「旦那様、いらっしゃられたのですね……」家政婦の声が聞こえてきた。美穂はさっき夫の修治ではないかと予想していた。そうでなければ、家政婦もそのまま玄関を開けることはない。今日、修治は帰国した。彼は事前に美穂に連絡し、飛行機は夜のフライトだと伝えていた。美穂は彼が家に帰った時に、誰も家にいないとよくないと思い、一花のところに行くと事前に連絡をしていたのだ。柊馬が怪我をした時、修治はただ何回か電話をして状況を確認したくらいで、自ら柊馬に会いに来ることはなかった。その事が、柊馬の心を冷たくさせただけでなく、美穂も修治は薄情者だと感じていた。家族みんな、ずっと彼には不満を持っていた。「修治、何しに来たの?」敬子は修治が来たのを見ると、顔から笑顔が一瞬で消えてしまった。「一家揃って食事をするのに、どうして私を呼ばないんだ?」修治は冷ややかな口調でそう言うと、コートを家政婦に手渡して、食卓の前までやって来た。一花は立ち上がろうとしたが、柊馬に腕を引っ張られた。柊馬は片手に茶碗を持ち、もう片方の手で一花の腕を掴んでいた。彼は顔をあげることもせず、修治が自分に視線を向けていることにも気づいていないふりをしていた。「柊馬……」「食事を続けよう」柊馬は低い声でそう言うと、目の前にある皿からおかずをとって一花の皿に入れた。「まったく、無礼な奴だ」修治の目線は柊馬から一花に移った。一花は少し体を震わせ、どうすればいいか分からないようだった。美穂は傍まで近寄ると、修治の腕を叩いた。「何しに来たのよ。来てすぐに息子にそんな態度?今日は一花さんが私たちを招待してくれたから家にいないって伝えたでしょ。あなたは家に帰って早めに休んでって意味だったのよ!」「私は息子と嫁さんの様子を見に来たんだぞ。なんだ、私にさっさと帰れと言うのか?」修治がすでにイライラしてならなかった。彼の氷のように冷たい口調が周りの空気をさらに圧迫させた。一花は柊馬を見て、声を出した。「お義父さん、そんなことないですよ。さあ、早く座ってください」柊馬が修治のことを面白く思っていないのが一花は分かっていたが、それでも彼の父親の面子は潰すわけにいかない。しかし、一花はただ口でそう言っただけで、柊馬は彼女が修治のために行動するのは見たくないらしく、一花もた
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