瞬く間に数日が過ぎ、鷹宮家の食事会はもう目前に迫っていた。真帆は丁度新しい案件を受け、出張を理由として身をかわすつもりだった。準備は万端だった……はずなのに。搭乗ゲートへ向かう直前、背後から呼び止められた。「奥様。恐れ入りますが、食事会が終わるまで星嶺市を離れるなとの仰せです」先頭に立つ護衛は、物腰こそ丁寧だが有無を言わせぬ口調でそう言った。真帆はキャリーケースの取っ手を、ぎゅっと握りしめた。結局、彼らは寸分の隙も与えず、真帆をそのまま邸宅へと送り戻した。家の中には、波も龍司もいない。おそらく、湊の体調がまだ万全ではないのだろう。そう察した真帆は、むしろそのほうが静かでいいと安堵した。そのとき、和恵が上品な化粧箱を抱えてやって来た。「奥さま、こちらは旦那様からです。今朝一番で、お届けするよう仰せつかっておりました」真帆は特に疑わなかった。龍司は「埋め合わせをする」と言っていたし、金銭面で渋ったこともない。蓋を開けると、そこには手の込んだ重厚なドレスが入っていた。生地も仕立ても一級品で、一目で高価なものだとわかる。以前なら、真帆はすぐにでも試着していただろう。けれど今の真帆はただ小さく笑い、和恵に「しまっておいて」と頼んだだけで、そしてそのまま寝室へ戻った。食事会当日、龍司はようやく邸宅へ戻ってきた。ただ、その傍らには波と湊の姿もあった。車を降りたとき、真帆は言い知れぬ違和感を覚えた。自分が龍司の車椅子を押し、その横に波が寄り添い、彼女の手には湊が引かれている。この三人の姿こそ、まるで仲睦まじい家族そのものだ。それに対して自分は、この身にまとった高価なドレスがなければ、ただの「付き添いの使用人」のようだと真帆は思った。龍司の祖母は湊の姿に目を細め、波と楽しげに言葉を交わしている。真帆はわざわざ割って入る気にもなれず、周囲を見渡した。恐れる人がいないことを確認すると、彼女は密かに胸を撫で下ろした。そっと後方に下がると、使用人たちの手伝いに回り、できるだけ存在感を消した。だが、逃げきれるはずもなかった。西園寺家の人間が到着すると、鷹宮家夫人自らが出迎えに出たのだ。鷹宮家の若奥様である以上、真帆が姿を見せないわけにはいかない。門前に、黒塗りの高級車がゆっくりと停車
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