一花と柊馬は一度しか会ったことがないので、互いに相手のことを何とも思っていないというのは一花も分かっている。柊馬が飛行機で十時間以上もかけてやって来たのは、ただ彼が政略結婚相手である彼女を気にかけ、面子を保つためにしてくれたことなのだ。それでも一花は非常に感動していた。柊馬は視界の隅で、一花が少し距離感をとっているような表情をしているのをとらえた。そして昨晩のことを思い返した。彼女が突然、自分にメッセージを送ってきたが、どう返事をすればいいのか分からなかった。柊馬は今まで女性と交流したことなどほとんどなかったし、政略結婚の相手である彼女のこともあまり知らない。秘書の湊に尋ねると、女性のほうから連絡してきた場合は、つまり「あなたに会いたい」という意味だと教えられた。柊馬は昔から何をするのもストレートできびきびと動くタイプだった。一花が会いたいと思っているのであれば、いっそ会いに行くか、と考えたのだ。それで彼は仕事を終わらせるとすぐにA国へ向かった。柊馬と一花が声を抑えて話している様子を、近くにあるテーブルに座っている人たちはみんな耳をそばだてて聞いていた。直接二人のほうを見ることはなかったが、みんな興味津々だった。西園寺家の一花と伊集院柊馬は一体どんな関係なのだろうか?実はプライベートな付き合いがあったのか?しかし長い間、伊集院柊馬が誰か特定の女性と距離を縮めているという噂など、誰も聞いたことはない。「伊集院社長は一花さんとはお知り合いだったのですか?」この時ついに、対面に座っていた萌絵が我慢できずにストレートに柊馬を見て尋ねた。柊馬は人を寄せつけないオーラを放っているので、萌絵はそう尋ねる時、非常に不安を感じていた。しかし、どうしても悔しくて仕方なかったのだ。二年前、萌絵は柊馬に一度会う機会を得た。遠くから彼を見ただけで、それから彼以外の男には心を動かされなくなってしまった。萌絵はどんな手を使ってでも、伊集院家と関りを持ちたいと思っていた。あの一花と家の購入の件で争った時もそうだ……実は、一花が購入したあの家の向かい側はステートメントタワーで、つまり柊馬のオフィスビルだったのだ。しかし、一花は一切何も知らず、ただ偶然遺産を相続できた隠し子であることが分かり、一夜にして富豪になっただけなの
Read more