「おじさんは俺の金にほとんど手を付けないで俺を養って、十六まで育ててくれた。事情を知って手伝ってくれた人もいるし、晩ご飯を分けてくれた人もいる。結局、俺を生かしてくれたのは悪意より善意だったよ」「……その考えが変わらぬことを祈ろう」 ベガは呟いて、そっと俺の額に手を当てた。「生神に無意味だとも思えるが、どうか、深く沈む悪意に囚われぬよう、大地と風の祝福を」 すっと、何かが俺の中に入ってきた。 柔らかい風。俺の中にこびりついていた滓《おり》をそぎ落としてくれるかのような。「なるほど。では」 サーラも微笑して、ベガの手が離れた額に手を当てた。「どうか、微かに灯る善意の種に巡り合えるよう、大地と炎の祝福を」 今度は、暖かい温もり。冷え切った俺の身体に火を灯すような。「生神相手に何を、とも思うが、今この瞬間に我らができることは祝福しかなかった。乏しい力ではあるが、どうか大地と風と炎の力が貴方と共にあるように」「ありがとう」 俺の口角が自然に上がるのを感じた。「嬉しいよ」 ……そう。 二人とも、俺のことを心配してくれてるんだ。 祝福は、彼女らなりの応援と……気遣い。 俺は自分の奥底に眠る俺を知っている。執念深く、執拗で、徹底的に相手を叩き潰さなければ気が済まない……。 それをコントロールしなければならないと言ったのも、また、おじさんだった。 そう、封印ではなく、制御しろと言ってくれた。忌々しいまでに暗く根深く俺の中に潜む、俺、を、拒絶するのではなく、受け入れて、武器にしろと。方向性さえ間違えなければ、きっと、それは、お前の武器になると言ってくれた。 俺は、この世界に来てから、一つの不安があった。 生神となるのにこの武器は必要だったのか。世界を再生する神が、そんな破壊衝動を秘めた裏の顔を持っていていいのかと。 だけど、多分おじさんなら、言うだろう。 制御しろ、と。 潰す必要はない、それも確かにお前の一面なのだから。ただ、揮うべき場所を吟味し、揮うべき相手を選び、揮うべき時に、その相手を潰せるように、制御するんだと。 そう、俺は、人の内に潜む悪意が俺の中にもまた潜んでいることを知っている。 いつ誰に牙を剥こうかと考えている悪意を、あのよくわからない空間の役所の人間みたいなおっさんは知っていて俺を生神
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