All Chapters of 生神様になったらめっちゃ思い通りになるんですけど: Chapter 191 - Chapter 200

201 Chapters

第192話・神威/鑑定

 レーヴェが軽くプフェーアトさんの馬の方の背を叩く。「敵が同じことを繰り返すなら、こちらもまた繰り返す。そうだな、シンゴ?」「ああ。同じことをやらせてもらうだけだ」 M端末を取り出す。「待て、シンゴ!」 サーラの凛とした声が飛んだ。「仔馬だ!」 仔馬――。 俺は崩れ落ちているケンタウロスの子供たちを見た。「まず仔馬を! でないと何度でも魔獣ケンタウロスが出来上がる! 元から断たねばならない!」 そうだ、子供たちから黒い靄が吐き出されてそれがケンタウロスに……。 子供を使ったのか。恐らくは俺を殺す実験に。 ふざけるな。 人間、怒りを通り越すと頭の中が冷たくなるっておじさんは言ってたけど、まさにその通りだ。 俺の目はぽっかりと空いた洞窟に向けられた。 ……待ってやがれ。 絶対、潰してやる。「サーラ、魔獣の動きを止めることは?」「任せておけ」 サーラの手から生み出されたのは、炎の縄。「魔獣だろうと何であろうと……」 縄の端を掴んで、サーラは吠えた。「この緊縛からは、逃れられん!」「その間に……!」 子供は十人ほどいる。 【巻き戻し】は一回に一人しか使えない。何をされたか分からないが……それが分かれば……。 その時、端末に文字が浮かんだ。【神威/NEW】 こんな時に! でも、何かいい神威が出るかも知れない。そうすれば子供たちを助けられるかも……?【神威・鑑定:見たものをなんでも鑑定し、効力、ステータス、状態などを理解できる】 おい。おい。 こんな時に? こんな時に? こんな神威ぃぃ?! 何の役に立つんじゃこれはあ! この忙しい時にぃ! 文句が駄々洩れに出てくる。そりゃあそうだ、このタイミングだぞ、この状況を打破する何か強い神威が出るって期待するじゃないか! ……いや。 一応使ってみるか? 今まで意味がない神威が目覚めたことはなかったし。 試しに、魔獣ケンタウロスにやってみよう。「【鑑定】」 じっと見ると、ピントが魔獣ケンタウロスに合わせるようになり、端末と脳みそ同時に情報が流れ込んできた。 数値情報がほとんどだが、【状態】の所は文字だった。【状態:魔獣化/ケンタウロス固有臓器である魔力受容体を負の力で強化し、そこに負の感情を流し込み、肉体と精神を暴走・強化させられた状態。神威【巻き
last updateLast Updated : 2026-03-02
Read more

第193話・魔力受容体

【状態:負荷/幼ケンタウロスの固有臓器である魔力受容体を使用し、負の影響を与え続けて受容体を逆に放出体に変え、成長したケンタウロスの魔力受容体に送り込むことによって魔獣化させる邪気を放出する。これを治癒するには魔力受容体の【浄化】が必要となる】 おお。おおお! そこには、しっかりと、打開策があった。 なんだすごいぞ【鑑定】、打開策まで教えてくれるのか! 【浄化】なら、まとめて使える! 十人くらいなら一気だ! でも、何で【魔獣化】が【巻き戻し】でしか治せないのに、【負荷】が【浄化】で行けるんだ? 即座に返ってくる【鑑定】の回答。【状態・負荷は幼ケンタウロスに精神的負荷をかけることによって魔力を受け止める魔力受容体を暴走させるもので、受容体の【浄化】で治癒が可能だが、魔獣化は成長ケンタウロスの魔力受容体を肉体改造して負の放出体を受け止め肉体に行き渡らせるようにするため、改造される以前まで【巻き戻し】をする必要がある】 なるほど。つまり、敵対勢力は、プフェーアトさんたちを、肉体改造したってわけだな。 肉体改造と言えば聞こえばいいけど、実質人体実験。失敗したケンタウロスもいるだろう。 俺を殺すと言う、くだらない目的で。 滅びたいって言うなら一人で滅んでろ。他人を巻き込むな。 俺を殺したいって言うなら自分の手でやれ、他人を巻き込むな! 俺は端末を子供のケンタウロスたちに向けた。「【浄化】!」 黒い靄を漂わせながら狂気の笑みを浮かべていた子供たちが、俺の浄化の光を受けて倒れて行く。黒い靄は光に当たった瞬間、じゅうと音を立てて消えていく。「後は……」 俺は炎の縄から逃れようともがくケンタウロスに端末を向けた。「【巻き戻し】!」 魔獣化したケンタウロスから、黒い靄が溢れて出ていき、彼らの肉体にあると言う魔力受容体とやらが改造される前まで時間を巻き戻す。膨れ上がった筋肉は落ち着き、ゆっくりと元の大きさに戻っていく。 それを確認して、俺は【巻き戻し】を止めた。「これ……これは」 元に戻ったケンタウロスが、横倒しになる。「ふう」 一瞬額に流れた溢れた冷や汗を拭って、俺は息を吐いた。「仔馬たちはどうなった! 大丈夫か!」「大丈夫、負の感情を【浄化】した。もう黒い靄は吐き出さない」「どうなっているのだ? 私はてっきり彼らを一人ずつ巻き戻す
last updateLast Updated : 2026-03-03
Read more

第194話・負の感情

 その間に、サーラはケンタウロスから溢れ出たあの黒い靄を炎で焼き尽くす。「なるほどな。同じ種族の子供の負の感情を集めて、暴走させたのか」「そゆこと。魔力受容体って臓器を持っていたことも、敵対勢力がこの実験の材料として選んだ理由だろうけど」「許せんな」 サーラの声がまた低くなる。「天馬を封じるばかりかその守護を受ける者をここまで利用するとは……な。何が何でも殺してやる」「はいはい、守護獣は殺そう発言禁止。物騒だから」 端末を持ったまま、俺は奥を見る。「殺すがまずいなら、一掃するぞ。その間、子供たちはどうする?」「おれが守ろう」 ヤガリが戦斧を構えた。「負の感情とやらをあそこまで吐き出すと言うことは、相当ひどい目に遭わされたってことだ。洞窟の中に連れて行って思い出させるのも可哀想だ」「じゃあ、自在雲を置いてく」 俺たちは総がかりで子供たちと気付かないケンタウロスを自在雲に乗せた。「上空で、結界を張ってくれ」「わかった。……アウルムはどうする? ここに残して行った方がよくないだろうか」 確かに……お子様には見せたくないな……。「アウルム、この子たちが起きた時、慰めてあげられるか?」「うん。まかせて。ここでちゃんと待ってる。この子たちを捕まえようとする人たちから守るんだね?」「うん。任せるな」 俺たちは頷き合って、洞窟に入っていった。 洞窟は、身体の大きなケンタウロスでも余裕で歩けるような広さだった。ケンタウロスの為の神殿なのだから当然なんだけど。 そこを、プフェーアトさんが先頭を切って歩いていき、勘の鋭いミクンとコトラが横に並んで歩く。 レーヴェとグライフが後ろを守り、俺、サーラ、ブランが真ん中を歩く。 プフェーアトさんが一歩一歩踏みしめるように歩く。「神殿を……ここまで汚すなんて……」 怒ってる。怒髪天。そりゃそうか。どれくらい前かは分からないけれど、プフェーアトさんは昔ここに……神聖なる場所だったはずのここに来たはず。それがこうなっていれば、まあ、怒るわな。「気配はするか?」「ええ。この奥です。祭壇まで一本道。なのにあちこちに横穴が空いている」 言われて気付いた。無窮山脈に行ったからそう言うものかと思ってたけど、自然洞窟らしいここに、あからさまに人の手が入った横穴が掘られている。「ここに閉
last updateLast Updated : 2026-03-03
Read more

第195話・実験室

 何だか血の臭いがぷんぷんする、と思ったら、するわけだ。 黙々と切り刻む男によって限界まで切り刻まれたケンタウロスの肉体。 クリスタルらしい透明容器の中、たっぷり培養液に浸された臓器……多分魔力受容体がずらぁり。 解剖室だね、ここ。 実験室でもあるね、ここ。 魔力受容体とかの研究室だったりとかもするね、ここ。「な、なんだ! 部外者は立ち入ることはできないはずなのに!」 この世界でも実験の時は白衣なのか、白い服を着た魔物が、悲鳴を上げた。 背後から感じる圧倒的な熱気。「あの臓器は生きていると言えるか」 ギリギリの声に、端末を向け、【再生】や【巻き戻し】を試すが、反応なし。「神側の判断からすると、臓器だけでは生きているとは言えないらしい」「まさか、生神……!」「はい当たり。てなわけで、サーラ、好きなように」 俺の横を熱風が駆け抜けた。 魔物は悲鳴も残さず、魔力受容体と共に蒸発する。 一瞬で温度は下がり、何もない部屋が出来上がった。「ふう」 こめかみに指を当てて、深呼吸しようとするサーラ。「こういうのは、片っ端から焼いていっていいから」「生き残らせるのはケンタウロスと天馬だけでいい、という話で大丈夫か?」「ああ。もう遠慮も容赦もなく焼いちゃって」 本道に戻ると、待っていた全員が複雑な顔をした。「どうしたの」「ろくでもないものを見たようだな。アウルムを置いてきてよかった」 レーヴェが溜め息をつく。「え、見たの」「見てはいないが……あそこまで濃い、しかも新鮮な血の臭いがすれば、大体予想がつく」「ああ……そうか」 腕に鼻を近付けて臭いをかぐと、部屋の中をのぞいただけなのにぷんぷんする血の臭い。「プフェーアト、子供たちはまださらわれているか?」「他部族だから正確な人数は分からないが、子供が減り続けているとはいえあれだけしかいないと言うことはない」「じゃあまだこの中にいるんだな」「輸送されていない限りは」「手分けして部屋を探すか? それとも先に天馬を?」「プフェーアト、この神殿に他の出入り口はある?」「ない。……、とは、言えない。この神殿をここまで汚した連中が、他の出入り口を作らないとは誰も言えまい」「サーラ」「なんだ」「サーラは温度を感じることはできる?」「ああ。だが、それが?」「この神殿の中に、
last updateLast Updated : 2026-03-04
Read more

第196話・逃げさないように

 一瞬、熱風が洞窟を駆け抜けて、サーラの元へ戻る。「……シンゴ、端末を貸してくれるか」「あ、うん、はい」 サーラは受け取った端末に手を当てた。「でもサーラ、サーラはM端末使えるの?」「使えない。これは生神用の神具だ。だが、情報を送り込むことはできる」 端末の画面に図面が展開した。 太い一本の道と、そこから横に開かれた幾つもの通路。通路は迷路の様を成しているけど、反対側に伸びているもう一つの出入り口へへと収縮している。光点があちこちに灯っている。「熱風で探った道はこのとおり、光点は生物の体温の場所だ」 光点は動くものと動かないものがある。動かないものは数個の広い場所に固まっていて、動くものはあちこちを移動して……まずいな。もう一つの出入り口に向かっている。「サーラ。もう一つの出入り口を塞ぐことは」「炎水を置いておけばいいか?」「十分」もう一つの出入り口の外に膨大で広大な熱源が現れた。「……サーラ、やりすぎ」「絶対逃げられんように」「気持ちは分かるけど」「草原には被害は与えない、安心しろ」 安心していいんだろうか、それは。 俺は精神を集中して、ヤガリに意識を飛ばした。(……なんだ? 何かが……)(俺だヤガリ)(シンゴ?! ……ああ、サーラが言っていた心話か?)(そうだ。神殿から抜ける後付けの出入り口は塞いだから、逃げる奴はそっちから逃げるだろう。だから、雲で出入り口を塞いでほしい)(分かった。任せろ) これで何者もここから逃げることはできない。「後は、この光点の塊に近付くヤツを潰して行けばいいか」「二手に分かれるか? 単独行動の光点は結構多いぞ。ケンタウロスを人質に取られれば厄介だ」 レーヴェの提案に、サーラが頷く。「その方がいいな。天馬は痩せても枯れても守護獣だ、簡単に殺されることはないだろうが、ケンタウロスを連れ去られて実験を続けさせては意味がない。この実験はこの洞窟で潰さなければ」 と、言うわけで。 端末を持つ俺と、温度を感じ取れるサーラで別れて行動することになった。 サーラとレーヴェとブランとミクン、俺とプフェーアトとコトラとグライフ。右と左に分かれていく。「申し訳ない、生神様」 プフェーアトが暗い顔で言う。「オレたちがやらなければならないことなのに……」「いや、これをやっている
last updateLast Updated : 2026-03-04
Read more

第197話・怒り

 ケンタウロスの子供たちが怯えた目でこっちを見ている。狭い部屋に押し込められ、ほとんど光のない場所で怯えさせることによって負の感情を増させるんだろう。「無事か!」 入ってきたプフェーアトを見て、子供たちの顔にパッと生気が戻る。「プラダリーアのプフェーアトだ! 助けに来た!」 わあ、と笑顔が開く。「先に……この負の力を【浄化】しちまわないとな」 俺は端末を構えた。子供たちは怯えて逃げようとするが、プフェーアトが大丈夫、と宥めた。「この方は生神様だ」「生神様?」「ああ。俺も捕まって人間を襲わされたが、生神様が戻してくれた。大丈夫だ」「【浄化】!」 柔らかい光に部屋の内部が浮かび上がる。あちこちに血の跡。子供たちには切り傷や打ち身がはっきりと刻まれている。恐らくは殺さない程度に傷つけられたんだろう。神威【再生】を使った後に魔法【回復】で怪我を治す。「うわあ……」 子供たちが感動の目で俺を見上げた。「大丈夫、だったろ?」 俺の笑顔に、子供たちを笑顔を戻した。 と、そこに飛び込んできたのは。「ガキども、命令を……!」 魔物が飛び込んできた。 ちょうど俺と目が合う。「ガキ……ども……?」「お前がこの子たちを痛めつけたのか」 俺は笑顔で言った。 生前、高校時代、同級生が、俺の笑顔が怖い、と言ったことがあった。 もちろん普通に笑うのは全然問題ないらしいが、俺はキレた時に笑う傾向があるらしい。その笑顔が下手なヤクザより恐ろしい、と同級生は言っていた。おじさんが亡くなって家と財産を継いだ俺に金を要求した不良共を叩きのめした時だったか。俺は、笑いながら、不良共を足蹴にしていたらしい。その笑顔がとことん、怖かった、と。 多分、今の俺は、その時と同じ……いや、それ以上の笑顔を浮かべている。「え、な、なんだ」「痛めつけた、んだな?」 胸倉をつかんで壁に叩きつけ、壁を背によろめく人型をした魔物の顔面の横にガンっと拳を叩きつけ。「なんで、そんなことをした?」「け……研究のためだ! 生神を殺すだけじゃなくても、ケンタウロスは興味深い実験体だから、色々探ってみたくなるのも当然だろう!」「思わないね」 ケンタウロスの子供たちの視線が俺の背中に刺さる。「――俺を殺そうとするなら自分の力でかかってこい。でないと――」
last updateLast Updated : 2026-03-05
Read more

第198話・なれっこない

 俺はマザー・テレサやガンジー、キング牧師にはなれっこない。 たった一つ、こういう時におじさんが教えてくれたのは、『不要な暴力は揮うな』、だった。 こっちからは絶対に喧嘩を売るんじゃない、あっちが喧嘩を売って来て、それが回避不可能となって、相手に一発殴られた後だ。暴力と言う力は揮い時を誤れば自分に責任を押し付けられる、と。 小学校の時親なしと俺をからかってきた同級生や、金を要求してきた不良。こっちを弱いと思って喧嘩を売ってきた相手は、容赦なしで叩きのめした。 もちろん喧嘩を売られたからだけで叩きのめしたわけじゃない。その前に陰湿ないじめをしてきた連中だ。無視、仲間外れ、嫌がらせ。ゲーム感覚で行われたそれを耐えきって、俺は、反撃のタイミングを伺い、確実に相手が悪いと言われる証拠を揃えてから喧嘩を買って、勝ってきた。 だから、同級生も医者も警察も、あっちが悪いと言うしかなかった。敢えて言うなら過剰防衛だけど、相手が俺にやらかしたこと、証拠は全部取ってたし。 そして、目の前のこいつも。 俺にケンタウロスの実験体と言う形で喧嘩を売ってきた。臓器だけ生き残ったケンタウロスの再生が叶わないという一撃を受けた。 なら。 俺の攻撃のスイッチを押したのはこいつらだ。「他に、何をした?」「けん、研究を」「どんな?」「何も! 何も、してない! 研究しただけだ!」「お前の研究ってのは、子供を怯えさせたり脅したりして負の感情を引き出して、人間を解剖して魔獣化して俺に襲わせることか?」「ひぃぃぃぃっ」 ぐ、と拳を握り。 魔物の腹に叩き込む。「ぐ、ぐはっ! ぐほっ!」 もう一発。今度は顔面に。「ひぃぃ……」 今度は鼻血を垂らしながら、魔物は呻く。「たす、助けて……」「あの子たちも、きっとお前に、同じこと言ったよね?」 口角が上がっているのは自分でもわかる。分かるんだが抑えられない。「その時、お前は、どうしたんだい?」「ひ、ひ……」「そうだよな? なら、お前も同じ目に遭って当然だよな?」 胸倉をつかみ上げ、俺は笑う。「ご、めんな……」「ごめんで済んだら生神はいらないよな?」「生神様」 軽く肩を叩かれ、びくっと俺の身体が震えた。口角が下がる。「いいです、オレたちの為に怒ってくださったこと、感謝しておりま
last updateLast Updated : 2026-03-05
Read more

第199話・灰色虎の仔

「しゅ、守護獣です!」 研究者の魔物は悲鳴を上げた。「ケンタウロスの研究が一通り終わったので、今度は、守護獣の実験をすると!」「なっ」 プフェーアトが今度は2メートルを超える高さまで魔物の皆蔵を掴んで持ち上げた。「我らが守護獣を、実験に、使うと?」「は、はい! 封印し、いい具合まで弱って来たので、色々調査を始めようと!」「あ~あ」 俺は溜め息をついた。「そいつらはサーラに殺さ……もとい、締め上げられるな」 こんな近い場所まで来てしまえば、同じ守護獣である天馬の声を聞き漏らすサーラじゃない。きっとその声を聞く。サーラが乗りこめば……その場は灼熱地獄となるだろう。レーヴェやミクンも止めやしないだろう。 グイ、と炎の縄を引いて、悲鳴を上げる研究者を引きずる。「どうする? 外で待つ?」「外?」「十人ほどの子供と、大人……成人してるかは分からないけど、大人が一人、いる。俺の仲間が出入り口を塞いでいる。この神殿の中は把握してるから、君たちを戻すことができる」 子供たちは顔を見合わせた。「僕たち、大人じゃないから、足手まといになるよね」「……ん、まあな」 こういう時口先だけの慰めを言っても意味がないのは知っている。そして、この子たちは現実を受け止めることができると思う。「コトラ」「ぅな?」 それまで床に転がされた魔物を軽く爪で引っかいたり鉤爪に引っ掛けたりしていたコトラとグライフがこっちを見た。「この子たちをヤガリに預けて戻ってくる。出来るか?」「ぅな!」「ぐぅる……」「次に子供が見つかった時はグライフに頼むよ」「ぐぅるる!」 軽く魔物を蹴飛ばして悲鳴をあげさせて、グライフはコトラを見た。 コトラとグライフ、どっちが強そうに見えるか。 どうしたって足の太い子猫と成獣したグリフォン、見た目ではグライフに軍配が上がる。「大丈夫だよ」 不安そうな顔をした子供たちに、俺は笑った。「コトラは灰色虎だから。そこらの魔物なんて一掃できる。君たちを守りながら入口へ戻るなんて簡単な事」「灰色虎?」「山の獣?」「そう。山の聖獣。大きくないから弱そうに見えるけど、強いよ?」「大丈夫だ、外で仲間と待っていてくれ。オレたちはこんなふざけたことをした連中をとっちめなきゃならないからな」 プフェーアトの笑顔がダメ押しだったんだろう、子
last updateLast Updated : 2026-03-06
Read more

第200話・守護獣を助けに

「生神様が連れているからただの獣ではないとは思っていたが……」「俺の神子でもあるから、神具でも持ち出さない限りコトラを倒せる敵はいないよ」「空の獣がいささか気にしているように見えるのだが」「だからお前のことはちゃんと信用してるって、グライフ。神子契約してないからって拗ねるなよ」 鷲の頭を撫でてやる。「信用してるから、お前に残ってもらったんだ」「ぐる?」「ここにいるのは大地と風の守護獣だ。空と風の神獣であるお前とは近しいだろ?」「ぐる」「多分守護獣は弱っている。封印されて、こいつらが研究に使おうかって程弱ってるって言ってたろ?」 研究魔物を足で転がしながら俺は言う。「風と空の神獣のお前なら、シンクロしやすいだろう。封印を解きやすいかもしれない」「ぐる!」 任せろ! と言わんばかりにグライフは胸を張った。 本当は神子契約したいんだけど、アウルムが真っ当に育ったら、その証として彼女に戻してやりたいと言う気持ちもある。だから主従契約は結んでいるけど神子契約を結んでいないと言うのがグライフの中途半端な立場。 俺は炎の縄をプフェーアトに渡し。端末の画面を見た。 本道を通る子供たちとコトラの周りに光点はない。サーラたちの光点がもう一つの光点が多い所に向かっていく。「こっち側に来る奴はないな」「仔馬を取り返されたことに気付いたのだろう。まだ捕えている仔馬や大人を連れて逃げようとしてるんだろうな」「そこでサーラに潰される、と」 サーラたちの光点は、光点が集まっている場所のすぐ傍から動かない。そして、光点が数体ずつ現れては、消えて行ったりサーラの光点の傍で動かなくなったり。多分、そこにいるケンタウロスを連れ出そうとやってくる魔物たちを陰で待ち伏せて、一体ずつ捕まえて締め上げてるんだろう。サーラのしゅうね……もとい、怒り……もとい、もとい……ダメだ、俺の少ない語彙力では今のサーラの感情を表現できない。「じゃあ、守護獣の方に行こう。きっと、封印されてるっていう守護獣も持ち出されようとする可能性がある」「封じられた守護獣が、無理やり移動させられたらどうなるか……」「移動させたらダメ、アウト」 俺はヘルプで調べて首を振った。「守護獣が封印されるのは、自分の意思と強要の二種類あってね。その地の龍脈……って通じた
last updateLast Updated : 2026-03-06
Read more

第201話・殴り込み

 聖域に繋がるであろう入り口には、風が吹き荒れていた。 風の向こうからは怒鳴り声が聞こえてくる。「この風は」「本来は、気配を受け止められるようになったケンタウロスを清めて通す聖なる風が吹いていた」 プフェーアトは忌々しそうな声で言った。「今は……気配ではなく悲鳴が聞こえる」「悲鳴?」「近寄るな、触れるな、そう言う……声だ」「魔物どもが天馬をひどい目に遭わせている。そう考えていいか?」「ああ。中の連中は一網打尽にして蹴り飛ばしていいか?」「殺すなよ?」 俺はニッと笑った。「サーラがキレてるから。多分守護獣として属性は違うけど仲は良かったんだろうな。アウルムにキレた時もそうだけど、彼女がキレたら止められないぞ。力づくで抑えることは出来るかもだけど、俺、サーラの恨み買いたくないもん」「確実にひどい目に遭わされると言うんだな?」「簡単には殺されないだろうなあ。サーラは炎。キレたらだーれも止められない。事実、さっきの実験室も一瞬で蒸発したし。いや、一瞬で終わらせないだろうな。いたぶるだけいたぶるね。ミディアムレアに焼き上げて美味しくいただくだろう」「では、その前に蹴らせてもらうぞ」 俺が頷くと、プフェーアトは真っ先に風に突っ込んで行った。俺も続く。 辿り着いた部屋は、風が吹くほど広い部屋だった。通風孔でもあるのかと思ったが、そんなものはない。広い部屋のまん真ん中に一つの大きな土山があって、魔物どもがそこに群がっている。「急げ! 守護獣は連れ出さないと!」「ケンタウロスは?」「ソルドたちが向かった!」「くそっ、絶対ここに辿り着かないと思っていたのに!」「生神がもう入り込んでいるぞ!」「急げ! 移動だ!」  ががんっ! 岩を叩き割る音に、移動作業して気付かなかった魔物たちが飛び上がって驚き、恐る恐るこちらを向いた。「い、生神!」「グリフォンもいるぞ!」「ケンタウロスまで!」「焦るな! よく見ろ!」 怯えた顔を見せた魔物たちを一喝したのは、一番奥にいる大柄な魔物だった。「生神とケンタウロスとグリフォン、だけ、しかいない! グリフォンはいい実験材料だし、ケンタウロスを連れて行くことも、生神を捕えて実験に使うこともできるだろうが! そうすればこっちは大出世! 神様直々に褒美が与えられ
last updateLast Updated : 2026-03-07
Read more
PREV
1
...
161718192021
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status