長が二人揃って敵陣に飛び込んでいるので、指揮系統が乱れ、戦場は混戦と化していた。「うーん、このままチマチマと狩るのも飽きてきましたねー」(アヤちゃーん、ユズリハー、こっちに来てくださーい) アリアからの念話が2人に届く。(えっ?! アリアさん?! 気付かなかった、すぐ行きます!) テンションが上がりまくっていたユズリハは我に返り、念話の聞こえた方へ走った。(私も近くにいるので、すぐ向かいますね!) 見える位置にいたアヤもすぐさま合流。「ではではー、そろそろ飽きてきたので一気に残りを壊滅させます。二人共、アヤちゃんは聖属性、ユズリハは雷の魔力を私の手の上に全力で注いでください。融合と合成魔法の発動は私が更に魔力と神気を込めて行いますから。エリックには他の冒険者達や味方戦力と一緒に下がるように指示して下さーい」「わかったわ、何かとんでもないことやるのね!」(バカエリック――!!! 周りの味方と一緒に一旦退きなさい! アリアさんの魔法に巻き込まれるわよ!)(げぇっ! マジか! すぐに退くぜ!)「おい、お前ら!! 一旦最後尾まで退け! 死ぬぞ!!!」 周囲の味方に大声で指示を出すエリック。それに気付いた者達は直ちに撤退を始める。(クレア、レイラ、あなた達も一時撤退しなさい。団長が揃いも揃って指揮も執らずに敵陣で暴れるとは……、少しは冷静になりなさい。今から極大魔法を撃ちますよー) ユズリハ同様、我に返る二人。(う…っ、すみません、アリア殿。では他の冒険者達と一時撤退致します)(っ…、カーズ殿から頂いた武器で我を忘れてしまうとは……。私は何という未熟者なのだ……) シュンとして撤退する二人。「前線で闘っている者達! 今から極大魔法が放たれる! 今すぐ退け! 巻き込まれるぞ!!!」「死にたくない奴はさっさと退け!! 塵も残らねーぞ!!!」 クレアとエリックの大声で、前線で闘っていた者達は急ぎ、一斉に撤退する。そしてアリア達の後方まで全員が退いたが、ここぞとばかり
last updateLast Updated : 2026-01-17
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第三章 51  激闘を終えて、ディードの覚悟

 大魔強襲から3日、怪我人の治療は俺達が回復魔法ですぐ終わらせたが、城壁の外の街道や土地の整備など、色々と国が処理することがあったり、参戦した者達が休息を取れるようにとの配慮や、撃退記念のお祭り準備期間だとさ。そして今夜から王城や、国を挙げてのバーティが数日続くらしい。 お祭り好きだなー、この世界の人は。この国だけなのかも知れないけど。 魔人を含め約10万以上という、歴史上初めてと言われる大規模大魔強襲を俺達は半日も経たない時間で撃退した。これまでの大魔強襲はどこの国でも、3日以上かけて漸く収集がつく程のもので、国内にも魔物が侵入し、犠牲者も多数出るものだったらしい。 だが今回はアリアの極大魔法にアヤ、エリユズという超戦力、鍛えられまくった騎士団。前線は王国よりほんの数㎞手前で崩されず、いち早く王国全土に結界を張ったので空からも侵入はされなかった。 そのせいで城壁の上から大勢の人々が、しかもあの残念王まで一緒に上から高みの見物をしていたらしい。見世物じゃねえーっつうの。後でクソ親父を喚び出して相手をさせてやろうかと思っている。 後方は俺とヨルムが大半を蹴散らした。大地が抉れたり、地面に大穴が空いたり(これはアリアのせい)と、多少地形を変えてしまったのは反省点だな。 でも軽傷者は多数いても重傷者はほんの僅か、奇蹟的なことに死者は出ていない。これもアヤやアリアが危ない場所を後方から回復や補助魔法で援護してくれた御陰だ。後ろ、背中を任せられるってのは大きい。守備やカバーがしっかりしているとスポーツでもそうだが、安定するってことだな。 エリユズに騎士団長の二人がバーサーカーみたいになってたけどね。あの二人はまだいいとして、レイラやクレアに、実力に見合わない強力な過ぎる武器を与えると良くないってのは重々理解した。人ってのは急に強い力を手にすると調子に乗ってしまうということだな。 これは今後の自分への戒めにもしとく。 ギルドでランクの更新もしてもらった。俺とエリユズの三人は無事揃ってSランクに昇格。これはどこでも国を挙げて祝福されるほどのことらしい。アヤもBランクに、そして改名して新しく登録し直したディードもBまで昇格だ。心を入れ替えて、ボロボロになりながら立ち向かったんだ、それくらいは当然だろうさ。ギル
last updateLast Updated : 2026-01-18
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第三章 52  放熱の祝宴

「じゃあ、Sランク昇格に大魔強襲撃退、アヤとディードのBランク昇格、あとはー、まあ色々あったけど、ディードのPTメンバー加入に乾杯!!」「「「「「「かんぱーい!!!」」」」」」 みんなでグラスをカチーンと合わせる。「あ、ありがとうございます、カーズ様、皆さん」 照れくさそうな顔をするディード。「これからは同じPTなんだから、もっとリラックスしなさいよ」「多分お前が一番怖いんじゃねーのか? ユズリハ……」 エリック……、まあわからんでもないけどさあ。「まあまあ、でもここに来た時はBランクだったのにあっという間にSランクとか、すごいね。私達も頑張ろう、ね、ディード?」「はい、そうですね。アヤ様、頑張りましょう!」「そんなに畏まらなくてもいいぞー。普通に呼び捨てで構わないしな。それにPTで経験値共有してるから、レベルも直ぐに上がるだろうし」「いえいえ! そんな、カーズ様達を呼び捨てなんて……」 なぜ様呼びなのかが未だにわからんのだが……。「まあ、段々と慣れていけばいいさ。エリユズは呼び捨てなんだし」 とは言ってもこの調子だと暫く時間が掛かりそうだな。「俺らのことは前から知ってるし、今更だしなー」「そうね、私達のことはそのままでいいわ。その方が気楽だしね」「ありがとう、二人共……。これが本当のPTというものなのですね……」「はいはーい、湿っぽくなるので、楽しみましょうねー」 既に大量の皿を積み上げているアリアが言う。毎回どんだけ食うんだこいつは……。 今は城の大きな中庭での、前回と似たようなビュッフェ形式の立食、テーブルに椅子もあるけど、パーティだ。今回は正装、勿論城の侍女達が用意してくれたんだが、男性陣は中世の貴族の様な派手なスーツの様な服に、女性陣は煌びやかなドレスだ。 俺にドレスを着させようとしてきたアリアにはげんこつを喰らわせてやった。 先程まではこの度の功労者として、他国の冒険者達と一緒に、用意された壇上に上がって表彰やSランク昇格の祝福などを受けたりと、うん、まあ疲れた。ギルドで暴れた件は、他の冒険者や受付のカレンさんの証言の御陰で御咎めなし、ちょっとは注意されたけどね。でもあれは全く後悔も反省もしていないし、アイツらが悪いと言い張ったので、パウロもヤレヤレと折れた。 そして残念王が絡んできてウザ
last updateLast Updated : 2026-01-19
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第四章 53  Sudden Encounter

「あれ?」 転移で降り立った場所は街からまだ数㎞以上離れた草原、どういうことだ?「なんかえらく離れた場所だな?」 エリックが不思議そうな顔をする。「変だな…」「何が? 転移に失敗したの?」 ユズリハが尋ねてくる。「いや…、何かの干渉を受けたみたいだ。俺はギルド前に転移したはずなのに」 無理矢理転移先を捻じ曲げられた様な、奇妙な感覚が残っている。どう考えても他者の介入があった。魔力の波長を変えられた様な感じだ。「そのようですね……。それにもうそこに来ているようです。姿を見せなさい!」 アリアが離れた空間に向けて叫ぶと、その虚空に黒い歪が広がる。まるで異次元倉庫を開いたときの様な光景だ。なるほど、あんな風に亜空間の中を移動しているのか……。「ククク…、さすがは神、よく気付いたな」「テメーか、ナギストリア……。何の用だ」 傷は癒えているが、やはり封印術の影響で大幅に力は落ちているな…。「アレが、過去のカーズ?! ……確かに前世の姿に似てなくもない、かもだけど……」 アヤは前世の俺の姿を知っている。それでもあんなに陰険な見た目じゃなかったけどな。「過去のお姿も素敵ですが……。禍々しすぎます、あのオーラ……」 ディードは何を言ってんだ? 既に背から抜いている黒い大剣も元通りに修復されているし、黒い甲冑も同様だ。どうせあの三神のやったことだろう。「力の大半を大神に奪われたのだ。それを補うため、貴様の神格を奪いに来てやったのだ。カーズ、俺の半身よ。他の奴らに用などない」 こいつ、舐めてやがるな……。天界での俺は儀式で弱っていた。実力など全く発揮できなかったとはいえ、そこまで舐め腐ってわざわざ出て来るとは。だが、これはいいチャンスだ。コイツ一人にこんな芸当が出来る訳がない、手引きした奴が何処か近くにいるはずだ。「テメー、舐めんじゃねえぞ!!」「一人で来るとはいい度胸ね。アンタ達の下らないお遊びに付き合わされたお礼をしてやるわ!」 エリユズ、すぐに火が付くな……。だが危険だ。「待て二人共、ヤツは神気を操れる。これは神格を持っていないお前達じゃどうしようもない。アリア、みんなを神気結界で守ってくれ、こいつは俺がやる」 一人で前に歩を進める。「そいつは、凄く嫌な感じがするの……。カーズ、気を付けて……」 心配そうにアヤが伝えて来る。
last updateLast Updated : 2026-01-20
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第四章 54  堕天神皇帝ルシキファーレ

「おっと、まだ彼を殺させる訳にはいかないよ、まだまだ利用価値があるのでね、特異点のカーズくん」 俺のトドメの一撃が空を斬った。だがな、こういう情況になったら必ず馬脚を露わすと思っていたんだ。予想通り、釣れた。「やっぱり出て来やがったな、堕天神が。しかもふざけた遊戯の親玉、皇帝様自ら直々にお出ましとは、ありがたい。ここでぶっ潰してやるぜ!」 ルシキファーレ、ファーレと呼ばれていた女性が最早死に体のナギストラリアを肩に担ぎ、すぐ近くの宙に現れた。ヤツはもう意識を失っているが…、こいつは何処から現れたのか全く気配も感じなかった。そして利用価値か、やはりその程度なんだな。こいつらは天界を抜ける理由にナギストリアを都合よく使って旗艦としているんだろう。まあそんなことは俺にはどうでもいい、ここで大将格のこいつを討ちとれば、残りは烏合の衆も当然だ。「ハアッ!! サンセット・リープ!!」 ガキィ!!「おっと」 跳躍して放った落陽の打ち下ろしの一撃を、長く伸びた右人差し指の爪で、しかも神器の一撃を弾きやがった。さすがどんな宗教においても最大最強の悪役。人の思いや信仰などが悪魔や神の力になるとしたら、こいつは今迄でまさしく最強最悪の敵ということになる。だが、神格を爆発させて上昇する力は無限大。こいつはここで必ず仕留める!「やれやれ、私は争いに来た訳ではないんだけどねー」 やる気のなさそうな顔をするファーレ。「ならそいつを置いて行けよ、折角トドメをさせるとこだったんだ。邪魔するんならテメーが相手になれ! ケンカ売って来て都合が悪くなったから逃がしてくれだ? 筋が通ってねえんだよ! 男のケンカに割り入った以上、落とし前はつけてもらうぜ」「カーズ! 彼女は危険です! 今のあなたの力でも危ない!」 結界を更に頑丈にして、アリアが俺のすぐ後ろまで来ている。ああもう全く、過保護な姉だな…。「わかってるよ、こいつがヤバいってのは。だが大将首を易々と逃がすわけないだろ」 確かにこいつは化け物だろう。今の神気を強烈に放っている状態でも、ステータスは視えない。だが、数値で全てが決まる訳じゃない。それも経験して来たことだ。奴と同じ高さまで飛翔する。「ニルヴァーナ、刀フォーム」 キィイイン! チキッ!「ふぅ、本当にやる気なのかい? 私は無益な殺生は好きじゃないんだがね」「
last updateLast Updated : 2026-01-21
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第四章 55  0.5秒の間隙

(ニルヴァーナ、聞こえてるか?)(無論だ。我が主カーズよ)(早速で悪いが、アレをやる。いいな)(我を手にして早くも使うと言うのか。それほどの相手なのか?)(ああ、恐らく最悪最強。だが一瞬の隙を作ることが勝機に繋がる。頼むぜ相棒)(カーズよ、考えは伝わった。任せておけ)(じゃあ、いくぜ)「アストラリア流抜刀術・奥義」 ドッ!!! カッ!!!「無駄だよ!」「うおおおお!!! 神龍・円!!!」  奴の長剣の届くギリギリの射程、目の前に巨大な円形に口を開ける様に刻み付けた斬撃痕! 先ずは検証、あの攻撃が全てを斬れると仮定しても、神龍で斬り裂いた空間そのものを斬ることができるのか? 不可能だと仮定しておく。仮に斬れたとしても何かが見えるはずだ。  キィーン! ドゴオオオオオオオオ―――!!! 振り向き、納刀! そこから一気に放出される剣圧・魔力・神気の奔流、それら全てを一撃で斬ることなど不可能なはずだ。俺が敢えて円形に斬撃痕を刻んだのも、こちらを目視で見えないようにするため。神眼は俺も使えるが、目の前の脅威から目を逸らしてまで他を捕らえるなど、そう簡単にできることではない!「う、ああああああ!! くぅっ!!」 ザン!! ザシュシュッ!!  わざわざ斬撃痕に近寄って斬った。今の三連撃で一発目。「背を向けたままとは……。隙だらけだよ!! くっ、ハァッ!!!」 ザンッ!! バシャアッ!!「水!!? バカな! カーズは何処に!?」 ドズンッ!!!「ガ、ハッ……、?!! う、後ろ…だ、と……!?」「アストラリア流格闘スキル、イクサクシス・ハンドソード」 格闘用のグローブに変形したニルヴァーナ、そして俺の左手にありったけの神気をつぎ込んだ手刀での貫き手! その一撃がファーレの背から魔神衣を破壊し、胸を貫通した。そのまま後ろからこいつの体の自由を奪うように締め上げる。「い、一体何が……!? う、カ、ハッ……!?」「わからなかっただろ? 俺が何をやったのか。なぜ神眼を、未来視を発動しているのに俺に背後に回り込まれたのか、不思議で仕方ないだろ?」 胸を貫いた。当然の様な夥しい流血、口からも背からも胸からもだ。まだ生きてるってのが神と言うべきか……、しぶといぜ
last updateLast Updated : 2026-01-22
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第四章 56  My Home・「ただいま」と「いってきます」

 ギルドで報告を済ませ。忘れていた翼竜のオークション代も受け取った。送り出した3人のBランクがSランクになって戻り、更にAランクに匹敵するかそれ以上のBランクを2人も連れて帰って来たので、ギルドは大騒ぎだったが、今回は先に新居へ行くのが最優先だったため、どんちゃん騒ぎはまた今度だ。王国での最終日辺りはずっと宴会だったしね。「うわ―…、マジかよ、ここまでの豪邸とは…」 地図を受け取っていたので迷わずに到着した、クラーチ国王に用意させた、中立都市北部の都市長の屋敷の近くの一等地にある屋敷。いや、もうガチ貴族の豪邸だよこれ! 屋敷全体を囲む柵があり、門を開けると屋敷までの約20m程の長方形の庭には噴水、門から真っ直ぐにレンガ造りの道があり、二階建ての豪邸の入り口に繋がっている。「「おかえりなさいませ、皆様!!」」「ああ、初めてだけど…、ただいまだ!」 大きな扉を開けて中に入ると、侍女のリアとククリがメイド服で出迎えてくれた。目の前には吹き抜けの大きな踊り場というか空間が広がっている。中央には二階へと続く階段とその後ろには地下へと繋がる階段だ。すげえ…貴族の大豪邸だ。いや、今一応なんちゃって貴族だけどさ。上の階は個室が左右と正面にあり、俺達冒険者組は上階に住むことになるらしい。階下にはキッチンに食堂、寛げるリビングに大浴場、しかも露天風呂付きだよ! 正面には使用人の部屋、造りは同じだけど6部屋。すぐに家事などができるからここは侍女達管理者用の部屋だ。「一階は正面玄関を入って右手に食堂、その奥にキッチンがあります。左手にはソファーなどを設置したリビングでのんびりと寛ぐことができます。そして左手奥は、外の露天風呂まで続く大浴場です。厳重に隠蔽がかけられているので外から覗かれることはありません。一階の正面の個室は6つですが、ここは基本私達が使わせて頂きます。あと二名来られるとのことですしね。あ、それと御手洗いは各階にありますので」 とククリが説明してくれた。そして二階へ上がる階段から今度はリアが説明をし始めてくれる。「では二階へ、階段を上がって正面に6部屋、渡り廊下を進んで左右にそれぞれ3部屋ずつ、計12部屋ありますので、好きなお部屋をお使い下さい。最低限の家具の準備はしてありますので、どの部屋も快適に過ごせるはずです。そして屋上にも
last updateLast Updated : 2026-01-23
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第四章 57  鍛錬鍛錬!竜王復活

 エリユズがルクス、サーシャと共に旅立って数日が経った。俺達は竜王様、ダカルー(ダカルハって言いにくいし、バハムルは名字だし、バハムートは長いのでこう呼んでいる)が元気になるまではギルドの依頼をこなしつつ(収入なくなるしね)、王様から貰ったかなりの報奨金やらアヤの為の嫁入りの資金やらと、相当の金額はあるけど…。それに頼っていると、モンスター女神に食糧費として全て持っていかれることになるからね。だからクエストをこなしながらアヤやディードの鍛錬。勿論帰宅しても地下の鍛練場で訓練。俺も含めてね。エリユズに最初に出会ってからの鍛錬を思い出す様な日々だ。 アヤはまだしも、ディードの力の底上げは急務。レベル100程度では俺達の闘い、恐らく魔人相手にも勝てるかどうか微妙なラインだ。装備の御陰で補正値は上昇しているし、多少の無理も苦にはならない。アリアが自動回復付きの寝間着や普段着も創ってくれているので、多少体を酷使しても翌朝に前日の疲れは残らない程スッキリなんだよね。そういうことで現在順調。今はアリアがディードの相手をしてくれている。「ハッ!!」 ドドドドッ!!!「おっと」 ディードの繰り出す突きを軽々と回避しまくるアリア。「今です!」 ギャリィイイイン!! 最後に深く踏み込んだ突きを躱された瞬間に、レイピアが連接剣へと変化! そのままアリアを搦め捕る様に巻き付く! お、上手いな。かなりモード・チェンジも上達している。「捕らえた!」 ガシャアアン! だが捕らえたはずの連接剣が地面へと落下する。「なっ!? いない?」「残像ですよー」 背後にいつの間にか回り込んだアリアが右手のソードを振り被っている。「シールド!」 バキィーン!! 躱されることを既に想定していたのか、ナックルガードの片翼が展開されアリアの剣撃を反射で防いだ! 後ろへと弾かれるアリア。やるなあー。だがアリアは着地と同時に次の攻撃へと移っている! この切り替えの速さ! アリアの怖いところは剣技や魔法の多彩さもあるが、どこからでも攻撃に繋いでくる連撃に手数の多さだ。「くうっ!?」 ギィン! ギギィン!! ガギギイン!!! レイピアに戻したライトローズ・ウイングで、アリアと超スピードで剣を交えるディード! やっぱり元々Aランクだったしなあ。こう
last updateLast Updated : 2026-01-24
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第四章 58  月の女神と魂の子孫

「げっ……」 開口一番、アリアがそんなことを言った。「あらあらー、御挨拶ねーアリア。ニルヴァーナの危機って招集が掛かったから、わざわざ育てた最強の特異点を連れて来てあげたというのにー」「月の女神ってことは……アルテミス? 本名はそういう名前なのか、やっぱり地球の伝承とは異なるんだなあ」「へぇー、あなたのいた世界ではそんな呼び名なのねー、不思議。行ったこともないというのにねえ」「それなー、他の神様もみんな同じこと言うんだよなあ。実は誰かが伝えたりしたのかな?」「まあ地球にも不干渉なだけで神はいるからね。その人達が勝手に広めたのかもね。神力は信仰から生まれるし、多少名前を捩ってもそれは反映されるから」 なるほど、ティミスが言う通りなのかも知れないな……。司る権能は俺が地球の神話やらで知っているのと同じだし、これは何かあるのかも知れない。今のところはどうでもいいことだけどな。俺はもう地球と縁は切れているし。「それでティミス、あなたもゼニウス様からの神界特別指令を受けて? しかもこの子は…? まさかあの時の女の子…? 月に連れて行って救ってくれたことには感謝していますが……、なぜ今ここに?」「え…、この子がカーズの記憶から知ったあの時に過去の私達の間にいたっていう子なの……?」 アヤが驚いた顔をしている。俺が天界で経験した記憶は神格を通してアヤにも伝えてある。「はじめまして。私の魂の両親のお二人、カーズにアヤ。私はアガーシヤ・ルーナ。月の民です。この度はティミス様に連れられ、故郷とも言えるこのニルヴァーナへと参りました。なるほど……、確かにお二人に対して懐かしさというか、魂が共鳴しているような奇妙な感覚があります……」 この子が永い時を超えた俺達の子孫ということなのか? 確かに何か懐かしさや、魂の共鳴とも言える不思議なものを感じるな……。それに礼儀正しそうな子だ。「良かったわね、アガーシヤ。真の両親に会えて。あなたの血筋は産みの両親がすぐに亡くなるもの。本当の両親に会うなんて一生できないものねー」「…ええ…、そうですねティミス様……」 アガーシヤの表情が曇った。何だ……、余りいい予感がしないな……。「どういうことなんだ? アガーシヤって名はナギストリアと一緒にいたときの、あの時の過去のアヤの名前だろ
last updateLast Updated : 2026-01-25
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第四章 59  竜王の里

 西大陸北中部、中立都市リチェスター東のクラーチ王国の領土を横切った南東端にある港町ラルカナポート。そこから船で東西の大陸よりは小さな魔大陸ロードスと呼ばれる中央大陸の港町ポートサヴィークへ、そして中央大陸の南端の港町レジーナから漸く東大陸の南西の港町バゼルへと到着する。その町で違う便に乗り換え、獣人国のある東大陸南端の海で分かたれた巨大な島の南大陸、港町ヴァンへ。そこから北東に行けば獣人国ヴァナ・フィール、南東へ険しい山脈をいくつも超えると竜王の里へと着く。普通なら数か月から半年以上の道のりらしい。当然俺達にそんな悠長な時間などない。結局マイホームでも稽古三昧生活だったしね。 のんびりと船旅や知らない土地を冒険したい気持ちもあるが、仕方ない。また今度だ。ということでこの世界ならどこでも知っているアリアに竜王のダカルーの転移魔法で一瞬で到着ということだ。 高い山脈に囲まれた隠れ里。ここに住む竜王の末裔達は、時折世界に現れる脅威、まあ強過ぎる魔物や、強力なスキルを持ちながら悪事を働く様な人族、魔王などもそれに含まれる、そういうのを排除する役目を担っているらしい。警察官みたいなものかなあ? 勇者のPTには毎回竜王の末裔が加わっているとか。 そしてこの世界の気候だが、東西に進む程寒くなる。中央大陸周辺は暑い。地球と緯度経度が逆になっているという様な感覚と言っていい。だから今いるこの東大陸《イーストラント》の南東の端は雪国、めっちゃ寒いと言うことだ。「全然気候の変化が苦にならないなんて。アリアさんの装備の性能、とんでもないね…」 アヤがそんなことを言った。「ええ、本来ならこの気温、吸い込む空気で肺が凍結するほどのレベルですね…」 ディードがそう言うくらい、気温はかなりのマイナス。だがほんのり肌寒いとわかる程度の感覚だ。アリアのくせにこういう所は本当に良い仕事をする。そして装備にそんな機能が付いていないアガシャ(長いし、言いにくいしネーミングに悪意を感じるのでそう呼ぶことにした)には、アリアが上に纏えるフード付きのマントの様なローブを着せてやっていた。これで大丈夫だろう。ダカルーは特別製の着物に、龍人族は体内に燃え盛る核を有している為、全く問題
last updateLast Updated : 2026-01-26
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