「龍司、私……」「波、君には本当に失望した」龍司は容赦なく彼女の言葉を遮った。そのまま、申し訳なさを滲ませた目で真帆を見た。「真帆、すまない。俺は……」「謝罪はもう結構。私は結果が見たいだけなので」まるで他人に向けるような、よそよそしい口調だった。龍司の胸に、何かが詰まったような感覚が広がった。説明しようとした言葉は、結局出てこなかった。波をここまで連れてきたのは、自分だ。真帆はこれ以上関わる気はないのか、ハンドバッグを手に取り立ち上がった。「それと、約束は守ってね。納得のいく説明を頂戴、きちんとね」そう言い残し、隣の青年へと視線を向けた。その目は、わずかに優しさを帯びていた。「悠人くん、行こう」悠人は、ほとんど見えない嫌悪感が目に浮かび、龍司と波を冷ややかに一瞥すると、そのまま真帆の後を追って立ち上がった。「真帆……」龍司が呼び止めようとする。だが真帆は一度も振り返らず、そのまま足を止めることなく店を出ていった。主役が去れば、見物していた客たちも興味を失った。ざわめきは次第に収まっていった。だが誰も気づいていなかった。店の一番奥、暗がりに紛れるように座っていた一人の影が、真帆たちの後を追うように、静かに席を立ったことに。真帆の車は星嶺市に置いてきており、星ヶ丘ではレンタカーを使っていた。地下駐車場を出て車を走らせると、隣の悠人はずっと浮かない表情のままだった。母親の件を心配しているのだろうと察し、ハンドルを切りながら横目で彼を見た。「大丈夫、この件は、まだ打つ手はあるわ。裁判になったら、できる限り減刑を勝ち取れるように動くから」穏やかな声に、悠人ははっとして頷いた。「ありがとうございます、真帆さん……」そう言って一度真帆を見上げたが、すぐに視線を逸らした。「何か言いたいことがあるの?」ここ数日の付き合いで、真帆は彼の性格をある程度理解していた。口数は少なく、余計なことは言わない。だが、その分、内に抱えているものは重い。無理もない。あんな出来事を経験して、平気でいられる人間のほうが少ない。いつも通り、悠人が話さないなら、真帆は無理に聞き出すことはしなかった。車は流れるように走り続けた。最初の角を曲がるあたりで、ようやく悠人が口を開いた。「真帆さん、僕……」
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