一花はこれ以上、侑李の邪魔をしたくなかったので、彼にホテルのエレベーター前まで送ってもらってから、すぐに彼に言った。侑李は笑った。「分かった。じゃ、何かあったらすぐ僕に連絡してね」「ええ」と答え、一花は彼に手を振った。しかしこの時、エレベーターの扉が閉まるところを誰かが手で押さえ、中に入ってきた。エレベーターの空間は十分あるというのに、その人物がぶつかってきて、一花は危うく倒れてしまうところだった。「茉白(ましろ)」近くにいるシャネル風のセットアップを着たその女性のほうへ視線を向けた時、侑李の声が耳に入ってきた。茉白と呼ばれた女性は黒髪のロングウェーブで、きつい香水の匂いを漂わせていた。彼女は一花を一瞥すると、すぐに侑李のほうへ顔を向けた。「侑李、新しい彼女?」「何が新しい彼女だ。そんな適当な事を言うんじゃない。彼女は従妹の西園寺一花さんだよ」この時、侑李は少し不機嫌そうにしていたが、茉白に対する口調は厳しくはなかった。「西園寺一花?あの、西園寺匠の隠し子?」茉白は首を傾げて、まじまじと一花を品定めするかのように見つめた。一花は黙っていた。彼女はこのように傲慢なお嬢様には好感を持てないし、わざとぶつけられてとても痛かったのだ。「茉白、そんな言い方は失礼だぞ。彼女は匠おじさんの実の娘さんで、僕の従妹でもある。それに、西園寺家の後継者なんだぞ」「西園寺家の後継者だからって何よ?別に私は西園寺家の人間でもないし、この子だって私の姉妹でも何でもないわ」茉白はそう言い終わると、侑李が話す前にエレベーターのボタンを押した。侑李も中に入ろうとしたが、間に合わなかった。扉が閉まると、茉白は何も言わず、一花も黙っていた。この茉白とかいう女は侑李の知り合いだろう。二人の話し方は友好的でなく、明らかに彼女は侑李に突っかかっていた。一花はそんなことに構うのは面倒で、扉が開くとすぐに出ていった。一花が部屋の前に着くと、侑李から電話がかかってきて、ちゃんと部屋に到着したか心配して尋ねてきた。その後、侑李からあの茉白と呼ばれた女性は二階堂家の養女で、彼とは幼なじみと言えるそうだ。傲慢な性格をしているが悪い人間ではないから、彼女の言った言葉を真に受けないでほしいとのこと。「二階堂?あの玩具メーカーの?」一花
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