All Chapters of 偽物クズ夫に別れを告げ、スパダリと政略結婚します: Chapter 591 - Chapter 600

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第591話

西園寺グループと西園寺家は彼女にとってとても重要だが、柊馬はそれ以上に重要な存在だ。彼女もまた、自分の力で彼を守りたい。ただ一方的に彼の優しさに溺れるだけではいけない。柊馬の目に困惑の色が浮かんできた。「君は、俺がここにいるのを望んでいないのか?」「そうじゃないわ。ただ、あなたを私のせいで危険な状況に巻き込みたくないの」一花は、あまり多くを語れば柊馬がさらに心配するだろうと恐れ、彼の手を取って、伊集院グループや伊集院家の人たちを言い訳に、もし柊馬が長期間海外で彼女に付き添えば、より多くの人々を不安にさせると説得した。それに、以前に彼らを尾行していた者たちはまだ暗がりに潜んでいる。もし本当に修治と敵対する勢力が存在しても、国内では柊馬に手を出せずにいるだろう。では、国外ではどうなるか?柊馬にどれだけのボディーガードがいても、防ぎきれない。ましてや今、一花は西園寺家に足止めされている。柊馬がそれに巻き込まれれば、事態はさらに複雑になるだけだ。むしろ、二人は一時的に離れた方が良い。少なくとも、互いに無事でいられる。一花の言葉を聞き、柊馬の瞳は一瞬で光を失い、冷たくて暗くなってしまった。彼はうつむき、一花の細い指先を見つめ、長い間、黙っていた。「たった二ヶ月よ。安心して。必ず無事にあなたに会いに帰るから」一花は心がひどく痛んでいると感じた。彼女も柊馬と一緒に帰りたい、ずっと離れたくないと思っている。ほんの数日会わなかっただけで、彼女は彼にひどく会いたくなっていた。しかし二人には背負うべき責任がある。一花には自分自身への、西園寺家への、そして柊馬への責任を背負っている。そして、柊馬の後ろには伊集院グループがある。彼はこれまでもずっと重い責任を担ってきた。もし一花のためにそのすべてを捨てれば、彼はただようやく一つの泥沼から這い上がってきて、またとんでもない深淵に落ちるようなものだ。一花は柊馬を愛している。彼が自分を愛していること、そしてもっと多くの愛を必要としていることを知っているからこそ、彼がすでにボロボロに壊れた感情を彼女の存在でまた直せるようにと願っている。ただひたすらに逃げたり、恐れたりするのはだめだから。「柊馬……」彼が長い間、何も言わないのを見て、一花の胸にはいろいろな感情が次々と押
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第592話

二人は今回は長く愛し合った。柊馬は汗でびっしょりになり、普段は獣のように激しかった彼だが、今回はどこか違った。一花は、彼がさらに慎重に、まるで宝物のように彼女を優しく扱っていると感じた。まるで、彼女のすべてを記憶に焼き付けようとしているかのようだ。「柊馬、私が今、何を考えているか分かる?」「ん?」「京原大聖堂にある、その古いご神木よ」一花は柊馬の腕に頭を預け、太陽の光が彼の肩に落ちるのを見つめ、あの日、自分が柊馬に撮ってやった写真を思い出した。自分の携帯のホーム画面に設定している。あの時、夕陽の光が彼に降り注ぐだけで、彼は神様のように見え、手が届きそうで届かない、そんな存在になったと思うほど美しかった。まるで美しい夢を見ているかのようで、ようやくそんな手の届かない存在を手に入れられたのだ。「気に入ったなら、君が帰国したら、また行こう」柊馬が低くそう言った。「ええ、その時はあちらで結婚式を挙げるから、式が終わったら、あなたと京原の美味しい屋台を全部食べてみましょ。そして、たくさんの写真を撮りたいの……京原だけじゃなくて、私たちがまだ行ったことのない場所全部ね」一花は、先ほどの悲しい雰囲気を払おうと、やりたいことを話し始めた。これは彼女が昔から自分を慰める方法だ。辛くなったら、まだ素敵なことが待っていると自分に言い聞かせる。施設にいた時も、いつか一人でも良い生活が送れるようになると自分に言い聞かせ、だから諦めてはいけないと励ました。頑張れなくなった時も、いつか自分はきらきら輝く存在になり、たくさんの良いことが待っていると言い聞かせていた。たとえ慶に六年間騙され、彼女のすべてを無駄にされたとしても、彼女はまだ、やり直せると思っていた。だから今、柊馬とたった二ヶ月離れるだけなのに、そんなに悲しむべきではない。彼女には愛する人ができた。西園寺家の令嬢という身分も手に入れた。どんなに困難な道でも、必ず歩いていけるのだ。怖がってはいけない。そのまま留まってはいけない。「ああ」柊馬が笑った。「すべてが終わったら、一緒に世界の果てまで行こう」一花は柊馬の言葉を聞いて、さらに幸せそうに笑った。彼の方に向け、彼に甘いキスをした。暫くして、一花はそろそろ時間だと気付いた。彼女は一時的に抜け出してきただけ
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第593話

一花は驚いて柊馬を見つめた。この時計は非常に有名なオーダーメイド品で、世界に一つだけのものだ。今年、ブランド側が柊馬のために特別にデザインしたもので、金では計れない価値がある。柊馬はこの時計をとても気に入っており、一花と京原市に行った時、一度だけ身につけたことがある。柊馬が淡々と言った。「彼が助けてくれたのだから、何かお礼をしなければならない。来る時にあまり準備ができていなかったので、この時計をお礼に、ほんの気持ちでと伝えてくれ」「ダメよ、これはあなたのお気に入りじゃないの……」一花が断ろうとした瞬間、柊馬に体を抱き寄せられ、口を塞がれた。彼は彼女の唇にキスをした。動作は優しいが、態度は強硬なものだった。「お気に入りだからこそ、誠意が伝わるよ」「柊馬、あなた……大丈夫なの?」一花は目を見開き、不安そうに彼を観察した。彼はいつも落ち着き払っている様子で、話す時も行動する時も、自分の感情を完璧に隠している。彼が見せたくない気持ちは、他人がどんなに推測しても、その本当の考えを掴むことはできないだろう。しかし彼女に対してだけは、柊馬はその感情を隠せず、自然に表せる。彼は自分の前では子供のように、決して気持ちを隠さないと一花は知っている。柊馬は繊細で、独占欲が強い。その感情を抑えれば抑えるほど、極端になる。しかし今、彼女は彼の顔に、少しの怒りも見つけられなかった。それが彼女を不安にさせた。「嫉妬はしてるけど、君の心には俺しかいないと、ちゃんと分かっているんだ。どんな男が、たとえ俺より優れた男が現れても、今の君の俺への愛を奪うことはできない」柊馬は、一花が恐る恐る自分を見つめる表情を見て、思わず笑い出した。手を上げて、そっと彼女の頬をつねった。ただただ、彼女が可愛くて仕方がない。誰かが彼の愛する女を狙っている。それを全く気にしないはずがない。ただ、嫉妬はしたが、一花との絆が、この時、彼にとっては見せびらかせる誇りだと思っている。この時計を相手に贈るのも、二人の愛を誇示する一つのやり方だ。一花も突然、その行動を理解した。柊馬が時計を贈るのは、実に言うと、相手にダメージを与える行動だ。徹が彼女に好意を抱いているのに、柊馬はあえてそんな高価なものを贈る。その寛大さと自信は、単に夫婦二人がどれほど愛
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第594話

彼女は柊馬の目の奥にある、わずかな無力感を見た。彼は平気そうに見えるだけで、その体から、深い孤独の雰囲気も漂っているようだった。一花は目がすぐに赤くなったが、泣きたくないし、別れも言いたくなかった。ほんのしばらく会えないだけなのに、どうして彼はいつも、これからもう会えないような様子をするのだろう。しかし一花が口を開く前に、柊馬は再び彼女の手を離した。彼は半歩前に出て、再び両腕を広げ、力を込めて彼女を胸に抱きしめた。柊馬のハグは、いつもこんなに感情が込められていて、力強い。まるで、一つの抱擁が、時間をこの瞬間に永遠に止めさせるようだ。一花は目を閉じ、両手で彼の背中を撫でながら、小さな声で言った。「すぐにあなたに会いに来るから」「……待っている」「……」柊馬のいるホテルを出た後、一花は振り返る勇気がなかった。ただキャップを深くかぶり、素早くその場を離れた。彼女は、もう一秒でも留まれば、自分が理性を保てなくなるのが怖かった。柊馬はエレベーターの中に立っていた。一花の姿が完全に消えるのを見送る間もなく、エレベーターのドアは閉じてしまった。最後の力を振り絞って部屋に戻ると、彼の胃は再び激しく痛みを訴えてきた。しかし今回は、医者を呼ぶ間もなく、先に意識がなくなりそうだ。帰るとき、一花はひどく落ち込んでいた。柊馬があんなに名残惜しそうな顔をしていたせいか、あるいは目の前のプレッシャーのせいか、彼女は我慢できずにしばらく泣いた。しかし、ほんの少しだけだ。ワールドファンドのビルに戻った時には、すでに気持ちを切り替えていた。雨はいつか必ず止む。そして夜もいつか絶対明けるものだ。夜明けの初めて見える光が、一番眩しい。たとえ柊馬のためでも、彼女は最後まで頑張らなければならない。徹が再び一花に会ったのは、すでに夕方だった。彼女は予定よりも一時間近く遅れて戻ってきた。それに、朝との様子が違う。今、彼女の瞳は少し腫れており、泣いたように見える。しかし一花は彼に会うと、いつも通りの表情を見せてくれた。彼女は笑い、その腕時計を差し出した。「二塚さん、今日はありがとうございました。無事に友人に会えました。これは、私の友人からのほんの気持ちです」一花が腕時計を差し出した瞬間、徹の顔色が確かに変わった。一花はは
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第595話

「二塚さん、本当にありがとうございます」一花は思わず、もう一度感謝を表した。しかし徹にこれ以上言わなくてもいいという手の合図で止められた。「感謝の言葉はもう十分ですよ。それに、僕を良い人間だと思って、これほど褒めるのはちょっと複雑な気持ちですね。僕はただのビジネスマンです。僕が提携したい相手は、あなたであって、幸雄さんではありません。あなたたちの間の対立を煽ることは、僕にとって何の得にもなりません。それに、そちらの家庭の事情にも興味はないんです。今日は一体何があったのか、僕は知りませんよ。ただ、一花さんと一緒にプロジェクトを話し合い、出かけて買い物をしただけじゃないですか。友人として、あなたを高く評価しています」「……」徹がこう言うのを聞いて、一花はようやく落ち着いた。彼女は人を見誤っていなかった。徹は物事の分別がわかる人間で、きっといいビジネスパートナーにもなるだろう。徹は一花をルクスヒルズに送ってあげた。車を降りる前に、彼はわざわざ秘書から自分のよく使う香水を取り、車内に少し吹きかけた。「はい、これでいいですよ」「はい」一花は笑い、礼儀正しくうなずいた。「僕たちは友達になれるでしょうか?つまり、単なるビジネス上の協力相手ではなく、普通の友達になれますか」突然、徹が再び一花を呼び止めた。その眼差しはまだまだ意味深だが、以前のようにわざと弱い姿勢を見せて、一花の好感を買うような感じではない。それに、その目には、もう一花のことをそういう目で見ることはなくなっていた。今回は、心から一花と友達になりたいと思っている。彼女への好感だけでなく、一花と友達になるのも、悪くない選択のように感じられたからだ。伊集院柊馬は国際的にも冷酷で扱いにくい人で有名だが、一花と一緒になってから、彼に会ったことはなくとも、彼が大きく変わったことが感じ取れる。飼いならされたライオンは、人に撫でられることに慣れてしまうようだ。もし一花と友達になり、どうやって相手に自分の好感をちゃんと伝えるかやり方を学べれば、徹は自分も早く幸せを見つけられるかもしれないと思った。一花はかすかに口元を緩めた。「私はもう二塚さんと、友人だと思っていましたけど」言い終えると、彼女は振り返り、颯爽と立ち去った。徹の秘書が、一花の荷物を運び
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第596話

今になって振り返れば、幸雄が父親として子供と一緒にいた頃は、本当に幸せだった。今、一花の祖父としても、同じ気持ちを味わった。もし一花が素直に言う事に従ってくれるなら、彼は厳しく辛辣な西園寺家の当主から、ただ孫娘を可愛がるだけの祖父になることも厭わない。……一花が部屋に戻ると、亜由たちが荷物を片付け、部屋を出ようとしていた。しかし亜由は、一花がドレッサーの前でまだ携帯を見ているのを見て、思わず足を止めた。「どうしたんですか。新牧さん、ずっと何かを言いたげな様子だけど、私に何か言いたいことがあるんですか」一花が突然口を開いたので、亜由は驚いて、すぐに視線を外した。「いいえ、ただ、他にお手伝いできることはないかと思いまして」「実は、あなたに聞きたいことがあるんです」一花が携帯を置き、体をひねって、首をかしげて亜由を見つめた。彼女の顔に浮かんだ落ち込んだ表情は、一花が入ってきた時から隠せていなかった。ここ数日、一花は彼女を注意して観察していた。幸雄が一花とあまりに親密にすると、亜由はいつも嫉妬の色を浮かべるようだ。それに徹とも、一花が彼と一緒にいると、亜由はかすかに機嫌が悪そうに見える。「あなたは、おじい様が好きなんですか?それとも二塚さん?」「……」一花の言葉に、亜由の体が震え、頭が一瞬、真っ白になった。「何をおっしゃっているんですか?幸雄様は私の雇い主です。二塚さんは……二塚さんは私と何の関係もないですよ」亜由の動揺は、隠しようがなかった。一花が立ち上がり、ゆっくりと亜由に近づいた。亜由は慌てて後退し、思わずうつむいてしまった。「当ててみましょうか。おじい様はあなたを幼い頃から育てたんでしょう?私が来て、あなたの立場を奪ったとでも思っているんじゃないんですか?」「そんなはずが……」亜由は慌てて否定しようとするが、一花はその隙を与えず、続けて言った。「二塚さんとは、かなり親しいんじゃないですか?初めて会ったわけじゃないんでしょ。前におじい様が私と彼をくっつけようとした時、あなたは私を探りましたよね。おじい様の代わりに聞いているのかと思っていましたが……今思えば、あなた、彼が好きなんじゃありませんか?」「一花さん!でたらめを言わないで!」亜由はあまりにも慌てると、顔を
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第597話

「私がどうやって二塚さんを利用したっていうんですか?」一花は亜由をじっと見つめ、真剣に問いかけた。彼女の声は穏やかで、非常にリラックスしている。本当に対等な交流の雰囲気を作り出している。亜由も開き直り、冷たい声で言った。「あなたは彼のことを好きではないというのに、ただ幸雄様の機嫌を取るために近づいたんですね。実際には一日中、旦那様と連絡を取り合っていたでしょう。離婚するつもりがないのなら、二塚さんにちょっかいを出すべきではないと思います」「彼を好きじゃないなんて言いながら、そんなに気にかけているじゃないんですか。どうしておじい様に一言言って、お見合いでもしてもらわないんですか」「私は……」一花が立ち上がり、亜由の前に歩み寄り、突然、手を伸ばしてそっと彼女の頬を軽くつねった。亜由は眉をひそめ、抵抗しようとするが、一花に押さえられた。彼女はじっと亜由の顔を眺め、目元を緩め笑った。「新牧さんは、顔立ちが整って美しい人ですよ。それに、有能で優秀なのに、どうしてそんなに自信がないんですか」「私は二塚さんに何の気もないと言ったでしょう……」「本当に何もないなら、どうしてそんなに顔が赤いんですか?新牧さん、実はね、私はただの客です。一時的に来ただけで、すぐに去っていきます。おじい様と長く一緒にいることもなければ、二塚さんと一緒になることもありません。あなたが私に注意を向ける必要はないんです。私を監視するよりも、自分のことに気を配ったほうが、もっと楽しく過ごせるんじゃないですか?」一花は亜由に回りくどい言い方をせず、彼女の心に潜めた秘密を指摘した後、率直に自分の考えを説明した。亜由は少し気まずそうだった。まだ言い返そうとしたが、一花がそこまで言うのを聞き、もう反論しなかった。「私の仕事は一花お嬢様に仕えることです。ですから、当然、一花お嬢様のそばに付き添わなければなりません」「わかっています。おじい様に私を監視するよう言われているんでしょ。私を敵にして、しっかり見張ることはもちろんできるんですよ。でも、他の選択肢もあると思いますよ。私たち、お互いに助け合うこともできるんじゃないですか?」「お互い……助け合う?」亜由が一瞬、呆然とした。夜も更け、和香が一日の仕事を終え、部屋に戻ると、携帯に新しいメッセージが届いていた
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第598話

「とっておきのニュースがあるの。あなたなら興味があると思うわ」「……」翌朝早く、一花が顔を洗ったところに、携帯に次々と飛び込む通知が押し寄せた。数えきれないニュースの転送、多くの知り合いからのメッセージ、それに数件の不在着信。不在着信は、敬子と夏海からだった。一花が返信する前に、まず夏海からのメッセージに気づいた。ニュースを早く見てという内容だった。明け方、【伊集院柊馬がM国で重病】というタイトルのニュースが、国内のトップニュースになり、海外のビジネス界にも知らせられた。このニュースは、明らかに誰かがわざとサクラを雇って、話題にさせたものだ。そうでなければ、こんな短期間でこれほどの注目を集めるはずがない。ニュースの内容も非常に大袈裟に書かれており、柊馬がM国で急病で重体に陥り、生死の境を迷っている。伊集院グループはトップ責任者を失い、南関市のビジネス界に混乱を引き起こすだろう、という内容だった。一花がこれを見た最初の反応は、全くでたらめのニュースだということだった。彼女は昨日、柊馬と別れたばかりだ。柊馬は明らかに元気だったというのに、一晩で急病で重体になるはずがないだろう?それに、彼女が帰った後も、ずっと柊馬と連絡を取り合っていた。一花が帰る途中で、柊馬がしばらく返事して来なかったが、その後は寝るまでずっと話し、おやすみの挨拶も交わした。一花は考える間もなく、すぐに柊馬に電話をかけた。彼女は電話をかけながら、慌てて服を着て身支度を整えた。ニュースは偽物である可能性が高いが、万が一でも、もし柊馬が本当に……いや、そんなことを考えてはいけない。電話が繋がらないと、一花は一秒も落ち着かなかった。ついに、電話が自然に切れる直前、柊馬の声が受話器の向こうから聞こえてきた。「一花」柊馬の声は、少し疲れているように聞こえたが、おかしいところはない。「あなた、大丈夫?ニュースで……」「もちろん、でたらめのニュースだよ。慌てないで。俺は大丈夫だ」柊馬の一言で、一花はやっと胸を撫でおろした。彼女はほっと息をつき、危うく涙がこぼれそうになった。「心臓が止まるかと思ったわ。あのメディアは正気なの?あんなでたらめを言って……」「俺たちは、誰かに狙われているかもしれないな」柊馬の言葉が、
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第599話

「彼女は、そうすれば君が急いで俺のところに来ると考えてるんだろう。もし今、俺のところに来れば、おじいさんに説明がつかなくなる」柊馬は一花と同じことを考えている。時には彼女よりも深く真実が見られる。一花は、自分が幸雄と交わした約束について、柊馬にすら話していなかった。それなのに、柊馬は現在の状況から、ほぼ正確に推測していた。一花も何をやっても柊馬を欺くことはできない、と認めざるを得ない。「今、教えてくれないか。一体、何が起きているんだ?」柊馬が低い声で、再び一花に尋ねた。彼は、もし非常に厄介なことでなければ、一花が自分に隠すことはないと知っていた。それは同時に、一花が隠していることが、自分に関係していることをも示している。ニュースを見た最初の瞬間、彼が考えたのは自分自身ではなく、一花のことだった。きっと一花も同じ気持ちだろう。「修治さんと父との間のこと……でも、事が明らかになるまでは、すべては推測に過ぎないわ」一花はあまりはっきりとは言いたくなかったが、これ以上隠せば、ますます柊馬に余計な考えを抱かせることになるともわかっていた。彼女がここまで話すと、柊馬は突然、黙り込んだ。電話の向こうの重い呼吸音を聞き、一花は再び緊張し始めた。「匠さんの死には裏があったのか」突然、柊馬がすべてを理解したかのように言った。その沈んでいる声が、一花の心を貫くようだった。彼女は口を開きかけ、言葉を失い、どうしていいのかわからなくなった。彼女が沈黙したわずかな数秒で、柊馬は自分の考えを確信した。二つの家の現在の関係は、小さなことで揺らぐものではない。十分に大きなことで、しかも匠に関わることとなれば、今考えられるのは相手の死因しかない。匠は彼の命の恩人だ。もし自分の父親が匠の死と関わりがあるなら、彼は……どうやって一花と向き合えばいいのか?「柊馬……親世代のことに、私たちは関与できない。多くのことは、全てを知るまでは、私たちの誰も結論を下せないわ。それに、今は私を狙っている者がいて、あなたも巻き込まれている……世の中にこれほど多くの偶然があるはずがない。だから、私はおじい様に調査を許可してもらったの。万が一……」「一花、説明してくれなくていい。君は正しい」柊馬が低い声で一花の言葉を遮った。彼の声は、少
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第600話

「ただの風邪だよ。昨日、君が帰った後、薬を飲んで休んでいたら、来栖が大げさにして、地元の医者を何人も呼んで診てもらったんだ。さっきばあちゃんからも電話があった」柊馬は相変わらず平静な声で説明してきた。彼の言い分はもっともに聞こえるが、それでも一花の不安を拭い去ることはできなかった。「ごめん。こっちもメッセージが多くて手が回らないから、今から処理しなければ」一花がまた何かを言う前に、柊馬は言い終えると、慌ただしく通話を切った。彼がこれほどあっさりと電話を切ったのは初めてで、一花の不安は一気に膨れ上がった。彼女はすぐに荷物をまとめて部屋を出ようとした。亜由が外ですでに待機している。彼女もニュースを見ていたから、早くから一花の部屋の前をうろうろしていた。少し迷った後、彼女は一花の行く手を遮った。「一花お嬢様、今は外出してはいけません」「止めないで」「幸雄様は今、あなたの行動を見ているんですよ。もし今、旦那様のところへ行けば、他人に付け入る隙を与えるだけですよ」亜由が眉をひそめてそう言った。彼女は一花と和香の争いには関心はないが、ずっと幸雄のそばにいて、この人たちのいざござを知らないはずがない。一花が昨夜、彼女を味方にしようとしたのは、自分の力を増やすためだ。西園寺家では、一花は令嬢だと認められているが、実際は亜由と同じく、頼りのない身に過ぎない。亜由にはわかる。一花は和香よりも性格がよく善良の方な人で、和香のような残忍さはない。もし彼女が恋に溺れれば、必ず敗北し、悲惨な目にあうだろう。「もう構っていられないわ。今すぐ彼のところへ行かなければならないことだけはわかっているの」一花は、亜由が自分を監視するためだけでなく、自分のことを考えてくれていることに感謝している。しかし今、彼女ははっきりと感じていた。もし柊馬の状況を確認しに行かなければ、後悔するかもしれない。「一花お嬢様、どうしても行くというなら、私が手伝いましょう」「……」柊馬の方は、電話を切った直後、体がもう持たなくなっていた。昨夜、彼は突然倒れた。岩崎に軽く診てもらってから出した判断は、病状が悪化した可能性があるという。急な変化なので、今すぐ入院して治療を受けるのが最善とされた。柊馬は、こんな時に一花に心配をかけまいと、入院
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