All Chapters of 偽物クズ夫に別れを告げ、スパダリと政略結婚します: Chapter 31 - Chapter 40

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第31話

一花と柊馬は一度しか会ったことがないので、互いに相手のことを何とも思っていないというのは一花も分かっている。柊馬が飛行機で十時間以上もかけてやって来たのは、ただ彼が政略結婚相手である彼女を気にかけ、面子を保つためにしてくれたことなのだ。それでも一花は非常に感動していた。柊馬は視界の隅で、一花が少し距離感をとっているような表情をしているのをとらえた。そして昨晩のことを思い返した。彼女が突然、自分にメッセージを送ってきたが、どう返事をすればいいのか分からなかった。柊馬は今まで女性と交流したことなどほとんどなかったし、政略結婚の相手である彼女のこともあまり知らない。秘書の湊に尋ねると、女性のほうから連絡してきた場合は、つまり「あなたに会いたい」という意味だと教えられた。柊馬は昔から何をするのもストレートできびきびと動くタイプだった。一花が会いたいと思っているのであれば、いっそ会いに行くか、と考えたのだ。それで彼は仕事を終わらせるとすぐにA国へ向かった。柊馬と一花が声を抑えて話している様子を、近くにあるテーブルに座っている人たちはみんな耳をそばだてて聞いていた。直接二人のほうを見ることはなかったが、みんな興味津々だった。西園寺家の一花と伊集院柊馬は一体どんな関係なのだろうか?実はプライベートな付き合いがあったのか?しかし長い間、伊集院柊馬が誰か特定の女性と距離を縮めているという噂など、誰も聞いたことはない。「伊集院社長は一花さんとはお知り合いだったのですか?」この時ついに、対面に座っていた萌絵が我慢できずにストレートに柊馬を見て尋ねた。柊馬は人を寄せつけないオーラを放っているので、萌絵はそう尋ねる時、非常に不安を感じていた。しかし、どうしても悔しくて仕方なかったのだ。二年前、萌絵は柊馬に一度会う機会を得た。遠くから彼を見ただけで、それから彼以外の男には心を動かされなくなってしまった。萌絵はどんな手を使ってでも、伊集院家と関りを持ちたいと思っていた。あの一花と家の購入の件で争った時もそうだ……実は、一花が購入したあの家の向かい側はステートメントタワーで、つまり柊馬のオフィスビルだったのだ。しかし、一花は一切何も知らず、ただ偶然遺産を相続できた隠し子であることが分かり、一夜にして富豪になっただけなの
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第32話

一花は頷いた。パーティーが終わると、侑李が一花をホテルまで送ってくれた。パーティーの場で起きたことを彼はすでに耳にしていた。伊集院柊馬の突然の登場には、侑李もかなり驚いていた。「今日のスピーチは本当に素晴らしかったよ。あの場にいた君に意見のある人たちを黙らせることができたんじゃないかな。だけど、僕も君をしっかり見てあげることができなくて、ごめんね、一花さん……」侑李のその声からは一花を高く評価するとともに、自責のようなものも感じられた。一花はすぐに彼を気遣って言った。「ううん、今夜のパーティーであまりミスをしなかったのは、侑李さんのおかげよ。それに、あなたのお友達も私が困っている時に助けてくれたし」「友達?」それを聞いて侑李は少し驚いた。一花は言った。「あの、二階堂茉白さん」そう言う時、一花は意味深に目を瞬かせた。恐らく女の勘というものだろう、一花は茉白と侑李の間には何かあると思った。「ああ、彼女か、あの子は性格的にまあまあかな、だけど、僕と彼女は友達とは言えないよ」侑李は一度咳払いした。明らかに茉白の話題を避けたいようだった。一花も他人が話したくないプライベートな事を深く掘り下げて聞く趣味はないので、それ以上は何も聞かなかった。侑李は話題を変えた。「今日、普段このようなパーティーやイベントには出席しない伊集院柊馬がわざわざここへ来たのは、ほぼ一花さんのためだろうね。どうやら彼は君に好感を持っているみたいだ。二人の結婚はもうほとんど決まったも同然だね」「結婚はもちろんするつもり、だけど好感があるかどうかは分からないな」これは政略結婚なのだから、互いの感情云々を語らないほうが身のためだ。それに、男から好感を持たれる経験がどのようなものなのか一花は身に染みて知っている。慶も最初は彼女に対して、とても良くしてくれていた。一花は部屋に戻ると服を着替えた。舞踏会に出ることを考え、彼女は真っ赤なウエストラインがくっきりと出る裾がひらひらと舞うマーメイドドレスを選んだ。一花はダンスが得意ではないが、後で柊馬に笑われないように、携帯でダンス動画を見つけ、少しの間それを見て練習していた。一花はバランス感覚が優れていて、社交ダンスは比較的簡単なほうだったので、彼女が何度か練習すると、だいぶ形になってきた。そ
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第33話

ちょうどウェイターとボディガードが騒ぎを聞きつけてやって来て、二人を引き離した。萌絵も倒れそうだったが、近くにいた人が彼女の体を支えた。今回、侑李もここへ来ていた。彼は一花が何かトラブルに巻き込まれないか心配して、好きではない舞踏会に来たのだ。侑李はすぐにジャケットを脱いで一花に羽織らせると、振り向いて怒りのこもった眼差しで萌絵を睨んだ。「二階堂さん、ここは二階堂家主催のパーティーではないだろ。わがままも相手をよく見てからにするんだな。一花さんにこんな仕打ちをするとは、二階堂家は西園寺家と敵対したいのか?」「……西園寺侑李ね、これは私とその女の問題で、あんたには関係ないでしょ。西園寺家とも……関係ないでしょ!そこをどきなさいよ!」萌絵は顔を真っ赤にさせていた。一花の周りに次々と人が集まってきて庇う様子を見ると、萌絵は怒りが込み上げたが、無力も感じていた。それに、後からどんどん怖くなってきてしまい、喚きながらそのまま泣き出してしまった。傍にいた友人が急いで萌絵を慰めた。「萌絵、あなたは賢い子なんだから状況をしっかり見極められるでしょ、こんな小さな事で西園寺家を敵に回したら……」「そうだよ、それに、伊集院さんもここにいるかも……」柊馬の話題が出てしまうと、萌絵はさらに悔しくなり、一花を生きたまま飲み込んでしまいたいほど恨みがましそうな目つきで睨んでいた。会場内は薄暗く、二人の騒動は暗いダンスホールではあまり周囲の注目を集めてはいなかった。それと対照的に、この時ホールの一部が騒がしくなっていた。みんなの目は中央にいる二人に釘付けになっていた。ほのかな明りがまるで蛍のように飛び交い、キラキラと輝いている。ホール中央で踊る男と女のダンスステップは落ち着いて優雅だ。お似合いの二人の姿が光と影の中を行き交い、運命のカップルのようだった。一花は一目でダンスホール中央にいるその男が柊馬だと分かった。「伊集院柊馬さんだわ……」萌絵と一緒にいた女友達も重要な点に気づき、彼女たちは驚きの声をあげて、無意識に一花のほうを見た。柊馬が一花を庇っていたから、一花のダンスパートナーはきっと柊馬なのだと思っていたのだ。萌絵はステージのほうへ視線を向けて、突然嘲笑するように鼻を鳴らした。「あんた、どうやら私が誤解してたみたい。柊馬
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第34話

一花は慶からのメッセージを一目だけ見て、そのまま閉じた。今や慶とは何も話すことなどない。そして、三本のうちの残り一本は柊馬からの電話だった。たった一回だけかけてきただけだし、留守電も入っていない。一花は画面に表示されている彼の名前を二秒ほど見つめ、かけ直そうとしたが、すぐに指を携帯から離した。必要ない。契約の件はこのまま進めていけばいい。あまり余計な連絡をするのは逆にわざとらしく感じる。過去、偽物の証明書で続いていた「結婚」を経験した彼女は、政略結婚で得られる利益だけ考え、感情は切り離すべきだと分かっていた。伊集院柊馬は優秀な人物で一花も彼を尊敬している。しかし、彼のプライベートな交友関係には干渉しないし、気にしたりしない。一花は携帯を閉じ、ベッドに横たわった。窓の外の月光がレースカーテンから部屋に降り注いでいた。彼女は目を閉じ、眠りについた。そして日が昇ると、彼女はスーツケースを持って軽快な足取りでホテルを出た。帰国してからやるべき事はまだまだ多い。一花がホテルを離れる時、スタッフが彼女にきれいに包まれたギフトボックスを持ってきた。「西園寺様、こちらは伊集院様よりお預かりしたものです。彼は朝早くに出られましたので、西園寺様の邪魔にならないようにと私どもに預けて行かれたのです」一花はそのボックスをちらりと見た。それは手のひらサイズの四角い箱で、綺麗な花模様のラッピングにリボンがついていた。それを開けてみると、黒のリングケースの中にはピジョンブラッドのルビーの指輪が入っていた。ルビーは楕円形でキラキラと輝いていた。ルビーの周りを小さなダイヤで囲む形のシンプルなデザインだったが、それでもかなり豪華だった。侑李はその指輪を見て、思わず感嘆の声をもらした。「一花さん、このルビーはピジョンブラッドだ。この色はなかなか手に入らないよ」「……」一花は宝石にはあまり詳しくないが、ここまで鮮やかで深みのある赤色はかなり高価なものであるだけでなく、希少価値の高いものだろうと分かる。しかし、このようなプレゼントを政略結婚の相手に贈るには、高価すぎる。「これは受け取れません。高すぎます」一花は侑李をちらりと見て、それをスタッフに返そうとした。それを侑李がすぐさま止めた。「伊集院社長からの気持ちなんだ、受け取らな
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第35話

西園寺グループと提携したいと思っても、慶たちにその資格がないのは明らかだった。しかし、西園寺グループに新たな変化があれば、もしかするとチャンスが生まれるかもしれない。特に後継者が変わった場合だ。慶は立ち止まり、携帯で何かを調べだした。西園寺家の令嬢に関して、今はネット上には一切の情報が出ていない。彼女は非常に謎に包まれた女性で、国内でその姿はお披露目されていない。それで写真などもまったく出回っていない。この時、慶は少し前のあの同級生グループのことを思い出した。しかし、あのチャット記録を遡って探し続けてみたが、写真は保存しておらず、すでに期限が切れて見られなかった。一花はボディガードに守られながら、VIPルートから駐車場へ行き、侑李とは別車両でその場を離れた。あの記者たちはすでに侑李によって事前に追い払われていて、一花の乗る車が出てきた時には、駐車場には一人もいなかった。しかし突然、一花の乗るSUVが出口の所で一旦停止した。ある一台の車が前方に車をまわし、彼らの邪魔をしてきたのだ。運転手がクラクションを鳴らすと、一花の隣にいたボディガードも姿勢を正した。前方のその車からある男が降りてきた。一花は少し眠たかったが、誰かが近づいてきたのに気づいてすぐに頭がはっきりとした。その男とは慶だった。なぜ彼がこんなところに?コンコン。慶が一花側の窓をノックした。彼は会釈し、丁寧な口調で話し始めた。「西園寺お嬢様、はじめまして。申し訳ございません、少しお時間をいただけないでしょうか?」一花が口を開く前に、車にいるボディガードはすでに怒りを爆発させ、すぐに車から降りて慶をとめた。「お前は誰だ、何がしたい?誰がそこに車を停めていいと言った?」ボディガードは体格が良く、気性が荒かった。しかし、慶はそれでも相変わらず落ち着いた様子で、顔色ひとつ変えることはなかった。「西園寺グループのご高名はかねてから伺っております。昔からずっと提携をご考慮いただけないかと思っていました。ちょうど西園寺家のご令嬢がここにいると伺い、ぜひお会いしたいと思いまして、少しの時間で構いませんので、お話させていただけないでしょうか?」「うちのお嬢様と少しでもいいから話がしたいという輩は山のようにいるんだ。お前は何様のつもりだ?」
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第36話

しかし、慶はすぐに疑い始めた。その声は確かに一花に似ているが、相手の声はもっと透き通るような感じで、口調も冷たかった。彼女の声に聞こえたのは、きっと最近一花が返事をくれないことを考えすぎているせいだったのだろう。それに、短い言葉だったから、一花の声だと勘違いしてしまっただけだ。慶は頭の中でそのような考えを巡らせ、気づいた時には、ボディガードはすでに名刺を受け取って車に戻っていた。相手もこれ以上は慶のことを構うつもりはないらしく、車の向きを変えてそのまま去っていった。慶は去っていく車を見つめていて、暫くの間呆然としていた。車内で、ボディガードが名刺を一花に渡し、丁寧な口調で尋ねた。「お嬢様、これは黒崎グループの社長の名刺です」西園寺家が提携先に選ぶのは、ほとんどがトップ企業と呼ばれる会社ばかりだ。黒崎グループのようなレベルの会社には選ばれる資格などないだろう?一花はその名刺に目もくれることはなく、冷ややかな目つきで隣にいた秘書に言いつけた。「この名刺に書かれている会社を西園寺グループのブラックリストに載せておいて。一生提携はしないわ」「かしこまりました」秘書はすぐに応えた。夜、一花は再び慶からメッセージを受け取った。彼がかけた電話には一花が出ないので、彼は何通かメッセージを送って彼女にいつ帰ってくるのか尋ねた。しかし、既読はつくものの、返事は相変わらず返ってこない。慶は続けて何日も一花と連絡がとれなくなってやっと、そわそわと落ち着かなくなってきた。彼はそう簡単に妥協したくなかったが、会社にとって一花の存在が欠けてしまうと、状況が苦しくなる。慶が家に帰ると、綾芽はすぐに彼の顔色が悪いことに気づいた。「どうしたの?会社の状況、やっぱり良くない?」綾芽は優しい声で尋ね、慶の気持ちをなだめようと思ったが、その時慶のほうが彼女を避けて、そのまま一花の部屋へ行ってしまった。そして慶が一花の部屋のドアを勢いよく開けると、その中は空っぽだった。ベッドはまるで今まで誰も住んでいなかったかのように整えられ、それだけでなく、クローゼットやドレッサーなど端から端まできれいさっぱりになっていた。この部屋は、一度も誰かが暮らしたことなどないかのようだった。「そんなバカな」慶は完全に呆然とその場に立ち尽くしていた。
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第37話

綾芽は颯太のことを可哀想に思うと同時に怒りもふつふつと込み上げてきていた。目を赤くさせ、すぐに涙を流し始め、ぎろりと慶を睨みつけると息子を抱いて部屋に戻った。この瞬間、慶はやっと夢から覚めたかのように、ハッと自分の行いに気づいた。「綾芽!」しかし、彼は数歩も歩かずにまた立ち止まった。この時の慶は綾芽を追いかける気はなくなり、振り返って使用人に詰問するように尋ねた。一花は一体いつ引っ越してしまったのだろうか。どうして自分はそれに気づかなかったのか。使用人たちは戦々恐々として、実際に起きたことを伝えるしかなかった。一花は数日前にはすでに荷物を片付けて引っ越してしまったのだ。しかし、慶は仕事がとても忙しいから伝える必要はないと使用人たちに言いつけていったらしい。数日前には引っ越していたことを知り、慶の心は沈んだ。それは、綾芽が家に来てからそんなに経っていない時に起きた。一花はやはり綾芽が一緒に住むことになったせいで怒っているわけだ。綾芽は息子を抱いたまま部屋に戻ると、一時間ほど泣いていた。しかし、慶が彼女をなだめに来ることはなかった。颯太もかなり悲しんでいて、綾芽を抱きしめて尋ねた。「パパは僕たちのこといらなくなったの?あの悪い女のせいで、僕叩かれたんだよ……」「颯太はいい子だから、パパはそんなふうに思ったりしないわ……」綾芽はこのように息子を慰めてはいたが、彼女自身も慶が何を考えているのか分からなかった。慶はいつもただ一花を利用するだけだと言っていたくせに、毎回あの女のせいで心を乱し、あのように気性を荒くさせる!もしかすると、慶は本気で一花に心を奪われ始めたのではないだろうか。「だけど、さっきのパパ、すっごく怖かったよ!」颯太は慶に頬を打たれた時のことを思い出すと、鼻の奥がツンとしてきて、悲しそうに口をへの字にさせると、また泣き出しそうになった。綾芽はすぐに息子の頬のキスをした。「心配しないで、ママがいるから、パパにはあなたにひどいことなんてさせないわよ」綾芽の存在がある限り、一花は絶対にこの親子二人のポジションを奪っていくはずはない。颯太を寝かしつけると、綾芽は涙のあとを拭いて、もう一度慶の書斎へと向かった。慶は一人、部屋の中で静かに考え事をしていた。そして綾芽が来たのに気づくと、
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第38話

会社が最大の危機に晒されていた時、一花もこの時の綾芽同様、自分の傍にいてこのような慰めの言葉をかけてくれた。そして何か問題が起こるたびに、一花は確かにその渦中に飛び込んでいき、彼に代わって苦しみを受け止めていた。慶は眉間にしわを寄せ、どうしてまた一花のことを考えてしまうのだろうと思った。「慶、私だって金融や経済を学んだことを忘れたの?一花さんの仕事が私にできないとは限らないわよ」暫くの間慶を慰めてから、綾芽はこの時やっと自分の目的を口にした。一花が慶の右腕になるくらいなら、自分が会社で働いたほうがましだと彼女は思っているのだ。以前は、慶が家族に真実がばれることを恐れ、綾芽を会社で働かせなかった。「いや、それはちょっと都合が悪い」慶は考えることなく、綾芽の提案を断わってしまった。家の事情があるだけでなく、一花が戻ってきて、会社で綾芽が働いているのを見たら、どう思うか分からない。「あなたが何を心配しているのかは、分かってるつもりよ」綾芽は慶の考えなど、すでにお見通しだった。綾芽はここへ来る前に準備を整えていたのだ。綾芽が欲しい役職は一花の務めるマネージャー職ではなく、彼女のアシスタントとなることだった。そうすることで、一花が戻ってきてからも何の問題もなくその肩書きで手伝うことができる。それに、一花が自分から会社を休みたいと言ってきたのだから、会社にも一花の仕事を引き継ぐ人間が必要だ。「女は一番よく女の事が分かるものよ。一花さんが腹を立ててこんなことするのは、ただあなたに構ってもらいたいからよ。もし彼女が私があなたの傍にいることを知ったら、危機感をつのらせて、あっちから素直に帰ってきて、妥協するかもよ?」綾芽は慶が今一番気になっていることを言い当てた。慶がずっと一花を甘やかしていたせいで、彼女は図に乗り始め、一言もなにも告げずに勝手に引っ越していってしまった。慶のほうから彼女に戻ってきてほしいと頼んでも、今後一花のわがままを聞き続ける羽目になるだろう。それに、一花が裏でいろいろやっていたとしても、慶は一花の自分に対する愛情には自信を持っていた。慶は一花のことを6年間も大事に扱ってきた。だから彼女はそう簡単に彼から離れることはできないだろうし、こんな小さな事くらいで本気で二度と戻ってこないはずが
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第39話

たとえ一花に自分のために死んでくれと言ったとしても、彼女はきっと眉をひそめることもないくらい、慶のために尽くしてくれていた。一花のその愛は、全て偽物だったというのか?……西園寺グループで一日中忙しくしていた一花が家に帰ってきたのは夕方だった。大企業というものは確かに面倒なことが多い。一花が事前にある程度勉強し学んでおかなければ、株主総会に出席した際、本当に古株たちに難題を突き付けられて困り果てていたことだろう。突然、携帯が振動した。長年会っていなかった親友の大槻莉子(おおつき りこ)から連絡が来た。彼女はさっき帰国したばかりらしく、一花に会いたいというメッセージを送ってきた。ちょうど同窓会があるから、一緒に行かないかという誘いだった。一花と莉子は同じマンションに住んでいて、とても仲が良かった。大学時代は一緒にアルバイトをしたり、夜更かしして復習したり、よく金持ちになったら互いのことを忘れるなよと冗談を言い合ったりもした。しかし、卒業してから莉子は海外の会社に就職し、一花は慶と一緒になり彼のために家庭を支えることを選んだ。一花は誘いを断わったが、莉子は帰国して一日しか滞在しないからと、何度も会いたいとお願いしてきた。大学時代、仲良く過ごした楽しかった日々を思い出し、一花は最終的に彼女の誘いを受けることにした。待ち合わせ場所は市内にあるバーだった。一花が到着した時には個室にはすでに多くの人が集まっていた。莉子は端のほうに座っていて、一花が来たのに気づくと、興奮して駆け寄り抱きついてきた。「一花!めっちゃ久しぶりじゃないの、すごく会いたかったんだからね!」喜びに興奮した様子の莉子に迎えられ、久しぶりの感動を覚えた。「莉子、あなたすごく変わったね。ここ二年、かなり充実してたみたいじゃない!」当時の莉子は世間のことをあまり知らず、痩せていて小柄で、人見知りだった。しかし、今の彼女は明るく自信に満ち溢れていて、輝くオーラを放っている。「そりゃもちろんよ、広い世界ってものを見てきたんだから!」莉子はニコニコしながら一花の手を引き腰掛けて、彼女も一花をじろじろと見つめた。「わあ、あなただってさらに美しさに磨きをかけたわね。愛の力ってやつかしら?」その話題になると、一花の表情が少し変わった。すぐに何から話せばいい
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第40話

その話をする人物の口調は決して良いものではなかった。一花がそちらに顔を向けると、少し見知った顔だった。相手の名前すら彼女は覚えていなかったが、なんとなくそれは綾芽のところの学生で、慶とは同じクラスだった記憶がある。「木下さん、あなた自分が結婚できないことを妬んでるんじゃないの?あなたって、もう長い間彼氏もいないでしょ、さっさとお見合いしたほうがいいんじゃないの!」莉子は一切容赦なく、一花に代わって言葉で反撃した。「大槻さん、あなたなにも分かってないくせに、話をかき回さないでくれないかな。あのね、黒崎先輩は本気で好きだった人を手に入れられなくて、仕方なく一花さんのほうを選んだだけなんだよ」木下奈々(きのした なな)がそう言うと、個室は瞬時にしんと静まり返った。その場にいた全員がまるで共に守っていた秘密を知ってはいけない人に知られてしまった時のように、一瞬で笑みを消してしまった。本来、一花に対して親しげに笑みを浮かべて話していた同級生も、動揺したらしく、どんな反応をすればいいのか分からないようだった。その場の空気は一気に凍り付いて変な雰囲気になった。一花はみんなの反応に驚いた。慶の心の中に自分とは別の女がいたことは別に奈々から教えられなくても知っていることだ。しかし、周りの反応がおかしい。普通であれば、そのような話を聞けば、噂好きが興味を示したり、疑ったり、反論したりするはずだ……このように水を打ったように静まり返ることはない。その静けさは、まるでみんなすでに事実を知っていたかのようだ。どうやら、慶と綾芽の関係を知っている人は少なくないらしい。ただ一花一人だけがこの事実を知らなかったかのようだ。当時、大学時代にみんなから祝福され、羨ましがられた記憶を思い出した。以前は自分はこの世で一番幸せな人間だと思っていたのに……一花は皮肉げに笑みを浮かべた。自分は本当に滑稽だと思った。ただ一人、莉子だけが怒りで顔を真っ赤にさせた。「木下さん、そんなデタラメな話をしないでくれるかしら。いくら一花に嫉妬してるからって、度が過ぎてるわよ!」「私はただ事実を言っただけよ。本当に愛し合っていたのか、当事者が一番よく分かってるんじゃないの」奈々は冷たく鼻で笑った。まったく莉子には目もくれず、ニヤリと口角を上げて、挑発するよ
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